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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 


 好き?好きって好き?私の事を好きだって事?それって…なに?私は博人さんを好きで、博人さんは私を好きって事?そんなことってある?
博人さんは立ち上がると、妙にゆっくりと動いてきて、私の座っているソファの肘掛に腰を降ろして、背もたれに腕を掛けた
「夕姫は、気が付いてなかったの?」
 そんな、そんなことって…。
「気が付いているはずないじゃない!」
 思わず立ち上がっていた。
「だって、博人さんって、ポーカーフェイスなんだもん。そんなことって。そんなことって。ちっとも分からなかった。これっぽっちも想像もしてなかった」
 私が、真っ赤な顔をして抗議したものだから、博人さんは困ったような顔をして、そっと私の腕を引っ張った。
「分かった。分かったから座って」
 ぱふん。ふかふかの上等のソファは私が思いっきり飛び乗っても、まったく動じないでその重みを受け止めた。えーと、でも、何か考えないといけないことがあったのよね。私は額に手を当てて考える。えーと、えーと……。
 …SM。
 私は、改めてまじまじと博人さんの顔を見つめた。
「SMが好き……」
 博人さんはちょっとまぶしそうな、困ったような、照れたような顔をして微笑んだ。
 SMが好きって言った……。
「SMが好きってことは…女の人を縛ったりぶったり、蝋燭なんて垂らしちゃったり…するってことなの」
「そうだよ」
 まったく動じない平静な返事に聞こえた。でも、その時、ソファの背もたれにかけられた彼の手のがかすかに震えているのに気が付いた。ポーカーフェイスの博人さん。好きって告げるだけで、四年もかかった私。清水の舞台から飛び降りるような気持ちだった。じゃあ、自分はSMが好きって言うのにはどれほどの勇気が必要なんだろう。
 同情。同情って言った?
「どうして私が博人さんを同情するの?」
「どんなに好きでも、夕姫を自分のものに出来ない。夕姫はノーマルだから」
 その瞬間、私は初めて博人さんを見つけた。四年間見つめていたセピア色の王子様じゃなくって、素のままの私だけの博人さん。
「でも、私、博人さんが好き」
 ちょっと、躊躇って博人さんは私の横に滑り降りてきた。
「夕姫」
 私は、ビクッと後ろに下がった。どうしてなのか分からない。反射的な動きだった。
「大丈夫。いくら、SMが好きだって、いきなり押し倒したりしないから」
「じゃ、じゃ、どうして、あんなに強引にここまで連れて来たの?」
「だって、こんな話、廊下じゃ話せない」
 そのとおりだった。
「それに、同じ事を考えていた」
 同じ事?
「このまま会えなくなるなんて、耐えられない」
 ビンゴ!その通り。私は博人さんの胸の中に飛び込んだ。



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 私は、博人さんと付き合い始めた。大学を卒業して、そこそこの会社の普通のOLとしてのスタートを切った私にとって、博人さんは相変わらず夢の中の王子様だった。
 私は、彼が「SMが好き」と、言ったことを忘れ始めていた。あまりにも具体性に欠けていたせいなのか。それとも、直視するのを怖れていたせいだろうか。違う。彼が私に見せ始めた彼の世界が、あまりにも日常からかけ離れ手いて、私はふわふわと夢の中に迷い込んでいったのだ。
 会社の帰りに待ち合わせをして、夕食を食べる。買い物をする。映画に行く。休日には、ドライブをして、手をつないで歩く。その一つ一つが本当に夢の中の世界だった。
 彼と一緒に歩くようになって気が付いた。博人さんは一般人では無かったのだ。まず、一緒に夕食を食べようという話になると、連れて行かれるのはネクタイをしないでは入れないようなレストランなのだった。その後にちょっと飲もうかと言われると案内されるのはホテルのバー。
 買い物に行けば、タグを見るのが怖いようなお店に連れて行かれ、店員が後から付いてくる。支払いは全部カード。映画を見れば、指定席。いや、そういうお金の問題じゃない。
 どんな豪華なレストランに行っても、相手が普通の男なら、現実の世界だった。でも、そこに座っているのが博人さんというだけで、私はすっかり舞い上がってしまいお姫様になったような気になってしまう。差し出される手に、廻される腕に、囁かれる声にうっとりとなって、異次元の世界へ迷い込んでしまうのだった。
 後ろから囲い込むように抱きすくめられる。耳元で優しく呟かれる。
「愛しているよ」
 頬に触れてくるくちびる。さらりとさりげなく通り過ぎていく乾いたくちびる。
強く引き寄せられ、抱き締められる。甘いキス。吐息。抱擁。幸せな事以外、何も考えられない。
 でも、自分の狭いアパートに帰ってくると、ふと、不安になった。パソコンのスイッチを入れて検索する。
 「SM」そこに現れるのは、縛られた女性の姿。欲望がぶつけられる対象としての…。私は首を振る。あまりにも今、別れてきた相手にそぐわない…。想像できなかった。セックスを知らないって訳じゃない。初体験は高校生の時だったし、その時の彼とは大学に入るまで続いた。大学に入ってからも付き合った相手はいた。結局は二、三度で別れてしまったけど…。
 でも、あまりにも乏しい私の体験からは、何も推し量れなかった。
「部屋に来る?」
 夕食の後に誘われた。付き合い始めて三ヶ月。断る理由はなにもなかった。うなずいて微笑み、彼の車に乗った。駐車場に車が滑りこんだ時、エンジンを切ってしばらく彼はハンドルを指で叩いていた。
「どうしたの?」
 薄暗い駐車場でじっと見つめられた。
「迷っている」
 私は見つめ返した彼の目が光ったような気がして。
「何を…?」
 さ夕姫くようなかすれた声しか出なかった。
「君が欲しい」
 ハンドルを押しやるようにして、そのままゆっくりと助手席にいる私の上に手を伸ばしてくる。右手をドアに付いて、左手できようにシートベルトを外す。そして、動けない私の上に覆いかぶさってくる。
「欲しくて、気が狂いそうだ」
 ほとんどくちびるがふれそうなくらいに近づいて囁かれる。彼の吐息がくちびるにかかる。
「限界」
 私は目を瞑ってそのくちびるが押し付けられるのを待った。
 見ないようにして。気がつかないふりをして、私は彼のものになった。



