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願い

ここでは、「願い」 に関する記事を紹介しています。


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2.別館、女性向けSMあまあまロマンス
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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
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 博人さんカムバックの声にめげずに、まったく関係ない新作になってしまいました。しかも、がんばって寝たのに、朝方見た夢は、ラストシーン。そこにたどりくまでのあれや、これや、それやを、今からでっち上げねばなりません。困った事にあれこれと頭をひねっているのですが、どうしても夢のシーンまで「えっち」じゃないかも・・・・。(ノ_-;)ハア…


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願い


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 もしかしたら自分は男が好きなんじゃないかと思ったのは高校2年の時だった気がする。
中学時代。同級生がみな、思春期に突入して声変わりし、髭が生え、毎日毎日考えることといったらえっちなことばかり…。学校の裏では、どこかから拾ってきたような、ヌードグラビアの載った週刊誌が廻されて、みんなでおでこを引っ付けるようにして覗き込む。そんな時。なんでなのか分からないないけれど、いまいち乗り切れなくって、反応しない「息子」に疑問符のオンパレ。
 でも、自分はきっと「おくて」なんだろうと思っていた。同級生は、次々と女の子に愛を告白したり、派手にふられては落ち込んだり、バレンタインデーにチョコをいくつもらったといっては盛り上がっている。俺だってチョコぐらい義理も含めて結構もらったけど、友達が騒ぐほどには嬉しくなくって…。そんな時、なぜ、自分は好きな子が出来ないんだろうとちょっと淋しく思っていた。
 いつかは、いつかは、運命の女性にめぐり合って、大恋愛して結婚して…そんなありえないような夢こそは描いてなかったけど、学校帰りの公園の裏でちょっと手を握ったり、できればキスしたりしてみたい。そういうささやかな出来心はしっかりと持っていたはずだった。
 だけど、そういった浮ついた状況には一度も会うこともなく、そのまま高校へ進学した。バリバリ進学のための男子校で、右を見ても左を見てもむさい男ばかり。これは、このままのんきにしていたら「おくて」の俺なんか、童貞のまま卒業というはめになりかねないのがありありだった。だからと言ってすぐに状況を変えられるほどにまだ大人じゃなくって。まぁ、そのまま悶々と日を重ねるのが精一杯。
 そしてある日突然、気が付いた。放課後の図書館でぼんやりと外を見ている時に。毎日、図書館に残って勉強をしている時に、自分が何を見ているのかを。無意識のうちに追っているのは、校庭を走り回るクラブ活動で運動に熱中する同級生や上級生の体。汗にまみれ、エネルギーを発散してぶつかり合う体をみつめているうちに、ペニスがゆっくりと固くなってきて、俺を唖然とさせる。
 なんでだ?俺そんなに欲求不満だったっけ?最初は、見ているもののせいだと気が付かなかった。だが、回を重ねるうちに否が応でも気が付かずに入られなくなる。
 それだけじゃなかった、教室でふざけあいじゃれあう最中に、ふっと汗の臭いを意識した時、急に自分の体が熱くなり反応しているのに気が付く。知られたくなくて、体勢を変えたり、急いでトイレに行ったりしているうちに、自分に何が起こっているのが分かってきた。俺、同級生に欲情してる……。 
 誰が好きだとか、特定の相手がいるわけじゃなかった。ありていに言えば、反応するのは、誰でもよかった。顔を見ているわけでもない。ほんのちょっとの接触と自分の位置を意識した途端にわいてくる唐突な欲情に俺は困惑した。なんなんだ。これ、絶対におかしいって。ありえないだろう。いつまでも女を知らないまま、たらたらと過ごしているせいだ。俺はまっとうな道に、戻りたくっておおいに焦った。だが、男子校じゃ女と知り合うそんな機会も皆無だし、駅で出会う他校の女生徒を血眼になって眺めてみても、ぴんと来る相手がみつからなくて、うろうろするばかりだった。
 それに、夢を見る。ほら、もうやりたい盛りだからさ。自分で始終やっていたって、やっぱり夢精したりするわけ。その時に見る夢が、男のたくましい腕だとか、盛り上がった肩だとか、広い背中にしがみついているところだったり、誰だか顔はわからないんだけど、男に押し倒されてそこを握られる夢だったりして…。
 ヤバイ、俺ってホモ?そう思うとわれながらげんなりして、むきになって否定せずにいられなくなって。大丈夫。ホモだったら、その辺の野郎を好きになっているはずだ。そんな気配はまったく無いし、男も女も好きな奴いないんだから、やっぱ俺って「おくて」なんだよ、とか、そんなそしょうもない理由にしがみついてみたりしていた。
 大学に進学が決まって、上京した時。俺は、せっせとバイトした金を握ってヘルスに言った。とにかく童貞を投げ捨てて、女ってどんなものか知れば、そこから開ける道があるはずだと思って。何しろ場慣れしてないからめちゃくちゃ緊張して、並んでいる写真の中から、適当にかわいく見えるような女を選んで、個室に入った。
「初めてなの?」
「はい……」
 どう見てもはるか年上にしか見えないおばさんに指示されて服を脱ぎ、シャワーを浴びると、慣れた手つきで掴まれた。何しろ他人に握られるのも初めてだったし、自分でするより格段に気持ちがいい。ローションを塗りたくってしごかれるとあっというまに…あっというまに…勃たなかった。俺は焦った。相手の女性も顔をしかめる。
「緊張しているのね」
 にっこり笑って、軽くお絞りで拭うと相手が俺のそこにかがみこんだ。ぬめっ、とした柔らかい口の中にあっという間に俺のそこは吸い込まれた。軟体動物のようにぬめぬめとしたなにかが絡みつく。俺は、あまりの気持ち悪さにびびっていた。
 「やっぱり」というあきらめの感情と「どうして」「まさか」「なんとかなるはずだ」という未練たらしい気持ちが交錯する。
 だが、だんだんと胸の底に冷えた塊のようなものが出来てきて俺は認めるしかなかった。気持ち悪い。だめだ。どうにもならない。こんなんで、勃つわけがない。
 俺は、黙って相手の女性を押しのけた。
「あん。なにするのよ」
「ごめん。疲れているのか上手くいかないや。今日はもう…帰る」
「ええーっ」
 女性は、怒ったように、困ったように、そして軽蔑を隠し切れないように、横を向いて舌打ちをした。




