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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 
「ヴァイス!よく帰ってきてくれた。待っていたんだぞ」
「ミルヒシュトラーゼ公爵閣下」
 両手を拡げて近づいてくる二年ぶりに会う主人は、細身ながら背も高くなり、すっかり少年期を脱した様子だった。丸くふっくらと滑らかだった頬がそげ、影を宿している。手足にも、青年らしいほっそりとした筋肉が付き、声も柔らかなテノールに変わっていた。銀色の光る髪と、どこまでも深く青く冷たい瞳をのせた白い象牙の肌。この二年の年月は確実にお互いの上を流れていた。
 そう、私自身も、もう子供ではない。軍隊で鍛え上げられた大人になった体と筋肉は、騎士たるにふさわしい服に身を包み、見違えると言う意味ではお互いに同様の立場だった。
「やめろよ。そんな呼び方」
私はちょっと眉を上げて、嫌そうに顔をしかめた彼を覗き込んだ。
「公爵閣下はお気に召しませんか?」
「ああ!ちっとも召さないね。騎士ヴァイス・シュトゥルム。ようやくあの堅苦っしくって、息の詰まる王宮を抜け出せたっていうのに、家に帰るとかつての幼馴染は三歩下がってかしこまって手も触れてこないのかい?」
 腹立たしげに床を蹴りつける様子からすると、当主として戻ってきた館で使用人が示した態度によほど腹を据えかねているのだろう。
「それは、しかたありません。なんと言っても、もう子供の頃のようにはまいりますまい」
「ヴァイス!よくそれで、舌を噛まないね」
 腰に手を当てて前かがみになって顔を突き出して怒っている彼の様子は、主人が二年前と変わらぬ友情を示してくれている事を十分に現していて、私を心の底から温かい思いにさせた。私は、わざと乱暴に三歩の距離を詰め、思いっきり力を込めて彼を抱擁した。
「……ヴァイス……会いたかった」
「わたくしもです。フランツ様」
 ひとしきりお互いの存在を確かめ合い、お互いの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、昔と変わらない暖かな喜びに満ちた気持ちが拡がる。抱擁を解き、私が三歩さがると彼はやっと安心したように、肘掛け椅子に腰を降ろした。
 私が、テーブルの上に準備された葡萄酒の封を切り、グラスに注ぎ分ける様子を懐かしそうに目を細めて見ていたが、ひょいと体を捻ると、肘掛の上に反対の肘を付いて顎をのせる。
「おまえ、軍隊を辞めてしまってよかったのか」
「フランツ様が従軍なさるときはお供いたしますよ」
グラスを渡すと、ちょっとまぶしそうに見上げてくる。
「私の言う意味分かっているだろう?」
「もちろんですよ。でも、わたくしの気持ちもお分かりでしょう?」
ひとつうなずくと、お互いにグラスを上げた。
「父上に……」
「旦那様に……」
 亡くなられた旦那様には、ことのほか良くしていただいた。今、こうしてフランツ様のお側にいられるのもすべて旦那様のおかげだった。
「あまりにも急なことでした。あいにく国境に詰めておりまして、ご葬儀にも間に合いませず……」
「いいんだ。父上は分かっているさ。父上はお前のことを殊の外気に入っていたし……お前だって……」
「はい……」
しんみりとした空気が部屋に満ちた。私達は声に出すことなく亡くなられた大事な方の思い出を心に巡らせた。

「ところで、お前、書き物はすごく得意だったろう?」
「はい?」
 唐突な話題の転換に、私は目をぱちくりさせるしかなかった。
「いや、片付けないといけない書類仕事が山ほどあるんだよ。もちろん、私が早く遊べるように手伝ってくれるだろう?」
「はい。しかし、家老は、どうされたのです?それに出納長らもお手伝いするはずでしょう?」
「もちろん、みんなが総出で事務仕事をやっているさ。だから、お前もやるんだ。まさか、お前、俺の服を脱がしたり、靴を磨いたりするために、私がお前を呼び戻したと思っているわけじゃないだろう?」
 私は、びっくりして赤くなった。その通りのことを考えていたからだ。彼の身の回りの世話をするのは、自分の権利のように考えていた。くすくす笑うフランツ様の震える肩を恨めしげに見るしかなかった。
 翌日から私は、取り上げられた自分の仕事の代わりに、彼と一緒に膨大なミルヒシュトラーゼ公爵領に付随する相続のための事務仕事に忙殺される事になった。





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