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半陰陽の花・・・Androgynous

ここでは、「半陰陽の花・・・Androgynous」 に関する記事を紹介しています。


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
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自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
半陰陽の花・・・Androgynous









 本宅で、スパンキング動画と一緒に載せるために書き始めたマリエーヌとニコラスの物語を書こうと思います。本宅で彼らの物語を始めたときは、人形のようにの物語よりももっと行き当たりばったりでした。ところが、途中から考えていたよりもずっと恋物語になってしまったので、こっちへ引っ越しさせていただきました。出だしで妻って言っちゃった以上は、ニコラスにかわいいマリエーヌを奥さんとして引き渡すまで頑張ります!ではね♪
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 私が愛する妻と出会った頃の話をさせて戴きたい。

 その頃私は、王立付属の学問所で、勉学にいそしむ二十一歳の学生だった。家は、由緒だけはあったものの、領主である父とその家族の生活と、その家族が住む館の管理をまかなう程度の収入しかなく、次男である私は、なにがしらかの学問、もしくは技術を修めて仕事をみつけるか、進学の道に進むか、軍隊に入るか選ばなくてはならなかった。
 幸い、人よりも抜きん出た記憶力のおかげで、私は学問の道へ進む事になった。それは、非常に幸運な偶然が重なりあって起ったある有力者の好意と出資のおかげだった。
 私は、その期待に応えるべく、精進に勤め、学問所でも有数の秀才と数えられる業績を残しつつあった。
 学問所が学ぶ事のみに明け暮れる白い塔あったとしても、夏には休暇をもらい、一年に一度故郷へ戻れる時期がある。多くの若い学生はその機会には郷里へ戻り、また年長の学生は自らの学問を究めるために旅に出るものもあった。
 その年の夏、私は休暇を故郷で過ごすつもりであった。ところが、私にとっては誰よりも恩義を得ているその出資者の伯爵に呼び出されて直接にある頼みごとをされたのである。
それは、彼の領地へ赴きある子供の勉強を夏の間だけ見て欲しいという要請だった。そして、一冊の古びた書物を渡されて、その本をよく読み、そこに書かれているままをその子供に施すようにと命じられたのだ。
彼の頼みを断わるなどとは、我が身が受けている好意から言っても、彼の王宮での地位や身分を考えても、とんでもない話だった。私は深く頭をたれ、畏まって彼の命を承った。
 学問所に身を置いているとはいえ、馬の産地で有名な郷里で育った私は、馬に乗るのが大好きだった。二年近くも暗い学問所で書物と、気難しい教師達と、脚を引っ張り合う友人と、読むのも難儀な古い言葉と格闘していた日常から離れ、青い空と、どこまでも続く緑の野へ旅立つ事が、若い者にとってどれほどの開放感と喜びをもたらすか、理解していただけるだろうか。
 その旅路の果てに待っているものが私の人生を根底から覆すほどの大事だとは思いもよらず、私は気の向くままに馬に早駆けさせ、王都から半日の伯爵の領地へと出発していった。
あらかじめ私がやってくる事は、報せが届いていたのだろう。館に着くと恭しく慇懃無礼な執事に迎えられ、心地よくしつらえられた部屋へ案内された。
いったい私のこの館での立場はどうなっているのか。いぶかしまずにはいられないほど広く、控えの間までもが付いている立派な客間だった。確か子供の勉強を見るという話だったので、私は浅はかにも、伯爵の親戚か何かの男の子の面倒を、ひと夏見ればいいくらいに考えていたのだ。
それであれば家庭教師だ。使用人とは言えないが、客人とも言えない……そういう立場なのではないかと思っていたのに、それにしてはあまりにも丁寧なもてなしぶりだった。困惑しながらも用意されたコロンの入った湯をつかい、身支度を整えた。
 いずれは、その子供に引き合わされるのだろうが、どうやらすぐというわけでもないようだ。伯爵は七人の子供を持っていて、そのうちの5人までがすでに独立して妻をもらっているか、どこかの家に嫁いでいるかだった。
 6人目の女性は、社交界でも有名な美しい姫君で、多くの崇拝者を持っていると評判だった。7人目のお子の噂は聞かないが、もしかしたら、私が勉強を教えるのはその子供なのではないだろうか。待っている間に、伯爵から預かった本を読んでおこうと思い、森からの気持ちよい風がレースのカーテンを揺らしている窓辺に、心地のよさそうな肘掛け椅子を引っ張っていって座り、その本を開いた。
 見開きのページに現れたのは、一人の女性のむき出しの尻を叩く男の絵だった。
 一瞬私は自分の目にしたものが信じられず金縛りを受けたように動けなくなってしまった。どうやらその男は聖職者らしかった。打たれているのは身分の高い女性のようで介添えには侍女らしき女性がついている。場所は、教会の中なのではないか。
その中央の壇上で、あらわにスカートをめくり上げられ、下穿きもつけず跪いている女性のそのふっくらとした尻を容赦なく打ち据える男。想像もしていなかったその光景に私はうろたえて本を閉じた。その時、ドアがノックされ、小間使いらしき女性の声が恐ろしい言葉を継げた。
「お客様、お嬢様がお会いになるそうです。居間のほうへおいでくださいませ」
 私は、今目にした絵から受けた動揺から立ち直る間もなく、居間へ案内されて行くことになってしまった。彼女に会ったときの驚きをどう表現したらいいのだろう。難しい顔をした妙齢の女性を従えて座っているのは年の頃は13歳くらいの美しい小淑女だった。彼女は、姿に劣らぬマリエーヌという美しい名前を持っていて私を迎えると愛らしくにっこりと笑った。
銀色の巻き毛は波打って背になだれ落ち、パッチリと開いたグリーンの瞳とふっくらとつやつやしく桃色に光る唇。年頃になれば、宮廷中の男共がその足元に跪くのではないだろうか。まるで、ビスクドールのように滑らかな頬、膨らまされたドレスの膝に慎ましくそろえられた白い掌のその指の先まで、美しい少女だった。
「その本をよく読み、そこに書かれているままをその子供に施すよう」
 まだ、すべての内容をよく読んだ訳ではなかったが、あの見開きのページから推察する事は明らかのように思えた。伯爵に命ぜられた子供とは、この少女の事であり、だとしたら勉強を見るという事は、文字通りそのままの意味ではなさそうである。
何しろ名家の娘達は社交界にデビューするまでは館の奥深く大事に育てられるのが普通で、その教育のためには、教養豊かな女性が家庭教師としてつくのが慣わしだ。おそらくは彼女の後ろに立っているこの女性が、その家庭教師なのではあるまいか。わざわざ学問所の学生を呼んで、大切にしている娘に近づけるなど常識では考えられない事だった。
 昨日のうちにあの本を隅から隅まで読んでおくのだった。激しい後悔を感じながら、私は、彼女に向かって深々と腰を折り、おそるおそる尋ねるしかなかった。
「お嬢様は、私がここに呼ばれた理由についてご存知でいらっしゃいますか?」
 少女の頬がわずかばかり赤くなり、じっとみつめていた瞳はそっと伏せられた。
「存じております」
「恐れ入りますが教えていただけないでしょうか…?」
 後に控えていた女性が気色ばんで割って入る。
「失礼でありましょう。ニコラス・ボールドウィン殿、お嬢様にそのような事を面と向かって…」
「いいのです。キャメロン夫人。詳しくお話しなかったお父様がいけないのですから。ただ、ニコラス様は、まだあの本を読んでらっしゃらないご様子。明日、改めてその事は二人だけでお話ししたいと思います。今日は、お疲れでしょうから、ゆっくりお休みくださいませ」
 少女はさっと立ち上がると、ドレスの裾をひるがえし、誰にも反論させずドアの向こうへ消えていった。私は、憤懣やるかたないといった視線で睨みつけてくる、キャメロン夫人と二人その部屋に取り残されて、肩をすくめる意外に他は無かった。
 その夜、ベッドの中で私は伯爵から預かった本を読みふけった。その本には、女性もしくは男性の尻を打つ事で、身体の中に快楽のための通り道を開く方法が、綿々と綴られていた。ハミルトン伯爵は私に彼の七番目の子供であるマリエーヌという13歳の少女を折檻して、快楽を教え込めと命じているわけだった。
私は正直困惑した。いくら美しいとは言っても彼女はまだ子供だ。性愛の対象として捉えるのは難しい。何かの罪悪を犯しているような心持だった。それだけでなく、なぜそのような事をする必要があるのかが分からない。そして、その相手にただの学生でしかない私が選ばれた理由も……。