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 自分が女の子に欲情しないってこと実を認めるのは、結構しんどい経験だった。もしかしたら、もしかしたら…。そう思い惑いながら、大学生活を送った。周囲はきゃぴきゃぴの女子大生がわんさか。今度こそ選り取りみどりのはずが、ヘルスの経験が俺を臆病にさせてた。だが、それだけじゃなかった。明らかに、はっきりと、ごまかしようがなく、男の方が気になる毎日。やっぱ、俺ってホモなのか…。
 同級生の体に欲情したって、触わる訳にもいかないのは高校時代と同じだった。女の好きな奴はどうしているんだろう?周囲を見回すと、自ずとその原因も分かるような気がする。男と女の間には、ある程度の距離が存在するのだ。親しくなればだんだんと近づいてくるけれど、たいていはそんなにくっついて話したりするもんじゃなかった。
 それが、男同士だとまったく警戒もなく寄ってくる。話しかけているうちにだんだんと体も近づいてくる。あっという間にお互いの距離が1メートルを切る。そして、絶対に触っちゃいけない、触わりたいと思っていることを絶対に知られちゃいけない、そういう禁忌が、かえって気持ちをあおるのだ。
「ああ、こいついいな」「なんていい奴なんだろう」
 そう思う相手が現れてくると、ますますいけない。何しろ、目の前にぶら下がっているのに絶対に食べられないんだから
 そんな毎日を過ごしていると、だんだんと欲求不満がつのってくる。それに、触ったことないからどんどん妄想がふくらんでくる。ほんとに触った時、どんなになるんだろう。どんな感触なのか。どんな気持ちなのか。相手が触ってきたら?相手が俺のこと触ってきたら?そんなことありえないと思っているだけに、もし、相手が俺をホモだってこと分かっても、受け入れてくれるという想像は苦痛なほど俺を刺激した。
 結局俺は淋しかったのかもしれない。…誰も、本当の俺を知らない。誰も本当の俺を受け入れてくれない。絶対に、絶対に、隠して生きていかないといけないってことが。
 そんな時、ほんの偶然から、その映画館のことを聞いたのだ。学食で食事をしていたら、横に来た男5人のグループがその映画館の話を始めたのだ。場末のちっちゃな映画館。いつも、えげつないポルノ映画ばかりかかっているピンク映画館…。そこへ行くとホモが溜まっているそういう噂だった。
「触ってくるんだぜ」
「げげっ!ほんとか?お前、触られちゃったの?」
「いや、俺は触られなかったけどさ。後ろの方に座っていたんだそしたら斜め前に座っていた男の側に、別の男がすっと来て、それもさ、ガラガラなのに横に座る訳で、しばらくしたら、なんかもぞもぞやっているから、俺、つい、見ちゃったんだよ。そしたら、ズボンに手をかけて脱がしてるんだ」
「げげげっ!キモッ!触られた奴どうした?」
「それがさぁ…俺がちょうどそっち見た時。その男も腰を上げて、脱がせるのに協力しているんだぜ」
「ひえーっ!おかまの世界じゃん」
「あ?おかまじゃないんだよ。普通の男」
「男同士なんだからおかまじゃん」
「ちがうってば!何の変哲もない男。その辺にいるような男。むさい男。分かった?」
「たまたま変態に行き合わせたってことなんじゃん」
「いやそれがそうじゃないんだよ。俺、びっくりしちゃって、固まって、映画よりそっち見ちゃったわけ。それで、焦ってどうしようかと辺りを見回したらさ。一番後ろの通路で立っている男がいてさ、そしたら、そこへ別の男がやってきて…」
「え?え?一組じゃないってこと?」
 しゃべっている男はコクコクとうなずいた。俺は掌がじっとりと汗ばんでくるのを感じた。食べているものに集中する振りをしながらも、耳はすっかりその話に夢中になっていた。
「で、最初の男は立ったままで、後から来た男がその男のズボンを…」
