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小説を読んでいて、ほんとにこんなに感じるのかなぁ・・・。って、不思議に思ったことありませんか?
ある統計によると、日本の女性の50パーセントはオルガスムを感じたことがなく,また、別の統計では50パーセントは、普段オナニーをしないと答えています。 おまけに日本人のセックスの回数は、一年で45回で調査対象になった国では最下位なんですって。こんなに自由で情報もあるはずなのに、相変わらず男の子はペニスが小さいのを悩み。女の子は彼に避妊して欲しいと言えない。夫婦はどちらかがセックスに対して非積極的で、夫はマスターベーションに励み、妻はちょっと女扱いされればよろめいちゃう。男達はAVをお手本にセックスし、妻や彼女は不感症ではと思う。
大好きな人と、幸せな恋をして、思いっきりラブラブに語り合い、最高のセックスができたら・・・・どんなにか人生が満たされるか!
私は、SMが好きだから、SMのサイトやブログ巡りも大好き!そしてSMの情報の中には興味本位や女性蔑視の考え方が混じってることもあるんですが、ほんとのSの方は、SMが好きだからすごく熱心にあれこれあれこれするんですよね。そして、本当の快感を知ってしまうと女性はその相手から離れられなくなってしまうことが多いんです。
だって、考えてみてください。オルガスムを知らない女性が50パーセントって・・・これって、男性にすれば射精のないセックスですよ。これで「いい」訳がないじゃありませんか。
私も感じるのを覚えるのがものすごく遅い人間でした。オナニーはすごく早く覚えたのに、男性が相手だと、うまく「いけない」んです。途中までは気持ちがいいのになぜなんだろう?彼は、はっきり言ってすごく「淡白」な人だったけど、感じない私のためにいつもできるだけのことをしてくれました。私は、少しづつ少しずつ階段を上り、ひとずつつひとつずつ新しい扉を開いていったんです。
快感を感じるのもちゃんと磨かれた身体と心と技が必要なんですよね。今は、うまくいかない人も必ず自分の「いい」が見つかるはず。階段の途中の私だけど、多くの先輩を目指して精進するぞぉ!みんなも私と一緒に、自分の「いい」を探してください。そして、「いい方法」が見つかったときは、さやかにも教えてくださーい。
それでは「加虐と被虐の輪舞曲」のはじまりです。いや、大上段に構えたけど、さっきの話と小説の内容はまったく別物です。すいません。
加虐と被虐の輪舞曲

ある統計によると、日本の女性の50パーセントはオルガスムを感じたことがなく,また、別の統計では50パーセントは、普段オナニーをしないと答えています。 おまけに日本人のセックスの回数は、一年で45回で調査対象になった国では最下位なんですって。こんなに自由で情報もあるはずなのに、相変わらず男の子はペニスが小さいのを悩み。女の子は彼に避妊して欲しいと言えない。夫婦はどちらかがセックスに対して非積極的で、夫はマスターベーションに励み、妻はちょっと女扱いされればよろめいちゃう。男達はAVをお手本にセックスし、妻や彼女は不感症ではと思う。
大好きな人と、幸せな恋をして、思いっきりラブラブに語り合い、最高のセックスができたら・・・・どんなにか人生が満たされるか!
私は、SMが好きだから、SMのサイトやブログ巡りも大好き!そしてSMの情報の中には興味本位や女性蔑視の考え方が混じってることもあるんですが、ほんとのSの方は、SMが好きだからすごく熱心にあれこれあれこれするんですよね。そして、本当の快感を知ってしまうと女性はその相手から離れられなくなってしまうことが多いんです。
だって、考えてみてください。オルガスムを知らない女性が50パーセントって・・・これって、男性にすれば射精のないセックスですよ。これで「いい」訳がないじゃありませんか。
私も感じるのを覚えるのがものすごく遅い人間でした。オナニーはすごく早く覚えたのに、男性が相手だと、うまく「いけない」んです。途中までは気持ちがいいのになぜなんだろう?彼は、はっきり言ってすごく「淡白」な人だったけど、感じない私のためにいつもできるだけのことをしてくれました。私は、少しづつ少しずつ階段を上り、ひとずつつひとつずつ新しい扉を開いていったんです。
快感を感じるのもちゃんと磨かれた身体と心と技が必要なんですよね。今は、うまくいかない人も必ず自分の「いい」が見つかるはず。階段の途中の私だけど、多くの先輩を目指して精進するぞぉ!みんなも私と一緒に、自分の「いい」を探してください。そして、「いい方法」が見つかったときは、さやかにも教えてくださーい。
それでは「加虐と被虐の輪舞曲」のはじまりです。いや、大上段に構えたけど、さっきの話と小説の内容はまったく別物です。すいません。
加虐と被虐の輪舞曲


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右手と右足、左手と左足をそれぞれひとつにくくられて、うつぶせにされている彼の体をじっと見下ろす。それぞれの縄尻はピンと張られ、ベッドの下を廻して結び合わされている。口の中に押し込んだ布のを通してくぐもったようなうめき声が上がる。
「うっ。うっ。……う。うっ」
怖いんですか?それとも嬉しい?そっと真っ白な尻の丸みにそって撫で回すと、背中を反らせて首を激しく振っている。黒い布で目隠しをされたあなたは、誰が触れているのか、混乱してしまっているんでしょう?
