★新館・旧館・別館の構成★
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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
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風がきもちいい夜だった。夏の緑のむせるような香りがあたりに満ちて、うっそうと茂る森の暗さが屋敷の庭の木々におおいかぶさる。「降るように煌めく空に瞬く星」という、つきなみな表現がぴったりの空に、明るい満月がかかっている。やがては、夏の休暇は終わる。私は学校に戻らなくてはならない。後半年という月日は、短いようでいて、恋をしている男には永遠にも続くような長さだった。
だが、それでも夏の初めにあの一冊の本を脇に抱えて、やってきた田舎の屋敷で、このように美しく愛らしい花を摘む事になろうとは、想像すらしていなかった。
白いロープを一枚纏いつけただけの彼女は、ベッドの上にちょこんと座って私を待っていた。
「ニコラス」
にっこりとほほえむその飾り気の無い素顔にはなんのてらいも作為もなく、嬉しそうに私を迎えてくれるのだった。私は彼女の横に出来るだけ静かに座り小さなその白い手を握った。そっとその指先に小さなキスを贈る。
「愛している」その事を胸の中に繰り返し刻み込んだ。他人から見れば私の行いは決して愛とは呼べないものだったろう。だが、私の中にははっきりと触れられるほどに強い気持ちが湧きあがってくるようになっていた。彼女を幸せにしたい。彼女の望むものを与えたい。たとえ、それが、彼女の身体に刻む苦痛であっても……。
彼女自身はどうだったのだろう。彼女の笑顔。そしてしがみついてくる細い身体。甘えるような、誘うようなしぐさ。そう、彼女も私を愛していると錯覚するほど、私も若くおめでたくは無かった。
彼女が何を考え、何を信じているにしろ、それもまだまだこれから変えていくしかないのだった。私達の間に、夫婦として一生を共にするほどの何かを、二人で見つけていくしかないのだ。
私は彼女の肩を抱いて引き寄せた。寝巻きのリボンを解いて、向き卵のように白くつるんとした艶々しい身体を、絹の贅沢な寝巻きの中からするりと取り出す。
キスを重ねる。何度も何度も。まぶたに。頬に。耳の後ろに。首筋に。肩に。可愛らしく小さな胸のまるみに。みるく色をした薔薇の宮殿。赤い唇が開き、かすかな吐息をもらす…。誘っているね、マリエーヌ。君はそれがどういうものだか、知っているの?
触れ、導き、たゆたい、お互いにからみつき、眼と手と唇で確かめ合う。
味わい、さぐり、揺らめいて、ひとつになり、二人でその高みを登る。
愛を誓う。繰り返し。お互いに信じていない永遠を。
彼女は彼、そしてどちらでもないなにか。
「私は男根の飾りをつけた女の子じゃないんだよ」
私は彼女のその言葉を自分自身の心に繰り返した。私達の旅は始まったばかり。私は彼女の本質に触れ、そしてそれを理解できるのか。それでも、愛していると言えるのか。彼女の瞳を覗き込みながら、私は自分の胸に問いかける。
ああ。「愛している」それだけははっきりと言えるだろう。腕の中で汗ばみ、しがみついてくる細い身体を確かめながら、私は歯を喰いしばって彼女の中に押し入り、留まり続けた。
何度でも彼女に誓おう。その私の愛を。私がマリエーヌを愛しているのは、彼女が女性でもなく男性でもなかったうえに、彼女が私に見せた子供らしくもなく人間らしくもない、胸を締め付けるような恐怖と悲しみのせいなのだから。
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注文された貞操帯が出来上がってきたのは、夏の終わりだった。私はその翌日、彼女を伴って王都へ帰る事になっていた。そして、彼女を伯爵の館に預け、学校へ戻るのだ。毎日毎日抱きしめ、確かめ、思うままにお仕置きを繰り返した相手を手放して、灰色の学問の塔へと戻っていく事を考えると味気ない想いがするのも致し方なかった。
だが、その反面、私がいなくなった後の彼女がどれほど辛い想いをするかという事も、たやすく想像できる事だった。マリエーヌは、私が学問所へ戻っていく事を不満に思っていただろう。
ハルトヴィックが差し出した銀色の細かい飾り彫りで美しく飾られた貞操帯をマリエーヌは不機嫌な顔でじっと見つめている。
「鍵は二つ、一つは、伯爵家にお預けしてまいりました。もうひとつは、ボールドウィン様に」
私は黙って、鍵を受け取る。
「マリエーヌ、着けてみてごらん。身体に合わないと困るから…」
眉を寄せていた彼女はつんと顎を上げて、顔を背けた。
「彼のいる所ではいや」
結局は身体を見せなくてはいけない事は分かっていても、この間のいきさつからすっかりとハルトヴィックに対してくったくが出来てしまったマリエーヌは、わざとらしくドレスの裾をさばいて、つんけんと背中を向けてみせる。
私も、正直、彼に彼女をゆだねる事には抵抗があった。だが、だからと言って、このままにするわけにもいかない。
「ハルトヴィック。ちょっと外してくれないか。着け終わったら呼ぶ事にするから」
私は、ベルを鳴らして小間使いを呼ぶと彼女に、ガウンを持ってくるように言いつけた。ハルトヴィックは、おとなしく下がっていく。
「マリエーヌ、さあ、ドレスを脱いで」
ちょっと唇をとがらしたまま、彼女は私のそばにやってきた。背中に並ぶ、たくさんのボタンをひとつずつ外してやりながらそっと身体を寄せ合う。ただ寄り添う彼女のぬくもりが、それだけで私の欲望を呼び覚ますのを私は切ない思いと共に受け止めた。離れている間、どれほどに淋しい気持ちがするだろう。
腰の辺りまでボタンを外すとウェストを飾る絹のサッシュを解いてやった。彼女は愛らしい動きで腰を振って、ドレスを脱ぎ落とす。小間使いがガウンを持って現れた。そして、彼女が脱ぎ捨てたドレスを拾うと、丁寧にしわを伸ばしながら椅子の背に掛けてくれた。
「ありがとう。後は私がやるから」
ちらり、と、小間使いは詮索するような視線を私に向け、頬を赤く染めて退出していった。お仕置きの音や泣き声は館中に響いていたし、身の回りの世話をする小間使い達は彼女のお尻の傷跡を眼にする事もあるだろう。昼間から応接間で服を脱ぐなど、貴婦人にあるまじき事を女主人に要求する私に対して、使用人たちが明日からあれこれと好色な噂をするであろう事も推測できた。苦笑しながら、下着を脱ぎ捨てて行く彼女の裸の背中にガウンを着せ掛けた。
彼女の前に膝をついて屈み、冷たい金属の檻を足の間にあてた。私の肩に手を乗せて脚を開き腰をかがめた彼女は、ひやっとした金属の肌触りにさっと鳥肌を立てて、身体をすくめた。
「冷たい」
「そうだね」
こんなものを腰につけて生活して、身体に悪くは無いのだろうか。金具を廻し、鍵をかける。カチリという音と共に彼女はその檻の中に閉じ込められた。心細そうにうつむき、その金属に手を這わせてみる彼女。
「重い?」
声も無くただ黙ってうなずく彼女の瞳が涙で潤んでいるように見えて、私は慌てて立ち上がった。彼女を抱きしめて頬に頬を合わせる。
「どうしたの?マリエーヌ。貞操帯をつけるのは、いやかい?」
「わ、わからない。だって、なんだか……」
彼女の頬をほろほろと透明な滴が零れ落ちた。彼女は、知っていたのだろうか。この金属の檻がどれほど彼女を縛りつけ苦しめる事になるのか。
私は分からなかった。私に分かっていたのはただ、腕の中の子供が頼りなく、心細そうに泣いているのが痛ましいという事だけだった。椅子に座り、膝の上に抱え上げた彼女の身体をゆっくりとゆすってやった。彼女の身体がぬくもりを取り戻し、頬がほんのりと色づくまで、それから、そっとその唇をついばんだ。
「これをつけていると、誰も私にお仕置きできないね」
マリエーヌは私の身体に手を廻したままでささやいた。
「これからは、貴方の身体は私の物なのだよ。誰もふれる事はできないし、お仕置きをする権利も私だけの物なんだ」
「ああ」
ようやく、マリエーヌの頬に微笑が戻ってきた。
「貴方は、私の物。そして、私は、貴方の物なんだから」
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だが、その反面、私がいなくなった後の彼女がどれほど辛い想いをするかという事も、たやすく想像できる事だった。マリエーヌは、私が学問所へ戻っていく事を不満に思っていただろう。
ハルトヴィックが差し出した銀色の細かい飾り彫りで美しく飾られた貞操帯をマリエーヌは不機嫌な顔でじっと見つめている。
「鍵は二つ、一つは、伯爵家にお預けしてまいりました。もうひとつは、ボールドウィン様に」
私は黙って、鍵を受け取る。
「マリエーヌ、着けてみてごらん。身体に合わないと困るから…」
眉を寄せていた彼女はつんと顎を上げて、顔を背けた。
「彼のいる所ではいや」
結局は身体を見せなくてはいけない事は分かっていても、この間のいきさつからすっかりとハルトヴィックに対してくったくが出来てしまったマリエーヌは、わざとらしくドレスの裾をさばいて、つんけんと背中を向けてみせる。
私も、正直、彼に彼女をゆだねる事には抵抗があった。だが、だからと言って、このままにするわけにもいかない。
「ハルトヴィック。ちょっと外してくれないか。着け終わったら呼ぶ事にするから」
私は、ベルを鳴らして小間使いを呼ぶと彼女に、ガウンを持ってくるように言いつけた。ハルトヴィックは、おとなしく下がっていく。
「マリエーヌ、さあ、ドレスを脱いで」
ちょっと唇をとがらしたまま、彼女は私のそばにやってきた。背中に並ぶ、たくさんのボタンをひとつずつ外してやりながらそっと身体を寄せ合う。ただ寄り添う彼女のぬくもりが、それだけで私の欲望を呼び覚ますのを私は切ない思いと共に受け止めた。離れている間、どれほどに淋しい気持ちがするだろう。
腰の辺りまでボタンを外すとウェストを飾る絹のサッシュを解いてやった。彼女は愛らしい動きで腰を振って、ドレスを脱ぎ落とす。小間使いがガウンを持って現れた。そして、彼女が脱ぎ捨てたドレスを拾うと、丁寧にしわを伸ばしながら椅子の背に掛けてくれた。
「ありがとう。後は私がやるから」
ちらり、と、小間使いは詮索するような視線を私に向け、頬を赤く染めて退出していった。お仕置きの音や泣き声は館中に響いていたし、身の回りの世話をする小間使い達は彼女のお尻の傷跡を眼にする事もあるだろう。昼間から応接間で服を脱ぐなど、貴婦人にあるまじき事を女主人に要求する私に対して、使用人たちが明日からあれこれと好色な噂をするであろう事も推測できた。苦笑しながら、下着を脱ぎ捨てて行く彼女の裸の背中にガウンを着せ掛けた。
彼女の前に膝をついて屈み、冷たい金属の檻を足の間にあてた。私の肩に手を乗せて脚を開き腰をかがめた彼女は、ひやっとした金属の肌触りにさっと鳥肌を立てて、身体をすくめた。
「冷たい」
「そうだね」
こんなものを腰につけて生活して、身体に悪くは無いのだろうか。金具を廻し、鍵をかける。カチリという音と共に彼女はその檻の中に閉じ込められた。心細そうにうつむき、その金属に手を這わせてみる彼女。