「うわー。うわっ。うわっ。うわっ」
「すげえじゃん。露骨。それ、みんなに見えているんだろう?」
 俺はもう、食べることもできずに目の前の皿を食い入るように見つめていた。心臓の音がドキドキと耳の中で鳴っているような気分で、もうどうしたらいいんだか。その時、同じゼミを取っている緒方という奴が後ろから俺の肩を叩いた
「ひっ!」
 自分の中にすっかりと入り込んでいた俺は、飛び上がった。変な声を出したので、その5人グループも、話をやめていぶかしげにこっちを見ている。緒方はそれ以上にびっくりして
「どした?」
と、かがんで俺の顔を覗き込んでくる。
 俺はこの男にちょっと好意を感じていた。やめろ。近づくなよ。心の中で呻きながらも、笑って首を振って見せた。映画館の話も驚いたけど、それよりもその5人の男達の口調が俺にとってはショックだった。あからさまに汚い物の話をするような、軽蔑した馬鹿にするような口調。
 そう、怖れていた通りなのだ。俺は現実を突きつけられたような気がした。俺がホモってことは誰にも知られちゃいけないのだ。もし、気付かれたらあっという間に噂が広がり学内で何を言われるか…どんなひどいことになるか…。そう思うと暗い気持ちにならざるをえなかった。
 だが、落ち込む気持ちとは裏腹に、その映画館に行ってみたい、という気持ちも確かにあった。行ってみても、いつもそんなことが行われているわけじゃないだろう。でも、もしかしたら…そういう風景を見られるかもしれないそう思うと、好奇心が押さえられなかったのだ。悶々と、一週間ほど悩んだ後で、ようやく俺はその映画館へ行った。さも、ポルノ映画を見る振りをして。だが、何しろ、ポルノ映画館へ行くのも初めてなのだ。切符を買う声は妙にうわずり、金を払う手は震えていた。
 それが、俺がハッテン場と言われる映画館へ行った最初の日だった。
 場内は、すでに何かが上映されていた。暗幕をくぐって狭い場内へ入ると、正面のスクリーンには男と女が向かい合って酒を飲みながら話す様子が映し出されている。座るよりも後ろに立っていた方が場内を見渡せると考えた俺は、入ってちょっと横へ移動しただけで、一番後ろの席の背もたれにもたれるようにして立っていることにした。
 人はまばらで、前のほうには足を投げ出して映画をぼんやり見ているような男たちがポツリポツリといるくらいだった。画面ではモザイクのかかった絡みが展開して、俺は何の感動もなく画面を観る振りをしながら、その実、神経をぴりぴりと張り詰めていた。そう、顔は正面向けていたけど、出来る限りのアンテナを張り広げて、館内の人間の動きを感じとろうとしてたのに、俺にはその男がどこから現れたのか、まったく分からなかった。
 はっと気が付いた時、もうすでに男は、俺に寄り添うように立っていた。背中にじんわりと温かみが伝わるくらいの距離。館内はがらがらに空いているんだから、男がそこに立つ理由は明らかだった。
 俺は、硬直したまま動きが取れない。後ろに立っている男は掌を広げて、下から俺の尻にぴったりと押し当ててきた。触れるか触れないかの絶妙な力加減で、ほとんど触っていないようなのに、その広げた掌を尻の丸みに剃ってゆっくりと動かされると、恐ろしいほどの気持ちよさが襲い掛かってきて、俺は手を載せていた背もたれを必死に握りしめていた。
 膝が震え、立っているのもやっとの有様。なんせ、男に触られるのは初体験。それが、顔も知らず、言葉も交わしたことのない見知らぬ男っていうのが悲しかったが、他にどうしようもないのが現実だった。
 俺は、もう映画を見る振りもできず。ただただ、床を見つめて震えているばかりだった。後ろから触ってきた男は息も乱さず、慣れた手つきで尻の表面をいつまでも撫で回してくる。口の中が干上がり、その反対に冷や汗はだらだらと俺の顔を伝わって流れ、眼を開けていられなくなってくる。