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 こんなセックスは初めてだった。ベッドの中での彼は、一から十まで、ゆっくりと、念入りに、丁寧に紳士的に振舞った。気が狂いそうなのは私の方だった。
 好きで好きで好きでたまらない人に見られ、さわられ、愛される。その事がどれほどの羞恥と喜びをもたらすのか、知らなかった。
 何をされても感じる。体が反応する。ピンク色の渦に巻き込まれ何が何だか分からなくなった。
 気が付くと彼の腕の中・・・幸せで、幸せで、泣いている私がいた。彼は、気が付くと、黙ってその涙を拭ってくれて、もう一度覆いかぶさってきてキスをくれた。

 うとうととまどろんでいるうちに、ベッドがきしんで彼が起き上がる気配を感じて、目を開けた。
「休んでおいで。」
 ぽんぽんと、頭を撫でられて、また、枕に顔を埋めた。彼はベッドルームに隣接する風呂場に消えていった。シャワーの出る音がする。ぼんやりと枕もとのオレンジ色の光に照らされる、今まで彼が寝ていた枕を見つめた。手を伸ばして抱き締める。かすかに彼の香りがする。日向のにおい。

「好き」

 トゥルルルルル。電話の音に私ははっとなった。枕もとの電話が鳴っている。急いで、その横の時計を覗き込むと午前2時だった。電話がかかってくるような時間じゃない。二回ほどの呼び出し音の後、すぐに電話は留守録に切り替わった。男の子の声?私はほっとして、また、枕の上に頭を戻す。そして、そのまま全身が冷たくなって固まってしまった。

「・・・・だから、明日の夜会ってもらえませんか?もう、一ヶ月も会ってない。辛いんだ。あなたの鞭が恋しい。恋人が出来たのは知ってます。でも、それとこれとは別でしょう?思いっきり責めて欲しい。・・・・連絡を待っています。」

 プツンと、電話が切れてツーツーツー三回鳴った後静かになった。オレンジ色の留守録を示すランプが点滅する。
 
 私は、動けなかった。心臓が咽喉元まで競りあがってきたような気がした。引き寄せた枕を抱き締めて顔を押し付けた。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
 
 部屋に石鹸の匂いが漂ったと思ったら、闇の中を博人さんがほとんど音を立てないで近づいてきて、まっすぐ電話のところへやってくると、点滅しているランプの明かりをスイッチを押しなおして切った。
 私は、じっと息を殺して、動かないで、枕に顔を押し付け続けた。
 ベッドが沈んで博人さんが座ったのが分かった。

「聞いたね。」

 聞かなかった。聞かなかった。私は、知らない。聞いてない。だめだ。だめ。・・・知らないときには、戻れない。

 私は、勢いよく跳ね起きた。すぐ側に博人さんの体があった。ぶつかるようにしてその背中にしがみつく。博人さんは、私の体にシーツを巻きつけるようにして膝の上に抱き取った。彼の体にしがみつく。しっかりと、強く抱き締められて、ようやく私は呼吸が出来るようになった。

「男の子だった。」

 しばらくの沈黙の後、聞かなければよかったと思う答えが返ってきた。

「相手は三人。男一人に女二人。男の子は20。女性の方は・・・」
 私は思わず博人さんの口を押さえていた。目が合うとまったく表情のない彼の顔の瞳だけが泣いていた。

「どうして・・・?愛してるって言ってくれたのに。」
「愛してる。」

 博人さんに抱き締められて、私は彼の首筋に濡れた頬を押し付けた。

 愛してる。愛してる。愛してる。・・・でも、それとこれとは別でしょう?