 翌日、私は改めて呼び出され、四阿で本を読んでいるという少女を探して庭の小道を辿ることとなった。さすがは、伯爵家というべきで非常に入り組んだ迷路のような庭のどこもかしこもきちんと手入れが施されている。
 少女は、その奥まった庭の四屋のベンチで、膝の上に本を拡げてぼんやりと考え事をしているようだった。
「マリエーヌ嬢…」
 はっと、身体を起こした彼女の膝の上から本が滑り落ちた。慌てて立ち上がろうとする彼女を制してかがんでその本を取り上げると、それは私が伯爵に預かった本と同じものだった。私はゆっくりと顔を上げ、彼女にその本を手渡した。
「どうしてなのです」
 マリエーヌは頬を赤くして顔を背けていた。
「どうしてこんな事を?それになぜ僕を?」
 マリエーヌはちょっと首をかしげてから、くるりと身体を廻して振り向くとすまして本を受け取った。そして、私の目を覗き込んだ。
「本当にどうしてだか知りたいの?でも、知ってしまったらもう後戻りできない。まあ、お父様はもうあなたを手離すつもりはないみたいだけど…」
「え?」
「この目的のためだけに、あなたを選んだみたいだし、そのためにずっとご実家の方にも援助をしてきたのだしね。でも、逃げ出すのなら今のうち、私に手を掛ける前なら何とでも言い逃れられるわ」
 私は、その口のききように驚いて彼女の瞳を見つめた。良家の女性とは思えない率直な口調にも愕いたが、きらきらといたずらっぽそうに光る瞳がまるで男の子のようだった。少女は顔を伏せるとチラッと私の顔をうかがった。一瞬、それは何もかもを知り尽くした娼婦の顔のように婀娜めいて見えた。
 私は、その瞬間、彼女に恋をしていた。欲望が稲妻のように身のうちをつらぬいて、今すぐ彼女の服を引き裂き、昨夜眠れないままに読みふけった淫らな行為を彼女の上に仕掛けたいという気持ちが、恐ろしく強く自分を支配するのが分かった。
「あなたは、私が欲しい?それとも平穏な人生の方を選ぶのかしら」
 チロリ…と、彼女の赤い唇をその舌が舐めるのが見えた。私はぞっと総毛だった。彼女は、何も知らない少女ではなかった。すでに私は彼女に捕らえられていた。
「そんなふうに男を誘惑して、はしたないとは思わないのですか?」
 私は腕を伸ばして、彼女を引き寄せた。それから、彼女の耳たぶに唇を押しつけ、息を吹き込むようにして囁いた。腰に廻された腕にぶら下がるようにしがみついてきながら目を閉じて、唇を少し開き、喘ぐようにする少女の表情をむさぼるように見つめる。なんて色っぽいんだ。まさにこれは、犯罪的な存在ではないだろうか?
「そういう、悪い事を平気でするような子供は、行いを改めるようにきつくお仕置きをしないとね」
「男の人はみんなそう言うのね。いったいどんな風に行いを改めさせたいんだか…」
 笑いを含んだ口調で挑発してくる彼女を膝の上に抱き取ると、そのスカートの裾を捲り上げた。震える手で、高級なレースのひだ飾りに縁取られた下穿きの紐を引く。するすると紐がほどけると、白くて桃のようにふっくらとした眺めが表れる。
 私はごくっ、とつばを飲み込んだ。学問所での生活は清貧で修道士のようで、ほとんど女性と接する事の無い二年間の後では、その眺めはあまりにも扇情的だった。そっと白いふくらみの上に手を乗せてみる。すべすべとした大理石のような手触りにうっとりとなりながら、ぎゅっと掴みしめその弾力のある丸みを楽しんだ。
 マリエーヌが溜息を付きながら身体を押し付けてくる。その時、私は自分の膝にあたる何か固いものに気が付いた。ありえない場所にありえないものがあって、それが私の膝に押し付けられる感触だった。まさか……?
 私は、驚きながら手の下にある奇跡のような身体の脚の間へ手を滑り込ませた。しっとりと、湿った女性器に手が掠めた。え?だとしたら…これはなんだ?私は、もう一度もっと深くまで手を滑り込ませた。
 私の手は、まだ、発達しきっていない唐辛子のようなそれを握りしめていた。
「あん」
 艶めいた、彼女の小さな悲鳴と同時に、彼女はこらえ切れないような笑いに身体を震わし始めた。膝を抱きしめていた手に力を込めて起き上がる。
「気付いたね。若い学生さんにしては勘がいい」
「君は……!両性具有者なのか?」
 マリエーヌはくすくす笑いながら、下穿きを蹴り飛ばして完全に脱ぎ捨てると、勢いよく立ち上がった。
「さあ?わからない。私は私。女のようでいて女で無い者。男のようでいて男でもない者。そして、伯爵家の多大なる頭痛の種」
 彼女の赤い唇が三日月のように吊りあがった。心底楽しそうな様子で、彼女は自分のスカートをめくり上げる。私の目の前にあらわにされたのは、男性器というにはあまりにも未熟な、そう、むしろ肥大したクリトリスに見えたかわいらしいくちばしだった。彼女はその突起を撫でながら、わざとらしく身をくねらせて見せた。
「わかるでしょ?こんな身体をした淫乱な娘を伯爵が扱いかねているのが。誰にでもしがみついて、お尻を叩かれる事をねだるような子供をどこへ片付けたらいいのか困っているのが」
 かわいらしい甲高い笑い声が庭に響き渡った。私はあまりにも驚いて何の対処もできず、白々とした彼女のそそけだった頬をみつめていた。その胸に理由の無い鋭く突き刺さるような痛みを感じて、我に帰った時、私は、衝動的に腕を伸ばして少女の身体を懐の奥深くに抱きこんでいた。彼女の折れ曲がった細い指先が私のシャツの胸元に食い込んだ。
「泣かないで」
 ためらいながら、彼女の手が私の背に廻される。
「ニコラス…。私なんかのため泣かなくてもいいのに」
 私は頭を振り、一層彼女の身体を抱きすくめた。伯爵の思惑も、自分の貧しい心故の損得勘定も、淫らな欲望も、どこかへ押し流されてしまっていた。私はただただ、神の表した奇跡のような彼女の身体を、そして、その不思議な胸の痛みを抱きしめながら涙を流していた。



