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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
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そうは言っても、フランツ様の前で服を脱がなければならなくなったときに羞恥を感じなかったわけではない。何のために裸になるのかといった理由が行為よりも感情に影響するらしかった。ベッドに座って目を細めて見ている彼の前で、一枚一枚服を脱いでいく。
何をされるのか分かった上で平静な顔で服を脱ぐのは、むずかしかった。ただ、服を脱ぐだけで呼吸が速くなり、心が震える。全裸になると腕を頭の後ろで組み、足を開いて彼のほうへ体を向けた。
視線がゆっくりと体の上を弄りまわすように移動する。私が一番ショックだったのは、ただそれだけで自分の持ち物が反応して頭をもたげ始めたことだった。正真正銘の羞恥が突き上げてくる。
立ち上がり、近づいてくるフランツ様が私の赤くなった顔を覗き込んでくる。彼の服が私のそれを擦るほどに近づくと、私のものはすっかり立ち上がって、ただ布が擦れて離れていくだけで、息を呑まずに入られなかった。彼の唇が触れそうなほど近く付けられ、囁かれた。
「王宮にいた間、いつも、考えていたんだ。お前をこうして鎖につなぐことを」
はっとして、主の顔を見つめなおす。目を細めて、薄く微笑む主の顔を……。彼の両手が拡げられて胸に押し付けられ、そしてわき腹へ、撫で回しながら降りていく。思わず目を閉じずにはいられない。手が尻を抱え込み肉に爪を立てられる。捏ね繰り回され、掴まれる。腰には腰が押し付けられ、足の間には膝が割り込んできた。彼の太腿が足の間を擦り上げる。
私は歯をくいしばって、喘ぎを押し殺す。背に廻された手が意地悪く背筋を撫で上げ撫で下ろす。私の眠っていた官能はすっかり目覚め、体の中を熱い血がかけめぐる。
唇が頬を掠める。耳たぶに、瞼に、顎に軽く触れ。そして首筋に吸い付く。今度は声を押し殺せなかった。私は思わず呻き、体をこわばらせた。頭の後ろで組んだ手に必死で力を込める。姿勢を崩したら終わりだった。自分の理性はどこかへ吹き飛び、あろうことか忠誠を誓った主を寝台の上に押し倒しかねなかった。
手に皮の枷を巻かれる。まず、右手にそれから左手に。そして足の枷を渡される。私は促されるままにしゃがんで自分で枷をはめた。そして、ベッドの傍らに並んでいる二本の柱の間にベッドに背を向けて大の字に体を張り広げられる。
ひとつ、枷を金具につながれると、その度に胸の鼓動が大きく早くなっていくようだった。向かい側の壁には大きな鏡が立てかけてある。今日の夕刻、フランツ様が寝室に運び入れさせたのだ。大の字に拘束された体が、ちらちらと揺れるランプの明かりに照らし出された。私は鏡の中の自分を見つめた。
後ろに立ったフランツ様の息がうなじにかかる。ふ……と、一瞬の油断をついて、手が廻されて掴まれていた。背筋を走り抜ける驚愕と苦痛と快感のない交ぜになった感覚に、思わず腰を引き体を捻る。
その様がすべて逐一鏡に映し出される。射るようなまなざしでのフランツ様の視線が鏡の中から見返していた。手は下腹を弄りながら移動する。肩に這わせられた唇が、中心の快感と連動して、身動きも出来なかった。ただただ、見苦しくあがく姿だけはさらすまいと、それだけを念じるしかなかった。
掴んだ手がゆるゆると動き始めた。こんな事態は、まったく想像していなかった私は、動揺する様を見られまいと必死で固く目を瞑る。目の色を見られたら終わりだ。フランツ様には隠しようが無い。反対の手が後ろから廻り、尻の間から差し込まれやわやわと揉みこまれる。耐えられない快感が急激にたかまり、思わず目を開けてしまう。目差しに射殺されてもう、逃げられない。捕らえられてしまっている。
「まだだ」
びくんと撥ねた棹の根元をギュッと指で絞り込まれる。行き場の無い快感が腰の辺りで渦巻く。あっと思う間もなく紐が廻されしっかりと結ばれたのが分かった。それが何のためであるかも……。なおも散々玩ばれてフランツ様の体が離れていったときは、私は、懇願しそうになり、唇を噛み締めているような有様だった。
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鞭打ちの一打目は背中を斜めに走って打たれた。十分覚悟していたはずなのに、その苦痛に体は勝手にねじれ両手は枷を引こうとして金具を打ち鳴らす。痛い。想像していたよりもずっと、喰い込んでくる痛み。フランツ様は小波のように痛みが体全体に拡がり染み渡る様をじっとみつめておられる。
そして、二打目。さっき打たれた場所よりも少し下がったところを正確に狙って鞭が飛んできた。体全体に力を込めて迎えうつ。さっきよりも強い痛みが、体の中を走り抜けていく。私は目をいっぱいに見開いて鏡の中のフランツ様の姿を見つめる。そうしていないと、喚きだしそうな恐怖があった。
三打目。体を仰け反らせ、歯をくいしばる。耐え難い痛みに体が引き裂かれる。無意識のうちに枷を思いっきり引いてしまい、自分で自分を痛めつけてしまっていた。鞭の位置はわずかに下がってきている。息がはずむ。全身に冷や汗がどっと湧き出てくる。鏡に映る振りかぶられる鞭をみつけ次の打擲に備えて息を吸い込んだ。
四打目。吸い込んだ息が瞬間で全部吐き出される。その痛みに体がひきつれる。自分の思い上がりに唾棄するようなくやしさがつきあげてくる。かすんでくる瞳をもたげフランツ様の姿を探した。自分が枷につながれている理由、鞭で打たれている理由にしがみついていた。
鞭は計ったように少しずつ位置をずらしながら降りていった。位置が太腿へ移っていくと、痛みは一層耐え難く、思うように息もすえない有様だった。一打事に、体が跳ねのたうち、首が打ち振られる。最後に膝裏に打ち込まれたときは、一瞬あたりが暗くなるような気がした。大きく息をつき、酸素を求めて口を空けてむなしく喘ぐ。
その有様をじっと見つめていたフランツ様は、つと、鞭をもちかえると体にくっきりと浮かび上がる縞模様にその指を這わせていく。ぴりぴりとするような、痛みがその指によってもたらされる。紐によって萎えることを許されなかった場所がびくりと頭を上げる。え?今のは……な……んだ? 熱い何かが腰の辺りにたぐまっている。
「ヴァイス……今度は向きを変えて打つ。続けられるか?」
心配そうな囁き声。私は目をしばたき、金具にかけていた体重を自分の足に取り戻した。目を上げて、主の姿を探す。
「平気……です。ご存分になさってください」
「……お前の叫び声が聞きたいんだ。耐えるのはやめてくれ」
え? 心臓を捕まれたような恐怖が湧き上がってきた。声を上げろとおっしゃっているんですか?どんな苦痛でも耐える方が簡単だった。じっと見つめてくる彼の視線は、そらすことも許さない。
「でき……できません。どうすればいいのか……」
「口を開けるんだ。歯をくいしばるな」
彼の細い指が唇を割って入ってくる。体だけでなく心の中まですべてさらけ出せという命令に、私は総毛だった。再度フランツ様の体が離れていき、今度の私は、覚悟が付かないまま取り残された。立ち位置が変わり、反対方向に鞭が向けられる。
一歩、二歩、彼が前に出るのが鏡の中に映る。それが何を意味するのか分かったときには、次の鞭が体に食い込んでいた。最初の鞭打ちの赤いみみずばれに交差するように、新たな鞭が体に後を残しながら巻きつき、その最後の舌が体の一番柔らかいところにひときわ強く叩きつけられた。
「あうっ!」
口を開けていた私は、思わず叫び声を上げた。そして、慄然とする。最後の砦が崩れ、私はもう、耐えるすべを持たなかった。鞭の交差した場所が錐を揉み込まれるように激しく痛む。恐怖が私を捉え、ひきずりまわそうとしていた。
ひゅん!
