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12、なりゆきまかせ

ここでは、「12、なりゆきまかせ」 に関する記事を紹介しています。
  あきれた事に出血してしまった。そのせいで、本当に初めてじゃなくて、久しぶりだっただけだと、何度繰り返しても東野は納得しなかった。バージンで、男とふたりきりでSMなんて怖くて出来ない。
 すっかり青くなっていた東野は、根掘り葉掘り過去の事まで食い下がってきて、私を困惑させた。データーを与えてしまうと、つじつまが合わない時に余計な疑いを招いてしまいかねない。忘れたい過去の事はすっかり記憶の彼方に追いやってしまっている私としては、おぼろげな記憶を彼に言うのはごめんだった。
 とにかく初めてではなかった事は何とか納得させたものの、あまりにも性急な行為で私に痛い思いをさせたと信じ込んだ東野は、ひどく自己嫌悪に陥っている様子だった。だが、とろとろと愛撫なんかされていたら、どこかで破綻していたと思う私としては、彼の性急さに救われたのだと分かっていた。
 簡単に後始末をして、起き上がろうとしたところを、また腕を引かれて押さえ込まれた。
「東野」
 とがった声を出して見せたが、向こうも完全に開き直っている。
「離しませんよ。今、行かせたら、これきりにするつもりでしょう?」
 なんて、鋭いんだろう。ものすごく早まった事をしてしまったような気がして頭を抱えたくなった。
「セックスしたからSMしない、なんて言わせませんから」
「東野ぉ…」
 なんだか、すっかり身体中の活力を吸い取られたような錯覚に陥る。どうしたいんだか。どうしたらいいんだか。自分でも訳が分からなくって。あきらめて、彼の腕の中にもたれかかった。
「…少し考えさせて」
「嫌だ」
 だだっこのように、腕をつかんだ掌に力をこめて来る。いつもビロードのようになめらかで耳にやさしく響く彼の声がざらざらとかすれてうわずっていた。
「もう、何もなかったように振舞うなんて、耐えられない」
「だけど、だけど、しょうがないでしょう。そういうのが私は好きなんだから」
 一瞬、東野の動きが止まった。それから、抱きしめていた腕をちょっと緩めて、そこに書かれている筈の何かを探り出そうとするように、まじまじと私の顔を覗き込んで来た。
 ここで、負けちゃダメ。Sなんだから!私は、しっかりと彼の目を見返した。彼は、私の顔を見つめ、もう一度すべてのデーターをさらいなおした。(多分)そして一瞬目を閉じて、溜息をついて諦らめたかのようにうなずいた。
「分かりました」
 え?何が分かったの?なんで納得したの?彼は身体を起こすと、腕を取ってゆっくりと私の身体を支えて起き上がらせた。それから、すばやく身じまいをし、乱れていた私の服も手早く整えてくれた。そして、ソファの下に転がっていたハイヒールを拾うと、片方ずつ足を持ち上げて履かせてくれる。私がぼんやりしているうちに、立ち上がって机の上の書類を取上げ私の腕を取って立ち上がらせた。
「車を正面に廻します。家まで送りますから、明日の予定に眼を通して置いてください」
 何かを振り払うように、何かを吹っ切るように、彼がドアを開けて部屋を出て行くと、何がどうなったのかよく分からないまま、しばらく呆然としていた。それから、渡された書類をぱらぱらとめくった…。ものすごくまずい事態に突入しているという自覚が襲ってきて、めまいがした。



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コメント
この記事へのコメント
 そこに書いてあるでしょう。
でも、瑞希もわかんなかったみたいだから
せつなが分からなくても無理ないでしょう。
 ( ̄― ̄)(―_―)( ̄― ̄)(―_―)ウンウン
ところで続きはどうなるんだろう・・・。
さやかも続きが読みたい。
ちょっと明日へ行って写してきたいぞ。
2006/05/11(木) 15:49 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
何?何が分かったの?(w
せつな分かんない…。
①から読み返したけど…わからない…。がーんvvv
だから連載小説っておもしろいんだ。(〃▽〃)
早く続きが読みたい。。。
2006/05/11(木) 13:31 | URL | せつな #-[ 編集]
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