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 博人さんの手が誰かほかの人に触れるなんて、その腕が誰かほかの人を抱くなんて。耐えられない。つい、この間までのまったく手の届かない人だと思っていた時とは違う。やきもち。嫉妬。私の中で説明できないような気持ちがわいて来た。
「私…私、ちゃんと博人さんの物になる。博人さんが望むことをするから。だから…だから…」
「夕姫には無理だ」
「どうして!?いや。そんなの嫌!」
 博人さんは取り乱してしがみつく私の両手首を握って、そっと引き離した。私はびっくりして、取りすがるのをやめた。博人さんは、困ったような顔をして私を見ていた。
「夕姫。君はあまりにもノーマルすぎる。無理をしたら壊れてしまう」
「そんな事。そんな事」
「夕姫。泣かないで。彼らとは別れる。ちゃんとするから心配しないで」
 そんなこと。私は嫌々と、ダダをこねるように首を振っていた。「SMが好き」って、言っていた博人さん。黙っていることも出来たのに、告白したのはなんのためだったの?私、本当は知らないままいたかったのに。

「…私じゃダメなの?」
 息を呑んだ博人さんの顔色が変わった。一瞬の間の後、ぐいっと両腕を惹かれてベッドの上に放り出された。シーツがめくれてむき出しになった胸にタオルのガウンだけ着た彼がのしかかってきた。
「嫌!」
 恐ろしくて、無意識のうちに逃れようともがいた。
「聞くんだ!夕姫!」
 ビクッと跳ねて動かなくなった私の上に、影になった博人さんの顔がかぶさってくる。
「僕は、変われない。今まで、いろいろやっても、どうしても変われなかった。自信が無いんだ。このまま僕の自由にさせると、僕は君を壊してしまう。それでもいいのか?」
 激しい彼の言葉に私は脅えた。でも、でも、もう、彼の手を離したくない。彼の目を見つめ返す。
「…いいわ。壊して」
 博人さんの目が驚愕に見開かれる。腕を握っている手に力が入る。痛い。
「壊してもいい。博人さんのものになるの」
「夕姫……」
 溜息をひとつ。ゆっくりとのしかかってくる彼の熱くて重い体。その彼の首に両手を廻して必死にしがみついていた。
「夕姫。夕姫。……降参だよ。まったく、君は」
 三人と別れるための期間は一ヶ月。その間は博人さんには、会わないで待っている。そして、冷静によく考える。それが、彼が私に約束したすべてだった。
 翌日の夜。携帯にメールが入った。博人さんの新しい携帯の番号とメール。私は「受け取りました」と、短い返事だけを送った。