次の鞭音が、迫る。方向を掴み損ねて感覚が混乱する。思わず逃れようとする体にまた次の一打が食い込む。そして、激しい痛み。もがきのたうつ体。「あなたの味わった地獄」私はそれを願っていたはずなのに。
「ううっ……」
考えることが出来なくなっていく。あるのは今の苦痛。叫び声。そして一瞬の弛緩。安堵。そしてまた苦痛。涙が溢れる。痛い。膝が体をささえられなくなり、鎖を鳴らし、全体重が腕にかかる。その揺れる体を、彼は正確に十センチ刻みに切り刻んだ。最後の膝裏への一打が入ったとき、私は気を失っていた。
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「お館様。ヴァイスがなにをしたのかは存じませんが、これは、あまりにやりすぎではありませんか」
「分かっている。すまない」
「私に謝られても、困ります」
コール医師の耳元でがなりたてる大声に、現実に引き戻される。私が気を失ったばっかりに、医者が呼ばれてしまったらしい。目を開けると、すでに、フランツ様の寝室に運ばれていた。
「先生……」
叫びすぎたのか声がすっかりしゃがれてしまって思うように出ない。コール医師は、目を覚ました私に気が付いてベッドに顔を寄せてきた。
「ヴァイス。気が付いたか」
体を動かそうとして、思わず呻いた。骨がばらばらになりそうなほど痛い。
「いったい。お前はなにをしたんだ。ええ!」
「もうしわけありません。でも、フランツ様のせいではありません。私が至らぬ事をしてお怒りをかったのです」
ドアの向こうへ視線をめぐらすと、医師も気が付いたのかすぐに声を小さくして来た。腕白小僧の頃からあれこれと怪我をして世話になった気心の知れない相手だからフランツ様も気を許されたのだろうが、他の使用人には知られたくない。
「とにかく、今日はこの薬を飲んで」
ちょっと頭を持ち上げられて、吸いさしを口元に突きつけられる。苦い薬がのどを降りていって、また、体を横たえられる。動くたびに激痛が体を襲う。
「今夜は熱が出るはずです。私が付いていた方がいいですか?」
「いや、いい。下がってくれ。ヴァイスの面倒は私が見る」
「まったく、それほど大事にされていながら、何を考えてこれほどまでに折檻されたのか!」
怒りを振りまきながらも医師は、戸口に控えていた執事に案内されて部屋を出て行った。
「……叱られてしまいましたね」
「平気さ。若い公爵は、短気でかんしゃく持ちだと思われても、侮られるよりいい」
主の優しい目がのぞきこんでくる。
「痛むだろう」
「はい」
「立場が逆転したな」
笑おうとして苦痛に顔がゆがむ。まったく、この人は……。あの王都での最後の夜。露ほども私に悟らせず、しりぞけておしまいになった。同じような苦痛を抱えていたはずなのに。ゆっくりと彼の顔が降りてきて、唇を軽くついばまれた。思わず顔を持ち上げておいすがってしまう。
「ヴァイス?」
自分の気持ちも持て扱いかねているのに、どうしてこの人から隠しとおせるだろうか。思い出して、手を伸ばしで自分に触れた。紐はすでに解かれている。あたりまえか。コール医師に見せられるはずも無いし……。そして、痛みに呻いているというのに、それは起き上がり始めていた。
「何か……着るものを……」
「馬鹿言うな。服なんか着られないぞ」
「あなたは着て帰って来たじゃありませんか」
「裸では帰れないからな」
そう言いながら、自分の服をくるくると脱いでしまわれる。そして、まったく自然な様子でシーツを持ち上げで、ベッドへ入っていらした。フランツ様のベッドは大人三人でも悠々寝られるほどに大きい。しかし、一度も彼と同衾したことが無い私は、無意識にすでに起き上がった体を彼から隠そうと必死でベッドの中で後ずさった。そのため傷を擦り上げてしまい、また呻き声をあげる。フランツ様が咽喉奥でクックッと笑った。
その瞳の久しぶりに見る明るさ。やっと、喜びと安堵が湧いて来て、思わず魅入ってしまった。
「なんだ。どうした?」
腕を差し出す。
「抱かれるのでしょう?」
驚いたように瞳が見開かれる。
「今やると、ひどく痛いぞ」
「そうでしょうが……。苛まれるのが目的なんですから、回復を待っていたのでは、意味ありません」
フランツ様は、困ったように迷っていらしたが、やがて眉をしかめると、肩に手を廻してぐいっと引き寄せられた。今度は待ち構えていたのでうめき声を押し殺すことが出来た。
「縛っていいか?」
「どうぞ」
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フランツ様は、ベッド下から縄を取り出すと私が体を起こすのを手伝った。膝を付いた姿勢からうつぶせにさせ、右手に縄を廻すしっかりと結ぶとそれを右足首に引き付けてひとつにくくり合わせた。反対の左手と左足をも同じように縄をかける。その縄尻はベッドの下をくぐらせて、両脇でひとつに結び合わせられてしまう。結ぶために、縄が引かれると、足はじりじりと開かれていった。足首を手で掴んでうつぶせたうえ、尻を突き上げ、顔は横向きにぺったりとベッドに押し付ける格好に留めつけられてしまったのだ。
体中の皮が薄くなり張り詰めてぴりぴりと痛む。真後ろに座った彼が手を伸ばし鞭痕をなぞり始める。すでに薬を塗られた痕なので唇を付けることは出来なかったが、彼の指が念入りに十字の形に付けられた縞模様を一本づつ辿り始めると、すぐに息が上がってきた。
痛い。しかもそれだけじゃないのだ。微妙な快感。むずむずとしてじっとしていられないような快感がわき腹を這い上がってくるのが分かった。狼狽して体を捻る。縄がギシギシときしみ、自分が身動きできなくされているのを思い知らされた。
許しを請うことも出来ず、ただわずかに身じろぎするだけ……。手は、きわどい場所をさまよい続け、私は喘がずに入られなかった。何度か、暴行された経験から、どうすれば、この窮地をしのげるのか知っていた。心を閉じて、感覚を締め出す。痛みも快感も屈辱も締め出すことが出来る。
