フランツ様は、ベッド下から縄を取り出すと私が体を起こすのを手伝った。膝を付いた姿勢からうつぶせにさせ、右手に縄を廻すしっかりと結ぶとそれを右足首に引き付けてひとつにくくり合わせた。反対の左手と左足をも同じように縄をかける。その縄尻はベッドの下をくぐらせて、両脇でひとつに結び合わせられてしまう。結ぶために、縄が引かれると、足はじりじりと開かれていった。足首を手で掴んでうつぶせたうえ、尻を突き上げ、顔は横向きにぺったりとベッドに押し付ける格好に留めつけられてしまったのだ。
体中の皮が薄くなり張り詰めてぴりぴりと痛む。真後ろに座った彼が手を伸ばし鞭痕をなぞり始める。すでに薬を塗られた痕なので唇を付けることは出来なかったが、彼の指が念入りに十字の形に付けられた縞模様を一本づつ辿り始めると、すぐに息が上がってきた。
痛い。しかもそれだけじゃないのだ。微妙な快感。むずむずとしてじっとしていられないような快感がわき腹を這い上がってくるのが分かった。狼狽して体を捻る。縄がギシギシときしみ、自分が身動きできなくされているのを思い知らされた。
許しを請うことも出来ず、ただわずかに身じろぎするだけ……。手は、きわどい場所をさまよい続け、私は喘がずに入られなかった。何度か、暴行された経験から、どうすれば、この窮地をしのげるのか知っていた。心を閉じて、感覚を締め出す。痛みも快感も屈辱も締め出すことが出来る。
だが、どうしてもできなかった。それどころか、自分の感覚を普段以上に研ぎ澄まして、彼の手の動きを追ってしまう。彼の視線の移動さえも、感じるくらいに。指が肩から背中へみみずばれの上を辿っていく、その動き。指の腹が皮膚に当たる感触。時には強く、時には触れるか触れないかくらいに、そよ風が髪に触れていくように優しく動いていく彼の指。
「あ……」
思わず声が洩れていた。必死に歯をくいしばる。体が熱くなってきて、さっきよりもしっかりと腹を打つほどに立ち上がってしまっていた。手が、感じやすい腰骨から下腹のほうへ滑り込む。腰が跳ねる。握りこまれた瞬間。ギュッと目を瞑り息をつめて、彼の手の感触を味わった。なんだろう、これは。どうかしている。あまりにも変だ。
喜びに息も絶え絶えになるくらいに撫で回されるうちに、正常な判断は跡形も無くなり、何のためにここにいるのかも分からなくなってきた。分かっているのは、自分の体を撫で回している主人の手の感覚だけ。
尻の狭間に冷たいものが流れる。多分オイルだ。アナルをほぐそうとしてる。遠くの方で、無理矢理引き裂かないと、苛んだことにならないんじゃないかと囁く自分の声があったが、忍び寄ってくる快感に遮ることもできなかった。
「ヴァイス。指を入れるよ」
今まで何度か経験してきた汚辱感、嫌悪感、そして、異物が入り込んでくる違和感を待ち構えていた体に、その指がじんわりとはいってきた。息を呑む。
指。あなたの細い指。指が……入ってくる。
内臓を裏返しに擦りあげられるような耐え難い快感が体中に走り。私は震えた。息をすることも忘れて、ただの排泄器官でしかないそこの感覚を総動員させて、その指を感じようとする。指がくるりと廻され中を擦られると、稲妻のような震えが走りぬけた。体が勝手に暴走を始めて、尻をもたげ、その指を締め付けからめとろうとする。中が快感に痙攣し、蠕動して導きいれようとする。それに伴って、快感の波が何度も打ち寄せて、私は呻いた。
どうしたらいい?あ……あ……耐えられない。
どうしようもなかった。縄を引き、手足を縮めて力をこめどうにかして、その感覚を弱めやりすごそうとした。だが、その行為が、ただ墓穴を掘っただけだったことはすぐに分かった。力を込めてしまったことで、かえって指を強く深く咥え込んでしまった結果になっただけだった。
「ヴァイス?」
脳がとろとろと溶けて流れ出していくようだった。意識が薄れていく。体力の限界を感じ取ったのか、彼が体を乗せてくるのが分かった。
「力を抜いて……」
首を振る。だめ。だめだ。そんなこと。できない。彼の体が入って来る時、引き裂かれる苦痛とない交ぜになった確かな快感に打ち倒されて、私は吐精していた。
揺さぶられる。強い力で引き摺り回される。傷だらけの体が悲鳴を上げ、その痛みの底に潜む快感に体は勝手に喜びをむさぼった。私は、恥知らずにも主人の体を味わい尽し、彼の精を絞り取った。
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