それとも、かわいそうなあなたの記憶。決して消せない、辛い記憶がよみがえってきてるんですか?正直に言うと、私も怖い。本当はとても怖いんですよ。あなたが私の行為をその記憶と結び付けてしまうのじゃないかと。
双球に両手を掛けてきゅっとしまったあなたの尻の肉を押し拡げて、すみれ色の合わせ目に密やかに咲いている花を確かめさせてもらいますよ。ああ、見られるのが嫌なんですね。体が逃れようと必死にもがいている。自分から求めたくせに。やっぱり恥ずかしいんですか?始める前は、あんなに自信たっぷりだったくせに。でも、抵抗してもだめです。
縛られて繋がれて体は自由にならない。本当は、欲しかったのでしょう?認めてしまえば楽になるのに。どうしても、認められないんですね。
中央の秘した花にオイルを垂らしますよ。冷たいですか。びくっとしましたね。大丈夫です。乱暴にしたりしません。ゆっくりとしわを伸ばすように揉みこんであげます。じっくりと。じんわりと。
……泣き声の調子が変わってきましたね。感じてきたんですね。そっと手をくぐらせて、前の棹に触ってあげましょう。ほら、もう、立ち上がっています。こうやって弄られるのが感じるんですね。でも、まだ、前はお預けです。
「あ……あ……あ……ああ!」
最初はこのオイルの助けを借りてお尻を慰めて差し上げます。嫌がっても無駄ですよ。指を入れましょう。まず、中指をゆっくりと差し入れます。力を抜いて。そんなに力を入れると痛みますよ。ゆるむまで待ちましょうか?それとも待ちきれない?本当は、乱暴に無理矢理こじ開けられたいのですか?出し入れを繰り返していると吸い付くようになってくる。
あなたのここは本当に素晴らしい名器だ。感じる場所を探しますね。ここ?それともここですか?ぐるりと廻して探ってみましょう。感じたのですね。腰が勝手にもたがっていますよ。では、マッサージを続けますよ。分かっています。もっと欲しいのですね。でも、だめです。うんと焦らしてあげましょう。ゆっくりと。ゆっくりと。出し入れを繰り返して……。
「ふ……ふうう。くっ……」
いいですか?ああ、待ちきれないように、あなたの敏感な棹が跳ねている。辛そうですね。どうしてなのでしょうね。こんなことが好きだなんて……想像もしていませんでしたよ。もう一度オイルを足しましょうね。
「あう……うう……うっく。ふ……」
さあ、焦れないで。まだまだです。もう一本増やします。人差し指と中指で挿入を繰り返しますよ。ああ、抜こうとすると肉が絡みつくようです。体全体がしっとりと汗ばんできました。続けますよ。泣かないで……辛いですか?こうやって自由を奪われて、知らなかったときには想像もしていなかったような場所を愛されるのは。でも、今はあなたが望んだことなのですよ。ああ、脳が焼ききれそうです。あなたは綺麗だ。いつも思っていました。どうして世の中にこれほど美しく、穢れなく、神々しいほどにすべてが調和している美が存在するんのろうと。本当にあなたは私の憧れのすべてでした。私の一生をあなたに捧げ、あなたの前に額ずき、あなたの前で戦い、あなたの前で死ぬのが私の望みだったのです。……私のご主人様。私のすべてを支配する、私の絶対的な支配者であるはずのご主人様。
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「うっ。うっ。……う。うっ」
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幼い頃から従者としてお仕えしていた主人。ミルヒシュトラーゼ公爵家のたった一人の跡取り息子フランツ・フォルスト・シュヴァルツ・ミルヒシュトラーゼ・ハルトヴィック子爵は、この二年間、国王陛下の小姓として王宮へあがったきりだった。
私は、従者としての仕事を失い、フランツ様がお勤めを辞すまで、国王陛下の軍隊で、兵士としての訓練に明け暮れることになった。いずれは、フランツ様の手足となって一緒に戦場へお供することを願っていた私にとっては、主のいない館に残って内向きの仕事をするよりもずっと有意義な日々だった。
公爵家とは比べるべくも無い貧乏貴族の息子だったとはいえ、幼い頃からフランツ様のお側を離れず、常にご一緒させていただいたおかげで、一通りの教養や学問。剣や弓や馬術といったことも、どこへ出されても恥ずかしくない程度には鍛えられていたが、フランツ様をお守りするためにはそれだけでは満足できようも無い。
何年か後に、お側仕えに戻ったときに褒めていただける日を夢見て一心に文武の鍛錬に励んだ。
なじんでみれば、軍隊は私の居場所としては、非常に居心地のよい場所だった。幸いに、指揮官に恵まれたことも手伝い、いつのまにか活躍の場も増えて今年の夏に無事騎士の叙勲を受けることが適った。
もちろん雇い主であるミルヒシュトラーゼ公爵家の口添えが大きかったことは言うまでもないが。これで、私は、公爵家に戻った後も堂々と胸を張って、主のお供が適うものとそればかりが嬉しかった。従者のままでは、どこへお供するにも身分の壁が大きすぎて、ご一緒できない場面の方が多い。たとえ、誰も知らないような田舎のささやかな貴族の出だとしても騎士の身分さえあれば、王宮へお供することも可能なのだ。
