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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 かすかに震えながら、それでも素直にその身を枷預けている彼の身体を鞭の先でなぞった。あふっ……と、まるで恋しい者の愛撫を待ちかねていた乙女のような悩ましい溜息が彼の唇から洩れる。
 恐れと裏腹な欲求が、ただ吊られている彼の身体をほんのりと色づかせる。そのなまめかしさは、男の心を狂わせるのに充分な麻薬だった。そう、女には決して持ちえない色香が、彼の身体から零れる。これが王に、すべての習慣を破らせてまで、小姓であったフランツ様が貴族として独り立ちされた後も、枕辺に呼ばれる原因なのだろう。
 ひゅううう……ん…………バシッッッ……!!
 鋭い鞭の音とともに声も無く仰け反る身体。驚きと痛みに見開かれるガラスのような瞳。みるみるうちに、白い背に斜めに一本赤い蚯蚓腫れが浮かび上がってくる。枷の鎖を握りしめる手が白くなり、しなやかな首が打ち振られる。その痛みがどんなものかは、私の身体が知っていた。
 彼の苦しみを減じるために、彼に何度も打たれた身体が。私を打つことで、晴らす事のできる苦しみには、限界があるのだろうか……。そうなのかもしれない。本当は、私のほうが惨い悪魔であり、彼は、その理不尽で非道な欲望にさらされる天使でしかないのだ。どんなに私の身体をむごく扱っても、彼の中にある白い魂は決して汚される事は無い。
 ゆっくりと三歩下がり、それから走り寄るようにして鞭を振るう。
ひゅううう……ぅう……ん……バシィッッッ……!!
 助走によって勢いが付いた鞭は彼の身体を反対側から斜めに走り、身体の向こう側に巻きつくと、柔らかい下腹から足の付け根に向かって鞭先を喰い込ませた。あまりの痛みに、彼の身体は意志の力を振り切ってもがく。枷がガチャガチャと鳴り、逃れようとする彼の身体を引きとめた。
 もう一度三歩下がる。気配を察して、フランツ様の身体が固まる。私が彼をこれほど酷く打つのは初めてのことだったから、振り返った瞳には許しを請う懇願の色が仄見えていた。だが、手を緩めることなく、もう一度助走をつけて鞭を振り下ろす。
 ひゅううう……ぅう……んん……バシィィッッッ……!!
「あうっ!」
 遂に彼の唇から苦鳴が上がる。身体は複雑にねじれ、吹き出した汗がてらてらと光り始める。喰いしばった歯が、ぎりぎりと音を立てる……。痛いはずだ。そう、恐ろしく痛い。耐え難く、身体を引き裂かれる苦痛。彼の瞳に涙が溢れてくる。私はまた三歩下がる。
「ああ……」
 次に何がやって来るか分かっていて、許しを請わずにいられる彼は、やはり私には適わないほどに強い。鎖を握りしめ、脚をふんばって……それでも、それでも彼の身体は意志の力を振り切って、逃れようとうねる。
 やめてくれ。やめてくれ。そこまでは望んでいない。いいや。あなたは望んでいる。すべてを苦痛のうちに忘れ去る事を。自分では抑えきれず激しく悶え泣き悲鳴を上げることを。ずたずたに引き裂かれ、悪魔に貪り喰われる事を。
 重い、鞭の音が部屋の中に響き渡り、そのたびにフランツ様の身体は揺れた。零れる悲鳴は少しずつ大きくなり、かすれ、喉をつぶすほどに大きくなっていく。
「ああああ……ヴァンツ……いや……だ……。やめ……て……くれ……」
 彼の、理性が切れる瞬間を狙って、鞭の間隔を狭めた。もう、助走をつける事も無く、一番効果的に鞭の届く場所へ移動する。振りかぶっては打ち、鞭をさばいては叩きつける。息を付くのも困難なほどの続けざまの打擲は、彼を半狂乱にさせる。もがき、叫び、ただのたうつ……獣のように。
「あうっ!あ……あ……あ……。ひぃあああ……」
 ガチャガチャと止めようも無く鎖が鳴り続ける。私の愛した人。ただ一人の私を撃ち殺せる主人の身体を。ふうっと彼の瞳がうつろになり足が床を捉えられずに滑る。枷に体重を任せて斜めにぶら下がると、全身から力が抜けていくのが分かった。
 鞭を寝台へ放り捨て、急いで近寄ると、身体をだきかかえるようにしながら、枷を足から外す。そして腕も、くたくたと腕の中に崩れ落ちてくる重みを受け止めてベッドへ仰向けに降ろした。汗と血に濡れたからだが、ぐったりと腕の中に重い。
「フランツ様……」
 濡れる巻き毛をそっと掻き揚げると、かすかに持ち上がった瞼の下から、瞳がゆらゆらと揺れるのがわかった。
「ヴァンツ……すまない。無理をさせて……」
 悲鳴につぶれた彼の擦れ声に、私は、切ない胸の痛みに絞り上げられるようだった。
 ああ……どうして……あなたは、私の中の悪魔に気が付かないのだろう。あなたは知らない。私があなたを打ち据えた事で、あなたが苦しみのあまりに私を引き裂いたとしても、私の心は愉悦に打ち震えているだろうに。かすんで見えないあなたの柔らかな頬にポツリと私の涙が落ちた。震える手が伸ばされ、私の頬を撫でていく。
 彼の身体に重みをかけぬようにしてそっと体を重ねる。彼の喉元におずおずと唇を付けたとき、彼の唇から私が心底願ってやまない言葉が、音にならずに囁かれるのが分かった。
「お前だけだ。ヴァンツ。私の物。私だけの……」
「ええ……。フランツ様。私はあなたの物です。あなただけの」
 ああ、神さま。お願いです。私を彼のぞばにずっと。……それが許されないのなら。彼の足元に死なせてください。私の主のために。彼のためにだけに。




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