だが、どうしてもできなかった。それどころか、自分の感覚を普段以上に研ぎ澄まして、彼の手の動きを追ってしまう。彼の視線の移動さえも、感じるくらいに。指が肩から背中へみみずばれの上を辿っていく、その動き。指の腹が皮膚に当たる感触。時には強く、時には触れるか触れないかくらいに、そよ風が髪に触れていくように優しく動いていく彼の指。
「あ……」
思わず声が洩れていた。必死に歯をくいしばる。体が熱くなってきて、さっきよりもしっかりと腹を打つほどに立ち上がってしまっていた。手が、感じやすい腰骨から下腹のほうへ滑り込む。腰が跳ねる。握りこまれた瞬間。ギュッと目を瞑り息をつめて、彼の手の感触を味わった。なんだろう、これは。どうかしている。あまりにも変だ。
喜びに息も絶え絶えになるくらいに撫で回されるうちに、正常な判断は跡形も無くなり、何のためにここにいるのかも分からなくなってきた。分かっているのは、自分の体を撫で回している主人の手の感覚だけ。
尻の狭間に冷たいものが流れる。多分オイルだ。アナルをほぐそうとしてる。遠くの方で、無理矢理引き裂かないと、苛んだことにならないんじゃないかと囁く自分の声があったが、忍び寄ってくる快感に遮ることもできなかった。
「ヴァイス。指を入れるよ」
今まで何度か経験してきた汚辱感、嫌悪感、そして、異物が入り込んでくる違和感を待ち構えていた体に、その指がじんわりとはいってきた。息を呑む。
指。あなたの細い指。指が……入ってくる。
内臓を裏返しに擦りあげられるような耐え難い快感が体中に走り。私は震えた。息をすることも忘れて、ただの排泄器官でしかないそこの感覚を総動員させて、その指を感じようとする。指がくるりと廻され中を擦られると、稲妻のような震えが走りぬけた。体が勝手に暴走を始めて、尻をもたげ、その指を締め付けからめとろうとする。中が快感に痙攣し、蠕動して導きいれようとする。それに伴って、快感の波が何度も打ち寄せて、私は呻いた。
どうしたらいい?あ……あ……耐えられない。
どうしようもなかった。縄を引き、手足を縮めて力をこめどうにかして、その感覚を弱めやりすごそうとした。だが、その行為が、ただ墓穴を掘っただけだったことはすぐに分かった。力を込めてしまったことで、かえって指を強く深く咥え込んでしまった結果になっただけだった。
「ヴァイス?」
脳がとろとろと溶けて流れ出していくようだった。意識が薄れていく。体力の限界を感じ取ったのか、彼が体を乗せてくるのが分かった。
「力を抜いて……」
首を振る。だめ。だめだ。そんなこと。できない。彼の体が入って来る時、引き裂かれる苦痛とない交ぜになった確かな快感に打ち倒されて、私は吐精していた。
揺さぶられる。強い力で引き摺り回される。傷だらけの体が悲鳴を上げ、その痛みの底に潜む快感に体は勝手に喜びをむさぼった。私は、恥知らずにも主人の体を味わい尽し、彼の精を絞り取った。
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それから三日の間、私は高熱を出して床から起き上がれなかった。ねがえりをうつこともままならないくらい体中がぎしぎしときしむように痛むせいで、時折、意識が戻るのだが、朦朧とした状態だったのでかえって耐えられたのかもしれない。
枕辺に付き添っている、見知らぬ少年が私の意識が戻るたびに、口元に薬湯の入った吸い差しを突きつけるので水分だけは摂取できていた。薬のせいもあったのか、三日目にぽっかりと目が覚めたときは、体の痛みも最初ほどではなくなっていた。
付き添ってくれていた少年は、ヨハネスと名乗った。とうもろこしのような髪に、そばかすの浮いた丸い頬。年は14くらいだろうか。コール医師の助手だと言う。私が眠っていた三日間に背中に薬を塗ったり、包帯を巻きなおしたりしてくれていたらしい。私が起き上がろうとすると、制止して、台所へ走り、あたたかいスープを運んでくれた。
「何も食べてないのに、起き上がるとめまいがしますよ」
「ありがとう」
結局起き上がってちゃんと歩けるようになるまでに、それからまた、三日ほどかかってしまった。その間フランツ様は一度も会いに来てくださらず、ヨハネスの話では、領地の見廻りや領民の面会などで忙しく過ごされている様子だった。
コール医師は、夕方になるとやってきて、傷の様子をあらためては、新しく調合した薬を置いていってくれた。もう、初日に全部見られているので、今さら抵抗しても仕方ない。素直に体を見せて、罰を受けた使用人らしく、愁傷におとなしく反省しているそぶりを見せて礼を言った。
「まったく、子供の頃はこんな無体をするような性格じゃなかったのに」
包帯を巻きながら、ぶつぶつと文句を言う。
「フランツ様のせいではないんです。私が全部いけなかったんです」
「……ヴァイス。お館さまは、いつもお前を打つのか?」
「いいえ」
コール医師は、重ねて何か言いたそうにしていたのに、頭を振って、黙り込んでしまった。私もそれ以上詮索されるのが嫌で、出来るだけ言葉は少なくしていた。
痛くて動けないとはいえ、考える時間はたっぷりすぎるほどある。全然顔をみせてくださらない主人がうらめしくもあり、寂しくもあった。
だが、使用人が具合が悪いからといって、主人が見舞うなど聞いたことも無い。当たり前の状況なのだ。だが、ヨハネスが帰ってしまった後は話し相手も無く、床の中で居心地のいい姿勢を探りながら転々とするだけの長い一日ではどうしようもなく、繰り返しあの夜の出来事を反芻してしまう。
切り裂かれるような鞭の痛み。食い込んできた枷の感触。触れてきた手のひらの動き。そして熱く柔らかな唇。焦らされる快感。激痛。想うだけで体が反応してしまう……。
あの人は、何かを得たのだろうか。満足したのだろうか。そして、また、私を欲してくださるのだろうか。お会いできないだけで、不安が膨らんでくる。だが、それだけだったら、まだましだったろう。必死で押し殺し、考えないようにしようと思うそばからフランツ様と過ごした旅の夜の出来事が頭を横切る。
あの人の体に触れたこと。眉をしかめ、身じろぎする背中を洗ったこと……。思考は、行きつ戻りつ妄想がだんだんと膨らんでくる。そして、恐れと不安がない交ぜになって胸をふさぐ。
なぜ、一度もいらしてくださらない?