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 一ヶ月が過ぎた。約束の日に博人さんは会社の前に車で迎えに来ていた。私は、彼に導かれるまま助手席に滑り込んだ。
「別れた」
 運転席に乗った博人さんは、エンジンを掛けながらそう言った。
「三人とも、後の引き取り手も探してもらった。今後は一切会わないし、連絡もしない」
 差し出された名刺を私が受け取ると、シートベルトをかけた彼はハンドルを切り、車は動き出した。
「マンションの新しい電話番号とパソコンのメールアドレスだよ。携帯電話の方は、もう知らせてあったね。以前のは、契約を解除したからもうつながらない」
 私は、びっくりして彼の顔を見た。
「…引き取り手?」
「彼らとはSMのパートナーの関係だったからね。彼らはもう、新しい主人を持った」
 私はなんといっていいのか分からなくて改めて名刺を見つめた。黙ったまま背もたれに体を預ける。安心と不安。後悔と喜び。どう考えていいのか解らない。この一ヶ月思い惑いながらも、毎日カレンダーとにらめっこをして、日にちを数えて過ごした。もう、彼は私のもの…そして、私は「彼の物」。
 目を閉じて、息を吸い込む。彼の香り。一ヶ月ぶりの私の愛する人の香りを。
 マンションが近づいてきて、なにげなく私は目を上げて建物の中にあるはずの彼の部屋を探す。ふと、何だか違和感に目を凝らしているうちに車は地下の駐車場へ吸い込まれていった。
「まず、夕食にしよう。テイクアウトのイタリア料理が来ている。準備するよ」
 彼が上着を脱ぎながら台所の方へ行ったのを確認して急いで部屋を見廻した。リビングとキッチンと寝室しか知らない。大体の見当をつけてドアを開けて廊下を横切りもう一度ドアを開けた。
「あ」
 何も無いがらんどうの空間。カーテンさえも外されて、黒光りするフローリングがむき出しになっていた。広い部屋。二十畳はある。壁一面に広がる透明な大きな窓。反対の壁は鏡張りになっていた。部屋を横切って窓から下を覗いた。
そうか、こんなに大きな窓があるのに、カーテンが下がってないから中が素透しに見えて違和感がしたんだわ。でも、どうして…?なぜ、こんなに何一つ無いのかしら。
 気配を感じて振り返ると閉めたつもりのドアに彼が寄りかかって立っていた。
「…まったく、君は。油断も隙もないな」
 思わず赤くなっていた。
「ごめんなさい。外から見て何だか変だったから……」
「無理を言って全部、引き取ってもらったんだ。ここは叔父のマンションだったから…」
「叔父様…?」
 ゆっくりと部屋の中に入ってくる。
「うん。専用のベッドや調教用の椅子や道具がね。内装もプレイルームらしくなっていたし」
 私はびっくりして、彼に向き直っていた。
「嫌だろうと思って。全部新しく設え直すつもりなんだ」
 …叔父様のマンションに調教用のプレイルーム?
「そう。叔父も同じ性癖なんだ。だから、すぐにばれた」
 頬に手を掛けてあお向けられた。
「誰にも見つからないよう、一生懸命隠していたのにね。同類にはすぐに分かるらしい」
 腰に手を廻して引き寄せられる。
「それから、いろいろ手ほどきを受けて、この部屋をあてがわれた。パートナーも叔父の関係で知り合った。今回も叔父に頼んで、新しい主人を見つけてもらった。引渡しにも立ち会ってもらった」
 …引渡し?彼の腕の中にすっぽり納まってしまった私の胸は、急激に高鳴ってきていた。
「いずれ君にも紹介するよ」
 彼の顔が降りてくる、くちびるとくちびるが今にも重なるくらいのところで囁かれる。
「愛しているよ」
 私は、耐えられなくて目を瞑った。
「もう、君一人だけだ」
 くちびるがそっと押し付けられる。もう、何も考えられない。体がかあっと熱くなって、押し付けられた彼の膝が足の間に割り込んできても、何の抵抗も出来ずに彼のなすがままになった。

その日、私は何も無いがらんどうな部屋の、固い木の床の上で彼に抱かれた。




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「最初はどうすればいいの?」
「どうって?」
「正座して三つ指突いて…ご主人様どうか調教してください…とか、言うんでしょう?」
 彼のシャツ一枚を巻き付けただけで寝室へ移動して、心地よいベッドの中へ引き込まれた。くすくすと笑う彼が、肩に廻した手にぎゅっと力を込めて抱き締めてくる。
「そんな事、必要ないさ」
「だって、私は博人さんの奴隷になるんでしょう?」
 いきなりくるりとひっくり返されて、体は彼の下敷きになっていた。
「奴隷にするつもりは無いよ。主従関係にするつもりは無いんだ」
 耳の後ろにキスしてくる。私は思わず首をすくめた。
「え?どうして…?」
「僕は君を愛している。だから、優しくして、抱きしめる」
 肘を付いて半身を起こした彼に顔を覗き込まれる。
「それから、君を抱く」
 あまりにも甘やかに囁かれて満たされた体中がぞくぞくとした。
「それから、痛くする」
 乳首をきゅっとつままれた。恥ずかしさに胸まで赤くなるような気がする。痛みにちょっと眉をしかめた。
「もっと、痛くする」
 耳たぶをくちびるでくわえられ熱い息を吹きかけられる。囁きは続いている乳首をつまんでいた指がきゅっと捻られる。
「あう」
 思わず声が漏れていたふうっと息が耳の中に吹き付けられる。体中のぞくぞくが強くなって彼のくちびるから逃れようと、もっと首をすくめ顔を背ける。けれど、しっかりと囲い込まれている体は、逃れようが無かった
「もっと、もっと、痛くする」
 徐々に加えられる圧迫がドンドンと強くなっていき、ぎゅっと瞑った目から思わず涙が滲んでくる。
「痛い?」
「い…痛い」
「可哀想に……」
 首筋をくちびるで愛撫しながら、もっと乳首を強く捻ってくる。
「あ…。イタッ」
 がまんできなくて声が漏れた。首だけでなく体も捻れる。抵抗はまったく役に立たず、肩へ降りてくるくちびるからくすぐったいような快感が体の芯へ突き抜けてくる。さっき十分満足したはずの足の間が甘く熱くなってくるのが分かった。え?どうして?触ってもいないのに…なんで。
 ぱっと指が離れたと思うと、さっきよりももっと容赦の無い動きでもう一度強くつままれた乳首をぎゅっと捻りつぶされる。鋭く強い痛み。
「痛い!」
 考える暇も無く叫んでいた。開いた口を彼のくちびるが覆う。乳首の痛みはじんじんとひどくなってくる。爪を立てるようにして抉られているのだ。体を突っ張らせて、痛みに耐えようとした。我慢出来ず涙が盛り上がる。
「いい子だ」
 くちびるをあわせたままあやすように囁かれる。あっ。あっ。と、声を上げながら無意識に彼の腕を押し返そうとする。でも、しっかりと捕まえられた乳首は痛みから逃れられない。
 いや。いや。痛い。許して。決して口に出すまいと思っていた言葉を心の中で何度も繰り返していた。
 その瞬間、彼は息を深く吸い込み、その勢いのまま、思いっきり深くくちびるを合わせてきた。同時に乳首をぴんとはじかれた。鋭い痛みに私のあげた叫びは、全部彼の口の中に吸い込まれる。
 ……「君は壊れる」
 彼の言った言葉の意味が、じわじわと脳裏を侵食し始めていた。