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 俺は、目を瞑った。ただ、感じるのはしがみついている映画館の座席の背と尻を撫で回している相手の手の感触だけ。焦るそぶりも無く、興奮する様子もなく、同じペースで、さわさわと撫で回されて、俺のほうは初めて他人の手で撫でられる快感にどうしていいか分からなくなっていた。
 今、思い返すと、彼の触り方がどれほど上手かったかよく分かる。俺のあそこはもうすっかり昂ぶりきって、窮屈な服の中でびくびくと存在を象徴していた。もっと強い刺激が欲しくて、じれったさともどかしさにどうにかなりそうなのに、相手がやめてしまうのではと思うと動くこともできない。高い岸壁の際をいつまでも歩かされているような刺激に、俺はすっかり魅せられてしまっていた
 後ろの男がじんわりと体を寄せてくる。固くなったペニスを、服越しに腰に押し付けられた。俺より背が高い。彼の左手が、座席の背もたれを握りしめている方の肩に乗せられたと思うと、尻を触っていたのと同じ、触るか触らないかの位置を保って撫で下ろされた。
 ぞわっと、背中が総毛だって俺はちょっとのけぞった。彼の手は俺がしがみついている座席の隣の座席の背をつかむ右手が、ようやく撫で回していた尻から腰骨を伝わるようにして前へ移動し始める。だが、まだ行き着かない。腰と足の付け根のくぼみをゆるゆると移動しては急に太腿へ滑り降りる。たまらず俺は相手の体に尻を押し付けそうになって、はっと引き戻すことを繰り返してしまった。
 もう、すっかり、彼の体に囲い込まれていた。頭が覗き込むように傾げられながら降りてきて、唇が耳のそばまで来る。暖かな吐息が耳にかかると、とうとう俺は、耐え切れず相手の腕の中から逃れようとした。太腿を撫でていた手が俺の腰を捉えるとギュッと抱き寄せられる。
「初めてなの?」
 呆けてしまった俺は相手の質問の意味が分からなかった。それだけじゃない。その低くて暖かい落ち着いた声にショックを受けた。学食の食堂で想像していた、映画館で見知らぬ男の体を触る男というイメージからはかけ離れた相手の声。暖かく、低く柔らかく、落ち着いていて、安心させてくれる声。
 なぜか、その声にすっかりと捉えられてしまった俺は、彼の左腕に自分の手をかけて腰をしっかりと相手に押し付けてしまっていた。応えようと唾を飲み込んだが、思ったように声にならず、うなずくしかできなかった。
 相手の手は太腿の上を外側から内側へS字を描くように撫で回しはじめた。俺は彼に囲われて身動きもならず、必死で左腕につかまっているしかない。目を瞑ったまま、ゆるく首をふりつづけた。彼は太腿にいつまで時間をかけるつもりなんだろうか。立ち上がったペニスがびくびくとその存在を主張しているのに、彼はあからさまにそこを避けるようにきわどい所を何度も何度も撫でさすっては離れていく。俺はついに耐え切れず相手に懇願してしまう。
「もっと…」
「もっと、なに?」
 なんで?分かっているのに言わせるつもりなんだ。突きあがってくる喘ぎを押し殺しながら俺は言葉を継いた。
「前を触って」
 手は腿の前面部分を上下し始めた。くそっ。こいつ、解っていて、焦らしているんだ
「違う、ペニスだよ。触って」
 つい、尖った声を出してしまい、慌てて口をつぐむ。その様子を見て、くすくす、笑った彼は、ようやく手をズボンの前のほうへ移動してきた
 掌で覆うようにしてやんわりとその掌を足の間へ向けて差し入れていく。それからまたもとの位置へ。そこまできても彼は強く手を押し付けようとはしない。俺は尻をぴったりと彼の腰に押し付けて、そのもどかしい拷問に耐える。彼の固いそれが俺の尻の間にごりごりとあたる。
「あ…」
 我慢しきれなくって、声が漏れた。
「いい?」
 うん。すごく。心の中で呟きながら右手で顔を覆った。彼の右手は俺の玉袋の辺りをおおって揉み始める。左手が座席の背から離れて、棹の辺りを擦り上げる。焦らすようなさっきまでの刺激と違い。確実に感じさせようとしていた。俺は歯を喰いしばって喘ぎを押し殺そうとした。
「みんな見ているよ」
 ぎくっ俺は、あっという間に正気に引き戻された。目を開けると、自分がいるのは映画館の中。目の前では一生懸命やりまくっている男女の映像そしてその画面の明かりに照らされて男に抱きしめられて前を擦りたてられて喘いでいる俺の姿は、場内の客の前にはっきりと見えているのだった。
 何人もの男達が、あからさまに振り返って俺を見ている。焦った俺は手を振りほどいて相手の懐から逃れようとした。俺がそうするのが分かっていたように両手はギュッと体にまわされて俺を抱きしめた。
「待って、動かないで」
 抱きしめられると、俺は、固まったまま、どうしたらいいか分からなかった。最初からこんな急な展開になるなんて予想してなかった。でも、そう、こうなることを望んでいたことも事実だった。俺を抱きしめていた手が少しゆるむと、俺がそれ以上抵抗しないのを確かめてから、シャツのボタンを外し始めた。俺は目を見開いて顎を震わせながらも、前の座席だけを見つめて、じっと相手がするままに任せた。
 頭の中はまっしろだった。顔も知らない男に体を触られている様を、これまた顔も知らない男達の前にさらけ出しているのだ。男はまったく焦らないで、ひとつずつゆっくりとボタンを外していく。ズボンの中にたくし込まれている部分まで来ると、開かれたシャツの合わせ目から手を滑り込ませる。下に来ていたタンクトップを、たぐるようにめくりあげ、彼の手は俺の素肌を捉えた。むき出しにされた胸や腹を撫で回される。俺は大きく息をつきながら相手の腕にしがみついていた。
「ズボン、脱がせてもいい?」
 さすがに必死になって首を振った。見世物になっているのに、そこまでやれないだが、相手はそんな俺の反応をあやすようにしてベルトのバックルを外す。カチャ。と、いう金属音が周囲に響き渡った様な気がした。コットンパンツのボタンもあっという間に外されてしまう。彼の人差し指がチャックの合わせ目をゆっくりと上下する。
「チャック、下ろすよ」
 いやだ。首を振る。首まで赤くなっているのが分かった
「下ろすよ」
 彼の手がからかうように上下を繰り返す。俺はその刺激に爪先立つようにして膝をつぼめずにはいられない。
「下ろすよ」
 人差し指と親指がチャックの金具をつまんで、ジジジ…とチャックは恐ろしくゆっくりと下りて行き始めた。嫌なら、抵抗すればいい。そんなことは簡単だ。相手が押さえつけている腕は、頼りないほど力を込めていない。相手の声だって俺ほど我を忘れているわけじゃなかった。確かに昂ぶってうわずっているようだったが、それでも、まだまだ落ち着いていた
 つまりは、そういうわけ。俺は自分で望んで、そいつが俺のコットンパンツを引き降ろすのにまかせたんだ。