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 『彼の大きな手に背中を押さえつけられて動く事が出来ない。彼の膝の上に乗せ上げられると、脚は床につかない。大人の力に逆らう事など不可能だった。抱き上げられ、膝に乗せられスカートをめくり揚げられる。下穿きを下ろされお尻を撫でられる。
 恥かしさに身じろぎし、膝の上から降りようともがいても、詮無い事。胸を浸すのは暗いあきらめの気持ち。お腹に押し当てられる固いものが、満足するまで、彼の膝から下りる事は出来ないのだ。
 拡げられた大きな手がお尻に向けて打ち下ろされる。痛い!思わず彼の膝の上で反り返り、腕をつっぱる。お尻には赤い手形がついているに違いない。ひりひりと肌がひりつき、痛みに涙が沸きあがる。彼は、脅えてひくつくそのふくらみを撫で始める。優しい声で、私の身体の罪深さを説く。女でありながら女ではなく、男でありながら男でさえも無い。神の呪いたもうた身体。人の世に存在を許されない身体。その罪深い身体が無意識に働くその罪を、私はこうやって身体でつぐなわないといけない。
 乾いた手で何度も何度も撫でられているうちに、身内にもやもやと熱いものがあふれてくる。なんなのだろう。この心地よさは。痛くて、嫌悪に身を震わせているのに、身体は勝手に喜びをむさぼっている。これが、罪深いという事なのかしら。これが、私の身体のせいなのかしら。
「あふっ」
 思わず、声が出た途端に、また、掌が打ち付けられた。痛い!快感に蕩け始めていた身体が、また、跳ね上がる。さっきと微妙にずれた位置に新たな赤い掌の痕が浮かび上がってきているに違いない。
「私が、あなたのために説いているというのに、なぜあなたはこうして罪を重ねるのでしょうねぇ。本当にいけない娘だ。神に跪き許しを希わねばなりませんよ」
 低くやわらかな囁き声で、教えを説くその人は、毎日のように私をそうやって抱き上げて膝の上に乗せる。そうやって、繰り返し、繰り返し説教をしないと、私の身体は存在するだけで周囲に害悪を垂れ流し続けると彼は言う。
 その通りかもしれない。いつの頃か忘れてしまったけれど、長い、長い時を、そうやって彼にお仕置きされ続けているのに、私の身体は一層罪深く、膝の上に無いときでさえ、そうやってお仕置きを受ける事をうっとりと求めずに入られなくなっていた。
 彼の手がお尻を丸く撫でながら時々脚の間に滑り込む。気持ちいい。私は溜息を付き、彼の膝に身体を押し付ける。もっと。言葉に出さない欲求を察して、彼はまたお尻へ掌を叩きつけた。痛い!痛いの。許して。泣きじゃくり、身悶える。気持ちよさと交互に襲ってくる鋭い痛み。私はだんだん訳が分からなくなっていく。どうすれば、許され。どうすれば叩かれるのか…。
 そうして、彼の膝の上で跳ね上がり。お腹をうちつけ、熱い混乱と痛みに身もだえているうちに、急に彼が呻き声を上げて私の身体に覆いかぶさってくる。そうするとお仕置きも終わり。
 私の身体は抱き下ろされ、スカートのしわを伸ばすように言われる。床の上にくしゃくしゃになって、落ちている下穿きは省みられる事が無い。彼は、にっこりと微笑み、祈るように諭して部屋から立ち去る。明日まで彼に会う事はもう無い。抱き上げられる事も無い。
ずきずきと痛む尻と熱く存在を訴えてくる足の間の不思議に甘い昂りをどこへ持っていいのか分からずに困惑する。下穿きを拾い上げ、脚を通しながら、一瞬ひやりと空気が当たった熱いその場所に、私の最も罪深いその場所に、もっともっと強い罰をと請い願う…。』