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9、その枷は荊の枷

 それは、枕もとの小さなオレンジ色の電気を付けることから始まった。ほとんど手探りだったセックスから、小さな明かりに照らされたセックスへ。彼の愛撫に反応する表情を見つめられながらのセックス…。恥ずかしくて顔をそむけ、腕で覆うようにしても、体の反応までは隠せない。
 それから、体の隅々まで触るか触らないかの愛撫がえんえんと続けられる。最初はどうって事無いその愛撫が、20分も起つと、体のどこへ触れても、叫ばずにはいられないほどに感じてくる。思わず声が洩れる。その声を聞かれることすら恥ずかしかった。今までは、何気なく漏らしていた喘ぎ声。それを憧れ続けた博人さんに聞かれていると思うと耐え難い恥ずかしさに貫かれた。
「かわいい」
 一つ一つの反応を確かめながら、囁いて来る。すぐに自分でコントロールできなくなるほど取り乱してしまう私に比べ、冷静に反応を見つめていると思わせる落ち着いた声。たった、二人しか知らないけど、自分たちの快感を追うのに夢中だった若い牡との性急なセックスしか知らなかった私にとっては、そうやって私を追い上げていきながら、徐々に高ぶってくる彼の吐息を聞いているだけで、痺れるほどの喜びを感じるのだった。
 時には、順を追って興奮を高めていく愛撫を省略していきなり足を開かれることもあった。まだ、素の状態のときに彼に見られることの羞恥。そして大きく足を持ち上げられて、優しくクリトリスを擦られる。それだけでどんどん高まっていく自分をつぶさに観察されているのだと思うと、恥ずかしさに惑乱した。そして、SMを受け入れたことで、そういう「恥ずかしい行為に逆らうことが許されていない」と、いう前提条件は、私を異様に興奮させたのだ。何を要求されても、どんなに恥ずかしいことをされても受け入れないといけないということが。
 実際に、恐ろしく恥ずかしかった。これほどまでの長い時間を憧れと片思いで過ごした相手に抱かれているということすら恥ずかしかった。終った後はどうやって振舞っていったらいいのか。何事も無かったように、穏やかに接してくる彼が恨めしくて……それでいて幸せだった。
 そうやって、少しずつ何かが変わって行ったのだ。その緩やかな始まりは、身構えていた私をいつの間にか油断させ、大きく押し流していった。
 彼が触れる。
 体が反応する。
 それこそが刷り込みの始まりだったのに……。
 何度かの逢瀬の後、彼は初めて私の手首を縛った。柔らかな絹のスカーフのゆるい拘束……。想像していたのとはまるで違う、形だけの戒め。それなのに、昨日までの自分の何倍も感じ始めた体。まるで、魔法のようだった。縛られた腕を頭上に押さえつけられ、首筋から脇の下へ念入りに愛撫されると、耐え切れずに泣きながら懇願せずに入られなかった。
「お願い……。もう」
 その吐息を彼は口付けで封じ込める。触れてくる指はかすかに震え、時には強引に強く肌を吸われる。てんてんと赤い花を散らされるとその痛みに私はのけぞった。
 終った後、彼は私を引き寄せると、息も絶え絶えの私の額に、瞼に、頬に、そしてくちびるに優しくキスをくれた。そして、押さえられないかのように急に深く激しいくちづけを繰り返した。
「考えても見なかったな」
 私の頭を自分の腕枕の上に落ち着けて、私の手を玩び、その指先にキスを繰り返しながらつぶやく。
「好きな相手を縛ることが、これほど喜びと快感と興奮をもたらすなんて」
 口に出して言われると、あまりにも恥ずかしく、私は彼の胸に赤くなった頬を擦り付けて隠れようとした。くすくす笑いながら強引に私をひっくり返し上に覆いかぶさって顔を覗き込んでくる。
「夕姫がそうやって恥ずかしがっていると、ついつい、もっと虐めたくなる」
 ふと、博人さんの目が真剣になる。
「夕姫。夕姫。本当にいいのか。もう、僕は止められそうにない」
 私はこっくりとうなずいて彼の胸に頬を押し付けた。彼に聞かれるまでも無く、何度かの逢瀬がもたらした喜びを失うことなど想像も付かなくなっていた。博人さんに愛されたい。もっと、激しく…。もっと、深く。
「痕が残ったね」
 キスマークが体に花びらが散ったように残っていた。彼は、嬉しげに目を細める。そしてその赤い痣を指で辿りながら囁いた。
「愛している」
私はその愛に飲み込まれていく。なすすべも無く。
 次に私が誘われた時には、がらんどうだった部屋はすっかり様変わりしていた。大きな天蓋つきのベッド。そしてそのベッドの天蓋と同じお揃いの小豆色のビロードのカーテン。
 天井に何本も渡された大きな梁と部屋の中央に立てられた二本の柱。あちこちに下がる鎖や取り付けられた金具。さりげなく置かれた寝椅子や大きな肘掛椅子。片方の壁一面に取り付けられた古風な開き戸の棚。私は、足がすくんで中に入れなかった。
 私に取り付けられた見えない枷はついにその口を閉じたのだった。