「重い?」
声も無くただ黙ってうなずく彼女の瞳が涙で潤んでいるように見えて、私は慌てて立ち上がった。彼女を抱きしめて頬に頬を合わせる。
「どうしたの?マリエーヌ。貞操帯をつけるのは、いやかい?」
「わ、わからない。だって、なんだか……」
彼女の頬をほろほろと透明な滴が零れ落ちた。彼女は、知っていたのだろうか。この金属の檻がどれほど彼女を縛りつけ苦しめる事になるのか。
私は分からなかった。私に分かっていたのはただ、腕の中の子供が頼りなく、心細そうに泣いているのが痛ましいという事だけだった。椅子に座り、膝の上に抱え上げた彼女の身体をゆっくりとゆすってやった。彼女の身体がぬくもりを取り戻し、頬がほんのりと色づくまで、それから、そっとその唇をついばんだ。
「これをつけていると、誰も私にお仕置きできないね」
マリエーヌは私の身体に手を廻したままでささやいた。
「これからは、貴方の身体は私の物なのだよ。誰もふれる事はできないし、お仕置きをする権利も私だけの物なんだ」
「ああ」
ようやく、マリエーヌの頬に微笑が戻ってきた。
「貴方は、私の物。そして、私は、貴方の物なんだから」
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私達は、にっこりと微笑みを交わし、そして、ハルトヴィックを部屋に招きいれた。ぴったりと彼女の身体に添って作られた貞操帯の最後の微調整を行うために。長時間を身につけても、決して、彼女の身体に傷を付ける事も無く、負担にもならないようにハルトヴィックは念入りに何度も、貞操帯を外してはつけ、つけては外して、形を整えた。
ようやく、満足が行く形になり、マリエーヌも納得した様子で椅子に座ったり、立ち上がったり歩いてみたりしていたが、ふと不思議そうな顔でハルトヴィックを振り返った。
「この、貞操帯をつけている間は、用を足す時にはどうしたらいい?」
「前後に、穴が空いておりますので、ご不自由は特に無いと思われます」
リラックスしてきていたマリエーヌは、すっかりと警戒心も薄れた様子で、私達の目の前であけすけに裾をめくるとその穴を探ってみようとした。私はマリエーヌの様子を見ている振りをしながら、こっそりとハルトヴィックの表情を追っていた。あくまで職業的な興味以上の物は見せまいと、緊張している彼の引きつった笑顔とぎこちない体の動き、そしてこっそりと盗み見るような視線。普通の大人にとってマリエーヌのようにまだまだ、少女の体つきを抜け出していない子供の身体は、欲情の対象となるには不十分なはずなのに。どういうわけなのだろう。男たちは皆、いつの間にか魅せられ、釘付けにさせられてしまう…。
私は、溜息をつかずにはいられなかった。伯爵の館へマリエーヌが住む事になれば、多くの男たちの目に彼女は触れる事になる。そうなれば、結局はこの貞操帯が、どれほど重要なものになるか。伯爵の懸念がどれほど的を射たものか、私は知る事になるだろう。
そして、彼女自身も。今は、たった一人だけの求婚者である私の後に、連なる熱心な貴族達を見れば、私に対して見劣りを感じる日も来るのではないか。
マリエーヌは納得したのだろう。裾を元通りに降ろしてしわを伸ばすと、ポンと安楽椅子に腰を降ろした。ハルトヴィックは、彼女が見せる、男の子のようなきびきびとしてそれでいてどこかなまめかしい動きから、意志の力で無理矢理自分の視線を引き剥がした様子だった。改めて私と視線が合うと、わずかなうしろろめたさと共感を持った視線で、私に自分の気持ちを伝えてきた。
彼の気持ちが分からないわけではない。だが、だからと言って、私が恋敵であろうとする彼に寛容な姿勢をみせる必要などこにも無いではないか。私がそっけないうなずきしか返さなかった事で、彼は意趣返しをしようと思ったのだろう。私がマリエーヌに内緒で注文していたあれこれに付いて言及してきた。
「ボールドウィン様が選ばれたあれこれの小物もお持ちいたしましたが、それも今お見せいたしますか」
マリエーヌは、びっくりして私方を見た。
「ニコラス、なに?何を注文したんだい?」
「多くの男性が、貞操帯に付属させたいと考えるあれこれの道具だよ。ハルトヴィック、その品物は彼女のいないところで見るよ。実際に彼女とそれで遊ぶ時に、驚かせたいからね」
「ええ!そんなのって、ずるい。ニコラスったら」
私は、わざとらしく彼女の身体を引き寄せて軽いキスを振りまいて見せた。この間のお返しに俯いているハルトヴィックに歯軋りさせてやりたかった。
「それは、これからのお楽しみなんだよ。それに、君の身体はまだまだこれから大人になるんだからね。何もかも一度に進める必要は無いんだ。私達は、一生一緒にいるんだからね。焦るつもりはないよ」
ぷんっとふくれたマリエーヌは、くるりとガウンの裾を翻しながら廻って見せた。フレアのたっぷりと入ったガウンはふうわりと翻り、淑女が決して人の目には触れさせる事の無いしなやかな脚の線が動くのが露になった。見せびらかすだけ見せびらかして、可笑しくて堪らない様子でくすくすと笑いながら、マリエーヌは立ち上がった。
「いいよ。じゃあ、席を外してあげる。男同士の内緒話をなさいな。その代わり後でたっぷりと可愛がってくれないとだめだよ」
妖精は、華やかな笑い声を残して、部屋を出て行った。
「さあ、それでは、小道具の方を見せてもらおうかな」
「はい、ボールドウィン様」
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ようやく、満足が行く形になり、マリエーヌも納得した様子で椅子に座ったり、立ち上がったり歩いてみたりしていたが、ふと不思議そうな顔でハルトヴィックを振り返った。
「この、貞操帯をつけている間は、用を足す時にはどうしたらいい?」
「前後に、穴が空いておりますので、ご不自由は特に無いと思われます」
リラックスしてきていたマリエーヌは、すっかりと警戒心も薄れた様子で、私達の目の前であけすけに裾をめくるとその穴を探ってみようとした。私はマリエーヌの様子を見ている振りをしながら、こっそりとハルトヴィックの表情を追っていた。あくまで職業的な興味以上の物は見せまいと、緊張している彼の引きつった笑顔とぎこちない体の動き、そしてこっそりと盗み見るような視線。普通の大人にとってマリエーヌのようにまだまだ、少女の体つきを抜け出していない子供の身体は、欲情の対象となるには不十分なはずなのに。どういうわけなのだろう。男たちは皆、いつの間にか魅せられ、釘付けにさせられてしまう…。
私は、溜息をつかずにはいられなかった。伯爵の館へマリエーヌが住む事になれば、多くの男たちの目に彼女は触れる事になる。そうなれば、結局はこの貞操帯が、どれほど重要なものになるか。伯爵の懸念がどれほど的を射たものか、私は知る事になるだろう。
そして、彼女自身も。今は、たった一人だけの求婚者である私の後に、連なる熱心な貴族達を見れば、私に対して見劣りを感じる日も来るのではないか。
マリエーヌは納得したのだろう。裾を元通りに降ろしてしわを伸ばすと、ポンと安楽椅子に腰を降ろした。ハルトヴィックは、彼女が見せる、男の子のようなきびきびとしてそれでいてどこかなまめかしい動きから、意志の力で無理矢理自分の視線を引き剥がした様子だった。改めて私と視線が合うと、わずかなうしろろめたさと共感を持った視線で、私に自分の気持ちを伝えてきた。
彼の気持ちが分からないわけではない。だが、だからと言って、私が恋敵であろうとする彼に寛容な姿勢をみせる必要などこにも無いではないか。私がそっけないうなずきしか返さなかった事で、彼は意趣返しをしようと思ったのだろう。私がマリエーヌに内緒で注文していたあれこれに付いて言及してきた。
「ボールドウィン様が選ばれたあれこれの小物もお持ちいたしましたが、それも今お見せいたしますか」
マリエーヌは、びっくりして私方を見た。
「ニコラス、なに?何を注文したんだい?」
「多くの男性が、貞操帯に付属させたいと考えるあれこれの道具だよ。ハルトヴィック、その品物は彼女のいないところで見るよ。実際に彼女とそれで遊ぶ時に、驚かせたいからね」
「ええ!そんなのって、ずるい。ニコラスったら」
私は、わざとらしく彼女の身体を引き寄せて軽いキスを振りまいて見せた。この間のお返しに俯いているハルトヴィックに歯軋りさせてやりたかった。
「それは、これからのお楽しみなんだよ。それに、君の身体はまだまだこれから大人になるんだからね。何もかも一度に進める必要は無いんだ。私達は、一生一緒にいるんだからね。焦るつもりはないよ」
ぷんっとふくれたマリエーヌは、くるりとガウンの裾を翻しながら廻って見せた。フレアのたっぷりと入ったガウンはふうわりと翻り、淑女が決して人の目には触れさせる事の無いしなやかな脚の線が動くのが露になった。見せびらかすだけ見せびらかして、可笑しくて堪らない様子でくすくすと笑いながら、マリエーヌは立ち上がった。
「いいよ。じゃあ、席を外してあげる。男同士の内緒話をなさいな。その代わり後でたっぷりと可愛がってくれないとだめだよ」
妖精は、華やかな笑い声を残して、部屋を出て行った。
「さあ、それでは、小道具の方を見せてもらおうかな」
「はい、ボールドウィン様」
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そうして、私達は二つに隔てられたのだった。私は学問所へ。彼女は父親の館へ。平日は忙しく学問に没頭し、週末には外出許可を取って伯爵の館を訪ねるのが私の日常となった。この半年間を実り多いものにして、彼女の夫として恥ずかしくない身分を確保する。その事は、彼女にとってはどうでもよく、私にとっては重要な事であった。そういう意味では彼女はあまりにも子供で、彼女にとって未来というものはあまりにも漠然としていた。
そう。マリエーヌにとっては、週末に私が鍵を持ってやってくる事だけが重要だった。彼女は平日の長く退屈な時間を扱いかねて過ごし、私が訪ねてくるのを待ち焦がれていた。
そうなってしまったのには、事情がある。彼女は社交界にデビューしていなかったため、たいていの客と社交を楽しむ訳にはいかなかったのだ。私が、懸念していた父親の家に訪ねてくる多くの客と会う事も無く、自然と自室にこもりきりになってしまった。
本来は彼女の面倒を見るべき姉妹や兄弟は、彼女と関わりあう事を徹底的に避けていたし、中途半端な親戚は、秘密が洩れる危険性を考慮して、遠ざけていたのだった。彼女は、身体の弱い娘として、館の奥深くにしまいこまれてしまった。
その上、伯爵は、親密な女友達を作るためにも、社交界に出る事を検討した方がいいという周囲の忠告も気の無い様子で聞き流してしまっていた。それはマリエーヌも同じだった。
「だって、結婚が延びてしまうじゃないの」
彼女にとっては、婚約期間中には、第三者の同席無しに二人きりになる事が出来ないという社交界の習慣が足枷になっているのも確かだ。
「そんなのって、うんざりだよ。女友達、女友達って。ニコラスは忘れているんじゃない?僕は女の子じゃないんだ。そういう意味じゃ、男の子の友達だって同じなんだよ」