だが、主人は、国王陛下の寵愛深く、なかなか小姓勤めを辞すことが適わなかった。私など足元にも及ばないほど武術にも学問にも容姿にも恵まれていた主人のことだ。たとえ尊い国王の身の回りのお世話をする誉れの仕事とはいえども、剣戟の響きも馬のいななきも無い王宮の奥深く押し込められて、きっといらいらと窓の外を飽かず眺めているのではと思われた。
あの方は、空が似合う。大鷹のように力強く自由に空を羽ばたき、その鋭い爪の元に、獲物を押さえつける方がずっとずっと似合う人なのだ。
時々は宿下がりもあり、館の方へは戻られているのであろうが、悲しき軍隊勤めでは、お顔を見に帰ることも適わない。この二年間というもの寝ても覚めても、主の姿を懐かしく思う日々だった。フランツ様が館に戻られて自分を呼び戻してくれる日を信じ、焦がれ、焦がれて待つ。
その願いがついに適えられたのは、皮肉なことに並ぶものの無い宰相として政治の世界で辣腕をふるっていたミルヒシュトラーゼ公爵の突然の死のせいだった。フランツ様は、ただ一人の跡取り息子として公爵家を継ぐために王宮を辞した。
そして、私もフランツ様の命令によって軍隊を退役して主の下へ戻ることになった。待ち焦がれていたとは言え、喪に塗り込められた館であることを思うと複雑だった。悲しみにくれているであろう主の気持ちを思うと、それ以上に。
それは、私が21歳、主であるフランツ様が19歳を迎えた夏の終わりだった。
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私は、従者としての仕事を失い、フランツ様がお勤めを辞すまで、国王陛下の軍隊で、兵士としての訓練に明け暮れることになった。いずれは、フランツ様の手足となって一緒に戦場へお供することを願っていた私にとっては、主のいない館に残って内向きの仕事をするよりもずっと有意義な日々だった。
公爵家とは比べるべくも無い貧乏貴族の息子だったとはいえ、幼い頃からフランツ様のお側を離れず、常にご一緒させていただいたおかげで、一通りの教養や学問。剣や弓や馬術といったことも、どこへ出されても恥ずかしくない程度には鍛えられていたが、フランツ様をお守りするためにはそれだけでは満足できようも無い。
何年か後に、お側仕えに戻ったときに褒めていただける日を夢見て一心に文武の鍛錬に励んだ。
なじんでみれば、軍隊は私の居場所としては、非常に居心地のよい場所だった。幸いに、指揮官に恵まれたことも手伝い、いつのまにか活躍の場も増えて今年の夏に無事騎士の叙勲を受けることが適った。
もちろん雇い主であるミルヒシュトラーゼ公爵家の口添えが大きかったことは言うまでもないが。これで、私は、公爵家に戻った後も堂々と胸を張って、主のお供が適うものとそればかりが嬉しかった。従者のままでは、どこへお供するにも身分の壁が大きすぎて、ご一緒できない場面の方が多い。たとえ、誰も知らないような田舎のささやかな貴族の出だとしても騎士の身分さえあれば、王宮へお供することも可能なのだ。
だが、主人は、国王陛下の寵愛深く、なかなか小姓勤めを辞すことが適わなかった。私など足元にも及ばないほど武術にも学問にも容姿にも恵まれていた主人のことだ。たとえ尊い国王の身の回りのお世話をする誉れの仕事とはいえども、剣戟の響きも馬のいななきも無い王宮の奥深く押し込められて、きっといらいらと窓の外を飽かず眺めているのではと思われた。
あの方は、空が似合う。大鷹のように力強く自由に空を羽ばたき、その鋭い爪の元に、獲物を押さえつける方がずっとずっと似合う人なのだ。
時々は宿下がりもあり、館の方へは戻られているのであろうが、悲しき軍隊勤めでは、お顔を見に帰ることも適わない。この二年間というもの寝ても覚めても、主の姿を懐かしく思う日々だった。フランツ様が館に戻られて自分を呼び戻してくれる日を信じ、焦がれ、焦がれて待つ。
その願いがついに適えられたのは、皮肉なことに並ぶものの無い宰相として政治の世界で辣腕をふるっていたミルヒシュトラーゼ公爵の突然の死のせいだった。フランツ様は、ただ一人の跡取り息子として公爵家を継ぐために王宮を辞した。
そして、私もフランツ様の命令によって軍隊を退役して主の下へ戻ることになった。待ち焦がれていたとは言え、喪に塗り込められた館であることを思うと複雑だった。悲しみにくれているであろう主の気持ちを思うと、それ以上に。
それは、私が21歳、主であるフランツ様が19歳を迎えた夏の終わりだった。
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「ヴァイス!よく帰ってきてくれた。待っていたんだぞ」
「ミルヒシュトラーゼ公爵閣下」
両手を拡げて近づいてくる二年ぶりに会う主人は、細身ながら背も高くなり、すっかり少年期を脱した様子だった。丸くふっくらと滑らかだった頬がそげ、影を宿している。手足にも、青年らしいほっそりとした筋肉が付き、声も柔らかなテノールに変わっていた。銀色の光る髪と、どこまでも深く青く冷たい瞳をのせた白い象牙の肌。この二年の年月は確実にお互いの上を流れていた。
そう、私自身も、もう子供ではない。軍隊で鍛え上げられた大人になった体と筋肉は、騎士たるにふさわしい服に身を包み、見違えると言う意味ではお互いに同様の立場だった。
「やめろよ。そんな呼び方」
私はちょっと眉を上げて、嫌そうに顔をしかめた彼を覗き込んだ。
「公爵閣下はお気に召しませんか?」