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 何も考えずにくるりと回れ右して、走って玄関からとび出そうとして、少し後から来ていた博人さんに腰の辺りを捕まえられた。
「どこへ行くの?」
「あ…私、ちょっと急用が、あの…急に、思い出して」
「逃げ出そうとした」
 恥ずかしくて博人さんの顔が見られなかった。
「……ごめんなさい」
「信用無いんだな。僕は」
「そんな事!」
 慌てて顔を上げると苦笑している博人さんと目があった。そっと抱きしめてまぶたにくちびるを寄せてくる。
「夕姫が、部屋を見て、今日は帰りたいって言うなら送る」
 そんなふうに言われると、とても帰るとは言えない。博人さんに腰に手を廻されてエスコートされるようにしてもう一度扉をくぐった。
 改めてみると、部屋のインテリアは小豆色とクリーム色に統一されていて、落ち着いた感じに仕上がっていた。中央の二本の柱も部屋に溶け込むように精緻な飾り彫りが掘り込まれている。大きな窓に掛けられたレースのカーテンから柔らかい光が降り注いでいた。それでも、あちこちに下がる鎖や取り付けられた金具の恐ろしさを消すことは出来ていない。
 私はおそるおそる飾り棚の方をうかがった。その中にどんなに恐ろしい道具が隠されているのかと思うと息苦しくなって来る。そんな私の様子を見ていた博人さんは、ベッドの側まで来るといきなり私の腰を強く引き寄せると横とびにベッドに飛び乗った。私は博人さんを下敷きにしてぱふんとベッドに倒れこんだ。
「きゃああ」
 じたばたとしばらくもがいて、自分の馬鹿さかげんに気がついた。
「夕姫、怖がっているでしょう」
くるり、と位置を変えて自分が上に乗ると今度は体重がかからないように肘を突いて覗き込んでくる。ちょっと、面白がっているような瞳がいつもの博人さんで、私は少し安心してうなずいた。
「あ、でも、SMするのがいやって訳じゃないのよ。それ、するって、私が決めたんだから。博人さんに付いて行くって」
 博人さんのちょっとさびしそうな微笑を見つめていると、私はすぐに後悔した。
「…がっかりした?」
「がっかりはしないけど…。なんだか怖い」
 え?怖い?……どうして?
「夕姫が、嫌になってしまうんじゃないかと」
「そんな事!そんな事無い」
 慌てて一生懸命否定してみせた。本当は「SMの事が無かったらどんなに安心して博人さんの側にいられるか」と、思うときもあるけれど、でも、反対に何をされるのかどきどきしながらも、期待している自分もいるのだった。
 博人さんが耳の後ろにキスしてくる。
「じゃあ、今日は、ベッドに縛りつけてもいい?」
 そんなことを優しく訊ねられて、私は、真っ赤になっていたと思う。随分とためらった後に目をつむってうなずくのが精一杯だった。
 シャワーを浴びて、ガウン一枚でベッドに座って待っていた。どうしょうも無い不安と期待に火照ってくる体をもてあましながら。博人さんのほうを見ないで一生懸命床だけを見つめて。
 ひたひたと裸足で床を伝っていく人影がカーテンをしっかりと閉じた。部屋は薄暗くなり、私は自分の心臓の音を聞いて震えた。枕もとの明かりがひとつだけ灯される。横に並んで博人さんが腰掛けてベッドのクッションが一瞬沈み、しっかりと跳ね返す。
「手を出して」
 言われるままに手を差し出すと手首に黒い皮でできた枷が巻かれた。ベルトのバックルのような場所を博人さんが止めるとその枷が私の手首によりも先に心に巻きついてきたような気がして、私はその手枷をじっと見つめるしかなかった。
「反対も」
 逆らわずおとなしく手を出す。心臓の音が響き渡り、私はそれを聞かれているのではないかという不安に咽喉元が締め付けられるような思いだった。気がつくと博人さんが足元にしゃがみこんで、私の足首にも同じような枷を巻いていた。そして、反対の足にも……。
 枷を巻いた足が持ち上げられる。足の甲に博人さんがくちびるを当てた。焼き鏝を当てられたみたいに熱くて、私の体を抑えようの無いおののきが走り、思わずぎゅっと目をつぶってしまう。
 立ち上がった博人さんに一瞬抱きすくめられたかと思うと、何がどうなったかわからないうちに体が回転した。いつの間にかベッドにうつぶせにされていた。ガウンを肩から引き剥がされる。裸にされちゃう。あ、恥ずかしい。いや。見ないで。私が自分の羞恥にかまけている間にあっという間に手首は捕らえられてベッドの柱から伸ばされた鎖にカチャンと止めつけられていたそして反対の手も…。
 博人さんが影のように静かに動くと、右足を捕まえ引きはだけられる。ああ…大の字にされるんだ。込み上げてくる恥ずかしさを必死で飲み込もうとする。体全体に力を込めて、手のひらを握りしめて。
 博人さんの手が反対の足に伸ばされる。足首の周りをゆっくりとなぞりながら…。
「夕姫?開くよ。いい?」
 いや!そんな事、聞かないで。私は必死に首を振った。覚悟していたはずなのに、足に力を込めてねじり合わせていた。博人さんは、私のあらがいをしばらく黙って眺め十分楽しんでから、強い力でじわじわと足を割り開くと膝の間に体を入れてきた。
 足が大きく拡げられてしまったのが足の間にひんやりと空気が入り込んでくる事で分かってしまう。思わず夢中で鎖を引っ張っていた。じゃらじゃらと鎖がなる音がして、どんなに力を込めても肘や膝をちょっと曲げられるくらいで大の字に張り付けになって動けなくなったことが分かっただけだった。
 博人さんは、ぞわりと膝の内側を右手で撫で上げた。
「ひいっ」
 私は情けない声をあげて跳ねた。
「夕姫。このまま、こっちの足もつないでしまうからね?」
 博人さんは、しっかりと内腿の間に自分の膝を差し入れておいて聞いてくる。いや。いや。いじわる!私は恥ずかしさでぶるぶると震えながらも、彼の問いにうなずくしかなかった。