さすがに七日目にちゃんと立ち上がったときは、背中の痛みも大分落ち着いていた。風呂を使い、服を改めてひげをあたる。見苦しく無いように髪をとかして鏡を覗いた。
ちょっとやつれた様子は否めないが、まあ、無様と言うほどでもないだろう。とにかく、一刻も早くフランツ様の顔をみたい。急ぎ足で書斎へ向かったものの、ドアの前でためらわずに入られなかった。あの夜以来一度も会ってないのだ。どんな顔をして入ればいいのか分からなかった。息を吸い込み思い切ってドアをノックする。
「入れ」
たった一週間で涙が出そうなほど懐かしい声。私は急いでドアを開けて部屋の中へ滑り込んだ。そして、ドアを閉めて正面へ向き直る。机に頬杖をついて、書き物をしていたらしいフランツ様は、顔を上げて私の姿を認めた。視線が合う。黙ったままじっと見つめられて、私はどうしたらいいのか分からなくなってうろたえていた。
「フランツ様……」
羽根ペンを机の上にそっと置き、両肘をついて顎を乗せてじっと私の顔をご覧になる。冷たい海のように澄み切った青い瞳。どうなさったのです。なぜなにもおっしゃってはくださらないのですか。
「もう、いいのか」
「はい、長い間、ご不自由をおかけして申し訳ありませんでした。今日より、仕事に復帰できます」
そして、また沈黙……。私はますます動けなくなって立ちすくむだけだった。
「フランツ様……」
「背中をみせろ」
おもわず咽喉もとのシャツを掴んでいた。平静すぎるほど平静な声。
我に返り、ためらうことを許さない主の命令に私はまっすぐ机の側に歩み寄り、背を向けて服を脱ぎ始めた。机の斜めの位置にある椅子の上に脱いだ服を載せていく。上半身裸になると、向き直りフランツ様を見つめ返した。
「ズボンも」
息を吸い込む。一瞬の間の後、靴を脱ぎ靴下を脱ぎ、ズボンに手を掛ける。軍隊暮らしが身についているせいで、服の着脱は手早い筈だ。机を回りこみ彼の側に行くと背中を向けて傷をさらす。
長い時間、私はただじっと立っていた。じわじわと羞恥が込み上げてくる。書斎の真ん中で、裸で立っていることの異常さ。なにを求められているのか分からないまま、ただ見つめられることの苦痛。息を吸う胸が震える。鼓動の音がだんだんと大きくなって、彼に聞こえるのではないかと思うほどだった。やがて、体の中心が立ち上がってくる。素裸でいれば隠しようが無い。
ふと……空気が動いて、彼が手を伸ばしてきたのが分かった。待ち構えていると冷たい指がそおっと背中に触れてくる。
「あ……」
目を閉じて、手の動きを追う。彼の手。私を打ち倒し、喜ばせ、絶望させることの出来る主の手。ゆっくりと背中の傷をなぞり、最後に尻をぎゅっと掴まれた。私は瞼に力を込め、歯を喰いしばった。
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「もう服を着ていいぞ」
椅子が廻り背を向けられたのが分かった。彼の手が離れていくと、緊張が解け体中から力が抜けていくような気がした。気力を奮い立たせて服を着る。フランツ様は、ただ黙ってその様をじっと眺めておられる。上着を羽織って、最後のタイを結び終わったとき、私の頭は疑問と不安でいっぱいになっていた。
振り向くための勇気を必死でかき集めていると,いきなり肩を掴まれて強引に向きを変えさせられた。そうと気が付く間もなく、唇をふさがれてしまっていた。
思わず体を引こうとして、さらに引き寄せられる。それから一度息継ぎの間があって、さらに深く重ねられる。いつの間にか夢中で応えてしまっていた。それから、体の向きを強引に変えさせられ机の上に押し倒された。背中の痛みに顔をしかめたが、彼は容赦しなかった。膝でのしかかってくるようにして、さらに深く舌が唇を割って入ってくると、もうその後は何も考えられなかった。フランツ様がこれほどキスがうまいとは想像もしていなかった。何度も何度も角度を変えて、重ねられているうちに、欲望が膨れ上がり抑えようもなくせりあがってきたと思うとぱっと弾けた。
彼の体が起き上がって行った後も、私は机の上に仰向けになったまま、目を閉じ、ただひたすら口を空けて空気をむさぼるように息を継ぐしかない有様になっていた。
「これは……ないんじゃないですか」
「ん?」
「こんなふいうち。……想像もしていませんでした」
くすっと笑われて、顔が赤くなってくるのが分かった。手が伸びてきて胸元を掴まれるとぐいっと引き起こされる。ぱっぱっと服のしわを伸ばされて、乱れたタイを直された。
視線がぶつかり、ついお互いの表情を探りあってしまう。一週間ぶりにようやく会えた主人の顔には、かすかな笑み以外何も見つからなかった。胸が詰まる。ずっと、胸の中で反芻していたことが、浮かび上がろうとして咽喉元に引っかかっているようなそんな気がした。
「どうして、一度も会いに来てくださらなかったんです」
聞くまいと決心していた言葉は、あっという間に唇から飛び出してしまっていた。『しまった。』と思って、唇を引き結ぶがもう遅い。部屋に入ってきてから必死に押し殺していた疑問は、もう彼の耳に聞こえてしまっていた。
ちょっと、驚いたような顔をした彼は、眉をひょいと上げ自分の椅子に座ると、斜め前の椅子を指し示して座るように手振りした。
「怒っているのか」
「怒っていません」
否定してから、それが嘘だと自分でも分かった。溜息をついて降参するしかない。
「怒っているみたいです。……会いに来て欲しかったのに」
「おまえがいけないんだぞ」
フランツ様の頬に困ったような微笑がこぼれた。
「コールが帰った後に、お前を抱いたのがばれた」
「あ……」
「新しい傷が手首と足首に増えているのを見て、やっこさんにこっぴどく叱られた。とにかくお前が起き上がって、ちゃんと抵抗できるようになるまで、絶対に会っちゃだめだと釘をさされた」
本当に?そんなはずないでしょう?他人に指図されて、唯々諾々と従うあなたなんて想像もできない。
「それに……怖かった」