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 男はコットンパンツと一緒にブリーフもずり下げた。すっかり勃ち上がってゴムの隙間から顔を覗かせていたペニスは、ピンと勢いよく顔を出した。服は尻の一番盛り上がったところにかろうじて引っかかっている。玉袋の下へ手を差し込んで引き出して、どこもかしこも自由にさわれるようになると、男は、それ以上無理に脱がさないで後ろから抱きかかえるようにして握りこんだ。
 あちこち撫で擦られたせいで、もう先走りがたらたらと流れ出ている。それを手で掬い全体に塗り拡げるようにしながら擦られる。手コキなんだから、自分でやるのと同じだと思っていたら大違いだった。他人の手ってどうしてこう気持ちがいいんだろう。さっきからの触り方といい、男が慣れていてうまいっていうのもあったけど、それだけじゃ説明のつけようが無いほどいい
「腰から下は座席で見えないから…」
 俺が周囲の視線を気にしているのを知ってか、ちょっと笑いを含んだ声で囁いてくる。てめえが先に意識させたんじゃないか。と、文句を言いたかったが、あそこを握りこまれていては、どんな反抗もできそうになかった。

 亀頭の先を握りこむようにしてくりくりと撫で回したと思ったら、棹を握りこんで擦る…ゆっくりと強弱を付けながら徐々に速くなる…快感に脳が痺れるほどに高まると、ぱっと手を離すと今度は袋をやわやわともみしだく。
 何度もそれを繰り返されて俺はもう息がつけないほど翻弄されていた。玉がきゅっとあがってきて、なじみの感覚が突き上げてくる。いく……そう、思った瞬間、男に根元をぎゅっと握りこまれた。せき止められたそれは行き場を無くして逆流するかのようだった。棹がびくんと跳ねてから打ちをする。
「うっく」
 前かがみになって、歯を喰いしばってその感覚が納まるのを待つしかなかった。すると、今まで後ろから抱きこむようにしていた男がするりと位置を変えて俺の前に膝を着いた。あっと思ったときには銜え込まれていた。
 ぬめっ、としたなにかの中に吸い込まれていくそれ暖かく弾力のある濡れたものの中にぴっちりと銜え込まれたまま、俺は呆然としていた。彼が、俺の腰を抱きかかえたので、俺の向きは変わり、左手だけで椅子の背につかまる。背筋をぞくぞくとした震えが這い上がり、膝ががくがくする。ぬめぬめとしたものが俺のそれに絡みつき吸い上げ、固いものでこすりあげてくる。何が起きているのか、何をされているのか考える暇も無くあっという間に俺はもみくちゃになって急坂を駆け上がり、今度こそぱっと弾けた。
 理屈では分かっていたつもりなのに、男の口の中に射精してしまったという事実は、俺を愕然とさせた。男は、まったく動じないで俺の精液をごくりと飲み干すと、次のしぶきもあっさりと嚥下してしまい、ぬちゃぬちゃとしている俺のそこを舌で綺麗に舐め取ってくれた。
 そして、ものすごく敏感になっている先っちょを、何度か舐めあげて、俺に呻き声を上げさせておいてから、取り出したハンカチで、きれいにぬぐうと下げてあったブリーフとコットンパンツをさっと引き上げボタンを留め、ベルトを締め上げる。
 今までじれったいほどゆっくりと進められた愛撫と裏腹に、仕舞い込まれるあまりの手早さに、俺が呆然と相手のその手の動きを見つめていると、ぱっと場内が明るくなった。映画が終ってしまったのだ。
 膝まずいていた男は、さっと立ち上がると口元を手の甲で拭い、急いで俺の手を握ると、引っ張って映画館の外へ連れ出した。俺は、頭の中がショートしてしまっていて、相手のなすがままによたよたと付いていった。
 映画館から出ると100メートルほど歩いてから、横道にそれた。そして、男はようやく振り返って俺の顔を見た。思っていたよりも若々しい笑顔。30前後というところだろうか?確かにそれなりに垢抜けていたけれど、ごく普通にその辺を歩いている男、ボタンダウンにジーパンを穿いたどこにでもいるような男だった。彼は、俺の顔をまじまじと見ると、にやっと笑った
「また、来る?」
 俺は、まだ、頭が働いていなくて、ぽかんと口を開けて、さっき俺のアレを銜え込んでいたはずの相手の口を見つめていた。
 男は困ったように首をかしげると俺の腰に取り付けられていた携帯をさっと手を伸ばして取り上げた。パチンと目の前で画面が開かれる。俺が自分の携帯が相手の手に握られているという事実に気がつく前に手早くボタンが連打され、さっと目の前に差し出された。電話帳に携帯番号とアドレスが記入されていた。
「気が向いたら、電話して」
 パチンと携帯を閉じると、また俺の腰へ戻す。男はさっときびすを返すと、特に急ぐふうでもなく大通りへと、大股で歩き去って行った。ただ一度だけ、角を曲がる時に振り返ると手を降って見せた。