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 四屋のベンチに腰を掛けて、膝の上にマリエーヌの頭を乗せたまま、私は彼女の打ち明け話を聞いていた。
 彼女が、お尻たたきを求めるようになった理由。まがまがしい虐待の始まりが彼女に与えた影響を…。神の名を口にしながら、年端もいかない子供をいいようにもて遊んだその男は、あろう事かこの教区に長くとどまっていた神父だった。やがて、その神父の手引きで実際に彼女に肉の喜びを教え込んだのは、伯爵の友人でもある、貴族だったらしい……。
無理矢理押さえつけられ乱暴に花を散らされた。まだ幼い身体をいいように弄ばれた。だが、それ以上にショックだったのは、彼女がセックスとお仕置きの行為を同一視するように教え込まれていた事だった。
「手ひどく罰しないといけない、でないと周囲に毒を撒き散らす。そう言われた。赤くなって、耐えられなくなって泣くまで打ち据えるんだ。そして組み敷いて、足の間をあなたの足の間にある堅い物で突き通す。突いて、突いて、突いて。そして、スペルマで清めると私はしばらくの間おとなしくなれる。でも、それもちょっとの間だけ…すぐに、私の身体は言う事を効かなくなって、男を誘惑しようとむずむずしだす」
「誘惑って?…どういう事するの?」
 マリエーヌは愕いた様子で顔を上げた。
「どういう事って?いるだけでいけないんだ。呼んでしまうの。そこに座っているだけで」
 なんと言う事だろう。彼女の教え込まれた事はあまりにも理不尽な男の理屈だ。だが、それでいて、確かに的を射た指摘だった。
彼女は美しい。誰もが一目で魅せられてしまうだろう。その微笑みは魔の誘惑のように、抵抗する事も出来ず男を虜にする。だが、それは彼女のせいなのだろうか。いや、そもそも両性具有の身体で生まれた事が罪だとして、それは彼女のせいなのだろうか?
男であり女でもある。それとも男でもなく女でもないというべきなのか。まるで天使のような不思議な身体。私には分からなかった。だが、それは世間知らずの、学生の理屈なのかも知れない。
「男女の交わりが出来るほど、君の身体は女なのかい?」
 きょとんとした彼女の顔を見て、自分が愚かしい事を尋ねてしまった事に気が付いた。女性の身体がどんな物なのか知らないに違いなかった。男の身体は知っていたとしても。
 私は、彼女の身体を膝の上に引っ張り上げ、腰掛けさせた。
「見せてごらん」
 スカートを捲り上げると、さっきまであれほど蓮っ葉な様子で自ら自分の性器を誇示して見せた少女は赤い顔をして、恥ずかしそうに顔を背けた。私は彼女の片足をひょいとからげて持ち上げ、深く折り曲げると私の胸に押しつけさせた。彼女の背中に廻していた手を緩めると身体はのけぞって行く、ベンチの上に頭を落ち着けられるように誘導してやるとその動きにつれて淫らに足が開いた。人差し指で小さなペニスを持ち上げ、その下にある性器を露わにして中指で探る。
「あ…、いや…」
 溜息のように漏れた言葉は、誘っているかのようにあえかな彩りで、とても嫌がっているふうには聞こえない。男達が自分に彼女の方が誘惑したと信じさせるのに十分な色っぽさだった。だが、今の行為にしてみても、彼女のせいではない。彼女の無知につけ込んで、厚顔にも足を開かせたのは私の好奇心なのだ。
 彼女の身体は、堅く、ふくらんでいないつぼみのように未成熟な少女の身体でしかなかった。だが、ざっと観察しただけでは、無理矢理押し入れば確かに性行為が可能な程に完璧な女性器を備えていた。探ってみただけなので、中の方がどうなっているのかはっきりとはしないが。子供は出来ないかもしれないが、それこそ男達にとっては好都合という物ではなかったろうか。
 指で探るだけで、その異端の花はじんわりと蜜に濡れ、年齢以上に彼女の身体が仕込まれ尽くしている事を示し始めていた。そっと指を抜き、今度は唐辛子のように小さなペニスの皮を剥きにかかる。痛みがあるのか彼女は顔をしかめて腰を捻る。女性器に較べると彼女のペニスは不完全で未発達だった。だが、こりこりともみほぐしてやると足が引きつるように動き、それと同時に堅くなってぴんっとその存在を主張し始めた事から、たとえ未発達でも感じる機能は備えているのだろうと推測できた。
「あ…、あん」
 首を左右に振りながら目を閉じて喘ぐ彼女の顔は、幼さとは相対する淫らさを宿して男の血を酸っぱくさせるのに十分だった。幼いが故に加虐の欲望を十分煽る不思議な美しさ。しかも、男の性を持っている事で、どこかしら、相手の遠慮を削いでしまう。純粋な少女には罪悪感をとなる行為でも、同じ性を持つ者であれば、感じないで共有できてしまう。
 誘うように開いていく赤い唇が空気を求めて動くと私の背筋をしびれさせるような強い欲望が駆け上がってきて、衝動的に屈むと彼女のペニスを銜えてやった。
「あ!そんな…」
 閉じられていた瞳がぱっと開かれる。スカートを押さえていた手がその裾をくしゃくしゃに握りしめる。横目で彼女の反応を見ながら口の中の者をちゅくちゅくと吸い上げ、舌で嬲り嘗め回した。びくん、びくんと彼女の身体が腕の中で引きつる。
「あ、ああ…」
 男達は、彼女の花を摘むのに夢中で、彼女自身の身体には触れなかったのだろうか?性感が高まるにつれ、彼女の反応はパニックの様相を示し始め、なんとかして起きあがろう、自分のそれを私の口から取り戻そうと必死にもがくのが分かった。私は彼女の身体を押さえつけ、いっそうその器官へ淫らな口淫を続けた。
 身体が突っ張り、激しく痙攣する。
「う、うん…」
 オーガズムの波が彼女を引きさらうのを確認し、ぺろりとその部分を嘗め回してやる。その先からは透明でトロリとした滴がこぼれたが、射精はなかった。どうやら、まだ、そこまでの発達は見ていないか、もしくは不十分な機能しか備えていないのだろう。
 両性具有と呼ばれていても、実際のアンドロギュノス達は、どちらの性も未発達で障害がある事が多い。それから言えば、彼女はむしろ女性のクリトリスが、男性器化してしまったと言える状態なのではないだろうか。
 私は彼女の身体を抱き起こし、スカートを整えると、赤くなっている彼女の頬にそっと唇を押し当てた。
 俯いて恥ずかしそうに、逡巡していた彼女だったがやがて顔を上げると、私の瞳を覗き込んで、ささやきかけてきた。
「お仕置きは?」
「お尻を叩いて貰いたいの?」
 不思議そうに頭が傾けられる。
「だって、あなたはそのためにお父様に呼ばれてきているんでしょ。私のお尻を叩いて、私が男をベッドへ引き込もうとするのを止めるために」
「君は、そんなに次々と男を引き込んでいるのかい?」
 いたずらっ子がいたずらを見つかった時のような反省の表情で、彼女は俯いた。
「まだ、三人」
 顔を上げると子供っぽく口をとがらせて訴える。
「だって、彼は、王都へ戻って行ってしまったし、あの男は、最近ではやってこない。誰かが私のお尻を叩かないといけないんだよ。そうしないと、世界を毒で染め上げてしまう」
「君はお尻をたたかれるのが好きなの?」
 彼女はびっくりしたように口をつぐむと、困ったように視線を周囲へ巡らせた。
「好き?」
「だって、痛いんだろう?泣いてしまうほどに…」
「好き?…ああ、分からない。でも、あまりにも罰をもらえないと、体が熱くなって悪いモノが足の間の身体の中心から溢れてくる。落ち着かなくて眠れない。それに…欲しいでしょ。あなただって。だって、彼が言っていたよ。あなた達は私に罰を与える事を喜ぶだろうと…」
 その通りだ、あまりにもむごい事だが、彼女はどこか男の加虐心を煽る不思議な魅力があった。理由もなく酷い事をして泣かせてみたくなる。彼女の顔がゆがみ、苦しみに悲鳴をあげ、自分の膝に必死でしがみつく所を見てみたいと思う欲望を……。
 どうしたものだろうか。彼女の罪でもない事を理由に、お尻を叩く事には躊躇いがある。だが、叩かない事が彼女のためであるのかと訊かれれば、なんと答えればいいのか分からなかった。確かにこのまま彼女を放ったらかしにしておいて、誰彼の見境無しに男の袖を引くようなまねをさせるなんてとんでもない事だった。その行為をやめさせるために私が選ばれたのだとすれば、私が彼女のお尻を叩いてやるべきなのだろう。
 彼女の性の相手をして、彼女がこれ以上傷付く事が無いようにし、彼女の秘密が外へ漏れないように堅く口をつぐんでいるべき役目。その役目のために、私が選ばれたのだとすれば、伯爵の選択肢も非常に納得のいく物だった。有力者の係累のない学生でしかない私など、伯爵の考え一つでいくらでも闇へ葬る事は可能なのだから。
 あれこれと悩んでみても、答えは出そうになかった。いや、悩んでいても何の足しにもならない。ここへ来ている事が、すでに伯爵の命令を受けての事なのだから。だが、夏の休暇が終われば、私はまた学問所へ戻る事になる。彼女はここに置き去りになるのだ。伯爵は、その事はどう考えているのだろうか…。かすかな不安と罪悪感。そして、それを上回る欲望。迷いながらも、私は、その欲望に身を委ねた。
 膝の上に乗った身体は羽根のように軽い。むき出しの白いむき身のような桃尻は、ひんやりとしてすべすべだった。私は息を吸い込む。打たれた事はあっても、他人を打ち据えるのは初めてだった。
 ぱあん!手のひらの力を抜いて思いっきり打ち付けた。どうするかは、身体が知っている。男なら誰もがいたずらをしてお仕置きを受ける事は、よくある事だった。びくんと膝の上の身体が跳ねる。無意識に膝にすりつけられる細い身体。それが、少女の物なのだと思ったとたんに、我が身の中心が熱くなるのを意識した。
 ひとつ。ふたつ。みっつ。ゆっくりと数えながら手のひらを打ち付けた。ぱあん!ぱあん!ぱあん!ぱあん!耳に心地よい音を重ねながら、熱くぽってりとほてってくる尻肉のさわり心地を楽しんだ。
 やがてじっと耐えていたマリエーヌが、膝に付く手に力を込め、耐えきれず強く身体を押しつけてくるのを感じた。手の中で苦痛にねじれる細い身体の感触。愛おしい。小さな子供。痛みに喘ぐ小さな叫び声が耳に届く。なんとかわいらしい悲鳴だろう。彼女の身体が恐怖に震え、痛みにもがき、声はしめってくる。
 自分の手の中に自分の自由に出来る身体があるという事が、これほど興奮を呼ぶ物だとは知らなかった。溢れてくる愛情に驚きながら、なおも手のひらを打ち付け続ける。
「痛…。痛…。痛い。あ…あ…ニコラス。もう…だめ。ゆ…るして…。あ…あっ。んん」
「ニコ…ラス。お願い。お願い。もう…もうだめ。痛いの。痛い。お願い。許して。許して」
 鳴き声がだんだんと大きくなり、隠しきれない悲鳴になる。頭を振り、髪を乱しながら膝にしがみついてくる。
 私は、彼女の身体を抱え直して、さらに強く打ち続けた。真っ白だった尻はすでに真っ赤に染まり腫れ上がってきていた。彼女は、耐えるのをやめた。我が身を私の身体にこすりつけ、跳ね上げ、打ち付け、泣きながら身もだえた。私は、慎重に彼女の身体を更に上に引き上げた。彼女が私を満足させようと意図的にもがいている事はわかっていた。抱え直されるたびに彼女は情けなく鳴き声を上げる。お仕置きの終わりが遠ざかる事に気が付いて。
「ニコ…ラス。お願い。お願い。もう…もうだめ。我慢できない。痛いの。痛い。お願いよ。許して。許してください」
 私は手のひらの角度を変えて、当たりを細くしてやった。痛みは鋭く、強くなるはずだった。狼狽する彼女は本気で泣き喚き始める。
「ひいぃぃぃ…。いや。やめて。許して。いや。いや。いや」
「君からねだったんだよ。我慢するんだ」
「あっ痛ぅ!痛い!だって。だって。こんなに酷いの初めて…。いぁ!…んっっむ…。やだ。かんにん。かんにんしてぇ!」
 足をばたつかせる彼女の膝を右足で素早く囲い込んだ。これで、どうやっても逃げられない。私は再度彼女を膝の上に抱え直した。
 お仕置きが、まだ終わらない事に気が付いて、彼女は大きく体を震わせてすすり上げる。
「あと二十回打つ。しっかり我慢して」
「二十回も!そんな…そんなにはだめ。ああ、耐えられない。お願い。お願いだから…」
 ぴしいぃぃ!答える事なく手のひらを鞭のように打ち付けた。手の中で身体が苦痛に思いっきり捻れる。その痛みを彼女が十分に味あうのを待って、次を打つ。手で叩く場合は、お仕置きをする方も手が痛む。おそらくは、今までの男達は、柔らかな貴族の手しか持っていなかったに違いない。
 彼女は、涙をふり絞り半狂乱になって頭を振り、悲鳴を上げた。だが、私は容赦なく尻を打ち続けた。約束した二十回の一発一発の痛みをよく彼女が味わえるように、ゆっくりと引き延ばして打った。二十発を打ち終えた時。彼女はすっかり声が掠れ、体力も使い果たした様子だった。
 彼女の身体を抱き起こしてやると、すっかり涙で濡れ、腫れ上がった顔をした少女は、怯えた様子で私の手から逃れようと後ずさった。私は素早く彼女の身体を懐に抱き込み、顎をすくい上げて、その瞳を覗き込んだ。私たちは、一言も発せずにお互いの瞳の中に何があるのかを覗き合った。それから、ゆっくりと濡れ開いたその唇に口づけを落とした。
 彼女はかすかにそれに答え、それから激しく自分からむしゃぶりついてきた。
「ニコラス。ニコラス。ニコラス。ニコラス…」
 何度も何度も繰り返されるその呼び声は、まるできらきらと降り注ぐ星のきらめきのように、私の胸の中に落ちて行った。