はっと、顔を上げて彼の顔を見直す、真剣な顔で見返されて胸が締め付けられる。
「ひどく痛めつけてしまったからな。頭も上がらないお前の顔を見る勇気が無くて、結局はコールの言うがままさ」
お互いの視線が絡み合う。言いたいことがたくさんあるような気がしたのに、一言も思い浮かばなかった。フランツ様は私の表情をじっと見つめた後に、ふたたび机に肘をついて頬をのせて頭をかしげると溜息のようにつぶやいた。
「お前、これでも、まだ、私のベッドに上がれるか?」
思いもかけないことを尋ねられ、率直な彼の言葉にようやく脱力するような安心感をいだいて、ほっと息をつく。
『もちろんです。私は、あなたのものですから。』私は心の中だけでつぶやいて立ち上がり、彼の足元に膝づくと、恭しく彼の手を取り上げて手の甲にくちづけた。
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寝室の寝台は、大人が3、4人でもゆったりと休めるほどに広いことは以前にも触れた。服を脱いだ私の両手を一つにくくり、私の体は仰向けに押し倒された。両手を頭上にあげさせて、その天蓋つきの寝台の頭の方の柱の一本へ、結びつけられる。足の方は、片足だけを対角線上の柱へ縛り付けられた。手首足首にまかれた縄はしっかりと止められてはいたが、柱につながれた縄にはゆとりがあり、さほどつらい拘束ではない。彼は、自由な残りの足を膝を折り曲げさせて足首と太腿に縄をかけ回して縄尻を止めた。
フランツ様が、縄を巻いている間、どうにも気恥ずかしくお顔を見ることが出来ず、視線を逸らしてしまう。最初は、自分から要求して始めたこととはいえ、いつのまにか自分の中で物事の本質に変化が起きていて、心も体も勝手に暴走を始めてしまい、理性の方が付いていけない状態になっている。
縄が巻きつけられていくたびに、胸の鼓動が高まってくる。息は熱く、速くなり、欲望の高まりをまったく自制できない。服を脱いでしまっていては、その全てが露わになってしまっていて隠しようがなかった。全てを知られている事がいっそうの羞恥をかき立てる。
「痛くないか?」
「平気……です」
答える声もすでに欲望にかすれてしまっていた。
「どうして、片足だけをつながれるのです?」
何とかして、普通の会話をしようと話をつなぐ。
「ああ、こうすると体をひっくり返すことが出来る。縄を解かずに向きを変えられるんだ。でも、足が自由だとどうとでも抵抗できるからね。男の足の力は結構強いから……だから、こっちの足は別にくくってしまう」
「抵抗など……しませんよ」
「さあ、どうかな」
フランツ様はシャツを脱ぎ、羽根枕を引き寄せると私の傍らに寄り添うように座られた。
「ヴァイス、今日は話しがしたいんだ」
「話し……ですか?」
こんな体勢で?それは、あまり嬉しくなかった。あまりにも無防備で、あまりにもあからさまの状態に縫い止められてしまっている。何を訊かれるおつもりなのか……。彼はうつむいて、私の折り曲げられた足に手をかけると、そっと内腿に手を滑らせてきた。膝を開いたままにしておこうと、私は足に力をこめなくてはならなかった。体の内側は、より感じやすい。そこに、彼の手がかかっていると言うだけで、私は平静を保つことが出来なかった。
「おまえ……男と寝るの。初めてじゃなかったろう?」
吃驚して羞恥を忘れ、思わず彼の顔を見つめてしまう。
「……何故、お分かりになったんです?女性と違って処女の印があるわけでもないのに……」
「なんとなく……」
「なんとなく、ですか……」
墓穴を掘った。しらを切りとおすことも出来たのに、そこまで頭が廻らなくなっている。彼の手がじわじわと足の付け根に向かってへ移動しているせいだった。私は息を呑んで、体を固くした。
「お前、好きな男がいたのか?」
「え?いいえ……そんなもの、いませんよ」
「じゃあ、お前を最初に抱いた男はだれだ?」
「それは……王宮の……つまりお供をした時に……控え部屋で……」
私はしどろもどろになり、言葉を途切れさせた。なんと答えればいいのだろう。実のところ相手が誰だったのかよく覚えていなかった。そういう大人達は、決して名乗ったりはしない。いきなりカーテンの影に引き込まれたり、ソファの後ろへ引き倒されたりするのが常だった。
「あれや、これや……とにかく……いろんな相手です」
フランツ様は溜息をついて、私の顔を見つめ、そしてふっと視線を逸らした。
「まったく。気が付かなかった。何で言わなかったんだ。それだと無理矢理だったんだろう?」
「……だって、そんな、お話しできるはず無いじゃありませんか。あなただって、私よりも幼かったんだし、それに、そういうことはきりがないんです。次々と……。どこにでも、そういうことを子供に無理矢理教えたい大人っているもんでしょう?」
「何故、抵抗しなかった?」
「しましたよ。子供でしたから。生真面目に。でも、何の役にも立たなかった」
急にフランツ様は気色ばまれた。
「お前、嫌じゃなかったのか?」
「……嫌でしたけど……どうしようもなかった。相手は大人で権力を持っているんですから……」
「私が、お前にしたことと同じ……と、いうわけか」
吐き捨てるように言う、彼の言葉は嫌悪に満ちていて、私は思わず起きあがろうとして、縄に引き戻される。
「違います!今度のこととは全然違う。私は自分から望んで……」
「私が快楽奴隷を買うのを止めたかった。悪い評判が立つ前に」
「嫉妬したんです。分もわきまえず」
顔が赤くなったのに気がついて、急いで視線をそらす。ムキになって反論しながらも、彼の冷たい口調に段々心配になってきた。
「あなたはむしろ……あなたこそ、私を抱くのは本当はお嫌ではなかったんですか?」
彼は、何か考え込むようにしていた。彼の手は相変らず私の足の上をさまよっている。彼の手がもたらす喜びを何とかして押し隠そうと私は必死だった。
