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 明け方の夢を膨らませて作った、切ないSMの物語


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性的、暴力的な表現を含んでいます。
虚構と現実の区別のつかない方
18歳未満の方はご遠慮くださいませ。
自己責任に於いて閲覧していただきますようお願いします。

 
 じりじりと照りつける太陽はアスファルトをまるで焼けた鉄板のように熱くしている。昼食のためにちょっとビルを出ただけで、志方拓真はすでに後悔していた。別に、会社の中の食堂でお手軽な食事をしてもよかったのだ。
「海に行きたいなぁ・・・。」
 ネクタイを緩めながら、高野晃がぼそっと呟いた。どういう訳か、このクソ暑い最中にも、きちんとスーツを着て、見た目はちっとも暑そうじゃない涼しい顔をしているこのおかしな男でも、やっぱり暑さは感じているらしい。
「いけばいいじゃないか。」
 むかついた志方は、手を伸ばして会社で同じフロアの端と端で仕事をしている同僚の、上着の襟を引っ張って脱がそうとした。意味はまるでない。ただ、なんとなくじゃれたかっただけだが、晃は眉をしかめて志方の手を振り払う。
「暑いって。」
 だから、触るなと言いたいらしかった。

 会社の先輩の送別会で、すっかり酔っ払った晃を家に泊めた日に、どういう弾みか身体を繋げたことがきっかけで付き合い始めた相手。晃と志方は、別におまえが好きとか言ったことも無く、会いたいとも思わず(会社で始終顔を合わせてるせいもあるが)、ただ、なんとなく続いているうちに、いつのまにかそれが当然のような気がしている間柄になっていた。
 どこかとりとめがなく、べたべたしたかと思うとすいっと離れていく。見かけないなと思ってるとといつの間にかぴったりと寄ってきている。おしゃべりな奴だと思っていたら、急に不機嫌になって黙り込む。 「男同士なんだから、少しは周囲に気を使ってくれ。」と、言いたくなるほど、場所や周囲を気にしないで、キスとか仕掛けてきたり、絡み付いてきたりするくせに、あっさりしすぎるほどにそっけない性格で、ずっとそばに置いておこうと思っても、一体どうしたらいいんだか見当も付かない相手だった。

 幸い誠実で生真面目と評される志方でも、そっち方面は、どちらかというと成り行き任せだ。ゲイってのは、向こうも男で、こっちも男。どちらも主導権をとりたがるし、干渉されるのも好みじゃないって奴が結構多いんで、ま、なるようにしかならないぐらい開き直ってないと、胃がきりきりと痛むようなまねをされてしまうって事だって少なくないわけじゃない。
 それが分かってるから、志方自身、意識して、お気楽に、できるだけ考えないようにしているせいもある。どんな男でも操を守るなんて言葉が似合わないのはあたりまえってことらしい。
 それでも、付き合い始めてからこっち、志方は他の誰かと関係を持っていなかった。晃の方はさっぱり分からないが、志方が気がつかない以上、たとえあったとしても無かったも同じだろう。





「車、売っちゃったからね。」
 ああ、そうか。志方は、ようやく合点がいってうなずいた。志方がうらやましくなるようないい車を持っていたのに、どういう訳かこの男は、買ったばかりに見えたその車をあっさりと、売ってしまったのだった。志方と付き合いだした頃だったろうか。その時は、なんとも思わなかったのだが、彼は趣味にサーフィンをする奴だったのだ。ボードを持ち運ぶのに、自分の車が無いって事は、やっぱり不自由なんだろう。
「おまえ、サーフィンに行ってないの?」
「ああ、うん・・・。」
 髪を掻き揚げながら、すいっとその視線をそらす様子が、なにか、含むものがあるようだったのは、志方の気のせいだったのだろうか。晃が細身ですらりとしてるくせに、やけにスーツが似合うのは、肩幅とその胸の厚みのせいだった。「サーフィンをしてるから・・・。」初めて会った頃、やけに嬉しそうににっと笑ってそう言った様子から、相当好きなんだなと思ったのを覚えている。ディフォだと思っていたから、今まで特に話題にした事も無かったけれど・・・。
(そういえば、こいつ。最近、休みはいつも俺といるかだらだらと家で寝てるんだから、サーフィンなんかする暇なんて無いんじゃないか。)

 気がついた志方は、海に行きたいと言った相手の真意を、改めてもう一度測りなおしてみた。
 遠慮をして、遠まわしに言ったりするタイプじゃないんだから、連れて行けと言わなかった以上は、思わずも漏れてしまった本音という所だろうか。聞き流してやるべきなのか、それとも・・・・。
 顔を見ると、定まらない視線をぼうっと車の流れに向けている連れが、なんだか疲れている様子に見える。
「今週末の休みに、海に行くか?」
「あ?」
 思いもかけない事を言われた。そういう表情だった。
「いや、だって・・・・。」
「おまえ波に乗るんだったら、朝早く行くんだろう?俺、車出してやるから。その代わり、向こうへ着いたら、多分寝てるぞ。」
「それって、悪くない?」
「それを、気にするような関係だった?」
 友達でも無いけど、恋人でもない。束縛もしないけど、傍にいる事は必要で必然。だから・・・。
 うん、じゃ頼む、と、ひとつうなずいて、二人は目的のレストランの扉をくぐった。


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