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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 

「ゆき、そこにいるんだろう?」
 僕は、汗に濡れた彼女の前髪を掻き揚げた。白い額に掌を乗せてしばらく待つ。
「返事をしてくれないか?ゆき」
 瞼がゆっくりと上がり、丸い瞳が現れる。ピンクに濡れた唇が丸く開いた。
「かずき?」
 泣きたいような懐かしさと悲しみに涙で彼女の顔が見えなくなった。
「ゆき、君だったの?手首を切ろうとしたのは。それとも、瑞季だった?」
 目を覚ましたゆきは怯えた瞳でキョロキョロと周囲を伺った。
「あいつ……どこ?」
「……あいつ?」
「あの、おとこ。わたしを、かんだ」
「大きくて。いやな、においがした」
「はあはあと、いぬのように、くちをあけていきをしていた」
「ふくをハサミできりさいたの」
「それからむりやりひっぱってひきさいた」
「ぬのがくいこんだ」
「いたかった。なのにみうごきができなかった」
「なわがくい込んでてくびに……すりきれて…」
「あしのあいだにはいってこようとしたの」
「いたくて、あつくて」
「さけんだ」
「だけど、だれも、たすけにきてくれなかった」
「いつも」
「来る」
「の」
「毎晩」
「まい…ばん」
「くりかえし」
「くりかえし…」
「包丁」
「で」
「切る」
「手首を」
「切らないと」
「切り」
「落とさないと」
「縄が食い込んで」
「逃げられないから」
 彼女の、たどたどしい舌足らずの言葉が途切れ途切れに続くのを、じっと耳を澄まして、ひとつ残らず聞き漏らすまいと耳を傾けていた僕は、その言葉に凍りついた。
 その口調はどこかゆきとは違っていて、どうしてなのか分からない感覚が、酷いめにあった最初の人格の本当の声だと僕に感じさせた。
「手首を」
「切り落とさないと」
「自分で」
「切らないと」
「自由に…」
「なる…ために…あの」
「男から」

「ゆき……」
「かずき…ゆきの手首を切って…」
「…いいんだ。切らなくいい」
 僕の目から彼女の頬に、涙が落ちた。泳いでいたゆきの瞳が不思議そうにゆっくりと弧を描き、ようやく僕の瞳に焦点を合わせる。
「…どうして?」
「僕が、彼を追払う。二度と君のそばには寄せ付けないよ。
ずっとずっと守ってあげるから。
もう、君は手首を切らなくてもいい。
いいんだ。
安心して…お休み」
僕の目をじっと丸い瞳で見つめていたゆきは、こっくりとうなずいた。愛すべき小さな女の子との別れが、目の前に来ていた。
「かずき、みずきをおねがい。わたしはもう
かのじょをまもれない
かのじょとひとつにとけてしまう……から……」
僕は、そっと、彼女の包帯を巻いた反対側の手を握った。
「約束するよ。決して彼女に手首を切り落とさせない」
 ゆきはにっこりと笑い。
 そして。
 目を閉じた。
 恐ろしかった夜は、東の空から白い夜明けを迎えた。



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