「私は、陛下に抱かれるのが嫌だった。陛下の伽を命じられた時、自分の耳で聞いたことが信じられず、目の前がまっくらになった。今でも、あの人の腕に抱かれるのは吐き気がするほどの嫌悪を感じてしまう」
「フランツ様……」
「お前は、私に犯されて何とも思わなかったのか……」
答えようとして、本当のことを答えられないことに気が付いた。あまりにも恥ずかしくて。彼の指が入ってきた瞬間。あの、身もだえするような表現できない快感が私をとらえた時の事を。しかし、はっきりと告げないとこの方はお一人でどんどんと誤解を募らせて、袋小路に入り込んでしまいかねない……。
「……感じました。今までには、こんなことは……一度も」
多分首まで真っ赤になっていたと思う。手はいつの間にか腰骨の上を移動しているわき腹へそして胸へ、私は思わず体をねじった。こんな……分かっていてやっているんですね。ずるい人だ。
「男は好きじゃないんじゃなかったのか?」
私は、あなたが好きなんだ。幼い頃からあなたに忠誠を尽くしてきた。私の世界にはあなたしかいなかった。私にとっての無二の主人。違う。違う。いつの間にか私はあなたを。あなたが好きだ。恋焦がれている……。
必死に喘ぎを押し殺しながら考える。フランツ様は、答えを引き出そうとして容赦なく乳首をつまんで捻りあげた。私は、不自然じゃない言葉を探しながら唇を噛み締めた。だが、もう、手の動きばかりが気になって、うまいいいわけなど出てこない。ふと、フランツ様は気がついて、改めて自分の手元を見て、そして私を見る。
「口を空けてヴァイス」
はっと顔を上げて、彼を見つめる。観念するしかない。一回きつく目を閉じてから口を開け、彼の言葉に従う。
「お前を鎖に繋いでみたかったのは、本当だ。なぜだか分からない、いつも、いつも……考えていた。陛下の寝台に繋がれた時から……。ずっと……。お前だったらどうするだろうと考えていた。お前は私を憎むと思っていたよ。酷い目にあわせた。鞭のことも。お前を乱暴に抱いたことも」
乱暴?乱暴だったろうか?私に触れてきた彼の指……脳が溶け出すような快感。あれのどこが乱暴だと言えるのか。
私は息をつなぐのに必死になっていた。体の感覚に振り回され始めている。両腕を少しでも下ろしてぴんと張った体のラインをゆるませようとした。だが、いくらゆるい拘束でも限界がある。
フランツ様が奥歯を噛み締める音がする。
「私は、陛下に忠誠を尽くしてきた。どのようなお求めにも決して逆らわなかった。……だが、心の中では、夜毎、繰り返される行為を汚らわしいと思っていた。どうしても、その気持ちを変えられなかった」
彼を説得しないと。それは、自然な事、無理はないのだと分かっていただかないと。だが、頭の中は混乱しきっていて、言葉が見つからない。私の主。私の主人を引き裂いた王に、私は憎しみを感じ始めていた。騎士にあるまじき感情。
「わ……たくし……はフランツ様を……。あなたは、私の無二の主人です……」
「私の陛下への忠誠はお前が私にくれたものよりも劣っていると言うのか……!」
首を振る。言えない。どうしても。フランツ様が私にモトメテイルモノ。忠誠。けれど……あの旅籠で彼の体に薬を塗っていた時、私が考えていたことは……私が求めていたことは……。再度太腿を下から撫で上げられて、たまらず足を閉じてしまう。すぐに、彼の手が膝にかかりもう一度ゆっくりと開かれる。さっきよりも強い羞恥……すっかり体は出来上がってしまっている。
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フランツ様の体が羽根枕から滑り降りてきて、私の体にぴったりと寄り添う形になられる。私は口を空けているために、弾む呼吸も喘ぎも隠しようがなくなっていた。
「ヴァイス、私を抱いてみたいか?」
思いもかけない言葉に私は、答えられなかった。なんですって、なんとおっしゃいました。
「私がお前にしたように、縄をかけて、玩び、犯してみたくはないか?」
その時、フランツ様の手は、ねっとりと絡みつきながら完全に立ち上がったそれをくるみこんでは絞りあげ始めた。私は思わず体をもがかせていた。切れ切れの喘ぎ。
「私は知りたい。お前が感じていることを。陛下との間にあったのは嫌悪と屈辱だけだった」
力を込めて、首を左右に振る。
「……抱きたく。……ありません」
わたしは絶対にあけまいとしてきつくに瞳をつぶった。視線が合ってしまえば、彼には隠しようが無い。フランツ様の手が袋にかかり、徐々に圧力を掛けてくる。痛みが下半身から広がり、どこへも逃げられないからだが、痛みにねじれ引きつる。
「嘘だ」
「抱きたく、ありません!フランツ様……どうか……。あうっ」
ギュッと握りつぶされて、ショックで縛られていることを忘れて必死に縄を引いた。
「抵抗しないんじゃなかったのか?」
あそこを握りしめられた激痛の中では力を抜くことさえ難しい。彼の唇が肩に触れ、ゆっくりと移動していき、一番柔らかなくぼみに歯が立てられた。
「本当のことを言うんだ」
私は、必死に首を振った。中心を握りこまれている状態では、逃げようが無い。
「嘘つき」
じんわりと、圧を掛けてくる。フランツ様。フランツ様。のけぞり、硬直する。耐え難い激痛に筋肉がねじれた。
「私が欲しいんだろう?お前の心をきかせておくれ」
「言えません。お許しください」
必死に足を蹴る。縛められていて何ほどの動きも出来なかった。すっかり焦れた彼は、あっという間に乱暴に体をひっくり返し後ろからのしかかってきた。中心は相変わらず捕らえられたままだ。何の準備も無く、何も塗られていないそこへフランツ様の体が押し付けられる。前を捻られるよりも、もっと酷い激痛が突き抜ける。
「あ……あ……あう!」
「私は、お前に抱かれてみたいのに」
それを口に出した瞬間に私は主を裏切ってしまうだろう。もう、下僕ではいられない。そう思うと唇を必死で噛み締めて時間を稼ぐしかない。本当の欲望を闇の中へ必死になって押し込もうとして私はのたうった。痛みが、私を助けてくれる。真実があらわになるのを防いでくれる。
