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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 
  宿にはすでに先触れが廻してあったので、大貴族である公爵家の主人とそのお供である使用人の集団を迎え入れる準備はすでにできていた。
「医者を呼びますか?」
 すでに、フランツ様の体からは、血の臭いが漂っている。
「大丈夫だ。たいした傷じゃない。お前が薬を塗ってくれ」
 明日からの旅程に添ってあれこれと手配をすませ、フランツ様が案内された部屋に行くと、すでに荷解きがすまされ、部屋の中には夕食の準備ができていた。簡単に顔と手を洗い、みづくろいをしてテーブルの傍に控える。
「ヴァイス」
 フランツ様に、テーブルの向こう側の椅子を指し示され、私は、一瞬、戸惑った。今まで一度も彼と同じ食卓に座ったことは無かったからだ。
「騎士様、何を遠慮している?お前に用意された椅子に座るといい。これからずっと、私の向かい側にはお前が座るんだ」
 人生の間ずっと……。口に出されなかった約束が聞こえる。許された椅子。あなたの隣の椅子。私は、黙って腰を降ろした。
 そう、これからの長い人生をずっと、私はこの人を助けるために、仕えるために、生きていくのだ。それは、ずっと前から決められたことだった。亡くなった公爵が私を彼のために選び出し、それから彼と私二人で育んできたお互いの関係。だが、その道程を歩む時、彼の傍に自分用の椅子があるという幸せは、考えていなかった。私と彼の間にはあまりにも大きな身分の差がある。それを越える日が来るということは私の想像の埒外だったのだ。
 グラスに葡萄酒が注がれ、お互いの目を見ながらそれをあげる。なにがあろうとも、私はあなたの側を離れません。絶対に。
 そして、夕食の後、部屋にはお湯が運び入れられ、湯浴みの準備が整えられた。すべての使用人を扉の向こうへ追いやって、戻ってきたときには、フランツ様は、落ち着いた様子でシャツを脱ごうとされていた。その背中。思いもかけなかったほどに無残に引き裂かれた背中を私は硬直して見つめた。酷い。なぜ?なぜこんな酷いことを。
「昨日は、陛下はちょっとお酒を過ごされていた。いつもはここまではなさらないんだ。傷が残るといけないから」
「湯に……浸かれますか?」
「どうだろう?きっと沁みるだろうな」
 フランツは顔をしかめた。だが、もう覚悟を決められていたのだろう。ためらいも無く、残りの服もさっさと脱ぐと、バスタブの中に足を差し入れた。
「う……っつ」
「昨日のうちに、手当てさせてくださればよかったのです」
「馬鹿言うな。昨日は、そこまで、開き直るほど覚悟ができてなかった」
 私は、お湯加減を見て、水差しから少し水を足した。その方が少しでも沁みないと思ったからだ。そして海綿で体をそっと撫で洗った。背中の傷も消毒のためには、やはり石鹸で洗うのが一番のようだった。
 洗っている間。海綿が触れる度に彼の体は硬直した。おそらく酷く痛むのに違いなかった。血糊を洗い落としながら私は彼の息遣いを追っていた。少しずつ切迫して上がってくる彼の呼吸音。痛みにみじろぐ背中。こらえきれずに洩れる呻き声。私の中でいつもは押さえつけられている獣が目を覚ましつつあった。私は、慄然としながら歯をくいしばった。これは……これは、なんだ?この気持ち。この、まがまがしい気持ちは……。
 自分が主人に対して欲情し始めていると気が付くと、もう、彼の体に触れる一瞬、一瞬が拷問のように強く心に爪を立てるのを、息を潜めてみつめるしかなかった。自分の動悸が段々と大きく早くなってくる。主人のつく浅い呼吸に、同調し始める。……気付かれる。気付いている。気付かれている。
 フランツ様の体全体がぽおっと赤く染まっていくのを、私は息を呑んで見つめた。体全体をこわばらせていながら、すべてを私にゆだねきっている。私は目を閉じて、必死に高まった快感のうねりをやり過ごした。もう、隠しようが無い。後ろめたさに体が硬直する。
「……フランツ様」
 赤くなって視線をそらす私の瞳を振り返って覗き込んでくる青い目。氷の浮かぶ北の海のように冷たく澄んだ青い瞳。そして、ゆっくりと近づき、私に触れる寸前で止まる紅い唇。開いた唇に彼の甘い吐息がかかる。
「ヴァイス。……私が欲しいのか」
「わかりません。今まで、一度も……いや。欲しい。あなた以外は何も欲しくないのですから。欲しいに決まっています。でも、想像したことも無かった。こんなことは」
 ぱしゃり。水音がしてフランツ様は姿勢を変えた。
「もう、いい。流してくれ」
 私は、溜息をついて、硬直から逃れた。新しいお湯を何度も体に注ぎ、湯から上がった体の水滴を拭うように白く大きな布で包んだ。フランツ様は携帯されていたバッグの中から練り薬を取り出すと、私の手の上に乗せた。白い布を腰に巻きつけるとそのままベッドへ上がる。
「どうやっても痛いに決まっているから、遠慮しなくてもよいからな」
 苦笑のこもった彼の声にほっとしてベッドへ近づく。だが、おそらくは、彼も知っていたに違いない。薬を塗る間、私が何を感じ。何を見て。何を思うのか。そう。私の中の獣が自分の手の下で痛みにゆるりとのたうつ獲物を、捕らえ、引き裂きたがっていることを……。誰よりもよく、彼は。






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