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「手を後ろに回して。」
新聞を取って、と、言うのと変わらないように聞えればいい。志方は、こっそりとそう願った。まったく躊躇わずに腕を後ろに回し、握った拳を重ねる晃の横顔は、仕事をしている時と変わらない。
風呂場でお互いに傷つけ合った時のような狂騒は欠片も無かった。
本を読んで覚えた事を、頭の中で再生しながら、軽く握った拳を重ねた手首に縄を巻きつける。半分に折って、こぶを作っておいた輪の方を、重ねた腕にくぐらせる。一回、それからもう一回。縄目を揃えるように、ゆっくりと。それから結び目を作る。緩まないようにきっちりと。縄がそれ以上締まらないように、引かないように気をつけながら。
ひとつ、息をついて、縄を持ち直すと、その縄を胸に向かって回し始めた。左の手を添えながらぐいっと腕を引き上げる。縄に引かれた晃の腕は、何が起きたのか分からないようにその動きについて行けず、ちょっとだけ反対方向へ逆らった。それから、やっと気がついたように、引かれるままに持ち上げられた。
思っていたよりも柔らかい。腕は楽々背中の方へ持ちあがった。
背に戻ってきた縄を、回し始めの縄に軽く絡げてから、折り返して反対側からもう一度胸に廻す。抵抗しない、むしろ協力的な相手の身体に縄を掛ける行為は、荷造りをしているような淡々とした気分だ。留め縄をかけて、縄尻をしっかり結び付けて、余分を巻き込んでいるうちに、志方は、ふと、これでいいのかという、漠然とした懸念を感じた。
2本目を手にした志方は、じっと立っていた、晃の腕にかかっている縄をぐいっと引き寄せた。晃は、不意をつかれてたたらを踏んだ。
うなじに熱い息がかかる。さらりとした志方の手は、いつもの彼の手だった。肌の上を滑って行く時も、縄を握って身体にまわされている時も。お互いの体には距離がある。お互いの心にも距離がある。そもそも、心が寄り添い合うなんてあるものなのか。晃は、自分が益体も無い事を考えている事に気がついて驚いた。
初めての縄が、引き絞られ、腕が動かなくなっていく。息をする度にきゅうっと鳴く縄が、擦れ合う感触が身体に伝わってくる。腕と身体の間をすり抜けた縄が、胸に回された縄にひっかけられて絞られると、もう、晃の身体は、自分の自由にならなくなっていた。
志方が、屈み込むようにして結び目を作っていた。晃は、気付かれないようにこっそりと、息をもらす。何が起こっている?志方が次の縄を拾おうと屈んだ隙をついて、動けなくなった腕に力を込めた。巻きつく縄の中でわざと身体を膨らませてみる。縄が自然と肌に食い込む。そして、息を吐きだすと、ぴったりと肌に巻きつく元の位置に納まった。
もう一度、試してみたくて、息を吸い込んだ瞬間に、晃は自分の身体がぐいっと引っ張られた事に気がついた。自分の行為に夢中になっていた晃は、あっけなく、バランスを崩し、危うく転びそうになった。そして、そのまま転んだとしても何もできない事に気がつく。腕は、しっかりと体の後ろで留められていて、身を守るのに全く用を成さなかった。
淡々とした一本目と違う、乱暴な動きで縄が引き絞られる。力に逆らえずに、晃は何度か前へ後ろへとこづきまわされるように、足を踏ん張っては、踏みかえた。志方がしっかりと縄尻を握っているからいいようなものの、もしそれが無かったら、転んでいただろう。
縄が・・・・。志方の手に握られた縄。自分の身体の重心を引っ張っている縄・・・・。
その縄に自分を明け渡してしまった。進んでその縄に縛られたはずなのに、自分で自分の自由を捨て去った事に、今更ながら、晃は、慄然とした。

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