「ああ!ちっとも召さないね。騎士ヴァイス・シュトゥルム。ようやくあの堅苦っしくって、息の詰まる王宮を抜け出せたっていうのに、家に帰るとかつての幼馴染は三歩下がってかしこまって手も触れてこないのかい?」
腹立たしげに床を蹴りつける様子からすると、当主として戻ってきた館で使用人が示した態度によほど腹を据えかねているのだろう。
「それは、しかたありません。なんと言っても、もう子供の頃のようにはまいりますまい」
「ヴァイス!よくそれで、舌を噛まないね」
腰に手を当てて前かがみになって顔を突き出して怒っている彼の様子は、主人が二年前と変わらぬ友情を示してくれている事を十分に現していて、私を心の底から温かい思いにさせた。私は、わざと乱暴に三歩の距離を詰め、思いっきり力を込めて彼を抱擁した。
「……ヴァイス……会いたかった」
「わたくしもです。フランツ様」
ひとしきりお互いの存在を確かめ合い、お互いの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、昔と変わらない暖かな喜びに満ちた気持ちが拡がる。抱擁を解き、私が三歩さがると彼はやっと安心したように、肘掛け椅子に腰を降ろした。
私が、テーブルの上に準備された葡萄酒の封を切り、グラスに注ぎ分ける様子を懐かしそうに目を細めて見ていたが、ひょいと体を捻ると、肘掛の上に反対の肘を付いて顎をのせる。
「おまえ、軍隊を辞めてしまってよかったのか」
「フランツ様が従軍なさるときはお供いたしますよ」
グラスを渡すと、ちょっとまぶしそうに見上げてくる。
「私の言う意味分かっているだろう?」
「もちろんですよ。でも、わたくしの気持ちもお分かりでしょう?」
ひとつうなずくと、お互いにグラスを上げた。
「父上に……」
「旦那様に……」
亡くなられた旦那様には、ことのほか良くしていただいた。今、こうしてフランツ様のお側にいられるのもすべて旦那様のおかげだった。
「あまりにも急なことでした。あいにく国境に詰めておりまして、ご葬儀にも間に合いませず……」
「いいんだ。父上は分かっているさ。父上はお前のことを殊の外気に入っていたし……お前だって……」
「はい……」
しんみりとした空気が部屋に満ちた。私達は声に出すことなく亡くなられた大事な方の思い出を心に巡らせた。
「ところで、お前、書き物はすごく得意だったろう?」
「はい?」
唐突な話題の転換に、私は目をぱちくりさせるしかなかった。
「いや、片付けないといけない書類仕事が山ほどあるんだよ。もちろん、私が早く遊べるように手伝ってくれるだろう?」
「はい。しかし、家老は、どうされたのです?それに出納長らもお手伝いするはずでしょう?」
「もちろん、みんなが総出で事務仕事をやっているさ。だから、お前もやるんだ。まさか、お前、俺の服を脱がしたり、靴を磨いたりするために、私がお前を呼び戻したと思っているわけじゃないだろう?」
私は、びっくりして赤くなった。その通りのことを考えていたからだ。彼の身の回りの世話をするのは、自分の権利のように考えていた。くすくす笑うフランツ様の震える肩を恨めしげに見るしかなかった。
翌日から私は、取り上げられた自分の仕事の代わりに、彼と一緒に膨大なミルヒシュトラーゼ公爵領に付随する相続のための事務仕事に忙殺される事になった。
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山のような事務仕事だけでなく、実際の領地へ行って差配しなければならないこともある。領地には主の代わりにそういう役目を果たすため、代官や執事も任じられているのだが、どうしても直接相談しなくてはいけない場合は、フランツ様の代理として私が出向くことになった。
いつかは一番遠方のミルヒシュトラーゼ家の領地のひとつ、シュヴァルツ侯爵領にも行かなければならず、そのことも考慮して、王都に近い領地から順番に廻って行くこととなった。場所によっては二泊か三泊すれば王都へ帰れるような場所だ。そうして、何度目だったか、館を留守にして帰宅した私のところに、公爵家の館の中の実質的な切り盛りをやっている家令であるオットー・モレンツがやってきた。
「なんですか?私はまず旦那様に、今回の視察のご報告をしないとならないのですが」
「分かっております。しかし、その前にどうしてもお耳に入れておきたいことがございまして……」
かつては、ミルヒシュトラーゼ公爵家の家令である彼にとって、私はあれこれ指図を受ける使用人の一人にすぎなかった。騎士の称号を得たことによって平民である彼と貧乏貴族のはしくれにしかすぎないとはいえ、王宮にも伺候できるようになった私とでは、立場の逆転が起きているようだ。たった二年でこうなってしまったことに感慨を覚えながらも、私は旅から帰った埃だらけの体のまま、モレンツに導かれ、北側にある彼のための部屋へおとなしく案内された。
「実は、旦那様のことなのです。シュトゥルム様が立たれてすぐ、わたくしをお呼びになりまして……」
ドアを閉めて鍵まで掛けた部屋の中で打ち明けられた事実は、私にとっては青天の霹靂だった。フランツ様が、快楽奴隷を手配するようにモレンツに命じたと言うのだ。何度も行われた過去の戦争の結果、わが国にも他国から流れ込んできた多くの奴隷が存在していた。彼らは市民のその下の階層の人間として、多くは金持ちの家の下働きや王都のあちこちの工事のための労働力として使役されていた。
