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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 
 一番遠い領地、シュヴァルツ侯爵領へ、いったん戻らなければならない日が近づいてきていた。山のようの事務処理もあらかた終わり、有力な親族への挨拶回りも終わった。フランツ様は、まだ、妻帯していない。若い当主がお披露目のために大々的な晩餐会を開かなくても、それはそれで仕方ないと納得してもらえる程度にいくつかの晩餐会や、舞踏会に顔を出された。
 親戚の中でも王宮で一番の重責を担っているマンシュタイン伯爵が、後見として自ら主催して舞踏会を開き、引き合わせなければならないと考えられる貴族達に紹介なさってくださり、一応の義理ははたされた。もちろんそのほとんどは、王宮で常に陛下の傍らに控えていたフランツ様とは顔見知りであったのだが……。彼が決められた宮廷社交の手順を踏んでいる間に、私は館を立つ準備を整え、後をまかせるモレンツと細かい打ち合わせをした。
 明日は旅立ちの日という夜、フランツ様はいつもよりもひどく遅くなってお戻りになった。大分お酒が大分入っているようで、青ざめて足元もおぼつかない御様子だった
「ヴァイス?起きていたのか。明日は出発なんだから先に、寝ていてもよかったのに」
「馬車の中で眠りますよ」
 玄関の扉を開けた私が、部屋へお供しようとすると、フランツ様は苦笑して手を振られた。
「ヴァイス、もう休め。身の回りの事は、ミハエルにさせるから、あいつもどうせ起きて待っているんだろう?」
 ミハエルというのは、現在のフランツ様の小姓のことであった。私は、彼を他の人間に預けたくなくて、不機嫌に黙って付いていこうとしたが、彼は手をのばして私の胸を押し戻した。
「ヴァイス。明日からは、ミハエルはいない。二人だけになるんだし、今夜は最後の夜なんだから、ミハエルに譲ってやれ」
 もっともな理屈だったので、私は仕方なく引き下がった。うかつだったと言われればそれまでだった。当然気がついてしかるべき事があったはずなのに。領地へ旅立つ貴族が、「必ずなさねばならないこと」を思い至れば……。
 早立ちの馬車の中で、フランツ様は酷くご気分が悪い御様子だった。顔色も悪く、落ち着かない様子で何度も座りなおされる。
「フランツ様?」
「……どうも、二日酔いのようだ。慣れないお酒を随分飲まされたからな」
「馬車を停めてしばらく休憩されますか?」
「いや……。肩を貸してくれ。少し眠れば治るだろう」
 向かい合わせに座っていた私は、彼の横へ移動した。肩に頭を乗せて、何度か座りなおしたフランツ様の肩を私は抱き寄せた。安定して寄り掛かれるように誘導すると、ほっとしたのか、やがてようやく眠ってしまわれた様子だった。
 私は彼の天使のように美しい寝顔をこんなに間近で眺めるチャンスをありがたく享受していた。だが、もたれかかってくるフランツ様の体はなぜか普段よりも熱いような気がする。額には冷や汗が浮いていて、寝苦しそうに、何度も位置を変えられる。私はだんだん不審がつのってきていた。
 肩に廻していた手を、きづかれないように少しずつずらしていく、移動する手に反応したのかフランツ様が苦しそうに呻かれる。そして、急にビクッと震えたかと思うと腰の辺りにあった私の腕を乱暴に振り払った。
「やめ……嫌。嫌です。お許しを。陛下……。陛下」
 叫んで跳ね起きたフランツ様は、一瞬自分のいる場所がわからないかのようにうつろな瞳を周囲にさまよわせた挙句、あっけにとられているわたしの存在に気がついて、一層に青ざめられた。私は、自分のうかつさ、鈍感さに舌打ちしたいほどの悔しさを感じた。手をのばしてフランツ様の両手を捕まえる。
「昨日、なにかあったのですね」
さっと、そらされるやましさを宿した瞳。
「どうしてです。もう、あなたは小姓ではないのに……」
「……陛下が望めば、誰も逆らえない」
そのとおりだった。絶対無二の至高の権力を持っている存在なのだから。
「だから、あなたは、昨日、わたくしを近づけなかったのですか?ミハイルなら見せてもいいと?」
「ちがう!ミハイルはおとなしく下がっていったさ。あの子は、まだ、……子供なんだ」
「見せてください。なにをされたのです?」
 フランツは、顔色を変えて私の手を振りほどこうとした。だが、力でねじ伏せれば、私のほうが勝っているのは明らかだった。
「いやだ。ヴァイス。こんな場所ではやめてくれ。御者に聞こえてしまう」
「……では、宿でおみせくださいますか?」
 私達はまるで仇敵同士のように、強い瞳で睨みあった。だが、結局は折れたのはフランツ様の方だった。一度強く目をつぶると、開けたときはもう平静になっていた。
「おまえがそうしたいのなら」
 そして、ゆっくりと手を振り払った。そうなってしまうと、もう、私には逆らうことはできない。私が踏み込めるのは、彼が許したところまで。それは昔から変わらない。主人はあくまでも主人。生まれながらに人の上に立つと決められた人間は、確かに存在するのだった。私はおとなしく馬車の隅に引き下がった。
 フランツ様は、ちょっとためらってから、再度私にもたれてきた。私は体の位置を変えて彼が楽に眠れるように受け止める。
「ヴァイス……。おまえ、本気なのか」
 何を聞かれているのかすぐに分かった。私ははっきりとうなずいた。
「領地に帰れば、館の奥深くに尋問用の隠し部屋がございましたでしょう。あそこなら、誰にも気がつかれません。石の壁も、樫の扉もことのほか厚く音が漏れないようになっておりますし」
「……本当は、お前をいたぶってみたって、何も変わらない」
「いいえ。違います。きっと何か分かります。私にとっても、あなたにとっても。私達は知るべきなのです。知らないから怖れている、今の状態は正しくありません」
「そうだろうか。最初、私は、ただ意趣返しがしたかっただけかもしれないぞ」
「意趣返しでもかまわない。あなたが楽になるのであれば」
 フランツ様の熱い体を抱いているうちに、自分の中で高まってくるものを私は感じていた。今まで、一度も見ようとしなかったもの。あってはならないとして、押し殺してきたもの。それが、ゆっくりと己の皮を破って、姿を表し始めていた。



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