手っ取り早く僕と結婚してしまい、既婚者として社交界に顔を出す。その方がずっと簡単で、すっきりしている。
そう言い張る彼女の意見は変則的だったが、結婚前の女性を縛っている社交界のしきたりをひとつずつ踏んで、彼女を一人前の女性と認めさせるという過程は、ありとあらゆる危険性を含んでいた。そして、その長い期間中、彼女がおとなしく慎ましい生活を送ると楽観的に考えるほど、伯爵は甘くは無かったのだ。
伯爵が、彼女がこれからの半年間を、領地に引きこもって育っていた時と同じように館に閉じこもりきりで過ごしてくれた方がずっと都合よいと考えているのは明らかだった。そういう訳で、彼女は毎日を孤独に過ごし、私がやってくるのを待ちかねていた。
六日ぶりに会う彼女は、頬をばら色に上気させ、きらきらと潤んだ眼で私を迎えてくれる。私達は彼女の自室に直行し、そこにはすでに風呂の支度が出来ているのが常だった。もちろん毎日貞操帯をつけたまま、彼女は湯をつかっていたのだが、つけたままで入るのと、外して入る風呂では、やはり大違いなのだった。キスを楽しもうとする私と違い、彼女は急いで服を脱いでしまいたがった。
六日間、ほおって置かれた身体は、焦れに焦れていた。だから、私は、殊更に椅子の上に腰を落ち着けて、彼女を膝の上に抱き上げるとキスを楽しんだ。ばら色の唇のキス。焦らすように軽くついばむともっととねだるように段々と咲き開いてくる唇。誘うように、覗く舌を軽く弾いてやって、それから深く舌を差し入れて絡ませる。息が弾み、首に廻された腕に力がこもり、お互いの身体が熱くなってくるまでキスを繰り返す。
「お湯がぬるくなっちゃうよ」
焦れた彼女が、最後はそう言って甘いキスに終止符を打つのが常だった。それから私は、あちこちへ悪戯な手を這わせながら、服を脱がせる作業に取り掛かった。焦らされるのを彼女は嫌がった。だから、私は一層その時間を楽しむ事にしていたのだった。
やがて、ようやく私が鍵を取り出して彼女の貞操帯を外す頃には、彼女は身体を熱くして、息を弾ませている。
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そう。マリエーヌにとっては、週末に私が鍵を持ってやってくる事だけが重要だった。彼女は平日の長く退屈な時間を扱いかねて過ごし、私が訪ねてくるのを待ち焦がれていた。
そうなってしまったのには、事情がある。彼女は社交界にデビューしていなかったため、たいていの客と社交を楽しむ訳にはいかなかったのだ。私が、懸念していた父親の家に訪ねてくる多くの客と会う事も無く、自然と自室にこもりきりになってしまった。
本来は彼女の面倒を見るべき姉妹や兄弟は、彼女と関わりあう事を徹底的に避けていたし、中途半端な親戚は、秘密が洩れる危険性を考慮して、遠ざけていたのだった。彼女は、身体の弱い娘として、館の奥深くにしまいこまれてしまった。
その上、伯爵は、親密な女友達を作るためにも、社交界に出る事を検討した方がいいという周囲の忠告も気の無い様子で聞き流してしまっていた。それはマリエーヌも同じだった。
「だって、結婚が延びてしまうじゃないの」
彼女にとっては、婚約期間中には、第三者の同席無しに二人きりになる事が出来ないという社交界の習慣が足枷になっているのも確かだ。
「そんなのって、うんざりだよ。女友達、女友達って。ニコラスは忘れているんじゃない?僕は女の子じゃないんだ。そういう意味じゃ、男の子の友達だって同じなんだよ」
手っ取り早く僕と結婚してしまい、既婚者として社交界に顔を出す。その方がずっと簡単で、すっきりしている。
そう言い張る彼女の意見は変則的だったが、結婚前の女性を縛っている社交界のしきたりをひとつずつ踏んで、彼女を一人前の女性と認めさせるという過程は、ありとあらゆる危険性を含んでいた。そして、その長い期間中、彼女がおとなしく慎ましい生活を送ると楽観的に考えるほど、伯爵は甘くは無かったのだ。
伯爵が、彼女がこれからの半年間を、領地に引きこもって育っていた時と同じように館に閉じこもりきりで過ごしてくれた方がずっと都合よいと考えているのは明らかだった。そういう訳で、彼女は毎日を孤独に過ごし、私がやってくるのを待ちかねていた。
六日ぶりに会う彼女は、頬をばら色に上気させ、きらきらと潤んだ眼で私を迎えてくれる。私達は彼女の自室に直行し、そこにはすでに風呂の支度が出来ているのが常だった。もちろん毎日貞操帯をつけたまま、彼女は湯をつかっていたのだが、つけたままで入るのと、外して入る風呂では、やはり大違いなのだった。キスを楽しもうとする私と違い、彼女は急いで服を脱いでしまいたがった。
六日間、ほおって置かれた身体は、焦れに焦れていた。だから、私は、殊更に椅子の上に腰を落ち着けて、彼女を膝の上に抱き上げるとキスを楽しんだ。ばら色の唇のキス。焦らすように軽くついばむともっととねだるように段々と咲き開いてくる唇。誘うように、覗く舌を軽く弾いてやって、それから深く舌を差し入れて絡ませる。息が弾み、首に廻された腕に力がこもり、お互いの身体が熱くなってくるまでキスを繰り返す。
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だが、カチリと金属が音を立ててはずれ、ようやく自由の身になると、彼女は、キスも愛撫も棚上げにして、その熱い身体を私の腕の檻からからするりと抜け出させ、一直線に湯ぶねの中に飛び込んでいく。シャボンのをたっぷりと泡立てて、閉じ込められていた身体をゴシゴシ擦りたがるのだ。私は彼女が満足いくまで身体の隅々までを洗うのを眺めて楽しんだ。
彼女がすっかり赤むけになってしまうと、私は、袖を撒くってシャボンの泡をたてると彼女のあそこをそっと洗ってあげる事にしていた。その場所は、もう私の「もの」…。彼女の「もの」ではないのだ。
湯ぶねに立たせて、脚を開かせると、泡の立った掌でそっと上から覆ってやる。彼女は眼を閉じて身体を堅くする。私は、やわらかく撫で上げるようにしながら泡を塗りこめる。
前にも、そして、後にも……。
彼女の唇から溜息が洩れる。私の肩にかけられたその手に力が入る。六日間一度も触れられる事なく、閉じ込められた花びらの縁をゆるゆると這い回る指の動きに、彼女は思わず腰を引く。
「あ…ああ…ん」
彼女の表情を確かめながら、ゆっくりと指で弄りまわす。念入りに、じっくりと、確かめながら。うんと時間をかけて、行きつ戻りつさせ、彼女の喘ぎを絞り取る。
「もう…だ…め…。ニコラス、早く」
立ってられなくなった彼女が僕の身体にすがりつき、彼女のそこが、石鹸の泡のすべりだけでないぬるつきに覆われると、私は手桶で何杯も湯をかけて、彼女の身体から泡を流し落とした。シャボンの泡は、彼女の身体の中には刺激が強すぎるのだ。大きな布で彼女をくるむと抱き上げてベッドへ直行する。お互いに待ち遠しく思っていた週末の楽しみを存分に味わうために。
回数を重ねる毎に、彼女の身体は柔軟になり、痛みを訴える事も減ってきた。だが、それでも、まだ青い果実である事にかわりはない。私は、彼女の中に入るのを出来るだけ引き伸ばし、念入りに時間をかけた。自分の欲望は棚上げして、彼女の身体が魚のように跳ね、押さえつける私の身体を跳ね返そうともがくまで…。
それから、彼女の両脚の中に身体を入れてゆっくりと刺し貫いた。私の背中を引き寄せながら、彼女は毎回涙を降り零した。痛みのためではなく、苦しみのためでもない涙。私の愛しいマリエーヌ。彼女の身体の中は暖かく、私の幸せのすべてはそこにあった。私は、彼女の中にある宇宙にたゆたい、それをむさぼった。
私達はひとつになり、そして、お互いにまだ、恐ろしく遠く……孤独だった。

ひとつのベッドを分け合い、たわいもない日常の話をしながら何度か愛し合う。そしてぬくもりを抱きしめて眠る。
翌朝の午前11時頃に小間使いがカーテンを開けにくるまで、二人はお互いの身体に腕をまわしたまままどろんだ。そして、運ばれてきたお湯で洗面し、運ばれてきた朝食をベッドの脇のテーブルで食べる。
にこやかな会話が続くのはその食事の間だけ。終わりに近づくとわざとらしく彼女は私のいう事を聞かなくなるのだ。砂糖を廻して…とか、パンを取って…と、いったさりげない言葉を黙ってやりすごす。それが、合図だった。私達の間にあった和やかな語らいは終わりを告げ、私達は別れのための儀式に入るのだ。
「マリエーヌ?聞えなかったの」
「困った娘だね。そんな子には、お仕置きをしないと」
「どうして、僕のいう事を素直に聞けないんだ」
「正直に言わないと、ひどくぶつよ」
始まりの言葉はなんでもよかった。目的はただ、ひとつだったから。僕は、彼女の身体を乱暴に引き寄せて膝に乗せる。あるいは、もったいぶって説教をしながら椅子の上に伏せさせる。手ひどく小突き回して、ベッドの柱に縛り付ける。彼女は、泣き。抵抗し。唇を噛んで私を見上げる。そして、眼を潤ませ、欲情し、舌なめずりをしながら、私の手の下にひざまずくのだ。
「ニコラス。いやあ…!もう許して。お願い。お願い」
泣き叫び、哀願する少女をお仕置きする、かんしゃくもちの酷い男。それが、伯爵家の使用人達が知っている館での私だった。私は、毎回、彼女の我慢が切れて鳴き声をあげるまで手ひどくぶった。自分から望んで差し出した身体を、こらえきれずに逃げ出そうともがき始めるまで。いや、それ以上に。彼女が耐え切れず必死になって抵抗し始めてからも、尚、押さえつけて打った。
しゃくりあげる彼女のお尻を冷やしてやり、薬を塗りながら、私は別れを噛み締める。そして、彼女の身体に貞操帯を付けさせて鍵を掛ける。カチリというその音が、幸せな逢引の終わりを告げて、私はまた六日間の苦役をこなすために帰途に着くのだった。
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彼女がすっかり赤むけになってしまうと、私は、袖を撒くってシャボンの泡をたてると彼女のあそこをそっと洗ってあげる事にしていた。その場所は、もう私の「もの」…。彼女の「もの」ではないのだ。
湯ぶねに立たせて、脚を開かせると、泡の立った掌でそっと上から覆ってやる。彼女は眼を閉じて身体を堅くする。私は、やわらかく撫で上げるようにしながら泡を塗りこめる。
前にも、そして、後にも……。
彼女の唇から溜息が洩れる。私の肩にかけられたその手に力が入る。六日間一度も触れられる事なく、閉じ込められた花びらの縁をゆるゆると這い回る指の動きに、彼女は思わず腰を引く。
「あ…ああ…ん」
彼女の表情を確かめながら、ゆっくりと指で弄りまわす。念入りに、じっくりと、確かめながら。うんと時間をかけて、行きつ戻りつさせ、彼女の喘ぎを絞り取る。
「もう…だ…め…。ニコラス、早く」
立ってられなくなった彼女が僕の身体にすがりつき、彼女のそこが、石鹸の泡のすべりだけでないぬるつきに覆われると、私は手桶で何杯も湯をかけて、彼女の身体から泡を流し落とした。シャボンの泡は、彼女の身体の中には刺激が強すぎるのだ。大きな布で彼女をくるむと抱き上げてベッドへ直行する。お互いに待ち遠しく思っていた週末の楽しみを存分に味わうために。