だが、その中でも快楽奴隷は、特殊な立場の人間だった。まず、見目が麗しくなければつとまらない。そして、その多くは性の嗜みについてあれこれと教育や調教が施されているのが常であり、場合によっては体自体も性の奴隷として加工されていることもあるといった種類の人間だった。日のささぬような屋敷の奥深くに飼われ、特殊なルートで売り買いされていると噂されているその奴隷たちは、普通の生活をしている人間の目に触れず、いない存在としてあつかわれていたのだ。
「確かに、このようなことは内密に行われております。しかし、下層の人間の情報網というものはなかなかに侮れないものなのです。主を亡くしたばかりのミルヒシュトラーゼ家が、そのような人間を館に入れたとなれば、フランツ様に耳目が集まるのは必定。しかし……」
「なんですって?」
それに、続く初めて聞く事実は、私を先ほど以上に仰天させるのに十分な話だった。この国の多くの快楽奴隷達の行き着く先は王の枕辺であるというのだ。つまりは、奴隷達は王の慰みのために消費されていると言うのである。
「フランツ様は、陛下の小姓を勤められて二年。あるいは、その間に陛下の下でそのような遊びを覚えられたのかもしれません。しかし、ご命令とは言え唯々諾々と屋敷の中にそのように怪しげな人間を召し抱えれば、なにかと評判になります。なんといっても、人一人でありますから、いつまでも伏せておけるものではありませんし……」
「わかりました……」
連綿と続くモレンツの話を聞いているうちに胸の中に黒い塊のようなものが湧き上がってきた。ここで、私がいくら主の無実を訴えてみたところで、本人が快楽奴隷の手配を命じているのだ。
なんのために?そんなことは誰だって知っている。しかし、私自身はそれを認めたくない気持ちでいっぱいだった。それなのに、それ以上の何かがあるかのように言い募られると、ますますいたたまれないような、即座に否定してしまいたい気持ちがつのってきて、モレンツの言葉を遮らずに入られなかった。確かに好色で名を馳せていた王の事。私の知りえぬ二年間の間に、なにか、なまめかしい事があったのかも知れなかった。そういうことがあるかもしれないと想像したことが無かったわけではない。だが、改めてそれを認識することは、例えようもない辛さがあった。
私は、モレンツとそれ以上の話をするのを避けて、早々にその部屋を辞した。自室に戻り、湯の支度を頼み、とりあえずは埃に汚れた髪や体をよく洗い、服を改めた。聞かねばならぬ話としても、おいそれと切り出せる話題ではなかった。しかも、私の中に渦巻いている得体の知れない感情が、私自身が冷静に判断できるような状態に無いことを告げていた。
フランツ様が快楽奴隷を買う。
その事実が私を苛んでいたのだ。私だけの主だったはずの人が、私の知らないところで、私以上に人を近づける習慣をみつけてしまったなんて。私は、唇を噛んで目を閉じた。あまりにも非論理的な自分の感情を持て扱いかねている自分がそこにいた。
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夕食の後、書斎であれやこれやの報告すませた。幼い頃からいずれは当主として領地を支配していかなくてはならないことは既知の事実だったので、フランツ様はそのための教育を受けておられる。
何の逡巡も無く次々と処理を命じるその口調にもまったく危なげも無く、出される命令も驚くほどに先を読み計算されつくした指示だった。夜も遅く、祐筆を呼ぶまでも無いという判断から,私が直接筆を取り、いくつかの命令書を作成した。すべての仕事があらかたすんだ時は,すでに深夜を廻っていた。彼は、クリスタル・グラスを二つ並べてウィスキーを注ぎ、そのひとつを私のほうへ廻してくださった。
「遅くまですまない。旅から帰ったばかりで疲れていたのに」
「いいえ、とんでもございません。ずっとこうしてお役に立つことを夢見ておりました」
私はグラスを取り上げ、その強い酒を一気に飲み干した。これからする話の内容を考えると,どうにも素面ではいられそうにも無かったのだ。
「ヴァイス?」
いつに無い私の酒の飲みように勘の鋭い彼は、いぶかしげに私のほうを伺っていた。
「どうした。なにかあったのか」
あったのです。フランツ様。私にとって、どうしても認めたくない事が……。私はうつむいたまま逡巡した。
「モレンツが……」
彼の顔色がさっと変わると、私の会話を遮るように大きく手が振られた。
「そうか、いい。それ以上いうな!」
私と同じように、グラスの中身を一気にあおると彼は、音を立ててグラスを机に置いた。
「フランツ様!」
ドサッと音を立てて椅子に座り込む。かすかに震える手で額をおおい、うつむいてしまった主人。私は、どのように言葉をつないだらよいのか分からず立ち竦むばかりだった。静寂が私と彼の間を隔てていた。こんなことは今まで無かった。どんなときでもこれほどの隔てを感じたことは……。
「フランツ様……」
彼の膝の側にそっとしゃがみこんだ。嫌がるようにそむける顔を覗き込む。彼が示す拒絶が、胸の奥にじわじわと広がって行くようだった。王はいったいあなたになにをしたのです。喉もとまで沸きあがってきた質問を口に出すまいとして、それでいて訊きたくてならず、胸が絞り込まれるようだった。