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 しっかりと目をつぶって、身体を固くして、息を詰めたまま、硬直していた。博人さんの前で、全裸で大の字に拘束されてしまった。たとえうつぶせだからといって、恥ずかしさが減るはずも無い。覚悟していたはずなのに、あまりの恥ずかしさに身動きもならなかった。
 目をつぶって何も見ないように何も感じないようにひたすら祈る。その顔の上に何の説明も無くアイマスク被せられて、私はびっくりして顔を上げる。目を開けてもわずかな隙間から光が差し込むだけだ。
「動かないで・・・。」
 その上に博人さんは、さらに目隠しをした。柔らかな絹の肌触り。頭の後ろでしっかりと結ばれてしまうと見えるのは漆黒の闇だけだった。頬を撫で上げた手が離れていく。何が起きるのか。何をされるのか。ただじっと待つしかなかった。ベッドのスプリングが弾んで、博人さんがベッドから降りたのが分かった。ひたひたと足音が遠ざかる。

シャッ!

 カーテンが引かれる音に私は飛び上がった。しかも、もう一回。

シャッ!

 え?どういうこと?廻らない頭で忙しく考える。二回カーテンを引く音がした。さっき博人さん自身が、ビロードのカーテンをしっかりと閉めて部屋を暗くしたのだ。それを開けたということは、あの大きな窓から部屋中に昼の光が差し込んでいるということを意味していた。ベッドの頭のオレンジ色の小さな明かりでも恥ずかしかったのに、明るい光の中で隅々まで照らされた身体を見られているのだと思うと、愕然とせずにはいられなかった。

「いや。博人さんカーテンを開けないで。」

「ひ、博人さん?」

 ひたひたと足音が戻ってくる。私は混乱して起き上がろうとした。鎖がガチャっと鳴ってベッドに縫い留められた身体を引き戻す。あ。どうしよう。見られちゃう。いやっ。足を閉じようと太腿に力を込める。ガチャガチャと鎖が音を立てるだけで、どんなに力を込めても大きく開かれた足を閉じることはかなわない。