回数を重ねる毎に、彼女の身体は柔軟になり、痛みを訴える事も減ってきた。だが、それでも、まだ青い果実である事にかわりはない。私は、彼女の中に入るのを出来るだけ引き伸ばし、念入りに時間をかけた。自分の欲望は棚上げして、彼女の身体が魚のように跳ね、押さえつける私の身体を跳ね返そうともがくまで…。
それから、彼女の両脚の中に身体を入れてゆっくりと刺し貫いた。私の背中を引き寄せながら、彼女は毎回涙を降り零した。痛みのためではなく、苦しみのためでもない涙。私の愛しいマリエーヌ。彼女の身体の中は暖かく、私の幸せのすべてはそこにあった。私は、彼女の中にある宇宙にたゆたい、それをむさぼった。
私達はひとつになり、そして、お互いにまだ、恐ろしく遠く……孤独だった。

ひとつのベッドを分け合い、たわいもない日常の話をしながら何度か愛し合う。そしてぬくもりを抱きしめて眠る。
翌朝の午前11時頃に小間使いがカーテンを開けにくるまで、二人はお互いの身体に腕をまわしたまままどろんだ。そして、運ばれてきたお湯で洗面し、運ばれてきた朝食をベッドの脇のテーブルで食べる。
にこやかな会話が続くのはその食事の間だけ。終わりに近づくとわざとらしく彼女は私のいう事を聞かなくなるのだ。砂糖を廻して…とか、パンを取って…と、いったさりげない言葉を黙ってやりすごす。それが、合図だった。私達の間にあった和やかな語らいは終わりを告げ、私達は別れのための儀式に入るのだ。
「マリエーヌ?聞えなかったの」
「困った娘だね。そんな子には、お仕置きをしないと」
「どうして、僕のいう事を素直に聞けないんだ」
「正直に言わないと、ひどくぶつよ」
始まりの言葉はなんでもよかった。目的はただ、ひとつだったから。僕は、彼女の身体を乱暴に引き寄せて膝に乗せる。あるいは、もったいぶって説教をしながら椅子の上に伏せさせる。手ひどく小突き回して、ベッドの柱に縛り付ける。彼女は、泣き。抵抗し。唇を噛んで私を見上げる。そして、眼を潤ませ、欲情し、舌なめずりをしながら、私の手の下にひざまずくのだ。
「ニコラス。いやあ…!もう許して。お願い。お願い」
泣き叫び、哀願する少女をお仕置きする、かんしゃくもちの酷い男。それが、伯爵家の使用人達が知っている館での私だった。私は、毎回、彼女の我慢が切れて鳴き声をあげるまで手ひどくぶった。自分から望んで差し出した身体を、こらえきれずに逃げ出そうともがき始めるまで。いや、それ以上に。彼女が耐え切れず必死になって抵抗し始めてからも、尚、押さえつけて打った。
しゃくりあげる彼女のお尻を冷やしてやり、薬を塗りながら、私は別れを噛み締める。そして、彼女の身体に貞操帯を付けさせて鍵を掛ける。カチリというその音が、幸せな逢引の終わりを告げて、私はまた六日間の苦役をこなすために帰途に着くのだった。
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それは、ほんの出来心から始まった。別れの儀式の為にたっぷりとお仕置きをした後、貞操帯を付けている時、マリエーヌがふと思いついたように尋ねてきた。
「ニコラス。この貞操帯に付属させて使う小物をハルトヴィックに作らせていたでしょ?」
「ええ、作らせましたよ」
「あれ、どんなものだったの。結局見せてもらってないし、どんなものなのかも知らないんだよ」
「そうだね。でも、今日は持ってきてないんですよ」
私はすっかりと忘れていたくせに、思い出した途端に気になって仕方がない様子のマリエーヌが、ぶうぶうと口を尖らす様子をほほえましく眺めた。こういうときの彼はすっかり少年のような表情をする。そして私に、彼と呼ばせるだけの別の輝きを見せ付けるのだった。
「つまんないの」
私はくすくすと笑いながら彼女の足の間へ鍵を差し込んだ。それは、いつも使うウエストの辺りの貞操帯を外すための錠前ではなく、もっと別の場所を外すための鍵穴だった。その鍵穴は、飾り彫りの模様の中に実に上手く隠されている。足の間を覆った身体に沿ってカーブした板がパチンと外れると、私の手の中に落ちてきた。しっかりと覆われていたはずの性器があっという間にむき出しになった事に、マリエーヌは驚いた。
「こうすれば貞操帯をしたまま、悪戯する事もできるんだよ」
「ふうん。知らなかった。びっくり…」
「ハルトヴィックに作らせた小物は、ここを開けたときに使うんだ。性器の中に入れるディルドウやアナルに入れる細身のディルドウ。反対に身体の外へ向かってそそり立つペニスバンドになる飾り。それから、その道具をしっかりと抑える他の形の板。それから、そのディルドウと板が接合されてしまっているもの」
興味深げに話を聞いていたマリエーヌも最後の言葉には嫌そうに顔をしかめた。貞操帯に接合されたディルドウが、接合していないディルドウとは、また違う責めを彼女に与えるのに気がついたらしい。
「ニコラス。どうしてその道具をつかわないのさ」
「うーん……」
私はすっかりと興味を欠きたてられた彼女を引き寄せた。
「マリエーヌ、君には、まだ早いような気がするんだ。君を傷つけるような事はしたくないし、もう少し大人になってからでもオモチャを使うのは遅くはないよ」
「つまんないの」
ちょっと、すねて、ぷいっと顔を背ける彼女は、なんと可愛らしく私の気持ちをそそるのだろう。私は別れの寂しさと共に、蓋が開いて、そこから覗いている男の子の小さな唐辛子がぴくんと跳ねるのをみつめた。抱きしめた彼女の腰に廻した腕に力を込めて抑えると、その小さな唐辛子の先をそおっとつまんでみた。
「あん。ニコラス!なにするのさ」
僕の胸板を押し返そうとして、身体を捻っては見るものの、すでにしっかりと抱え込まれてしまっているので、はかばかしく動く事もできない。何よりも、赤むけになってひりひりと痛む晴れ上がったお尻が、貞操帯の上に座っている彼女のお尻を痛めつけているのだった。
「動かないで、じっとしてて……」
私は親指の腹と人差し指の腹で唐辛子の真ん中を転がしてみた。それから根元から先っちょへ向けてやさしく撫でさする。
「う…うん」
赤くした顔をちょっと上向けて眼を閉じたマリエーヌは首を振った。額に汗が滲んでくる。ぴったりと閉じた足が、刺激を受けるたびにぴくぴくと痙攣した。こうやって、棹だけを擦られるのがマリエーヌは苦手だった。女性器の入り口やその周辺よりも、もっと感じやすい場所だったのだ。
それも当たり前、その唐辛子のようなペニスは彼女にとってはクリトリスと同じだったのだから。腰に廻された腕にしがみつき、小さく唇を震わせながら鋭い快感が走る度に腰をくねらせた。
「あ…あん。あ…あ…ああああ」
私は彼女から手を離すと、身体をそおっと押し遣った。彼女の身体は力が入らない様子でぐらぐらと揺れる。私は、上気した頬ととろんとした瞳を覗き込み、それから思いっきり激しくテクニックを駆使したキスを彼女の唇へぶつけると、テーブルの上に乗ったままだった板を持ち上げると彼女のそこへぱたんと乗せてしまった。
鍵を差し入れて廻す。カチリという音とともに、蓋は閉じられて、再び彼女は貞操帯の中に閉じ込められたのだった。
茫然とした彼女は、何が起こったのかわからないといったようすで口を空けてぽかんと僕を見ていたが、じわじわと事態の理解が進んでくると、失望と切なさと哀願の入り混じったような瞳で、すでに鍵で閉じられてしまった貞操帯を見下ろした。
「酷いよ。こんなのって…」
閉じ合わせた腿をぴったりとくっつけたまま摺り合わせる。もじもじとあそこを抑えながら、屈みこみどうにかしてその場所に刺激をあたえようとした。だが、鉄の貞操帯は性器をがっちりとガードしていて、いくら押さえつけても彼女に何の快感ももたらしてはくれなかった。
「ニコラス。お願いだよ。こんなのって、我慢できない。あんな中途半端でなんて、酷い…」
「マリエーヌ。お仕置きの数を増やしたいのかい?」
恨めしそうに、マリエーヌは唇を噛んだ。鉄の檻の中に閉じ込められた身体は熱く燃え立ち、中途半端に放り出された身体は刺激の続行を求めて彼女の焦燥をかきたてているに違いなかった。
「マリエーヌ。また、来週」
「いじわる……」
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「ニコラス。この貞操帯に付属させて使う小物をハルトヴィックに作らせていたでしょ?」
「ええ、作らせましたよ」
「あれ、どんなものだったの。結局見せてもらってないし、どんなものなのかも知らないんだよ」
「そうだね。でも、今日は持ってきてないんですよ」
私はすっかりと忘れていたくせに、思い出した途端に気になって仕方がない様子のマリエーヌが、ぶうぶうと口を尖らす様子をほほえましく眺めた。こういうときの彼はすっかり少年のような表情をする。そして私に、彼と呼ばせるだけの別の輝きを見せ付けるのだった。
「つまんないの」
私はくすくすと笑いながら彼女の足の間へ鍵を差し込んだ。それは、いつも使うウエストの辺りの貞操帯を外すための錠前ではなく、もっと別の場所を外すための鍵穴だった。その鍵穴は、飾り彫りの模様の中に実に上手く隠されている。足の間を覆った身体に沿ってカーブした板がパチンと外れると、私の手の中に落ちてきた。しっかりと覆われていたはずの性器があっという間にむき出しになった事に、マリエーヌは驚いた。
「こうすれば貞操帯をしたまま、悪戯する事もできるんだよ」
「ふうん。知らなかった。びっくり…」
「ハルトヴィックに作らせた小物は、ここを開けたときに使うんだ。性器の中に入れるディルドウやアナルに入れる細身のディルドウ。反対に身体の外へ向かってそそり立つペニスバンドになる飾り。それから、その道具をしっかりと抑える他の形の板。それから、そのディルドウと板が接合されてしまっているもの」
興味深げに話を聞いていたマリエーヌも最後の言葉には嫌そうに顔をしかめた。貞操帯に接合されたディルドウが、接合していないディルドウとは、また違う責めを彼女に与えるのに気がついたらしい。
「ニコラス。どうしてその道具をつかわないのさ」
「うーん……」
私はすっかりと興味を欠きたてられた彼女を引き寄せた。
「マリエーヌ、君には、まだ早いような気がするんだ。君を傷つけるような事はしたくないし、もう少し大人になってからでもオモチャを使うのは遅くはないよ」
「つまんないの」
ちょっと、すねて、ぷいっと顔を背ける彼女は、なんと可愛らしく私の気持ちをそそるのだろう。私は別れの寂しさと共に、蓋が開いて、そこから覗いている男の子の小さな唐辛子がぴくんと跳ねるのをみつめた。抱きしめた彼女の腰に廻した腕に力を込めて抑えると、その小さな唐辛子の先をそおっとつまんでみた。
「あん。ニコラス!なにするのさ」
僕の胸板を押し返そうとして、身体を捻っては見るものの、すでにしっかりと抱え込まれてしまっているので、はかばかしく動く事もできない。何よりも、赤むけになってひりひりと痛む晴れ上がったお尻が、貞操帯の上に座っている彼女のお尻を痛めつけているのだった。
「動かないで、じっとしてて……」