「必要なんだ」
「快楽奴隷が、ですか?」
自分で言っておきながら、その瞬間切り裂かれるような痛みに思わず呻いた。
フランツ様は、さっと顔を上げて、私を正面からねめつけた。
「そうだ!私、わたしは……」
声をあらげようとして、急激に消え入るようになった後、彼はいきなり立ち上がり、きびすをかえて部屋を出て行こうとした。ぞっと背筋を這い登ってくる恐怖。こんないさかいの後、主人から拒絶されたまま置き去りにされる恐怖が、思わず私を突き動かしていた。必死になって彼の服に取りすがった。
「フランツ様!お願いです。なぜ、わたくしを退けられますか」
「ヴァイス。お前だからこそとは思わないのか!?」
手を振り払おうとして、私の取り乱した顔に驚いたように立ち止まる。振り上げた手がぎゅっと握りしめられる。
「おまえには……。おまえにだけは……」
私はその握りこぶしをそっと捕まえた。私の主。私に死ねと命じることのできる、ただ一人の主の手だった。私は、胸に突き上げてくる説明のできない欲求のまま、その手にくちづけていた。私のほうを、ことさら見ないように目を閉じて顔を背けて震えていた彼は、やがてあきらめたかのように私の手を握り返してきた。
「分かった。寝室へ来てくれ。ここでは……話せない」
振り向かぬまま、彼は部屋を出て行った。私は、自分が分を越えて主にした事に呆然となって、しばらく動くことができずその場所に膝を付いていた。
やがて、溜息をひとつついて立ち上がると、彼の指示で書き上げられた封をされた命令書や書類を取り上げると、しかるべく処理するためにベルを鳴らして従卒を呼んだ。心は、まだ、計り知れない闇へとさまよい出ていたけれど……。
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ドアをノックして、寝室へ入るとフランツ様は酒を飲みながら長椅子に寝そべるように足を投げ出して待っていた。私の顔を見ると、もうひとつのゴブレットの方を顎で指し示し、自分も注ぐようにと促す。私も、酒の力を借りなければ話せないような気がしていたので主の指し示すままに腰掛けて、酒を注いだ。お互いに、どちらが先に口火を切るのかを探り合うような沈黙が続く。だが、結局は話し出したのはフランツ様の方だった。
「王は、多くの快楽奴隷を王宮の奥深くに飼っている……」
知っていたか?と目で問いかけてくる。私は、モレンツに聞くまで、噂にもその話を聞いた事が無かった。首を振る私を見て、彼は観念したように目を閉じた。
「責めさいなまれるのがお好きなんだ」
責めさいなむ?もちろん従者としてお屋敷に仕えていれば、ある程度の色事を見聞きする機会も十分あったし、それなりの姿をしていたせいもあって、物陰に引きずり込まれたことも無いわけではなかった。身分の高い男女が、私のように身分の低い者に対して遠慮をするわけも無く、いいオモチャにされてしまったことも何度かある。
軍隊に入ってからは、さすがにそんなことはなくなったが、代わりに荒っぽい酒場や色街での密事が日常だったので、いつまでもうぶなままでいるわけではなかった。だが、責めさいなむということの具体的な行為が、すぐに思い浮かばなかった。
だが、先を続けようとしたフランツ様の震える唇や青ざめた頬を見ていると、自分が主人にとんでもない告白を強いているのではと、思い惑わずにはいられなかった。
「王は、私を……そうしたんだ……」
急激に目の中まで赤くなったような気がして自分でも仰天する。何が起きたのかよくわからなかった。立ち上がった自分を、彼が座らせようと躍起になって袖を引いていた。我に返って、自分が怒りくるっていることが分かった。いかに国王といえども、私のフランツ様を!私の主を!快楽奴隷のようにあつかった?その内容は分からないまでも、彼の様子から察してどれほどのことが行われたのか考えると、堪らなかった。
「ヴァイス!座れ!……座ってくれ」
私は、ドスンと腰を降ろした。落ち着こうと大きく息を吸い込み、何度か呼吸を繰り返す。だんだんと霧が晴れるように赤い色が消え、世界が戻ってきた。私は両手を握りしめ、ぎりぎりと歯軋りした。
「何を、何をされたとおっしゃいました?責めさいなむとは、どういうことなのです?」
「……」
よほど言いにくかったのだろう。フランツ様の視線が定まらず、あちこちをさまよった後、首を振り、かすれた声でささやくように言葉を絞り出した。
「縛って……鞭で打つんだ」
思わず息を呑んだ。
公爵家の跡取りを鞭で打つ?そんなことはよほどのことでもありえない事態だった。
「なぜ?なぜです?何の罪で!?」
「……罪じゃない。性的なものなんだ。暴力が興奮を呼ぶ。……酷ければ酷いほどいいんだ」
私は、凍りついた。ゆっくりと彼の話すことの意味が脳に染み込んでいく。原始的な性と暴力は切り離せないものだという理屈は私にも理解できる。そして、そういう趣味の退廃を好む人間がいるということも知識としては知っていた。だが、それが国王の寝室で行われているということは、私にとっては想像もできないことだった。ましてや自分の主がそれに巻き込まれるなんて事が……。
……いや、ほんとうだろうか?主人に対し一度もやましい気持ちを抱いたことが無いと、神に誓えるのか?憧れに似た気持ちの底で、この美しい人を汚してみたいと思ったことが一度も無いとでも?
