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15、吊りと鞭

ここでは、「15、吊りと鞭」 に関する記事を紹介しています。
 その後彼を手枷につないで吊った。両手を拡げてバーの両端につなぐ吊り。足が床に届きそうで届かないくらいの高さ。吊りは静かだけれど本人にとってはすごく辛いのは知っていた。私は新しい水割りを作ってソファに戻った。
 大きかった氷がからからと音を立てなくなるくらいに溶けた頃には、彼は吊られた体を脂汗でてらてらと光らせていた。どこを見ているか分からない視線は、時々私の姿を求めてさまよう。眉は寄せられ、青い顔は苦痛にゆがむ。足は、つくはずのない床を求めて探る。息が浅くなり、速くなる。吹き出す汗が身体を伝わり足先から床にたれる。ぽたん。ぽたん。と、滴のたれる音の間隔がだんだんと早くなってくる。眼を閉じた彼は殉教者のようだった。
 ひょいと足を伸ばして腰の辺りを押す。吊られた身体が力を加えられた事でゆらゆらと揺れる。
「く……」
 筋肉が一瞬で浮き上がり、苦痛を減らそうと緊張する。体力が無い方が早く終わりになる。彼は、なまじきちんと鍛えた身体を持っているせいで、身体が勝手に逆らおうとして苦痛をいや増しているのだった。
『こんなに辛そうなのに、いつ、根をあげるのだろう』と、不思議に思い。これは、自分から言い出す気はないなと気が付いた。
 プレイに慣れてくれば、どの辺りが自分の限界か分かってくるし、どの辺でギブアップすれば身体を痛めつけずにすむか見極めも付く。館で私の相手をした男達は商売だから、身体を壊してしまっては元も子もないのだ。
 真樹はそうじゃなかったけど、それでも、自分の楽しみのためにやっているのだから、懇願するのもその楽しみの一つなのだった。
 東野は違う。苦痛を喜びに変える術を知らない彼は、ただ闇雲に耐えている。しかも「出来ない」と言ったが最後、私が放り出しかねないのを恐怖しているのだった。
 チェーンブロックのスイッチを切り替え、ガラガラとバーを降ろして彼の足を床につけた。これ以上粘ると肩の関節が外れてしまう。
「う…」
 足が付いた瞬間、安堵と、ゆるんだ筋肉がきしむ痛みに東野の身体が震えた。腕の痺れが取れて、ずきずきと筋肉が痛み出すその頃合まで黙って待った。それから、その背中にバラ鞭をゾロリと這わせる。何が起きようとしているのか気が付いた東野の身体が、緊張に引きつった。
「ああ……」
 溜息が洩れる。持ちこたえられるかちょっと危ぶんだが、思い切って振り下ろした。ビシッ!と皮の鳴る音が響き、踏みとどまれなかった彼の身体が揺れた。ちょっと間を置いてもう一度。
「あうっ!」
 しっかりとした声の悲鳴が上がって安堵した。もう一度鞭を背中に這わせてから、強く叩きつけると、バーをもっと降ろして手枷を外した。
 片方の手枷を外す時には意識も朦朧としているようだったのに、もう片方の手枷が外れた瞬間に抱きすくめられた。どこにこんな体力が残っていたんだろうと、びっくりするほど強い力で、腕の中に囲い込まれる。
「合格しました?」
「プレイの最中にそんな事しないの!」
 胸が喜びにきゅうんと絞り込まれた事を悟られたくなくて、事さら蓮っ葉に肩をはたいて見せた。静かでせつない色の瞳に出会ってうろたえる。
「こんなに我慢したのに、誉めてくれないんですか?」
「いいかげんにして。そんなべたべたした身体で触らないで。ちゃんとお風呂に入ってきて」
「お風呂に入ってくれば抱きしめてもいいんですね」
 笑いの滲んだ声に驚いた。ここまで手加減無しに痛めつけられて、それでも笑える男なんて、貴重品だった。
「いいわ。お風呂から上がったら、セックスしましょう」
 東野の不思議そうな目が右から左へくるりと移動する。
「SMの相手とはセックスしないんじゃなかったんですか?」
「東野は、SMの相手だけでいいの?」
 笑っていた瞳が急に真剣になった。
「いいえ。もちろん全部いただきたいです」
 そして、私の身体を捉えていた腕をゆっくりとほどくと、確認するようにもう一度顔を覗き込んでから、くるりと背中を向け、シャワーに消えた。




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コメント
この記事へのコメント
 あなたも明日の吊りに備えて
鉄棒で懸垂して身体を鍛えよう!
肩、腕、背中の筋肉さえ鍛えれば
もう、吊りも怖くない!
何時間でもぶら下がっていられます!
東野、がんばれ♪明日から筋トレじゃ!
ヾ(▽⌒*)キャハハハo(__)ノ彡_☆バンバン!!
2006/05/14(日) 15:55 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
もーもーッ。
東野さんがいじらしくていじらしくて…。
吊られるって辛いんだろうなぁ。
東野さんの苦痛が滲みでてます(〃▽〃)
それに、わき腹を晒すのって恐怖ですよね。
肩こり持ちのせつなには無理だなぁ…。
ちょっと伸びするだけでゴキゴキいっちゃってます。
2006/05/14(日) 05:00 | URL | せつな #-[ 編集]
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