私は親指の腹と人差し指の腹で唐辛子の真ん中を転がしてみた。それから根元から先っちょへ向けてやさしく撫でさする。
「う…うん」
赤くした顔をちょっと上向けて眼を閉じたマリエーヌは首を振った。額に汗が滲んでくる。ぴったりと閉じた足が、刺激を受けるたびにぴくぴくと痙攣した。こうやって、棹だけを擦られるのがマリエーヌは苦手だった。女性器の入り口やその周辺よりも、もっと感じやすい場所だったのだ。
それも当たり前、その唐辛子のようなペニスは彼女にとってはクリトリスと同じだったのだから。腰に廻された腕にしがみつき、小さく唇を震わせながら鋭い快感が走る度に腰をくねらせた。
「あ…あん。あ…あ…ああああ」
私は彼女から手を離すと、身体をそおっと押し遣った。彼女の身体は力が入らない様子でぐらぐらと揺れる。私は、上気した頬ととろんとした瞳を覗き込み、それから思いっきり激しくテクニックを駆使したキスを彼女の唇へぶつけると、テーブルの上に乗ったままだった板を持ち上げると彼女のそこへぱたんと乗せてしまった。
鍵を差し入れて廻す。カチリという音とともに、蓋は閉じられて、再び彼女は貞操帯の中に閉じ込められたのだった。
茫然とした彼女は、何が起こったのかわからないといったようすで口を空けてぽかんと僕を見ていたが、じわじわと事態の理解が進んでくると、失望と切なさと哀願の入り混じったような瞳で、すでに鍵で閉じられてしまった貞操帯を見下ろした。
「酷いよ。こんなのって…」
閉じ合わせた腿をぴったりとくっつけたまま摺り合わせる。もじもじとあそこを抑えながら、屈みこみどうにかしてその場所に刺激をあたえようとした。だが、鉄の貞操帯は性器をがっちりとガードしていて、いくら押さえつけても彼女に何の快感ももたらしてはくれなかった。
「ニコラス。お願いだよ。こんなのって、我慢できない。あんな中途半端でなんて、酷い…」
「マリエーヌ。お仕置きの数を増やしたいのかい?」
恨めしそうに、マリエーヌは唇を噛んだ。鉄の檻の中に閉じ込められた身体は熱く燃え立ち、中途半端に放り出された身体は刺激の続行を求めて彼女の焦燥をかきたてているに違いなかった。
「マリエーヌ。また、来週」
「いじわる……」
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私にとっては、週末の逢引の戯れのひとつであり、大切な恋人に少し意地悪をした程度の悪戯心にすぎなかった。しかし、しっかりと蓋を閉じられ、放り出されたマリエーヌにとっては、腹立たしい仕打ちだったに違いない。
それ以上に、どんなに試みてもなんとも刺激をあたえようのないそこに、じりじりといぶられるような熾火を置かれた状態に追い込まれた彼女は、転々と眠れぬ夜を過ごしていたのだった。
腕の中でお仕置きに震えるマリエーヌを抱きしめて過ごした時間が、私の心も目も眩ませていたのだとしか思えない。あれほど何度も「私は女の子じゃない」と繰り返す彼女の言葉を聞いていながら、美しく装い、花のように笑う彼女を私は可愛らしい少女のように思っていたのだった。
私の心の中ではマリエーヌは、将来妻となる憧れの恋人に間違いなく、本当は彼でもある半陰陽であるという事は、いつの間にかすっかりと抜け落ちてしまっていた。
神父が彼女をきつくお仕置きした事は、おぞましい堕落した神父の悪行のように思い込んでいたし、伯爵が彼女に貞操帯を付けた事は、行き過ぎた父親の心配だとも受け取っていた。そもそも誰にも会わせないのだから、そんな必要もないだろうと。
彼女の中から溢れだして周囲に毒を撒き散らす「モノ」の存在など頭から信じていなかった。多くの美しい淑女達に貞操帯を誂え、多くの女性をその計測の場で啼かしたであろうハルトヴィックが、手も無く彼女に魅せられてしまった事も、自分の妬心に捉われて見過ごしてしまった。言い訳を許してもらえば、彼女の周囲の男たちの張り巡らせた煙幕や比喩的表現が、私の彼女を愛おしく思う心が思い込みたいと願っていた彼女を疑わせない手助けにもなっていたのだ。
もちろん、半陰陽だからといって、まるで彼女が悪魔のように思う必要があったわけではない。そして、いまだに、まるで悪いものを押し込め、封印してしまうようなやり方が、彼女のためであり、私達のためであるなどという詭弁を弄するつもりもない。
だが、私はあまりにも若く未熟でそして性的にはきわめて経験が少ない若い男でしかなかった。彼女が一瞬にして私を虜にした手管を疑うすべもないくらいに。
なぜ、自分がこうまで彼女を自分のものにしたいと願っているのか、そして、多くの男たちの胸にきざすものがなんなのか。なにがそれを引き起こしているのか…。考えようともしなかったのである。
学問所で過ごす時間は無機質で、平穏で、私は先週彼女の上に置き捨てた悪戯の事はすっかりと忘れてしまった。伯爵家からの使いが大慌てで門を叩き「急ぎ館までお運びいただきたい」と、いう執事の言葉を伝えるまで、私はその事を思い出しもしなかったのだ。
「お呼びになったのは伯爵ではないのか?」
「伯爵様は、ここ十日ほど王様のお供で狩に出られていて、一度もお戻りではないのです。お願いでございます。もう、ボールドウィン様にお越しいただくしか私どもには、他にどうしようもなく…」
取り乱した様子の使いの召使の説明は切れ切れで、いったい何が起きたのかを理解するにはあまりのも足りなかった。私は、書きかけの論文を放り出し、塾頭に伯爵の名に物を言わせて外出許可を取り付けると、取るものもとりあえず召使が連れてきていた四頭馬車に飛び乗ってマリエーヌの待つ、伯爵の館に駆けつける事となったのだった。
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それ以上に、どんなに試みてもなんとも刺激をあたえようのないそこに、じりじりといぶられるような熾火を置かれた状態に追い込まれた彼女は、転々と眠れぬ夜を過ごしていたのだった。
腕の中でお仕置きに震えるマリエーヌを抱きしめて過ごした時間が、私の心も目も眩ませていたのだとしか思えない。あれほど何度も「私は女の子じゃない」と繰り返す彼女の言葉を聞いていながら、美しく装い、花のように笑う彼女を私は可愛らしい少女のように思っていたのだった。
私の心の中ではマリエーヌは、将来妻となる憧れの恋人に間違いなく、本当は彼でもある半陰陽であるという事は、いつの間にかすっかりと抜け落ちてしまっていた。
神父が彼女をきつくお仕置きした事は、おぞましい堕落した神父の悪行のように思い込んでいたし、伯爵が彼女に貞操帯を付けた事は、行き過ぎた父親の心配だとも受け取っていた。そもそも誰にも会わせないのだから、そんな必要もないだろうと。
彼女の中から溢れだして周囲に毒を撒き散らす「モノ」の存在など頭から信じていなかった。多くの美しい淑女達に貞操帯を誂え、多くの女性をその計測の場で啼かしたであろうハルトヴィックが、手も無く彼女に魅せられてしまった事も、自分の妬心に捉われて見過ごしてしまった。言い訳を許してもらえば、彼女の周囲の男たちの張り巡らせた煙幕や比喩的表現が、私の彼女を愛おしく思う心が思い込みたいと願っていた彼女を疑わせない手助けにもなっていたのだ。
もちろん、半陰陽だからといって、まるで彼女が悪魔のように思う必要があったわけではない。そして、いまだに、まるで悪いものを押し込め、封印してしまうようなやり方が、彼女のためであり、私達のためであるなどという詭弁を弄するつもりもない。
だが、私はあまりにも若く未熟でそして性的にはきわめて経験が少ない若い男でしかなかった。彼女が一瞬にして私を虜にした手管を疑うすべもないくらいに。
なぜ、自分がこうまで彼女を自分のものにしたいと願っているのか、そして、多くの男たちの胸にきざすものがなんなのか。なにがそれを引き起こしているのか…。考えようともしなかったのである。
学問所で過ごす時間は無機質で、平穏で、私は先週彼女の上に置き捨てた悪戯の事はすっかりと忘れてしまった。伯爵家からの使いが大慌てで門を叩き「急ぎ館までお運びいただきたい」と、いう執事の言葉を伝えるまで、私はその事を思い出しもしなかったのだ。
「お呼びになったのは伯爵ではないのか?」
「伯爵様は、ここ十日ほど王様のお供で狩に出られていて、一度もお戻りではないのです。お願いでございます。もう、ボールドウィン様にお越しいただくしか私どもには、他にどうしようもなく…」
取り乱した様子の使いの召使の説明は切れ切れで、いったい何が起きたのかを理解するにはあまりのも足りなかった。私は、書きかけの論文を放り出し、塾頭に伯爵の名に物を言わせて外出許可を取り付けると、取るものもとりあえず召使が連れてきていた四頭馬車に飛び乗ってマリエーヌの待つ、伯爵の館に駆けつける事となったのだった。
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馬車が乗りつけた玄関には、馬丁が待ち構えていて轡を取った。私は、馬車から急ぎ降りると、開かれたままの玄関へ駆け込んだ。
玄関を入ってすぐのロビーには、鳥肌を立ておびえた使用人たちが群れていた。よくしつけられ秩序の守られた伯爵家の使用人達ですら隠し切れないその様子が、起きている出来事は、常の出来事ではない事は、一目見れば明らかだった。使用人らは、私の顔を見たとたんに自分たちの立場を思い出したのか大慌てでさっと散ってしまい、後にはすっかりと蒼ざめ眼の落ち窪んだ執事が立っていた。
「きゃあああああああああああー!!!!!!」
「マリエーヌ!?」
高い天井に響き渡った甲高い悲鳴に、私が、血相を変えて二階へ駆け上がろうとしたところを、必死になって腕にしがみついた執事に引き止められた。
「ボールドウィン様、お聞きくださいませ。マリエーヌ様の部屋には医者が一人、そしてその助手の方と使用人が一人、入っておりました。お医者様をお呼びしたのは、マリエーヌ様がどういうわけか興奮なされまして、手ひどく小間使いを折檻されたせいなのです。決して決して…二心から出たものでは…」
うわずり、ひっくり返った執事の声は状況を理解できる説明には程遠く、私は彼の手を振り払うと階段を一段とばしにして駆け上がった。廊下の突き当たりにある彼女の部屋のドアは大きく開かれ、その奥の寝室に続くドアの前には四、五人の使用人が扉を叩いていた。
「クレセント博士?…先生、ここを開けてください」
私は、駆け寄ると、扉に取り付いた従僕の腕を掴んだ。
「クレフィールド。鍵はどこだ」
「きゃあああああああああああー!!!!!!」
追い討ちをかけるように彼女の叫び声がドアの向こうで響き、私はギクッと振り向いた。私に腕を掴まれた、見知った顔の従僕も、一緒にドアを叩いていたほかの使用人もみな凍り付く。何が起こっている?いったい。いったい…。
喘ぎながら、よたよたと付いてきた執事が震える手で家中の鍵を連ねた鍵束を取り出して、彼女の部屋の鍵をさぐった。私は、ひったくるようにその鍵を受け取ると、焦る気持ちを押さえつけドアの鍵を差し込むと廻したのだった。
その瞬間を私は今でも夢に見る。
私の愛しいマリエーヌ。
美しい妻。
明るく笑う可愛らしい少女の君。
バン!