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  その日から私はマリエーヌを膝の上に抱え上げ、百回のお仕置きを与える事を夜毎に繰り返した。最初の日にさんざん打ち据えられた彼女の尻は赤黒く腫れ上がり、ちょっと触っただけでも飛び上がるほどに痛がった。
 だが、私は容赦せず、毎夜夕食の時に、しかも召使い達の前で四阿に来るようにマリエーヌに申し渡した。椅子に座るのも難儀している彼女は、その度に実に悲しそうな目で恨めしそうに私を見上げる。同席している家庭教師は憤慨して赤くなったり蒼くなったりする。だが、伯爵の命を受けてきている私に逆らう事はできず、憤懣やるかたない様子で足音高く彼女を置き去りにするのだ。
 マリエーヌは、テーブルクロスの上の手をぎゅっと握りしめて、私の表情のない顔を涙で潤んだ瞳で見つめた。
「ニコラス。今日も叩くの?」
「ああ」
「酷いわ。お尻が痛くて夜も眠れなかったのに。これ以上我慢できない」
「だめだ」
「そんな…、どうしてそんなに意地悪なの?酷いわ。キスする時はあんなにも情熱的なのに」
 ナプキンを腕に掛けて立っている執事は、さすがに顔色こそ変えないが、いたたまれなさを滲ませて目を泳がせる。
「マリエーヌ。君のお尻がひどく腫れている事は知っているよ。多分、今日打たれるとその痛みは昨日の比じゃないだろうね」
「ね。お願い。今日は許して。お願いだから」
「だめだ」
 マリエーヌは唇を噛みしめて、ぽろぽろ涙をこぼす。最初の日の、あの人を喰ったような微笑みはもうどこにもない。だが、私には分かっていた。マリエーヌがこの一幕を十分楽しんでいる事を。「酷いお仕置きをする男に情け容赦なく扱われ泣きくれる美少女」という役どころは、いたく彼女の気に入った様だった。
 四阿にやってきてからも、少女は思い入れたっぷりに怯え、許しを請い、私の腕を抗ってみせる。だが、さんざん引き延ばして膝の上に抱え上げられた彼女の息は興奮に弾み、身体は十分に熱くとろけていた。
 足の間に私が手を滑り込ませるとそこは、すっかりと濡れそぼり、私に乱暴に掻き混ぜられるのを待ちかまえている。私は念入りにその場所を撫でさすり刺激して、彼女の甘い悲鳴を搾り取った。少女が痙攣してすっかり満足するまで愛撫してやり、それから、身体の欲望にとらわれた罪によって彼女のお尻を叩くのだった。
 痣だらけになっている彼女の尻は、痛々しく熱く膨れあがっている。一打ちごとに少女は、殺されるような悲鳴を上げ、泣きもだえ私にしがみついてきた。私は、そうまでして彼女が求めているものは、私が与える「痛み」だという事の甘さを噛みしめた。
 強く打つのも、手加減するのも、回数を増やすのも、自由自在だ。彼女がどれほど切々と必死に訴えても、それを聞き入れてやるもやらぬも私の気持ち次第。彼女がどれほどその辛さに涙を振り絞っても、私がもっと打つと決めれば、膝から降りる事は出来なかった。
「ニコラス、お願い」
 彼女は、私が満足するまでその言葉を繰り返す。ニコラス、お願い。ニコラス、お願い。ニコラス、お願い。甘い、切なるお願いを私はうっとりと味わい。そして、手厳しく拒絶した。その度に彼女は悲しそうに涙をほろほろとこぼす。愛らしい手を組み合わせ捻り絞る。そう、この背徳の遊びは、それほどに、私の脳をとろかした。
 それでも、昼の明るい光の下では、私も我に返り、自分のしている事に空恐ろしくなる事も度々だった。そして、まだいたいけない少女でしかないマリエーヌの足下に跪き、その裾に口づけながら、今日も続けるのかと尋ねた事も一度や二度ではなかったのだ。そんな時のマリエーヌは、あの、恐ろしく魅力的な微笑みを浮かべて
「怖くなったの?ニコラス?」
 と、尋ね返してくる。その、悪魔の微笑みに出会う度に、私はその微笑みに毒され、彼女に対する仕置きも回数を重ねるほどにひどくなって行かざるを得なかった。
 百回、きっちりと打っていても、彼女の桃のような尻はだんだんとはじめの日の美しさを取り戻しつつあり、回数を重ねるごとにもっと、と要求してくる。もっと。もっと、ひどく打って。もっとひどく。私を泣かせて。私は、彼女の尻を摘む。痛みに彼女が悲鳴を上げるように。召使い達が、私の彼女をむごく扱う様に怯えるようになってさえ、その行為を促しているのは彼女の瞳であり、私は彼女の僕でしかなかったのだ。