 どうしようもない。何の抵抗も出来ない。その事実に胸が締め付けられる。

 足元のベッドが沈む感覚があった。私は全身の皮膚の感覚をそばだてるようにして、博人さんの動きを追わずにはいられなかった。ギシッとベッドが沈み、足の間に手が入り込んでくる。そして、一番恥ずかしい、隠しておきたい所に触れていく。適わないと知っていても、太腿に力を込めてしまう。ひんやりとした濡れた感触。ツン・・・と、部屋にミントの匂いが広がる。何か・・・塗られた?敏感なところが急に熱くなりジンジンと火照り始める。動くまいとしても、もぞもぞと動かずにはいられないようなじれったい感覚。

「あ・・・。」

 なに?なんだろう?熱くなる。あ、いや。私、どうして?感じてきてる。ブーンという低い電気音が聞こえた。はっと頭を振り向けるが何も見えない。でも、誰だって知っている。使ったことはないけれど、それが女性の身体に快感をもたらすおもちゃの立てる音だということ・・・。

 いや。いや。しないで。博人さん。いや。その音がゆっくりと足の間に近づいてくるのを、私は、震えながら待つしかなかった。



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 電池で震えるおもちゃは私の一番敏感なところに、触れるか触れないかの所に置かれた。空気の振動が伝わってくる。硬直している私を置いて、博人さんはベッドから降りた。どこ?どこにいるの?床を擦る木の音がして、博人さんが椅子を引き寄せて座ったのが分かった。
 動けない。私は息をするのも怖かった。足の間にあって確実にかすかな振動を伝えてくるおもちゃの存在。椅子に座ってじっと私を見ている博人さんの視線。頭の中では自分が彼の前でどんな格好をしているのか。部屋に差し込む光がどれほど明るかったか。そのことでいっぱいになっていた。
 それなのに、足の間が熱くなりとろけていくのが分かる。内側から確実に膨らみ充血し開いていく花。蜜がトロトロと溢れ感じやすく尖ってくる。あ。耐えられない。思わず身じろぎをしたとたん。その尖りがおもちゃの鋭い振動に触れる。体中に広がる甘い快感。
「あうっ」
 声を上げてしまい、そのことに硬直する。聞かれた。博人さんにその声を聞かれた。セックスの時とは違う。お互いに抱きしめあい、求め合っているときとはまったく違う。何の乱れも無く冷静な博人さんがすぐ側の椅子に座っていて、なす術もなく溶けていく様を、 
 じっと見られているという恥ずかしさが脳を焼き尽くそうとする。いやいや。恥ずかしい。必死におもちゃから体を遠ざける。でも、一度触れたことで知った欲望の灯はどんどんと私の体の温度を高めているようだった。
 体がじんわりと汗ばんでくる。握り締めた手もシーツに押し付けた額も…。体が震える。欲しい。アレが欲しい。ほんの1ミリ先にそれはある。振動しながら私を待ち構えている。ちょっと体を動かせば手に入るところに、おとなしく座って待っている。博人さんが動く気配がする。
「欲しい?」
 欲しくない。欲しくない。欲しくない。顔を覗き込まれている。彼の吐息が頬にかかる。いや。私は急いで顔を背けた。頬に手を当てられ、ゆっくりと引き戻される。いや。見ないで。いや。
「体を動かして押し付けてごらん」
 そんなこと。どうして、そんなことさせるの?首をいやいやと振ってみせながらも、自分でもそうしたくてたまらないのに気がついた。神経をじりじりと炙られているような耐え難さ。
 ああ。もうだめ。ゆっくりと縮めていた腕を伸ばしてずり下がる。一番の望んでいた場所に、鋭い快感が突き上げてきた……と、思う間もなく、固定されていないおもちゃは、体に押されたことで勝手にするすると逃げていく。自身の振動も手伝って、届かないほど遠くへ。
「あ!いやぁ!」
 いや。いや。いや。自分のした事と、その結果に私は身もだえして泣いた。こんな恥ずかしいことをさせる博人さんが恨めしくて、そんな博人さんを焦がれるほどに求めている自分が恨めしくて……。
 暖かい彼の体が重なってくる。肩にキスされる。うなじにも。髪の毛にも。くちびるは背中を降りてくる。それだけで、今まで知らなかった喜びが押し寄せてくる。私はのけぞり波にもまれて痙攣した。意識がふっと白くなり、感じるのは抱きしめてくる暖かい腕だけ……。
 その後は夢の中のように物事が進んで行った。手首から始まってわき腹をゆっくりと降りて来る愛撫。腰骨の上をくるくると廻りながらさまよい続ける。この間のセックスとどう違うの?ただ、身動きが出来ないように拘束されているというだけで、どんな愛撫も外に流すことが出来ないのだ。
 自由に動けないということが、愛撫に答えられないということが、これほど世界を変えてしまうなんて。後ろから覆いかぶさってきた博人さんの息が弾んでくる。
「夕姫。もう、我慢出来ない。後ろから入るよ」
 答えられる余裕なんて無かった。私はただ泣きながら博人さんに貫かれた。



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