両開きのドアが開き、大きな音を立て、勢い余って壁に当たり跳ね返った。部屋の奥まった場所に置かれた天蓋つきのベッドに下がるレースの美しいカーテンはビリビリと引き裂かれ。周囲には点々と赤い血が飛び散っていた。そして、そのベッドの中央に全裸のマリエーヌが男の上に馬乗りになっていた。
組み敷かれた男は、平静ならば半白髪の紳士ともいえるはずの恰幅のよい様子に、よく手入れをされた髭を生やしていたが、今やその服はすっかり乱れ、飛び散ったボタンのシャツは大きく引き裂かれて胸毛の見える胸がむき出しになっていた。それだけではない。服のあちらこちら、ズボンもずたずたに裾まで切り裂かれ血だらけなのだ。ベッドの上には、すでに血溜まりが出来ている。
そして、そのベッドに半身を投げ出すようにして一人が倒れ、ベッドの下に腹を抑えてうずくまるように一人の男がのたうっていた。
「マリエーヌ!?」
私が、あまりの様子に叫び声をあげると、馬乗りになった男の首を締め上げていたマリエーヌが、その顔を上げた。ぎらぎらと光り狂気じみた瞳が私をまともに射抜いた。上気した顔を汗に濡らして真っ赤な唇を吊り上げて笑う彼女がそこにいた。一瞬の静寂。音も無く、凍りついた人々の中で彼女の瞳がくるっと裏返ったと思うと、いつもの美しく微笑んでいる少女が私をみつけた。
「ニコラス。よかった」
そして、男の首に廻していた血だらけの手を彼女は持ち上げると、私に差し伸べた。
「約束したでしょう?私を、しっかりと鎖に繋いでくれるって」
そうして、突然、後に昏倒した。私は周囲の状況も忘れて、彼女の身体を受け止めようと前に飛び出し、呻きうずくまる男たちを突き飛ばして、ゆっくりと時間が引き延ばされていくかのように後に倒れてゆく彼女を抱きとめた。私だけの愛おしい妻になるはずの相手を。
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玄関を入ってすぐのロビーには、鳥肌を立ておびえた使用人たちが群れていた。よくしつけられ秩序の守られた伯爵家の使用人達ですら隠し切れないその様子が、起きている出来事は、常の出来事ではない事は、一目見れば明らかだった。使用人らは、私の顔を見たとたんに自分たちの立場を思い出したのか大慌てでさっと散ってしまい、後にはすっかりと蒼ざめ眼の落ち窪んだ執事が立っていた。
「きゃあああああああああああー!!!!!!」
「マリエーヌ!?」
高い天井に響き渡った甲高い悲鳴に、私が、血相を変えて二階へ駆け上がろうとしたところを、必死になって腕にしがみついた執事に引き止められた。
「ボールドウィン様、お聞きくださいませ。マリエーヌ様の部屋には医者が一人、そしてその助手の方と使用人が一人、入っておりました。お医者様をお呼びしたのは、マリエーヌ様がどういうわけか興奮なされまして、手ひどく小間使いを折檻されたせいなのです。決して決して…二心から出たものでは…」
うわずり、ひっくり返った執事の声は状況を理解できる説明には程遠く、私は彼の手を振り払うと階段を一段とばしにして駆け上がった。廊下の突き当たりにある彼女の部屋のドアは大きく開かれ、その奥の寝室に続くドアの前には四、五人の使用人が扉を叩いていた。
「クレセント博士?…先生、ここを開けてください」
私は、駆け寄ると、扉に取り付いた従僕の腕を掴んだ。
「クレフィールド。鍵はどこだ」
「きゃあああああああああああー!!!!!!」
追い討ちをかけるように彼女の叫び声がドアの向こうで響き、私はギクッと振り向いた。私に腕を掴まれた、見知った顔の従僕も、一緒にドアを叩いていたほかの使用人もみな凍り付く。何が起こっている?いったい。いったい…。
喘ぎながら、よたよたと付いてきた執事が震える手で家中の鍵を連ねた鍵束を取り出して、彼女の部屋の鍵をさぐった。私は、ひったくるようにその鍵を受け取ると、焦る気持ちを押さえつけドアの鍵を差し込むと廻したのだった。
その瞬間を私は今でも夢に見る。
私の愛しいマリエーヌ。
美しい妻。
明るく笑う可愛らしい少女の君。
バン!
両開きのドアが開き、大きな音を立て、勢い余って壁に当たり跳ね返った。部屋の奥まった場所に置かれた天蓋つきのベッドに下がるレースの美しいカーテンはビリビリと引き裂かれ。周囲には点々と赤い血が飛び散っていた。そして、そのベッドの中央に全裸のマリエーヌが男の上に馬乗りになっていた。
組み敷かれた男は、平静ならば半白髪の紳士ともいえるはずの恰幅のよい様子に、よく手入れをされた髭を生やしていたが、今やその服はすっかり乱れ、飛び散ったボタンのシャツは大きく引き裂かれて胸毛の見える胸がむき出しになっていた。それだけではない。服のあちらこちら、ズボンもずたずたに裾まで切り裂かれ血だらけなのだ。ベッドの上には、すでに血溜まりが出来ている。
そして、そのベッドに半身を投げ出すようにして一人が倒れ、ベッドの下に腹を抑えてうずくまるように一人の男がのたうっていた。
「マリエーヌ!?」
私が、あまりの様子に叫び声をあげると、馬乗りになった男の首を締め上げていたマリエーヌが、その顔を上げた。ぎらぎらと光り狂気じみた瞳が私をまともに射抜いた。上気した顔を汗に濡らして真っ赤な唇を吊り上げて笑う彼女がそこにいた。一瞬の静寂。音も無く、凍りついた人々の中で彼女の瞳がくるっと裏返ったと思うと、いつもの美しく微笑んでいる少女が私をみつけた。
「ニコラス。よかった」
そして、男の首に廻していた血だらけの手を彼女は持ち上げると、私に差し伸べた。
「約束したでしょう?私を、しっかりと鎖に繋いでくれるって」
そうして、突然、後に昏倒した。私は周囲の状況も忘れて、彼女の身体を受け止めようと前に飛び出し、呻きうずくまる男たちを突き飛ばして、ゆっくりと時間が引き延ばされていくかのように後に倒れてゆく彼女を抱きとめた。私だけの愛おしい妻になるはずの相手を。
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本当のところなにがあったのか、どうしてあんな事になったのか、結局、誰にも分からなかった。部屋の中であちこち切り傷だらけで倒れていた男二人は不思議な事に前後の記憶がとんでしまっていたのである。肝心の医者が覚えている事ですら、ひどく曖昧で不確かで前後の脈絡が非常に不自然だった。
そして、気を失って倒れた彼女の腰から足にかけて出来た深い、抉ったような傷跡。ベッドの上の血溜まりは、その傷跡から流れたもので、それは、明らかに貞操帯を無理矢理脱がそうとして作られた傷で彼女は腰骨を骨折してしまっていた。
全裸の彼女から力づくで引き抜かれた貞操帯は血まみれのままベッドの下に落ちていた。
マリエーヌは三ヶ月近くもベッドの上で過ごし、私は週末を彼女に睦言を囁き、髪を梳き、頬を撫で、手を握りしめながら過ごした。
最初のきっかけを作った小間使いは、彼女がこの五日間、怒りっぽく、事あるごとに苛立ちをつのらせては彼女に当り散らしたと証言した。
「い、いきなりだったのでございます。お嬢様の髪を梳っておりました所、櫛が髪に引っかかったのでございます。私が慌ててお詫びを申し上げようと屈みますと、お嬢様が強い力で私の腕をひっぱられ、きつくしがみつくような動作をなさりました。ああ。よく分からないのです。どうしてあんな事をしてしまったのか。私、思わずお嬢様をつきのけてしまったんです。なぜなのか分からないのです。急に、恐ろしくなって、じっとしていられなくて、身体が勝手に、勝手に…。きっと思いっきり突いてしまったんですわ。お嬢様は椅子の上から滑り落ちてしまわれて、床でひどく身体を打ちつけられたご様子でした。私、私、叫んでしまったんです。金切り声を上げて。お嬢様は、床に手を付いて起き上がると眼を吊り上げて私を睨み付けられて。ですから、私、思わず逃げ出そうと。そうしたらお嬢様は起き上がって私の髪を掴んで、ひっぱられて。私、悲鳴を。思いっきり悲鳴をあげてしまいました」
その悲鳴に驚いて駆けつけた女中頭のアーデガルートが、取り乱した震える声で、その後の彼女の様子を説明した。
「私が部屋に入りました時には、お嬢様は、非常に興奮なさってらして小間使いのペンネの髪を掴んで小突き回しておられました。私は、びっくりいたしまして、とにかく、お嬢様の手をペンネから引き離そうといたしました。髪の毛が束で抜け、お嬢さまの掌に喰い込んで血が…。恐ろしい事でございます。恐ろしい事でございます。お嬢様は、ペンネの髪を振り払うと、私に向かっても、とても繰り返してお話できないような罵詈雑言をおっしゃったのでございます。私。私。あのような言葉をご婦人の口から伺うのは初めてで…つい、動転してしまい、しがみつき泣いているペンネをとにかく部屋から出そうとして…。もちろん、ペンネが何か粗相をしたのでしょうし、はじめにお詫び申し上げればよかったのですけど、とにかく、なんだか総毛だつような異様な心持が致しまして、つい、引きとめようと伸ばされたお嬢様の手を。その手を。ああ。申し訳ございません。申し訳ございません。お詫びしてお詫びできるものではございません。私、どうかしていたのでございます。あんな失礼な事を。伏してお詫び申し上げます。お嬢様にむかってあんな。あんな…」
その後に続く混乱を収めようと間に入った執事は、異様に興奮し、叫び散らす少女に手を焼いて、使用人の一人を学問所に、そして、もう一人を伯爵家がずっと家族を任せていた医者を呼びに出したのだった。
学問所の方がずっと館から離れていたし、受付で話が通らずに手間取った事もあって医者の方が一時間ほど私よりも早く館へ駆けつける事が出来、執事は当然ながら彼に、少女が非常に取り乱して泣いたり叫んだり罵しったりしている事を説明して、部屋に入れたのだ。
その際、医者は、手近に控えていた、伯爵の従僕の一人と、自分の助手を連れて入ったのだった。鍵をかけたのは医者だったという。他の者を下がらせるように命じ、そして、鍵をかけた。
分からないのはその後だった。貞操帯を外そうとしたのは誰なのか。私は口を極めて医者を問い詰めたのだが、クレセント博士は自分ではないと言い張るばかりだった。だが、どうやって華奢な子供が自分の腰骨を折ってまで金属の檻を身体から外そうとしたのか。どう考えても腑に落ちない。
いったい男三人が寄ってたかって彼女に何をしようとしたのか。考えれば考えるほど彼女のせいではないと思われるにもかかわらず、結局ははっきりとした事は分からなかったのである。
やがて、私の出した早馬の報せを受けて、伯爵が帰館すると、医者はうなだれて蒼ざめ伯爵だけに話をしたいと言い出し、私は部屋から下がらせられてしまった。
やがては妻となるべき女性が、怪我をしたというのに、それ以上抗弁する事も、抗議する事も許されず、すべての事情から私は締め出されてしまったのだ。
伯爵は、堅く口を結び、すべての関係者に口止めをすると、医者に金を掴ませて国外に出してしまった。伯爵が医者のした言い訳を私に打ち明けてくれなかったために、私は私が彼女に仕掛けた悪戯を伯爵に打ち明ける事もできずに、すべてが不確かなままに事態は収束してしまったのだ。ただ、怪我をして、痛みに呻き熱を出して横たわるマリエーヌだけを残して。
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そして、気を失って倒れた彼女の腰から足にかけて出来た深い、抉ったような傷跡。ベッドの上の血溜まりは、その傷跡から流れたもので、それは、明らかに貞操帯を無理矢理脱がそうとして作られた傷で彼女は腰骨を骨折してしまっていた。
全裸の彼女から力づくで引き抜かれた貞操帯は血まみれのままベッドの下に落ちていた。
マリエーヌは三ヶ月近くもベッドの上で過ごし、私は週末を彼女に睦言を囁き、髪を梳き、頬を撫で、手を握りしめながら過ごした。