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 伯爵が自ら、領地を訪ねて来たのはマリエーヌにお仕置きをして二週間を数えた頃だった。
 屋敷に到着した時は堅く唇を引き結んでおられた伯爵だったが、私を部屋に呼びつける前に執事からだいたいの様子を訊き知ったのだろう。私が部屋へ入っていった時は、もう、すっかりといつものように平静な様子に戻られていた。恭しく私が頭を下げると鷹揚にうなずき、椅子を勧めてくれた。私にとっては、初めての事だった。
「ニコラス。マリエーヌと会ってくれたね」
「はい。伯爵様」
「あれを、どう思う」
 私はちょっと、戸惑った。伯爵がなんと答えて欲しがっているのか、まだ、よく分かっていなかったからだ。
「美しいお嬢様です」
 ちょっと、目を細めて私の顔色をうかがっていた伯爵は、やがて、溜息をつき、改めて私に向き直られる。
「ニコラス。私は、君にマリエーヌの婿になって貰いたいと思っている」
 マリエーヌは「伯爵が自分をどこに片づけたらいいのか困っている」と言っていたが、だからと言ってけしてほんとうにそんな事を考えておられるとは想像していなかった。私は心底驚いて、礼儀も忘れて、真っ向から伯爵の顔を見つめてしまっていた。
「言葉を飾っても仕方ない。あの娘を口が堅く、私の味方になってくれる者に嫁がせたいのだ。君が引き受けてくれるのなら、十分な持参金もつけるし、君が卒業する時には幾ばくかの領地も譲ろう。将来的にも私が後ろ盾を引き受けて、王宮で地位を得られるように取りはからうつもりだ」
 マリエーヌが読んでいたとおり、そのためにだけ私の後援を引き受けていたのだとしたら、彼女の慧眼とともに、伯爵の深慮遠謀も驚きだった。
 もちろん、その条件は、私にとっては否やを言えるような物ではない。実家の家族も手放しで喜ぶだろう伯爵家の援助を恒久的に取り付ける事が出来るのだ。半陰陽の少女を妻に娶るだけで…。
 私は、高揚した気持ちを見透かされまいと瞳を伏せた。伯爵に、私が、結婚に気が進まないと思われている方が有利なのだ。だが、心の中では私は喜びに舞い上がっていた。たとえ、世間の者にとって両性具有がどう映ろうと、私にとってはマリエーヌを自分の妻に迎えられるという事は、願ってもいない僥倖である事はみなさんも理解してくれるだろうと思う。
 二週間の間、膝の上に乗せてお仕置きを繰り返しながら、私は彼女を自分の物にしたいという欲求と、背徳の喜びを味わう事への罪悪感で居ながらに引き裂かれながら、後一歩が踏み出せずに逡巡していたのだ。
 なんと言っても彼女はあまりにも幼く、そして高貴な少女だった。伯爵から預けられたあの本と与えられた使命を鵜呑みにして即座に行動に移すのはあまりにも危険な気がしていたのだ。だが、こうして世間的にも認められる公の関係を結ぶ事がかなえば、晴れて大手を振ってマリエーヌを本当に自分の者とする事ができる。
 私は立ち上がり、伯爵に後ろ足を引いて、伯爵に向かい深々と正式な礼を行った。
「喜んでお引き受けいたします」
 その声に滲む喜びを悟られず、出来るだけ、苦々しく聞こえるように必死の努力を払わなければならなかった。伯爵は二度三度うなずくと、ふと思いついたというように、顎髭を引っ張りつつおもむろに尋ねてきた。
「あれは、素直にお仕置きを受けているか?」
 私は、わざと逡巡して見せ、ゆっくりとうなずいた。
「はい。けれど、伯爵様、私の卒業は来年の夏です。この夏の休暇が終われば、また、学問所に戻らねばなりません。その間は彼女をどうすればよろしいのでしょう」
「うむ。うむ。そなたの方からそう言いだしてくれて嬉しい。そなたが学問所に戻ると同時に、あれを王都の屋敷に呼び、週末等の機会には訪ねて欲しいのだ。その間は間違いが無いように、あれには貞操帯をつけさせようと思っている」
「貞操帯…ですか?」
 私は、まだ、彼女の身体を抱いていなかった。だから、それほど厳重に彼女を押さえつけなければなにか間違いが起きてしまう…と、伯爵が考えている事には正直驚かされた。
 私の素直な驚きをどう受け止めたのか、伯爵は気まずそうに、目をそらしたが、気を変えるつもりはなさそうだった。私は、貞操帯に縛られた彼女を思い浮かべ、それを受けざるを得ない彼女の立場と苦しみを考えると、身体が欲望に熱くなるのを感じざるを得なかった。
「伯爵様。マリエーヌ嬢は、まだ幼いご様子。来年の挙式は早過ぎませんでしょうか」
 この事を持ち出すのは、結婚を延ばしたいからではなかった。伯爵に私がどれほど彼女を欲しがっているか知らしめないためだった。
「あれは、来週14になる。来年は15。決して結婚しておかしい年頃でもないだろう。それまでにはそなたの王宮での地位も、整えて、この結婚が不自然に映らぬように手を廻そう。ご両親にも私からきちんと納得して貰う。君は、心配せずに、残りの一年を勉学に励んで欲しい」
 両親にはきちんと金を掴ませて黙らせるという事なのだろう。いや、マリエーヌが普通の娘ではないという事は誰も知らない事なのだ。私の両親は、その縁談を喜びこそすれ、逡巡する事などあり得なかった。私一人が、口をつぐみ、マリエーヌを最愛の妻として遇すれば、全ては丸く収まるという筋書きだった。
「もちろん、君がどうしても子供の跡取りが必要なら、外に女を囲って貰っても構わない」
 この、思いも掛けない言葉に、私は危うくそれまで取り繕っていた仮面を取り落とす所だった。嫁ぐ前から、しかもこれほどに身分の低い者に嫁がされるという理不尽な目にあわせられながら、その夫となるべき男が結婚の約束をする前に、もう外へ女を作る話を父親に保障されていると知ったら、彼女がどれほど傷付くか…。私は、黙って頭を下げた。
 だが、もちろん子供の必要などまったく考えるつもりは無かった。自分で興した家が一代限りになったからといって、実家はすでに長男が継ぐ事になっている以上、痛くも痒くも無かった。私が願っているのは、彼女を手にする事だけだったから。伯爵の声が微かに陰る。
「あれは…それほど悪くない外見を持っているだろう?」
「マリエーヌ嬢は、私にはもったいないお方です。私は、生涯誠心誠意、あの方を幸せにするように務めます」
 本心からの誓いの言葉であったが、伯爵にとっては、ただの追従としか映らなかったのだろう。だが、それでもわずかにその額に明るさがさした所を見れば、領地に置き捨てにしていた片輪の娘を伯爵がわずかながらも気に掛けているのが分かった。
 そうと知れて、私自身少しほっとした心持ちだった。そう、伯爵には、私がこの結婚を、伯爵家の圧力によって仕方なく受けたと思っていて貰っていて構わなかった。だが、私の誓いは決して違えられる事は無いだろう。あの、奇跡の身体を持った少女は、光輝くバロックの真珠のように、私の心を魅了してしまっていたのだから。