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 もう、二度と行くまい。そう思ったのはほんの少しの間だけ。「場末の映画館で、見知らぬ男に触られて、脱がされて、フェラチオされた様子を何人もの男達に見られた」こう考えると、いたたまれないほどの異常なことのはずなのに、驚いたことに日が経つにつれすごく自然な行為だったような気がしてきた。
 自分の精神構造にあきれたって仕方ない。初めての経験は、すっかり俺を魅了してしまった。その時の様子を思い出して。自分で同じようにやってみたって、その時に感じた興奮や快感ほどにはよくない。二週間もたつと、俺はもう一度映画館へ行くための言い訳をあれこれと考える始末だった。
 物も言わずに触ってきた男が、思っていたよりもずっとさっぱりとした笑顔で、手を振って角を曲がって行った様子が目に浮かぶ。電話してみようか。何も考えず、もう一度映画館に行くと、今度はどんな奴が触ってくるんだろう。待っているものがなにか分かった後は、やっぱり相手がどんな男なのか気になってしまう。それぐらいだったら、もう一度彼に…。そう、すごくうまかったと思う。俺に何も考えさせず、あっという間に行くべきところへ連れ去った。
 たまたま、休講が重なりぽっかりと開いた午後。日にちを考えると二週間前の同じ曜日。もしかしたら…と、思って携帯電話に電話した。世の中そんなに甘くは無く、お留守番センターにつながれちゃって、そういう展開を考えて無かった俺は何も言えず、ためらった後に電話を切った。決心がつかず、ウロウロと思い惑った挙句、夜になってしまった。思い切って映画館へ足を運ぶ。知らなかった時よりもためらいが大きいのはなぜなんだろう。切符売り場の前でもまだ迷っていた。
 その時、携帯が鳴った。サブ画面の上に瞬く名前に目を見開く。セイイチさんからだった。
「もしもし…」
「もしもし。ええと…。もしかして映画館で会った君かい?」
 何のメッセージも残さなかったのに、しかも、誰だかわからなかったのに、それでも、もしかしてと電話を掛けてきてくれたことが俺にとっては、すごく嬉しかった。いまどき誰も携帯へ掛けてくる見知らぬ番号へ掛けなおしたりしない。
「セイイチさん?俺…そうです。二週間前に」
「やっぱり。よかった。電話くれないかなって、待っていたんだよ。今、どこにいるの」
「あの、映画館の前に……」
 何だか、すごく恥ずかしかった。一瞬の間が空いてセイイチさんの艶っぽい笑いが聞こえた。
「ふうん。もしかして、俺、よかった?」
 俺は携帯電話に向かってうなずいた。相手からは見えてないのに、なにしているんだろ?すっかり、あがってしまっていた。
「また、映画館に入りたい?」
「ええ」
 唾を飲み込んでうなずく、今度は声が出た。今までの人生でこんな言葉使ったことも無かった気がする。
「だれでもいいの?それとも俺のこと指名してくれるのかな?」
「セイイチさんが…いい」
「俺か来るまで待てる?それとも…よかったら、俺の部屋にこない?」
 びっくりした。こんなにすぐに部屋へ誘われるなんて。この人、警戒感が皆無なんだろうか。
「ギャラリーがいる方がいい?」
「…部屋へ行きます」
 また、低い笑い声がして、セイイチさんは、ひとつ手前の駅の東口で待っているように言った。
「君、名前はなんていうの?」
「お、折原です」
「それは、苗字。名前は?」
「樹です」
「そう、いつき君だね。じゃ、15分ほどで行けるから」
 電話を切ると、俺は相手よりも自分に対して呆れていた。ほんの短い時間、路地で顔を突き合わせた相手の部屋に行こうとしているのだ。相手はもう、俺の携帯番号も名前も知っている。他人の警戒感なんて、笑えなかった。
 それでも、まっすぐその駅まで行った。セイイチさんは、もうすでに来ていて、俺の顔を見ると屈託無く手を振って笑った。紺色のスーツ姿だった。会社帰りに違いない。
「飯、食った?」
俺が首を振ると、セイイチさんは、駅前の定食屋を顎で指した。
「晩飯食って行こう。おごるよ。いつきは、学生だろ?」
セイイチさんは、さりげなく俺の腕をうかんでうながした。俺は、ふらふらと彼の後を付いていった。
 定食屋で、彼はしょうが焼き定食をごちそうしてくれた。飯を食っている間、俺たちは当たり障りの無い、会話を交わしたどんな歌手が好きかとか、どんな映画を見るかとか、要するにどうでもいいようなこと。そしてコンビニでビールとつまみを買って、駅から歩いて10分ほどの彼のアパートへ行った。彼の部屋は三階で、俺は表札を見て、初めて彼の名前を知った。
 八代誠一。
「入れよ」
 玄関の鍵を開けると、彼は俺を部屋へ誘った。