最初のきっかけを作った小間使いは、彼女がこの五日間、怒りっぽく、事あるごとに苛立ちをつのらせては彼女に当り散らしたと証言した。
「い、いきなりだったのでございます。お嬢様の髪を梳っておりました所、櫛が髪に引っかかったのでございます。私が慌ててお詫びを申し上げようと屈みますと、お嬢様が強い力で私の腕をひっぱられ、きつくしがみつくような動作をなさりました。ああ。よく分からないのです。どうしてあんな事をしてしまったのか。私、思わずお嬢様をつきのけてしまったんです。なぜなのか分からないのです。急に、恐ろしくなって、じっとしていられなくて、身体が勝手に、勝手に…。きっと思いっきり突いてしまったんですわ。お嬢様は椅子の上から滑り落ちてしまわれて、床でひどく身体を打ちつけられたご様子でした。私、私、叫んでしまったんです。金切り声を上げて。お嬢様は、床に手を付いて起き上がると眼を吊り上げて私を睨み付けられて。ですから、私、思わず逃げ出そうと。そうしたらお嬢様は起き上がって私の髪を掴んで、ひっぱられて。私、悲鳴を。思いっきり悲鳴をあげてしまいました」
その悲鳴に驚いて駆けつけた女中頭のアーデガルートが、取り乱した震える声で、その後の彼女の様子を説明した。
「私が部屋に入りました時には、お嬢様は、非常に興奮なさってらして小間使いのペンネの髪を掴んで小突き回しておられました。私は、びっくりいたしまして、とにかく、お嬢様の手をペンネから引き離そうといたしました。髪の毛が束で抜け、お嬢さまの掌に喰い込んで血が…。恐ろしい事でございます。恐ろしい事でございます。お嬢様は、ペンネの髪を振り払うと、私に向かっても、とても繰り返してお話できないような罵詈雑言をおっしゃったのでございます。私。私。あのような言葉をご婦人の口から伺うのは初めてで…つい、動転してしまい、しがみつき泣いているペンネをとにかく部屋から出そうとして…。もちろん、ペンネが何か粗相をしたのでしょうし、はじめにお詫び申し上げればよかったのですけど、とにかく、なんだか総毛だつような異様な心持が致しまして、つい、引きとめようと伸ばされたお嬢様の手を。その手を。ああ。申し訳ございません。申し訳ございません。お詫びしてお詫びできるものではございません。私、どうかしていたのでございます。あんな失礼な事を。伏してお詫び申し上げます。お嬢様にむかってあんな。あんな…」
その後に続く混乱を収めようと間に入った執事は、異様に興奮し、叫び散らす少女に手を焼いて、使用人の一人を学問所に、そして、もう一人を伯爵家がずっと家族を任せていた医者を呼びに出したのだった。
学問所の方がずっと館から離れていたし、受付で話が通らずに手間取った事もあって医者の方が一時間ほど私よりも早く館へ駆けつける事が出来、執事は当然ながら彼に、少女が非常に取り乱して泣いたり叫んだり罵しったりしている事を説明して、部屋に入れたのだ。
その際、医者は、手近に控えていた、伯爵の従僕の一人と、自分の助手を連れて入ったのだった。鍵をかけたのは医者だったという。他の者を下がらせるように命じ、そして、鍵をかけた。
分からないのはその後だった。貞操帯を外そうとしたのは誰なのか。私は口を極めて医者を問い詰めたのだが、クレセント博士は自分ではないと言い張るばかりだった。だが、どうやって華奢な子供が自分の腰骨を折ってまで金属の檻を身体から外そうとしたのか。どう考えても腑に落ちない。
いったい男三人が寄ってたかって彼女に何をしようとしたのか。考えれば考えるほど彼女のせいではないと思われるにもかかわらず、結局ははっきりとした事は分からなかったのである。
やがて、私の出した早馬の報せを受けて、伯爵が帰館すると、医者はうなだれて蒼ざめ伯爵だけに話をしたいと言い出し、私は部屋から下がらせられてしまった。
やがては妻となるべき女性が、怪我をしたというのに、それ以上抗弁する事も、抗議する事も許されず、すべての事情から私は締め出されてしまったのだ。
伯爵は、堅く口を結び、すべての関係者に口止めをすると、医者に金を掴ませて国外に出してしまった。伯爵が医者のした言い訳を私に打ち明けてくれなかったために、私は私が彼女に仕掛けた悪戯を伯爵に打ち明ける事もできずに、すべてが不確かなままに事態は収束してしまったのだ。ただ、怪我をして、痛みに呻き熱を出して横たわるマリエーヌだけを残して。
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ようやくベッドから抜け出した後も、すべて元通りというわけには行かなかった。動かなかったせいで落ちてしまった筋肉を元通りにするための散歩やマッサージ。そんな忍耐を要求される治療は、すっかり弱っていた彼女にとって、痛みを伴う辛い物だった。
こわばった身体を和らげるために伯爵に伴われて湯治に連れて行かれたり、そんなあれこれしているうちに、私の卒業はもう目の前だった。伯爵が約束したとおり、私は王にお目どおりを許され、侍従として官の一端を担う仕事を約束された。
たまに、ゆっくりと会う事が出来ても、彼女の身体が戻らぬ以上、睦みあう事もできずただ寄り添って過ごすだけだった。彼女は言葉少なで遠い目をして、空を見るばかり。あの、無邪気な微笑みも、笑い声もすっかりと影を潜めてしまった。
お互いに抱きしめあう。ただ、温もりを味あうために。くちづける。想いを伝えるために。
そして、ようやく卒業した私が王宮に出仕を始めた時期になってようやく、彼女は医者から完治のお墨付きをもらう事が出来た。仕事が終わり、伯爵の館を訪ねると、マリエーヌは四阿の椅子に座って髪を風になびかせていた。そして、私が近づいていくとすっかりと大人びた表情でにっこりと笑った。
「マリエーヌ」
屈んで、彼女の頬にくちづけた。彼女はその手をゆっくりと持ち上げて、私の首に廻すと、私の耳元に唇を寄せてきた。キスを返されるのかと思った私の耳に彼女の甘い吐息がかかった。
「ニコラス。お仕置きは?私、ずっと待っていたのに」
私は、息を飲み、彼女の肩を掴んで身体を引き剥がすとその顔を覗き込んだ。緑色の魔性の瞳が、底知れない深い色をたたえて見返してくる。
「マリエーヌ。君は、本当は誰なんだ」
ものうげな瞳はゆっくりと降りてきたまぶたの陰に隠れ、そしてくすくす笑いの後に揚げられた時には、一転きらりと光る不思議な色をたたえていた。
「知らなかったの?最初に教えてあげたじゃない。私は私。女のようでいて女で無い者。男のようでいて男でもない者」
「でも、今はもう、伯爵家の頭痛の種ではない。私の妻となるべき相手だ」
疑わしげな表情で瞳を細めて私を見つめてから、マリエーヌは唇を突き出してきた。
「あなたは、ぼくを見たでしょう。それでも、本当に妻にするつもりなの。ぼくは、男を引き寄せる。狂わせる。前後の見境を無くさせて、その道を誤らせてしまう」
「あの、貞操帯を君の身体から無理矢理引き剥がしたのは誰なんだ」
「男たち。あの三人の男たち。無理矢理押さえつけて、力づくで…」
やっぱり…。足元から、墓場から吹くようなぞっとする風が吹き抜けていく想いだった。
「君は…抵抗したんだね」
「そうだよ。出来る事はみんなした。殴り返して、蹴って、引っかいて、噛み付いて。でも、無駄さ。男三人の力に適うはずはない。痛みに呻いている僕をあの医者は無理矢理…」
私は、彼女の腕を掴んで揺さぶった。
「なぜ、言わなかった。最初に聞いていたら、あの男、生きて国外に出したりしなかった!」
「だから、言わなかったんじゃないか。あの男が僕に悪戯したのは、あれが、初めてじゃないさ。伯爵だって知っている。最初から、分かっていたはずだ。誰が何をしたかなんて。そのために貞操帯をつけさせたんだし、結局は何の役にも立たなかったけど……」
つぶやく彼女の髪は風にほつれて、目の下にうっすらと浮かぶ隈は、彼女がこの半年間に舐めてきた辛酸を私に教えた。私は茫然とする思いで彼女の顔をただみつめるだけだった。
「ねぇ、お仕置きしてよ。約束したじゃないか。僕を縛り付けてくれるって。鎖に繋いでくれるって。誰にも触らせないって。それとも、この半年で思い直した?怖くなった?僕がほんとは女の子じゃないって思い知った?僕の異常さに初めて気がついた?知ってたよ。ずっと思っていた。本当の僕を見たら、貴方は驚いて飛び退り、裸足で逃げ出してしまうだろうって。貴方が見ているのは飾り立てた人形の僕。本当の僕を愛してくれる人なんかいない。こんな!こんな!化け物なんか、誰も愛したりなんかしない!」
私の腕にすがりついていた彼女は、突然飛び離れてのけぞり笑った。甲高い声で。私は思わず彼女を両手で捉え激しく揺さぶった。彼女は笑うのをやめると、暗い絶望の炎をちらつかせた暗い瞳で睨みつけた。
「痛くしてないと、だめなんだよ。この半年は平気だった。酷い目にあっていつも傷が痛んだからね。それこそ身動きするのも辛いくらいに…。でも、もう痛くないんだ。二、三日前から、どこも痛まない。貴方には、分からない。誰にも分からないんだ!僕と同じ様な人間なんて誰もいない。引き裂いてよ。いっそ、殺して!僕が…僕が世界を滅ぼしてしまわないうちに」
胸を切り裂かれるような痛みに私は呻いた。そして、彼女の身体を、腕を、きつく握りしめた。痣が残るほどに強く。そして噛み付くように彼女の口を自分の唇で覆った。彼女が思わず顔を引いて逃れようとするほど、きつく吸いあげた。
何度も。何度も。何度も。そして、彼女の頭を、身体を、しっかりと私の胸に押し付けた。
「約束を違えるつもりは無いよ。君はもう、私の物なのだから。君を鎖につなぎ、打ち据え、誰の手にも渡したりしない。君という獣を私のものにしてみせる」
私は、乱暴に彼女の服の胸元をしっかりと掴むと、思いっきり引き裂き引き降ろした。絹を裂く音がしじまに響く。意味の無い狼藉。それから膝の上に突き倒すように彼女を抱き抱え、裾をめくり返す。レースがあふれ下穿きに覆われた丸いお尻が現れた。私は紐をほどく手間をかけずに、彼女の下着を引き下ろした。彼女は、怯えたような悲鳴をあげ、本気で逃れようと抵抗する。その身体を力づくで押さえ、彼女の身体に残った白い絹を引き裂いて取り除いた。
丸く、傷ひとつ無い美しい宮殿が私の目の前に拡がった。白くなめらかな冷たい大理石のようなドーム。ゆっくりと焦らすように指を這わせる。軽く摘み、赤い爪あとをつける。ぶるっと彼女が身震いし、私の膝にしがみつく。第一打は、一番のふくらみの上に。私は息を吸い込み、手を振り上げる。マリエーヌ。僕の妻。僕の悪魔。僕のただひとりの愛する人。信じる神よ。
思いっきりその手を振り下ろす。容赦のない第一打に彼女はひきつけるように私の膝の上で跳ねた。
肉を打つ無情な音が辺りに響く。一打、一打に力をこめて打った。打つ掌が痛く、打つだびに痺れが拡がって行く。彼女は呻き、身をよじり、悲鳴をあげて、膝に爪を立ててしがみつく。回数を重ねるうちに、彼女の悲鳴はより甲高く、汗ばんだ身体は耐え切れずにもがきだす。
「ひいっ!…痛い。…痛い。ニコラス。お願い。やめて!」
頭を振り立てると髪が翻った。激しく首を振り、腕を突っ張って、起き上がろうとする。その脚を脚で絡めて押さえつけた。
「もっと、打って欲しい?」
激しい興奮に私の息は切れ切れで、擦れた声は裏返る。彼女はしゃくりあげ、泣きながら私の膝にしがみつく腕に力をこめた。
「答えるんだ!マリエーヌ。もっと、打って、欲しいのか!?」
ひっく、ひっくとしゃくりあげる鳴き声を必死に飲み込むのが分かった。何度か息をつき、涙を振り払うと、彼女はかすかに身じろいで動かなくなった。そして、息を吸い込んだ。
「打って……」
囁くような小さな声が私を誘う。可愛いマリエーヌ。私の、私だけの妻。
「打って!もっと打ってよ!もっと、もっと強く!もっと酷く!……耐えられないほどに!」
その一週間後、私は彼女を妻に娶った。花のようなマリエーヌ。私の愛しい獣よ。私達は、そうして、正式に夫婦となったのである。
fin.