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[第三部・2]の続きを読む





 「君が、異存が無いようなら、これから娘に話そうと思う」
「もし、よろしければ、同席いたしたいのですが…」
 私は、話を告げられた時のその瞬間のマリエーヌの表情をみたかった。私自身の思惑はさておいて、彼女はいったい私の事をどう考えているのか知りたかったのだ。
 二週間の間、私と彼女は、婀娜で淫靡な遊びの共犯者としてお互いの楽しみをむさぼりあった。だが、それは決して恒久的な未来を見据えた関係でも、愛情や好意といった素直で美しい気持ちの結果でもありえなかった。
 生涯を共にし、運命を共にする相手として彼女を考えた場合、私の態度はあまりにも不誠実であり、彼女にとってふさわしいとは思えない。彼女の考え如何では、残りの夏休みに私は自分の越し方を振り返って改めるべきでは無いだろうか。
「お父様…?」
 マリエーヌは、私を伴って部屋へ入ってきた伯爵の姿を見て、不思議そうに首を傾げた。
「マリエーヌ、元気だったかい?」
「ええ、お父様。お父様もお変わりなく。随分とお久しぶりですこと」
 彼女は、くるりと瞳を廻してから、チラッと私の方を見た。いかにも嬉しそうに。キャメロン夫人は、できるだけもったいぶって立ち上がり、伯爵に丁寧にお辞儀をした。伯爵は形ばかりうなずいて、彼女の挨拶を受け流した。
「マリエーヌ。実は、私は彼を…」
 伯爵は手振りで私を指し示して、ちょっと言葉を切りマリエーヌを後ろめたそうに見て早口で告げた。
「ヘル・ボールドウィンをお前の夫として我が家に迎えたいと思っている」
 マリエーヌの瞳がキラリと光り、悪戯っぽい勝利の色を瞬かせながら、私の方を伺うのが分かった。自分の読みが当たった事を私に誇るように、唇の端が吊りあがり、そして即座に意識したそぶりで下がっていった。
 唇を震わせ、憂いを帯びた瞳をわざとらしく辺りに彷徨わせて見せる。私はその彼女の様子をみて、苦笑いを押し殺すしかなかった。彼女は、僕を夫に迎える事に何の逡巡もみせぬまま、受け入れたかのように見えた。
「お父様。ニコラスが私に何をしたのか…ご存知ないの?」
「マリエーヌ、彼は私の命令を受けてここへ来ているのだよ。私はもう、決めたのだ。彼は、お前のような娘にはうってつけの立派な殿方だ。お前を幸せにしてくれる。きっと…」
「ああ。ああ。私は今のままで充分幸せなのに!」
 急に立ち上がった彼女は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、胸の辺りで両手を握りしめた。
「マリエーヌ、お前には彼のような夫が必要なのだよ。ヘル・ボールドウィンが卒業するまで、お前は王都の館で彼を待つように。それから、お前が彼にとっても、わが伯爵家にとっても、決して恥ずかしいまねをしないように、お前の身体には貞操帯を付ける事にした。私を失望させないように、わが伯爵家にふさわしい振る舞いをしておくれ」
「貞操帯ですって?お父様は、私を侮辱なさるおつもりなのですか?私、私、そんな事耐えられない!」
 伯爵が語る間、胸の前で握りしめていた両手を揉み絞っていた彼女は、叩きつけるように叫ぶとわっと泣きながら奥の寝室へと駆け込んだ。間に入る事も出来ずおろおろと立ち竦んでいたキャメロン夫人も慌ててその後を追う。伯爵は、眉をよせていらいらと、私に向かって困ったものだとでも言いたげにその手を振って見せた。
「すまないね。ニコラス。マリエーヌをお願いするよ」
 今までになく丁寧に私の同意を取り付けようとする伯爵に、私は深々とお辞儀をしてみせるしかなかった。
 その夜、彼女は夕食の席に現れなかった。泣き伏せって気分が悪くなったかのように説明するキャメロン夫人は、軽蔑と嫌悪の様子を滲ませて私を無視してみせたが、さすがに伯爵に強く抗弁する度胸はなかった様子だった。伯爵は、重ねて私に将来の約束を繰り返して、近いうちに貞操帯を作る職人をよこす事を告げて次の朝早く都へと戻っていった。 
 私は……。私はと言えば、とにかくマリエーヌに早く会う事ばかりを考えていた。二日続けて夕食の席に姿をみせなかった彼女だが、きっとやってくるだろうと踏んで、食事の後、いつもの四阿に足を運んだ。
「マリエーヌ」
 人影の無い四阿にぼんやりと立ち尽くし、これからの事を考えていると、まったく気配を感じさせなかった彼女が身体ごととぶつかってきて、私は慌ててその身体を受け止めた。
「ニコラス。私の言ったとおりになったでしょ?」
 彼女は長い髪を後ろへ跳ね除けながらにっこりと笑った。
「君は、それでいいの?私を夫にする事に何の異議も無いの?」
「異議?」
 私の腰に手を廻していた彼女は、心底びっくりしたように目を見開いてみせて、それから体を二つに折って笑い始めた。
「あっはははははっはあ…。異議だって?そんな物、なんの役に立つと思うの?お生憎様。伯爵だって私にそんな物が在るなんて考えてもみない様子だっただろう?」
「伯爵と君の間の関係については、意見を言うのは控えさせてもらうよ。私にとっては、どうともできぬ事柄なのだからね。でも、僕と君の間は違う。君は、僕をどう思っているんだい?僕と一生を共にする事をどう考えているの?」
「おやおや…」
 心底おかしそうだった彼女はふっと笑いを納め、僕の顔をまじまじと覗き込んできた。
「正直に言うと、その事はまったく考えてもみなかった」
 そうして、僕の体に廻していた手をゆっくりとほどくと、僕の顔を見つめたままおずおずと後に下がり始めた。
「あなたこそ、私の事をどう考えているの?スカートを履いているけど、私は男根の飾りをつけた女の子じゃないんだよ。本当の所、女の子がどういうものかもよく分からない。あなたに子供をあげる事もできないと思うし、それに愛情だって…。…ええと、ごめん。だめだ。神さまだって結婚するのは男と女って決めているんでしょ?」
 不安そうに、眉を寄せる彼女の愛らしさといったら…みなさんにも想像がつくでしょう。もしも、私に選ぶ事ができるのであれば、こんなにかわいらしい子供と、せっかくここまで近づきになれたのに、それを諦めて離れて行く事などできそうにもなかった。
「僕は、君が好きなんだ。君と結婚したいと思っている。僕が君にしてきた事が褒められた事じゃないって分かっているよ。どう考えても君が僕に対して愛情を抱くような行為じゃ無かったって事もね。でも、もう一度やり直しても、やっぱり同じ事をしてしまいそうだし、今から心を入れ替えようとしてもやめられないんじゃないかって気がするほど君をお仕置きする事を愉しんでいる。本当は、君のような幼い子供にこんな淫らがましい行為をするべきじゃないんだよ。ああ。でも、でもね…」
 私達は、困惑したまなざしを交わしあった。マリエーヌは掌をパニエで膨らましたスカートの上にこすりつけた。それからその赤い唇を可愛らしい舌でぺろりと舐めた。
「ねぇ。だったら。私をあなたのものにして、これからも、うんとお仕置きしてくれる?私が悪い事をしないように、しっかりと鎖に繋いでくれる?」
 この子供は、まだ本当の愛情を知らない。そして、僕自身、まだ彼女のなんたるかを何も知りえていない。私は彼女の足元に跪き、そっとその裾を手に取りくちづけた。
「愛している。君を僕の鎖で繋いであげよう」
彼女はにっこりと嬉しそうに笑い、そして、僕の胸に飛び込んできたのだった。



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  伯爵が命じた貞操帯の職人が三日ほどして現れた時、私は意外な気持ちを感じながら彼を迎えた。手に仕事のための蛸が出来ている鍛冶屋の店先で会うような職人を想像していたからだ。
 漆黒の長い髪をきっちりとひとつのみつあみにして後へながし、丁寧な仕立ての紺のビロードの上着を着た猫のようなブルーグレイの瞳、青年はアルバート・ハルトヴィックと名乗った。美しい細工の銀の縁取りを施した大きな鞄を持っている。
「ハミルトン伯爵様のご依頼を承りまして、まかりこしました。末の十四歳のお嬢様のための貞操帯を誂えると伺っておりますが、まちがいございませんでしょうか」
 私がなんと答えてよいものかためらったのを見越したハルトヴィックは、深々と頭を下げて言葉を続けた。
「お嬢様におかれましては、特別のご事情がございます事は、伯爵からくれぐれも内密にと念を押されて参っておりますので、いささかもご懸念の必要はございません」
「では、ハルトヴィック殿。よろしくお願いします」
「はい、かしこまりました。十四歳というご年齢から考えますに、お嬢様のご様子によっては、常に貞操帯を調節する必要がございます。なんと申しましても、細工は鉄でございますので、柔らかなご婦人の肌に当たって、ご不快のございませんように、身体にぴったりとあわせて誂えなければなりませんので」
 それは、しばしばこの男が私達の生活に出入りし、そして彼女の身体に触れるという事でもあった。私は、彼にマリエーヌを預ける事に対する嫉妬と不安と不思議な倒錯的な欲望を感じて戸惑った。
「マリエーヌに引き合わせましょう。こちらです」
 マリエーヌは、自室のテラスにキャメロン夫人と向かい合わせに座り、ハンカチに刺繍をしていた。その様を見ると、彼女が少女ではないという事をついつい失念してしまう。どこからどう見ても、良家の子女が家庭教師と向き合って縫い物をしているふうにしか見えないのだ。
「マリエーヌ。お父上のおっしゃっていた職人を連れてきたよ」
 マリエーヌは、すべすべとした柔らかな頬を紅くして、手に持っていたハンカチを静かに机の上に乗せ立ち上がった。
 形ばかりの自己紹介と、鷹揚に見せたうなずきをやりとりしたあげくキャメロン夫人は部屋から追い出された。