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 アパートの中は、トンネル状に三部屋の続く、よくある二DKだった。部屋は、考えていたよりも綺麗に片付けられていた。と、言うよりもガランと何も無いっていうのが正解なのか?台所にダイニングテーブルと冷蔵庫とスリムな食器棚。奥の和室にはテレビ。カーテンこそ下がっているけど家具といえそうな物はそれくらいだった
「部屋に帰っているの?」
「ははは…。寝る時は帰っているよ。片付けるのが嫌いなんだよ。だから、何も置かないんだ」
 彼は、押入れを開けるとそこから折りたたみ式の座卓を出してテレビの前に置いた。買ってきたビールとつまみの袋を乗せる。押入れの反対のほうには、中には下段に布団が上段には服が入っているようだった。今、彼が開けた側には上段には棚のような物があって、カゴが並べられている。彼はポケットの中の物をそのカゴのひとつに全部入れ、腕時計も、携帯電話も全部放り込んだ。
 それから、スーツを脱ぎながら、風呂場のほうへ行く。そうか、押入れの中に全部入っているのか。真ん中の部屋の何も置かれて無い和室の押入れも、きっとこんな感じなんだろう。足の踏み場も無いような俺の部屋とはずいぶん違う。
「座っていろよ。お湯張ってくるから」
 まず、最初に風呂を入れるってことは、やっぱり「する」つもりなんだろうな。わざわざ部屋に呼んだんだし、最後までいくだろうと考えるのが自然のような気がする。部屋に誘われた時に、もうそのことは分かっていたけど、だんだん現実になってくるとちょっと心配になってきた
 男同士だとアナルセックスするっていうのは知っているけど、実際にどうやるのかまったく知識が無い。ほんとに、そこまでやれるかどうか、全然想像も出来なかった。だが、前回映画館の時、彼が一方的に「やって」くれるのにまかせてしまい、彼は結局いかずじまいだった。だから、今日は俺もちゃんとお返しせねばなるまい…と、それだけは思いつめていた。
 俺に、男のペニスを咥えられるかどうか…?
 驚いた。咥えたいような気がする。正直、くらくらするほど興奮してきた。彼のそれを触って口にする。改めてそのことを考えているうちに、もう、座っていられないような状態になってきた。戻ってきた彼は向かいに座るとネクタイを外しながら、ビールの缶を開ける。一つ目を俺の前におくと、もうひとつも開ける。
 そして、俺の顔を見ると、不思議そうな表情になって、それからすぐに俺のそこへ視線をやった。そして、にやっと笑うとにじり寄ってきて、手を伸ばしてズボンのボタンを外し、チャックを下ろしてくれた。そして「気にするな」と、言うように、そこを二回撫でると、また元の場所に戻ってビールを飲み始める。
「いつきは、映画館は初めてだったんだろう?」
 壁に寄りかかって、風呂を洗う時に濡れてしまったらしいシャツの腕をまくりながら聞いてきた。
「映画館も、男も初めて」
 誠一さんはびっくりして顔を上げた。
「そうなのか。高校時代とかなにも無かったの?」
 うなずくと、誠一さんはちょっと困ったような顔をした。

「もう、ぶっちゃけ聞いちゃうけどさ。今から風呂に入って、そしたら、この間の続きをやるつもりだったんだけど…初めてなのに、ほんとに映画館で一度会ったきりの男に押し倒されてセックスされてもいいのか?」
 いいのかって、言われても。その男とセックスする目的で、この部屋へ来ているんですけど…。真面目に聞いてくる彼の顔を見ているとなんだかおかしくなって、緊張が抜けてきた。
「上手くいくかどうか、わからないけど、やりたくて来ているんだから教えてよ」
「やりたいってことは、いつきは男が好きってことだよね。のんけってわけじゃないんだな?」
「のんけ?」
「映画館に来る奴の何割かはのんけなんだよ。ただ、触られてやってもらうのが目的の奴。くわれのんけって言うんだけどさ。いつきはこの間、まったく、されるがままだったから、そうかもしれないと思っていたんだ」
「違う…と、思う。俺、女はダメだから」
「そうか」
 誠一さんは、ぐいっとビールをあおった。
「で、どっちがやりたい?」
 ぽかん、と、口を開けて彼を見てしまったような気がする。彼は、くすくす笑って嬉しそうに体を揺すった。
「やるほうか。やられるほうか。どっちがよさそう?」
 やるほうか。やられるほうか。え?なんだって?そう言われて初めて、自分が常に掘られる立場にあるという考えは間違いだってことに気がついた。ちょっとうろたえて、ビールをごくごく飲み干す。
「えー。考えてなかった。誠一さんはどっちなの?」
「うーん。俺はどっちでも。リバだから。同じ相手でも両方やるかな。もう、決まっていて、タチしかやれない奴とか、ネコしかやれない奴とかもいるし…」
「ネコって、受けのことだよね…初めてでも、ネコってやれるの?」
「まあ、誰でも初めてはあるからな」

「じゃ、今日は、この誠一さんがやさしくお尻を拡げてやるよ。一回経験しとけば、無理矢理やられたらやばいとか分かるようになるし」
そう言うと誠一さんは、押入れを開けて、イチジク浣腸を出してきた。ポンと俺の手の上に乗せる。
「先に風呂入っているからやっといて」
 そう言うと、彼は、押入れの反対側を開けて下着を取り出した。それから洗いざらしのバスローブを放って来る。風呂場に消える彼の背中を見つめて、それから俺は手の中の箱をひっくり返した。やり方は書いてあるんだろうな。やれやれ、考えてもいなかった世界が次々と押し寄せてくる。いったいこれからどうなるんだろう。