「まったく、強情な奴だな」
痛みでは私を動かせないことに気がついたフランツ様は、いったん腰を引くと私の体から手を離し、体に寄り添うような体勢に戻っていった。反対の手を背中へ滑らせる。私は、この不意打ちにのけぞり硬直した。そして、ゆるゆるとした愛撫。一番感じやすいところを探す彼の手の動きが始まった。私は、必死に手を握りしめ、体をシーツに押し付けた。
いくら抑えようとしても、体の感覚が彼が与えてくれるものを貪欲にむさぼろうとしていた。耳を澄ますように、心を研ぎ澄ませて快感を追ってしまう。手。フランツ様の手を……。這い回る。撫で回す。焦らされてもどかしさに気が狂いそうだ。
「王都から領地へ移動した旅の間……お前は、私を抱きたがっていたろう?」
ええ。ええ。そうです。抱きたかった。あなたが私が与える苦痛にすくむ様を見て、引き裂き、無理矢理あなたの中に押し入っていきたかった。あなたに私が与える苦痛が、私にもたらす喜びに恐怖していました。これでは王と同じ。あなたを苦しめる悪魔と。あなたは気が付いていましたね。私がその狭間で煩悶し惑乱しているのを……。ああ。やめてください。私はあなたを壊してしまいかねない。
彼の愛撫には終わりがなかった。いつまでもじわじわと私の感覚が研ぎ澄まされ落ちていこうとするへりを、責めつけ続ける。耐えられる限界を常に強いられて、飢えて貪婪な体が勝手に暴走しようとし始める。与えられた少ないものを隅々まで味あうことで、のりを越えようとし始める。だめだ。抑制できない。
「私を欲しくはないのか」
欲しい。あなたを私のものに。私だけのものに。誰にも渡したくない。あなたを束縛したい。王になど触らせたくない。
「ヴァイス……」
背中に彼の唇が降りてくる。私はどうしようもなくそれを待ち受けるしかない。身のうちを貫く鋭い快感。背の中心を彼の舌が唇が弄りまわす。私は引きつけ、体をうねらせた。
「フランツ様……やめてください。やめて……。耐え……られない」
「……我慢するんだ。嘘つきの罰だ」
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最後まで強情を張り通し、言質を与えなかったのに、フランツ様はだまされてはくださらなかった。快感の余韻で、ふらふらになっている私の縄を順番に解きながら、食い込んだ縄の痕を愛しげになぞる。
「次は、お前が私を抱く番だ。私がしたのと同じように寝台にくくりつけて抱くように。お前が、いつまでも強情を張るなら、私は、私を抱いてくれる相手を外で探す」
「まったく、あくどいとしか言いようが無いですよ。わたくしはおっしゃるとおりに耐え抜きました。それなのに、今度は脅迫なさるんですか?」
「では、もうひと責めするか?」
ぐうの音も出ないとは、このことだった。何か言い返す言葉が見つからないかと周囲を見回したが、頭が空回りするばかりだった。
「わたくしが、なにを怖れているのか……ご存知でしょうに」
「知っている。だが、手綱を渡しはしないさ」
「あなたはそうかもしれません。でも……わたくしは……」
「自信が無い……か」
ずばりと切り込まれて、溜息を付くしかなかった。
「たいしたことじゃない。難しく考えるなといったのはお前だろう」
「他人には何とでも言えます」
「ようやく正直になってきたな」
彼が欲しい。咽喉から手が出るほどに。気が狂いそうなほどに。私自身、そのことを考えただけでじりじりと焦げ付きそうな思いをずっと押し殺してきたのだ。もう、意地をはるのも限界だった。
「焦らしますよ」
「怖いな」
「後悔しても遅いですからね」
ぐいっと手を引かれて、のしかかられ、あっという間にキスされる。手馴れたものだ。いつの間に、こんなことを覚えられたのだろう。分け入ってくる舌の動きも抵抗できないほどに甘い。手を離すと彼は仰向けに横になったまま腕で顔を隠した。
「縄を取ってくれ」
もう、逆らえなかった。私は、たった今まで自分の自由を奪っていた体のぬくもりが残る縄をたぐりよせた。フランツ様は黙って手を突きつけてくる。私は彼の手に縄を巻いた。
本当のところ、自分がコントロールできなくなる怖れは、相手に嫌われるのを怖がる思いと裏表だった。体を許して二年間といえば、なじむのに十分な時間のはずだ。それなのに、この人はいまだに王の行為を蛇蝎のように嫌悪されている。今は、求められているとはいえ、感情は、どこで、どう転ぶか分からない。もし、嫌われたら、私は、生きていけないだろう。
私はフランツ様に要求されたとおりに彼を縛り、うつぶせにして、目隠しをした。布を結ぶ手がたかぶりに震える。思いついて、私は、行為に言葉が入り込む恐れを避けようと彼の口に布を押し入れた。彼の言葉は私を支配する力がある。手足を縛ったとしても、わたし自身の心は彼に跪いたままなのだから。
口を封じられるとは思われてなかったのだろう。平静な様子で、おとなしく縛られるのを待っていたフランツ様の様子が一変した。動揺され、抵抗しようとする。私は彼に話しかけなかった。心を見透かされるのが恐かったのだ。
彼にさわる。彼の体が反応する。声が漏れ、ふれる手から逃れようと、のけぞられる。オイルを使って、念入りに苛む。自分の中でひるむ気持ちをねじ伏せ、ことさらに言葉で心の中で自分を煽り立てる。だが、いつしか、それも必要無いくらいに私は彼の体に熱中していた。感じやすい体。そして、責め手を引き込まずにはいられない姿態……。王が手放さないわけがよく分かった。
なぜだろう?二年も王の枕辺にはべっていたのに、あなたはどうしてそう感じやすく、穢れないままなんですか。まるで、今初めて汚されようとしている処女地のように、何も知らないと思わずにはいられないような反応ですよ。引くつき吸い付いてくる彼のアナルに指を捉われながら、うごめく体にどうしようもなく昂ぶってきていた。