「ありとあらゆる苦痛を。体を痛めつける考え付く限りのいろんな方法を試される。それから、無理矢理抱くんだ」
私は、答えられなかった。男が男を抱く行為を知らないわけではない。それこそ、無理矢理押し倒されたことなど何度もあった。しかし、誰よりも誇り高く毅然としていたわが主が……。胸に錐を揉みこまれるような苦痛を感じる。
「もちろん私だけじゃない。小姓として上がった者はみな次々と……。だが、私は陛下にとって、ことのほかお気に入りのオモチャだったんだ。それこそ、毎日のように……」
主の二年間、固く閉じられていた結界が壊れようとしていた。
「打つだけじゃない。ひざまずかせ、懇願させるんだ。口が腐っても言えないはずのことを請い願わせられる。そして私は言われるがままに、そうした。床を這いずり、王の足を舐め、膝に取りすがって許しを請うた。泣きながら奴隷達の慰み者にされたことも……。そして、そして、それを皆に見せた。王は私を一緒に仕事をしていた小姓たち皆に鞭打たせた。なぜなら、私が、私が……皆の中でも一番、そうされることに屈辱を、苦痛を感じていたから。面白いと王はおっしゃった。私ほど見世物として面白い奴隷はいないと!」
相手が話を聞いているのか、どう思っているのかまったく考えない様子でフランツ様は言い募られた。どれほどの屈辱と、どれほどの汚辱にさらされたかを。私はあまりの事にわれを忘れた。何とかして、話を止めないと、これ以上話をさせたら心が壊れてしまいかねない。衝動的に手を伸ばし、フランツ様を引き寄せて激しく唇に唇をぶつけた。動揺しきっていた私は、あの方の唇をふさぐ方法が他に思いつかなかった。
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「王は、多くの快楽奴隷を王宮の奥深くに飼っている……」
知っていたか?と目で問いかけてくる。私は、モレンツに聞くまで、噂にもその話を聞いた事が無かった。首を振る私を見て、彼は観念したように目を閉じた。
「責めさいなまれるのがお好きなんだ」
責めさいなむ?もちろん従者としてお屋敷に仕えていれば、ある程度の色事を見聞きする機会も十分あったし、それなりの姿をしていたせいもあって、物陰に引きずり込まれたことも無いわけではなかった。身分の高い男女が、私のように身分の低い者に対して遠慮をするわけも無く、いいオモチャにされてしまったことも何度かある。
軍隊に入ってからは、さすがにそんなことはなくなったが、代わりに荒っぽい酒場や色街での密事が日常だったので、いつまでもうぶなままでいるわけではなかった。だが、責めさいなむということの具体的な行為が、すぐに思い浮かばなかった。
だが、先を続けようとしたフランツ様の震える唇や青ざめた頬を見ていると、自分が主人にとんでもない告白を強いているのではと、思い惑わずにはいられなかった。
「王は、私を……そうしたんだ……」
急激に目の中まで赤くなったような気がして自分でも仰天する。何が起きたのかよくわからなかった。立ち上がった自分を、彼が座らせようと躍起になって袖を引いていた。我に返って、自分が怒りくるっていることが分かった。いかに国王といえども、私のフランツ様を!私の主を!快楽奴隷のようにあつかった?その内容は分からないまでも、彼の様子から察してどれほどのことが行われたのか考えると、堪らなかった。
「ヴァイス!座れ!……座ってくれ」
私は、ドスンと腰を降ろした。落ち着こうと大きく息を吸い込み、何度か呼吸を繰り返す。だんだんと霧が晴れるように赤い色が消え、世界が戻ってきた。私は両手を握りしめ、ぎりぎりと歯軋りした。
「何を、何をされたとおっしゃいました?責めさいなむとは、どういうことなのです?」
「……」
よほど言いにくかったのだろう。フランツ様の視線が定まらず、あちこちをさまよった後、首を振り、かすれた声でささやくように言葉を絞り出した。
「縛って……鞭で打つんだ」
思わず息を呑んだ。
公爵家の跡取りを鞭で打つ?そんなことはよほどのことでもありえない事態だった。
「なぜ?なぜです?何の罪で!?」
「……罪じゃない。性的なものなんだ。暴力が興奮を呼ぶ。……酷ければ酷いほどいいんだ」
私は、凍りついた。ゆっくりと彼の話すことの意味が脳に染み込んでいく。原始的な性と暴力は切り離せないものだという理屈は私にも理解できる。そして、そういう趣味の退廃を好む人間がいるということも知識としては知っていた。だが、それが国王の寝室で行われているということは、私にとっては想像もできないことだった。ましてや自分の主がそれに巻き込まれるなんて事が……。
……いや、ほんとうだろうか?主人に対し一度もやましい気持ちを抱いたことが無いと、神に誓えるのか?憧れに似た気持ちの底で、この美しい人を汚してみたいと思ったことが一度も無いとでも?