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こわばった身体を和らげるために伯爵に伴われて湯治に連れて行かれたり、そんなあれこれしているうちに、私の卒業はもう目の前だった。伯爵が約束したとおり、私は王にお目どおりを許され、侍従として官の一端を担う仕事を約束された。
たまに、ゆっくりと会う事が出来ても、彼女の身体が戻らぬ以上、睦みあう事もできずただ寄り添って過ごすだけだった。彼女は言葉少なで遠い目をして、空を見るばかり。あの、無邪気な微笑みも、笑い声もすっかりと影を潜めてしまった。
お互いに抱きしめあう。ただ、温もりを味あうために。くちづける。想いを伝えるために。
そして、ようやく卒業した私が王宮に出仕を始めた時期になってようやく、彼女は医者から完治のお墨付きをもらう事が出来た。仕事が終わり、伯爵の館を訪ねると、マリエーヌは四阿の椅子に座って髪を風になびかせていた。そして、私が近づいていくとすっかりと大人びた表情でにっこりと笑った。
「マリエーヌ」
屈んで、彼女の頬にくちづけた。彼女はその手をゆっくりと持ち上げて、私の首に廻すと、私の耳元に唇を寄せてきた。キスを返されるのかと思った私の耳に彼女の甘い吐息がかかった。
「ニコラス。お仕置きは?私、ずっと待っていたのに」
私は、息を飲み、彼女の肩を掴んで身体を引き剥がすとその顔を覗き込んだ。緑色の魔性の瞳が、底知れない深い色をたたえて見返してくる。
「マリエーヌ。君は、本当は誰なんだ」
ものうげな瞳はゆっくりと降りてきたまぶたの陰に隠れ、そしてくすくす笑いの後に揚げられた時には、一転きらりと光る不思議な色をたたえていた。
「知らなかったの?最初に教えてあげたじゃない。私は私。女のようでいて女で無い者。男のようでいて男でもない者」
「でも、今はもう、伯爵家の頭痛の種ではない。私の妻となるべき相手だ」
疑わしげな表情で瞳を細めて私を見つめてから、マリエーヌは唇を突き出してきた。
「あなたは、ぼくを見たでしょう。それでも、本当に妻にするつもりなの。ぼくは、男を引き寄せる。狂わせる。前後の見境を無くさせて、その道を誤らせてしまう」
「あの、貞操帯を君の身体から無理矢理引き剥がしたのは誰なんだ」
「男たち。あの三人の男たち。無理矢理押さえつけて、力づくで…」
やっぱり…。足元から、墓場から吹くようなぞっとする風が吹き抜けていく想いだった。
「君は…抵抗したんだね」
「そうだよ。出来る事はみんなした。殴り返して、蹴って、引っかいて、噛み付いて。でも、無駄さ。男三人の力に適うはずはない。痛みに呻いている僕をあの医者は無理矢理…」
私は、彼女の腕を掴んで揺さぶった。
「なぜ、言わなかった。最初に聞いていたら、あの男、生きて国外に出したりしなかった!」
「だから、言わなかったんじゃないか。あの男が僕に悪戯したのは、あれが、初めてじゃないさ。伯爵だって知っている。最初から、分かっていたはずだ。誰が何をしたかなんて。そのために貞操帯をつけさせたんだし、結局は何の役にも立たなかったけど……」
つぶやく彼女の髪は風にほつれて、目の下にうっすらと浮かぶ隈は、彼女がこの半年間に舐めてきた辛酸を私に教えた。私は茫然とする思いで彼女の顔をただみつめるだけだった。
「ねぇ、お仕置きしてよ。約束したじゃないか。僕を縛り付けてくれるって。鎖に繋いでくれるって。誰にも触らせないって。それとも、この半年で思い直した?怖くなった?僕がほんとは女の子じゃないって思い知った?僕の異常さに初めて気がついた?知ってたよ。ずっと思っていた。本当の僕を見たら、貴方は驚いて飛び退り、裸足で逃げ出してしまうだろうって。貴方が見ているのは飾り立てた人形の僕。本当の僕を愛してくれる人なんかいない。こんな!こんな!化け物なんか、誰も愛したりなんかしない!」
私の腕にすがりついていた彼女は、突然飛び離れてのけぞり笑った。甲高い声で。私は思わず彼女を両手で捉え激しく揺さぶった。彼女は笑うのをやめると、暗い絶望の炎をちらつかせた暗い瞳で睨みつけた。
「痛くしてないと、だめなんだよ。この半年は平気だった。酷い目にあっていつも傷が痛んだからね。それこそ身動きするのも辛いくらいに…。でも、もう痛くないんだ。二、三日前から、どこも痛まない。貴方には、分からない。誰にも分からないんだ!僕と同じ様な人間なんて誰もいない。引き裂いてよ。いっそ、殺して!僕が…僕が世界を滅ぼしてしまわないうちに」
胸を切り裂かれるような痛みに私は呻いた。そして、彼女の身体を、腕を、きつく握りしめた。痣が残るほどに強く。そして噛み付くように彼女の口を自分の唇で覆った。彼女が思わず顔を引いて逃れようとするほど、きつく吸いあげた。
何度も。何度も。何度も。そして、彼女の頭を、身体を、しっかりと私の胸に押し付けた。
「約束を違えるつもりは無いよ。君はもう、私の物なのだから。君を鎖につなぎ、打ち据え、誰の手にも渡したりしない。君という獣を私のものにしてみせる」
私は、乱暴に彼女の服の胸元をしっかりと掴むと、思いっきり引き裂き引き降ろした。絹を裂く音がしじまに響く。意味の無い狼藉。それから膝の上に突き倒すように彼女を抱き抱え、裾をめくり返す。レースがあふれ下穿きに覆われた丸いお尻が現れた。私は紐をほどく手間をかけずに、彼女の下着を引き下ろした。彼女は、怯えたような悲鳴をあげ、本気で逃れようと抵抗する。その身体を力づくで押さえ、彼女の身体に残った白い絹を引き裂いて取り除いた。
丸く、傷ひとつ無い美しい宮殿が私の目の前に拡がった。白くなめらかな冷たい大理石のようなドーム。ゆっくりと焦らすように指を這わせる。軽く摘み、赤い爪あとをつける。ぶるっと彼女が身震いし、私の膝にしがみつく。第一打は、一番のふくらみの上に。私は息を吸い込み、手を振り上げる。マリエーヌ。僕の妻。僕の悪魔。僕のただひとりの愛する人。信じる神よ。
思いっきりその手を振り下ろす。容赦のない第一打に彼女はひきつけるように私の膝の上で跳ねた。
肉を打つ無情な音が辺りに響く。一打、一打に力をこめて打った。打つ掌が痛く、打つだびに痺れが拡がって行く。彼女は呻き、身をよじり、悲鳴をあげて、膝に爪を立ててしがみつく。回数を重ねるうちに、彼女の悲鳴はより甲高く、汗ばんだ身体は耐え切れずにもがきだす。
「ひいっ!…痛い。…痛い。ニコラス。お願い。やめて!」
頭を振り立てると髪が翻った。激しく首を振り、腕を突っ張って、起き上がろうとする。その脚を脚で絡めて押さえつけた。
「もっと、打って欲しい?」
激しい興奮に私の息は切れ切れで、擦れた声は裏返る。彼女はしゃくりあげ、泣きながら私の膝にしがみつく腕に力をこめた。
「答えるんだ!マリエーヌ。もっと、打って、欲しいのか!?」
ひっく、ひっくとしゃくりあげる鳴き声を必死に飲み込むのが分かった。何度か息をつき、涙を振り払うと、彼女はかすかに身じろいで動かなくなった。そして、息を吸い込んだ。
「打って……」
囁くような小さな声が私を誘う。可愛いマリエーヌ。私の、私だけの妻。
「打って!もっと打ってよ!もっと、もっと強く!もっと酷く!……耐えられないほどに!」
その一週間後、私は彼女を妻に娶った。花のようなマリエーヌ。私の愛しい獣よ。私達は、そうして、正式に夫婦となったのである。
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