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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 
 夕食の後、書斎であれやこれやの報告すませた。幼い頃からいずれは当主として領地を支配していかなくてはならないことは既知の事実だったので、フランツ様はそのための教育を受けておられる。
 何の逡巡も無く次々と処理を命じるその口調にもまったく危なげも無く、出される命令も驚くほどに先を読み計算されつくした指示だった。夜も遅く、祐筆を呼ぶまでも無いという判断から,私が直接筆を取り、いくつかの命令書を作成した。すべての仕事があらかたすんだ時は,すでに深夜を廻っていた。彼は、クリスタル・グラスを二つ並べてウィスキーを注ぎ、そのひとつを私のほうへ廻してくださった。
「遅くまですまない。旅から帰ったばかりで疲れていたのに」
「いいえ、とんでもございません。ずっとこうしてお役に立つことを夢見ておりました」
 私はグラスを取り上げ、その強い酒を一気に飲み干した。これからする話の内容を考えると,どうにも素面ではいられそうにも無かったのだ。
「ヴァイス?」
 いつに無い私の酒の飲みように勘の鋭い彼は、いぶかしげに私のほうを伺っていた。
「どうした。なにかあったのか」
 あったのです。フランツ様。私にとって、どうしても認めたくない事が……。私はうつむいたまま逡巡した。
「モレンツが……」
 彼の顔色がさっと変わると、私の会話を遮るように大きく手が振られた。
「そうか、いい。それ以上いうな!」
 私と同じように、グラスの中身を一気にあおると彼は、音を立ててグラスを机に置いた。
「フランツ様!」
 ドサッと音を立てて椅子に座り込む。かすかに震える手で額をおおい、うつむいてしまった主人。私は、どのように言葉をつないだらよいのか分からず立ち竦むばかりだった。静寂が私と彼の間を隔てていた。こんなことは今まで無かった。どんなときでもこれほどの隔てを感じたことは……。
「フランツ様……」
 彼の膝の側にそっとしゃがみこんだ。嫌がるようにそむける顔を覗き込む。彼が示す拒絶が、胸の奥にじわじわと広がって行くようだった。王はいったいあなたになにをしたのです。喉もとまで沸きあがってきた質問を口に出すまいとして、それでいて訊きたくてならず、胸が絞り込まれるようだった。
「必要なんだ」
「快楽奴隷が、ですか?」
 自分で言っておきながら、その瞬間切り裂かれるような痛みに思わず呻いた。
 フランツ様は、さっと顔を上げて、私を正面からねめつけた。
「そうだ!私、わたしは……」
 声をあらげようとして、急激に消え入るようになった後、彼はいきなり立ち上がり、きびすをかえて部屋を出て行こうとした。ぞっと背筋を這い登ってくる恐怖。こんないさかいの後、主人から拒絶されたまま置き去りにされる恐怖が、思わず私を突き動かしていた。必死になって彼の服に取りすがった。
「フランツ様!お願いです。なぜ、わたくしを退けられますか」
「ヴァイス。お前だからこそとは思わないのか!?」
 手を振り払おうとして、私の取り乱した顔に驚いたように立ち止まる。振り上げた手がぎゅっと握りしめられる。
「おまえには……。おまえにだけは……」
 私はその握りこぶしをそっと捕まえた。私の主。私に死ねと命じることのできる、ただ一人の主の手だった。私は、胸に突き上げてくる説明のできない欲求のまま、その手にくちづけていた。私のほうを、ことさら見ないように目を閉じて顔を背けて震えていた彼は、やがてあきらめたかのように私の手を握り返してきた。
「分かった。寝室へ来てくれ。ここでは……話せない」
 振り向かぬまま、彼は部屋を出て行った。私は、自分が分を越えて主にした事に呆然となって、しばらく動くことができずその場所に膝を付いていた。
 やがて、溜息をひとつついて立ち上がると、彼の指示で書き上げられた封をされた命令書や書類を取り上げると、しかるべく処理するためにベルを鳴らして従卒を呼んだ。心は、まだ、計り知れない闇へとさまよい出ていたけれど……。




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