「ありとあらゆる苦痛を。体を痛めつける考え付く限りのいろんな方法を試される。それから、無理矢理抱くんだ」
私は、答えられなかった。男が男を抱く行為を知らないわけではない。それこそ、無理矢理押し倒されたことなど何度もあった。しかし、誰よりも誇り高く毅然としていたわが主が……。胸に錐を揉みこまれるような苦痛を感じる。
「もちろん私だけじゃない。小姓として上がった者はみな次々と……。だが、私は陛下にとって、ことのほかお気に入りのオモチャだったんだ。それこそ、毎日のように……」
主の二年間、固く閉じられていた結界が壊れようとしていた。
「打つだけじゃない。ひざまずかせ、懇願させるんだ。口が腐っても言えないはずのことを請い願わせられる。そして私は言われるがままに、そうした。床を這いずり、王の足を舐め、膝に取りすがって許しを請うた。泣きながら奴隷達の慰み者にされたことも……。そして、そして、それを皆に見せた。王は私を一緒に仕事をしていた小姓たち皆に鞭打たせた。なぜなら、私が、私が……皆の中でも一番、そうされることに屈辱を、苦痛を感じていたから。面白いと王はおっしゃった。私ほど見世物として面白い奴隷はいないと!」
相手が話を聞いているのか、どう思っているのかまったく考えない様子でフランツ様は言い募られた。どれほどの屈辱と、どれほどの汚辱にさらされたかを。私はあまりの事にわれを忘れた。何とかして、話を止めないと、これ以上話をさせたら心が壊れてしまいかねない。衝動的に手を伸ばし、フランツ様を引き寄せて激しく唇に唇をぶつけた。動揺しきっていた私は、あの方の唇をふさぐ方法が他に思いつかなかった。
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どれほどの時間がたったのかわからない。しっかりとあの方を抱きしめていた私の腕の中で、ようやく息を吹き返したかのように身じろぎして身を起こされる。力のない指で私の胸を押し返し、どうにかしてまっすぐ座りなおそうとしていた。
「夢を見るんだ」
その声の不気味さに、私は思わず彼の顔を見直していた。
「縛られて身動きができない夢。ゆるゆると体を責め弄られる……」
彼の目は何も映していないかのように虚ろだった。それでいて紡がれる言葉は血のにじむ苦痛に彩られている。
「繰り返される苦痛と恥辱。底知れぬ快楽。そして、私はそれを、その快楽を味あう。喜びを持って……」
「ばかな!」
思わず両肩を掴んで揺さぶってしまう。
「ほんとうだ。私はその夢を乗り越えられない。どうやっても、忘れられないんだ」
それで、それで快楽奴隷を求めようとされたのですか?まさか、まさか……。それほどまでに堕ちてしまわれたのですか?自分からそれを求めようとするほどに?
「思うようにされた」
悔しそうに顔をゆがめる主。
「私は分からない。分からないんだ。自分の考えていることも、王が私にほんとうにあれを望んでいたのかということも。だから、もう一度最初からやり直してみたかった。今度は立場を代えて。そうすれば乗り越えられるんじゃないかと」
息を詰めて見つめていた私の唇から思わず安堵の息が洩れた。胸を覆う口惜しさは消えないが、彼が立ち上がろうとしているのなら、私がすることは決まっていた。
「では、わたくしを」
彼は驚愕したように、私を振り仰いだ。
「ヴァイス!だめだ」
「フランツ様。どのようなものであれ、外から引き入れれば人目を引きます。使用人の口には戸がたてられないもの。奴隷を求められるのは思い直されますように。必要ならばわたくしをお使いくださればいいのです」
「ヴァイス……お前は騎士なんだぞ。騎士にとって誇りほど大切なものは無いはずだろう?」
「では、あなたは?あなたでさえ、国王陛下の御為にその屈辱を耐え忍ばれたのでしょう?」
彼は認められないように首を振り続けた。
「お前は分かってない」
フランツ様は苦しそうに顔をゆがめ逡巡した。
「それがどんなものなのか……拘束され痛めつけられる事がどういうのなのか。それが自分をどう変えていくのか……お前には分からない。いや、分かって欲しくなんかない」
「……なぜです?」
私は、あなたのもの。最初からあなたのものなのです。
「わたくしは、知りたい。あなたが見た地獄を。そして、それを分かち合えるのはわたくしだけの特権です」
「だが!だが!私はお前にだけは知られたくないんだ。他の誰に知られてもお前にだけは……。それが、どうして分からない?」
「では、わたくしの気持ちはどうなるのです。あなたがこの家の中で、私以外の他の誰かに触れるなんて。そんな事、とても、耐えられそうにありません」
その瞬間、私ははっとして自分の口をふさいだが、出てしまった言葉は戻しようも無かった。
彼は私の目を見つめた。その白い頬はいつのまにか涙で濡れていた。私は、彼に仕えて9年この方、初めて主の泣くのを見たのだった。
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