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 初めての夜は、驚きの連続だったように思う。風呂から上がると真ん中の部屋に布団が二つ、くっつけて並べて敷かれていた。布団の横に座卓は移動していて、その上にスキンだの、ローションだの、ティッシュだの、タオルだのが並べられている。
 そんな道具を見ると「その気になったからってすぐさま押し倒すわけにもいかないんだな」と、思えてきて、なんだか「男同士って、考えていたのと違う」と、不思議だった。
 こんなに念入りに準備してくれるのは、ちょっと神経質な誠一さんのそれなりの気遣いだってことは、後からいろいろと経験をつむ過程で分かってくるのだが、その時はもう、これがスタンダードだと思っているから、ローションを持ち上げて「こんなものもって歩くのか」と、溜息をついてしまった。
 電気が消され、座卓の上の小さなスタンドだけになると、誠一さんは手馴れた様子で俺を押し倒した。映画館の時と同じ、迷いの無い手で、あちこち撫で回されて、ビンビン跳ねるペニスを咥えられて、喘ぎ声をあげさせられた。しばらくすると、彼は、俺の腰を持ち上げるようにして、四つんばいにさせた。
 それから、お尻の割れ目に冷たいローションが垂らされた。それまでの展開とは裏腹のやけに慎重な手つき。最初はしわを押し広げるように、中指でじんわりと揉みこむようにされた。しばらくマッサージすると、もう一度ローションを継ぎ足して、今度は中指をゆっくりと入れてくる。異物感に俺はげげっとなり、ちょっと腰がつんのめる。誠一さんは、分かっていたのかお腹のところで支えてくれて、俺が、もう一度体勢を戻すと、前のほうも触ってなだめるように玩んだ。
 指が一本ずつ増えて三本になるまで、ずいぶん時間がかかった。さんざん前を擦られて、俺はもうじれったくて、いきたくて…彼の手に腰を押し付けてしまった。体は汗ばみ、だんだん呼吸が速くなってくる。
 指が二本に増えたとき、執拗に擦られる場所に、感じるところがあるのが分かった。俺は、目を閉じて、初めてのその感覚を味わった。それまでの内臓を掻き回されるような異物感が少し後退し、反対に言葉に出来ないような異様な快感が前面に出てくる。だが、三本の指が抜き差しされると、気持ちよさと一緒におさえようもない嘔吐の感覚が突き上げてきて、俺は呻いた。
「大丈夫か?」
 大丈夫ってなに?どういうのが大丈夫なの?頭がぐらぐらして答えられない。そのうちに、彼が自分のものにスキンを被せようとしていることに気がついて慌てた。
「誠一さん。俺、まだ、あんたの咥えてないよ」
 何しろ今日はお返しをしないと、というそれだけしか考えてなかったから、廻らない頭で、廻らないろれつで、訴えた。
「え?しゃぶりたかった?ごめん。ごめん。また、後でね。時間をおくと尻がもどっちゃうからさ」
 そう言うと、手早く俺を仰向けにして、足を抱えてきた。うう。とうとう、犯られちゃうのか。そう思うとさすがに体が固くなる。

 俺が固くなったのが分かったのか、誠一さんは押し当てたまま、俺のペニスを握りこんで気をそらせようとした。そして、初めて屈み込んで俺にキスした。キスされるなんて思ってなかったから、びっくりして目を開けると、その隙をついて、めりめりと彼が押し入ってきた。痛い。体が勝手に逃げようとして腰が捻れる。でも、思ったよりしっかりと押さえつけられていたらしく、全く逃げられなかった。
「あうっ」
 割とあっけなく「ぽん」と、一番太いところが通り過ぎて、すると少し楽になった。誠一さんは足を抱えなおして、しばらくそのままじっとしていた
そんな中途半端な位置で、待っているなんて、ちょっといたたまれない早く。と、言おうとした時、じんわりと圧力がかかってくる。俺が耐え切れずに喘ぐと、一休みして前を弄る。そうやって、少しずつ少しずつ彼は進み、ようやく彼の腹が俺の尻にぴったりと押し付けられる。入った。
その日、誠一さんはあくまで優しかったと思う。激しく抜き差しすることも無く、その代わりに念入りに前にもローションを垂らして、擦ってくれた。だから、俺がはじけたとき、彼はまだいってなかった。
 彼を咥えていかせてやらなきゃと思ったんだけど、気持ちとは裏腹に体はぐったりと布団に沈み込んでいくばかりで、どうにも起き上がれなかった。
「なんで、いくまでやらなかったの」
 口を利くのも億劫な気分だったけど、不思議だったから思わず聞いた。誠一さんは、もう少し回数やってから…とか、口の中でもごもご呟いていた後から分かったんだけど、アナルの中って要するに腸だから、まったく締まりがないんだ。女性の膣のように「ねっとりと絡みつく」なんて表現できる状態じゃなくって、広い空間が広がっているばかりだから、締まりがいいのは入り口だけなんだって。その入り口の締め付けで「いく」ためには、しっかりピストンしなきゃダメなわけで。初めての俺にそこまで要求して、キレちゃったとか、吐いちゃったとか、そういう情けない事態に直面させたくなかったらしい。
 結局、一休みして、第二ラウンドに入った時、初めて俺は男のあれを咥えた。最初から、 何の警戒も無くぱっくりといったせいで、行き過ぎてえずいてしまった。
「おいおい、初めてなんだから、咽喉まで入れちゃダメだよ」
 涙目になってる俺に、慌てて彼は腰を引く。

 そんな感じで一から十まで、手取り足取り教えられて、俺はようやく「初めて」を卒業した。恐怖を覚えることも無く、不安も一掃されたわけで、そういう意味では、彼が最初だったことはすごく感謝している
 その後6ヶ月ぐらい、俺は、週一の割合で彼の部屋に通っていた。恋していたわけじゃなかったけど、クラブの先輩にあれこれ指導してもらうみたいに、だんだん彼になついていったと思う。やがて、彼は俺の中で「いく」ようになり、おれも彼の体で「たち」の経験も踏ませてもらった。俺は彼のことを「誠一」と呼び捨てにするようになり、彼は俺のことを「樹」と、漢字で呼べるぐらいに親しくなった。そう、だから、俺の初めてはみんな彼のもの…。




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