 マリエーヌは、慎ましげなふりをして、節目がちにちらちらとハルトヴィックをみていたが、夫人が部屋を出ると、すぐに少女の仮面をするりと脱いで、身を翻して私の懐に飛び込んで来た。
 私が慌てて手を拡げて彼女の身体を受け止めると、きらりと瞳を光らせたマリエーヌは
くすくすと笑いながら彼のほうへ艶っぽくうっとりとするような目付きを送って見せた。
「ニコラス。貞操帯が、どういうものだか、あなたは知っているの」
 噂には聞いていたものの、本物を見た事が無かった私は、黙って首を振った。
「ふうん」
 マリエーヌは、私の手の中で彼女はパニエの膨らんだ裾を翻してくるりと身体を廻し、好奇心を露にした活き活きとした表情で、今日初めて会った男を上から下までじろじろと眺めた。
「ねえ。お父様は本当に、ただ、貞操を守るためだけの貞操帯とおっしゃっていた?」
 ハルトヴィックは、表情を変えずに優雅に片足を引いて、深々とお辞儀をした。
「伯爵様におかせられましては、お嬢様の望むままに小物などもあれこれと取り揃えるようにとのご命令でした」
 きらきらと光が煌めくような可愛らしい笑い声が彼女の唇から零れ、その笑いに身体を震わせながらマリエーヌは私の身体へしなだれかかってくる。
「ほら、やっぱり。館の中に閉じ込めた娘をどう料理すれば、一番あてがった男の気を引く事ができるのか、あれこれと策をめぐらされたって事でしょう?」
 彼女の言葉に込められた棘と真実の意味を悟った私は、赤くならずにはいられなかった。そして、気まずい思いで、かしこまった様子で控えているハルトヴィックを困惑して見た。彼は、何もかも心得ておりますと言う様なかすかな笑みを浮かべて、私の方へうなずき返した。
「それでは、お嬢様。よろしければお身体の寸法を測らせていただけますでしょうか。そのためのお道具もみな取り揃えましてお持ちいたしておりますので」
 一瞬、淫猥な笑みが、ハルトヴィックの頬をよぎって消えた。私は、考えてもみなかった自体に直面している事に気がつき、腕の中の彼女の身体を抱きしめた。



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  マリエーヌは一瞬もためらったりしなかった。
「ニコラス、紐をほどいてよ」
 そう言って、ドレスの背中を指し示した。淑女の着ているドレスは、背中にびっしりと小さなボタンが付いていたり、リボンであちこちを結んであったりして、一人で脱ぎ着できるようなものではない。小間使いはそのために控えているのであり、身支度を整えるのに時間がかかるのは当たり前の事なのだった。
 すっかり、心の決まっているマリエーヌと違って、私にはまだおおいに逡巡があった事を認めねばならない。私自身、彼女のスカートを何度もめくり上げていても、服を脱がせてみた事は一度も無かったのだ。
 はじめて会った男の前で、彼女を裸にしないといけないという状況にためらいを感じずにはいられなかった。
 だが、もう四の五の言いつのってみる状況ではなかった。しかたなく、私は、銀の縁の付いたちいさなくるみボタンをひとつずつ外し始めた。マリエーヌはじっと待っている。
 半分外して彼女の背中が露になってきたとき、私はその細い肩に唇を押し当てた。むき出しになった彼女の背中は、ほっそりとしてしなやかな曲線を描き、なだらかに腰のくびれに続いている。彼女はくすぐったそうに首をすくめたが何も言わなかった。一番下までボタンを外し、いくつかのリボンをほどくと、彼女は身体を軽く振ってドレスを振り落とした。パニエを止めつけていた紐も自分でくるくるとほどいてしまった。
 うんと腰を絞り上げたコルセットを付けた下着姿の少女が現れた。私はかがんで彼女のパニエとドレスを拾い、椅子の上に拡げた。
「コルセットも外すの?」
「よろしければ、みんなお脱ぎいただいた方が…」
 アルバートはわざとらしく片眉をちょっとあげてみせた。恥知らずめ。この男も私も、伯爵の命令という逃げ口上をかさに、マリエーヌに手を掛けようと考える好色な男、という点では同じなのだ。内心の腹立たしさは押し殺し、彼女の背中をクロスして横切っているコルセットの結び目を解き、紐を緩めるのを手伝った。すとんと足元にコルセットが落ちると、後はレースのひだ飾りの付いた絹の下着を残すのみになった。
 マリエーヌはハルトヴィックに背中を向け胸元のリボンをほどき始めた。かすかな膨らみを見せている乳房を除けば、彼女の身体は丸みの無い男の子の身体の線を見せていた。私は、下着の合わせ目から現れた彼女のミルク色の身体をうっとりと眺めた。
「ニコラス。何を見ているの?」
「きみの身体だよ。とってもきれいだ」
 私は思わず手を伸ばして、うっすらと膨らんだ彼女の胸に掌を丸くして乗せた。彼女の肌はビロードのように柔らかで、その手に心地よくほんのりとぬくもりを感じさせてくれる。
「こんなペッタンコの胸で、満足するなんて、ニコラスは女の胸を見た事無いんじゃないの」
 不満げに口を尖らせる彼女の天真爛漫さに私は思わず噴出してしまった。さっきから辺りを覆っていた、息をするのもはばかれるような淫猥な雰囲気はあっという間に霧散して、彼女は無造作にペチコートと下穿きの紐をするするとほどいてしまい、あっという間にレースの中から、ぽんっと抜け出してきた。
 卵の殻を剥く様に、つるりと洋服を脱ぎ捨てて現れたのは、まるで絵画の中から抜け出てきた天使のようにまったく人間としての肉の存在を感じさせない未成熟な身体だった。
 つい、さっきまでよこしまな考えに囚われていた男二人は、ただただ、感嘆の心持で彼女の身体を見つめてしまった。いつまでもいつまでも、見つめ続けていても決してあきる事の無い、触れるのも恐ろしく、側によるのも畏れ多いと感じてしまう奇跡の身体を。光が差し、薔薇の花びらが舞い、天使の歌声が聞こえるようだ。
彼女はどこも隠さず、何も恥らわず、まっすぐに私達を見返してくる。
「不思議」
「え?なにが…?」
「どうしてニコラスは、私の身体をそんなふうに見るんだろう?」
 そんなふう?…って、どんな風に?自分では意識していなかった私は、我が身を振り返ってようやく現実に戻った。マリエーヌは、猫のようにしなやかに、音を立てずに私の側へ来るとするりとその腰に腕を廻して、素裸の身体を私の服に押し付けてきた。頬を胸に押し当てて目を閉じる。
「あなたは分かってないね。今までの男達とは全然違う。誰も私をそんなふうには見なかったのに」
 彼女の言う言葉の意味が私には分からなかった。ただ、その腕の中のぬくもりが愛おしく、今から始まろうとしていた恥知らずな儀式の事はすっかりとその頭から抜け落ちてしまっていた。
 私はたまらずかがんで彼女の首筋に口付けを押し付けた。彼女の膝の力が抜け、しがみついて来る身体が火照ってくるのがわかる。思わず洩らす甘い溜息は、私の胸に熱く湿っていた。腕の中の蕩け始めた身体のその肩の向こうに、私と同じ様にマリエーヌに捕らわれてしまったアルバート・ハルトヴィックの喰い入るような瞳が彼女の背中を見つめているのが見えた。
 

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