自分から、無理矢理脅して抱かれようとなさったくせに、どんな愛撫にも抵抗するかのように体を捻りのけぞらせる。そのくせあそこは、貪欲に喜びをむさぼっていた。天使と悪魔。聖女と娼婦。守りたい相手。そして、壊したい欲望。
私は自分自身の欲望を必死に押さえつけ続けた。彼が私を本当に求めるまで、決して中には入るまい。そう自分に言い聞かせ続ける。私が彼を求めたように。彼にも私を求めて欲しかったのだ。
長い夜。受け入れられることは無いのではないかと言う不安がどうしようもなくつのってきた頃、ようやく、フランツ様の体が溶けた。何かが変わり、何かが現れる。私は彼の体の中に吸い込まれるように、入り込んでいった。彼の心の中までも……。
手を伸ばし、押し込んであった口の中の布を引き出し、その唇へ唇を重ねる。すっかりと渇いた口の中へ、私の舌を差し入れる。はっきりと確かな意思を持って応えてくる彼の唇に、舌に……涙が溢れてくるような安堵と共にコントロールのきかない急激な欲望が突き上げてきた。
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旅の夜。私の手の下で苦痛に震えていたあなた。愛している相手に自分の手で与える苦痛がこれほど甘いものだとは、知りたくなかった。ただひたすらに守り仕えてさえいれば満足だったのに。自分の欲望のままに突き上げ、暴走する私を、縛られて身動きが出来ないはずの彼が体で軽くいなす。
舌を巻くほどの巧みさであやされて、彼が私に合わせて一緒に高みに駆け上がるに任せた。貪り食った相手の中に精を放つと、急速な墜落と降下にめまいさえした。痺れた手を伸ばして自分で縛った縄をほどく。フランツ様は、ぐったりと私のするがままに任せている。
私は、息も絶え絶えになりながら、相手の体を強く抱きしめた。今だけは、今この瞬間だけはあなたは私のもの。そうでしょう?フランツ様。
私のただ一人の主……。
朝日が鎧戸の隙間からさし込んでくる頃、寝台の上でうとうととしていた私は、フランツ様にくちびるをついばまれて目が覚めた。昨日の夜は私の腕の中で啼いてらした方が、もうすっかり、元の主の顔に戻ってしまっていた。
「ヴァイス、お前は私の物だ。約束しておくれ。私を離さないと」
私は、湧き上がる喜びに胸を詰まらせた。彼の蒼い瞳が眩しくて、ちょっと目を細めながら、必死で微笑んだ。
「フランツ様、お誓いいたします。終生私はフランツ様の物です。命に代えてお仕えいたします」
フランツ様は安心された様子で私の胸に頬を押しつけた。
「ありがとう。ヴァイス」
私は満ち足りた気持ちで、彼の体を抱き寄せた。
その日、フランツ様は、館全体に王都に戻る準備を命じられた。すべての、事務処理は終えられ、私の回復を待つばかりになっていたらしい。正直、留まれるものなら、ずっと王都に帰還せずにいたかった。
王都に帰れば、私と彼の間は隔てられ、どれほど願っていても、いつも一緒にお供が適うというわけではない。いずれは、彼の片腕にと念じてはいるし、亡くなられた公爵もそのために私をフランツ様のおそばにつけられたのだと分かっていても、まだまだその時は先の事。
身に付けねばならない事が多くあり、王宮での身分も公式に得なければならない。だが、彼のような立場の人間が、いつまでも領地に留まれる訳ではなかった。私達は、ほんの数ヶ月前に辿ってきた旅路を帰ることになった。
行きの旅と帰りの旅は、私にとってはまったく違う色合いを帯びてしまっていた。いや、体を重ね合わせたとは言っても、決して越えられない隔ては無くなることは無い。フランツ様もさすがにそこは心得られているので、そこをあやふやになさることはなさらなかった。私は彼にとっては臣下であり、私は彼に属するものなのだ。
だが、一度知ってしまった事を無かったものにもできない。ちょっとしたしぐさ、視線、言葉、そして、お世話をするときにふれる手が私を惑乱させた。彼が欲しかった。もっとお側近くに寄りたい。彼に触れたい。一瞬一瞬が、渇望の連続であり、それを抑えることは拷問に等しかった。
そして、それが彼をおもしろがらせた。私が顔を赤くして視線をそらすたびに、嬉しそうに微笑まれる。わざと体を寄せてきて、私の気持ちをあおる。人の目の多い昼間は、決して立場を超えた振る舞いが出来ないのを見越しておられるのだ。
私を苛んだのはそれだけでは無かった。夕食の後、フランツ様は湯浴みをされる。そのお世話をするのはいつも私の役目だった。まったく無防備にさらされる彼の体に手を掛け、震える手で体を洗う私に、彼はそれ以上のことを決して許さなかった。そこまでは、彼にとっても私にとっても日常のつながりの中だったから。
だが、そのつながりが途切れる時がやってくる。フランツ様は、湯を新しく入れなおさせると、彼の目の前で私に湯浴みをするように命じられるのだ。
それは、行きの旅で繰り返された儀式だった。一週間、医師が毎日治療してくれ、安静に過ごしたせいで私の背中の傷は順調に回復して、行きの旅のフランツ様のむごたらしく傷ついた背中のようには生々しい傷ではなかった。
それでも、まだ痛む傷跡の残る体を彼の前にあからさまにさらして洗うのは辛いものがあった。しかも、私が自分の体を洗っている間、フランツ様は、傍らの椅子に腰掛けてじっとその様子をみつめておられるのだ。その視線が体にちりちりと痛く、それだけで私はのぼせ上がってしまう。
しかもフランツ様は、最後に手を伸ばしてきて私の背中を流してくださる。私は、うつむき、歯をくいしばり、湯船のふちをきつくつかんで、彼の手が背中を洗う動きを捉えようとすべての感覚を研ぎ澄ます。
鈍い痛みと共にふれられる喜びが体中を満たしていく。快感のうねりが拡がって私を捉える。私がそのために喘ぎ、最後には耐え切れずに許しを請うまで、ゆるゆるとその手は背を這い回るのが常だった。
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