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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
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 本当のところなにがあったのか、どうしてあんな事になったのか、結局、誰にも分からなかった。部屋の中であちこち切り傷だらけで倒れていた男二人は不思議な事に前後の記憶がとんでしまっていたのである。肝心の医者が覚えている事ですら、ひどく曖昧で不確かで前後の脈絡が非常に不自然だった。
 そして、気を失って倒れた彼女の腰から足にかけて出来た深い、抉ったような傷跡。ベッドの上の血溜まりは、その傷跡から流れたもので、それは、明らかに貞操帯を無理矢理脱がそうとして作られた傷で彼女は腰骨を骨折してしまっていた。
全裸の彼女から力づくで引き抜かれた貞操帯は血まみれのままベッドの下に落ちていた。
 マリエーヌは三ヶ月近くもベッドの上で過ごし、私は週末を彼女に睦言を囁き、髪を梳き、頬を撫で、手を握りしめながら過ごした。
 最初のきっかけを作った小間使いは、彼女がこの五日間、怒りっぽく、事あるごとに苛立ちをつのらせては彼女に当り散らしたと証言した。
「い、いきなりだったのでございます。お嬢様の髪を梳っておりました所、櫛が髪に引っかかったのでございます。私が慌ててお詫びを申し上げようと屈みますと、お嬢様が強い力で私の腕をひっぱられ、きつくしがみつくような動作をなさりました。ああ。よく分からないのです。どうしてあんな事をしてしまったのか。私、思わずお嬢様をつきのけてしまったんです。なぜなのか分からないのです。急に、恐ろしくなって、じっとしていられなくて、身体が勝手に、勝手に…。きっと思いっきり突いてしまったんですわ。お嬢様は椅子の上から滑り落ちてしまわれて、床でひどく身体を打ちつけられたご様子でした。私、私、叫んでしまったんです。金切り声を上げて。お嬢様は、床に手を付いて起き上がると眼を吊り上げて私を睨み付けられて。ですから、私、思わず逃げ出そうと。そうしたらお嬢様は起き上がって私の髪を掴んで、ひっぱられて。私、悲鳴を。思いっきり悲鳴をあげてしまいました」
 その悲鳴に驚いて駆けつけた女中頭のアーデガルートが、取り乱した震える声で、その後の彼女の様子を説明した。
「私が部屋に入りました時には、お嬢様は、非常に興奮なさってらして小間使いのペンネの髪を掴んで小突き回しておられました。私は、びっくりいたしまして、とにかく、お嬢様の手をペンネから引き離そうといたしました。髪の毛が束で抜け、お嬢さまの掌に喰い込んで血が…。恐ろしい事でございます。恐ろしい事でございます。お嬢様は、ペンネの髪を振り払うと、私に向かっても、とても繰り返してお話できないような罵詈雑言をおっしゃったのでございます。私。私。あのような言葉をご婦人の口から伺うのは初めてで…つい、動転してしまい、しがみつき泣いているペンネをとにかく部屋から出そうとして…。もちろん、ペンネが何か粗相をしたのでしょうし、はじめにお詫び申し上げればよかったのですけど、とにかく、なんだか総毛だつような異様な心持が致しまして、つい、引きとめようと伸ばされたお嬢様の手を。その手を。ああ。申し訳ございません。申し訳ございません。お詫びしてお詫びできるものではございません。私、どうかしていたのでございます。あんな失礼な事を。伏してお詫び申し上げます。お嬢様にむかってあんな。あんな…」
 その後に続く混乱を収めようと間に入った執事は、異様に興奮し、叫び散らす少女に手を焼いて、使用人の一人を学問所に、そして、もう一人を伯爵家がずっと家族を任せていた医者を呼びに出したのだった。
 学問所の方がずっと館から離れていたし、受付で話が通らずに手間取った事もあって医者の方が一時間ほど私よりも早く館へ駆けつける事が出来、執事は当然ながら彼に、少女が非常に取り乱して泣いたり叫んだり罵しったりしている事を説明して、部屋に入れたのだ。
 その際、医者は、手近に控えていた、伯爵の従僕の一人と、自分の助手を連れて入ったのだった。鍵をかけたのは医者だったという。他の者を下がらせるように命じ、そして、鍵をかけた。
 分からないのはその後だった。貞操帯を外そうとしたのは誰なのか。私は口を極めて医者を問い詰めたのだが、クレセント博士は自分ではないと言い張るばかりだった。だが、どうやって華奢な子供が自分の腰骨を折ってまで金属の檻を身体から外そうとしたのか。どう考えても腑に落ちない。
 いったい男三人が寄ってたかって彼女に何をしようとしたのか。考えれば考えるほど彼女のせいではないと思われるにもかかわらず、結局ははっきりとした事は分からなかったのである。
やがて、私の出した早馬の報せを受けて、伯爵が帰館すると、医者はうなだれて蒼ざめ伯爵だけに話をしたいと言い出し、私は部屋から下がらせられてしまった。
 やがては妻となるべき女性が、怪我をしたというのに、それ以上抗弁する事も、抗議する事も許されず、すべての事情から私は締め出されてしまったのだ。
 伯爵は、堅く口を結び、すべての関係者に口止めをすると、医者に金を掴ませて国外に出してしまった。伯爵が医者のした言い訳を私に打ち明けてくれなかったために、私は私が彼女に仕掛けた悪戯を伯爵に打ち明ける事もできずに、すべてが不確かなままに事態は収束してしまったのだ。ただ、怪我をして、痛みに呻き熱を出して横たわるマリエーヌだけを残して。



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