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16、二度目はゆっくり

ここでは、「16、二度目はゆっくり」 に関する記事を紹介しています。
 ラブホテルのバスローブを着て戻ってきた東野は、冷蔵庫からペリエを出すと、ごくごくと飲んだ。そして、ベッドに座っていた私の横に座る。3年間もいろんな男を金で買うような生活をしていながら、私のセックスの経験は、非常にお寒いものだった。
「どうすればいいんですか?」
 前回、ほとんど何もせずにあっという間に終わってしまっただけに、お互いに、相手の身体の事はまだ何も知らないも同然だった。
「……東野は、どうしたいの?」
「それは、僕の好きにしていいって事?」
「うん、まあね。本当言うとよく分からないの」
「さっきと大分違うんですね。本当に、何もしていなかったんだ」
「まったく何もってわけじゃないけど、長い事、挿れなかったのはほんとよ」
「確かに……僕が乱暴すぎたんだけど、まさか、出血するとは思わなかった」
「東野、私が東野と対等に接する事ができるのはセックスの時だけだと思う」
「それ以外の時は、社長で、上司で、主人って事ですね?」
「うん…私には…痛みを与える関係が必要なの…。普通のカップルには、なれない…と、思う」
「その理屈から行けば、セックスの時は恋人同士になれるって事なんでしょう?」
 まったく。私のあぶなげな理論の隙間をしっかりと捕らえて攻めて来る。彼を本気でやっつけるなら、感情に任せて突き進むしかない。
「…多分」
「分かりました」
 東野は、しばらく黙って、考え込んでいた。頭の中でコンピューターがカタカタいってるんじゃないかと思うと、ちょっと笑えた。
「社長?」
「ね。瑞季って言いなさい。社長じゃ……ムードが…めり込みそう」
「…難しいですね。使い分けられるかな」
「それは……平気だと思うけど」
 東野ったら、自分で気が付いてないの?あんた、場面によってしゃべり方が違うよ。
「今日は、ゆっくり『させて』欲しいんです。この間、あんまり急ぎすぎたから」
「ふふ……。東野はせっかちなんだと思った」
「ずっと、我慢していたんですよ。ずっと、ずっと…あなたを好きだったのに……」
 彼の言葉はだんだんと優しいささやき声に変わっていった。そして片手で頬を引き寄せてそっとふれてくるキスをする。いつも強引に噛み付くようなキスをする東野の意外な顔。軽くふれて、離れて、そしてまた軽くふれる。何度も何度も繰り返しているうちに、彼の吐息が熱くなっていくのが分かる。片手でベッドの毛布をはぎながら、もう片方の手で背中を支えてくれながら、ゆっくりと身体を倒してくれる。
 いきなり押し込まれた前回と別人のような丁寧な愛撫。少しずつ少しずつ強く、少しずつ少しずつ核心に近づいていく。さっきアレだけ焦らされた彼の身体は、もうすっかりと固くなっていて太腿に当たって痛い。それでも、弾んでくる息を、押さえながら彼の手は、私の感じるところを探して優しくさまよう。
 思わず長い溜息が洩れた。こんなに優しくされて、こんなに大事にされて、こんなに愛してもらって、心の中が静かに、静かに彼の愛情で満ちていくような気がする
 何度も寸止めさせられたのに、東野はまだ逝かせてもらってない。おそらくは、苦しくてたまらないはずなのに、彼は私がゆっくりと高まってくるのをじっと待っていた。私の肩の辺りにぞくぞくする場所があるのを発見した東野は、そこへ唇をぴったりとつけて、念入りに舌を這わせてくる。
 あまりに強い快感に思わず身体が逃げようとすると、今度は感覚を拡散させるかのように、肩への愛撫を続けながらも胸に手を這わせてくる。さわってもいないのに、あそこが熱くなり、甘い快感が突き抜けていくようで思わず腰をもたげてしまう。もっと……。
 彼の手はようやく会陰のスリットの上をゆるゆると前後に動いている。熱くなった体を押し付けたくなるほどの優しい愛撫。
 それから親指が亀裂の中へ少しずつもぐりこんできた。入り口をふさぐぐらいの位置でほんの一センチほどの動きで前後にゆりかごの揺れのように出し入れされる。それもすごくゆっくりと……そして動かなくなる。あ……。もどかしいくらいの愛撫なのに…内側から高まってくるものを感じて喘いだ。
 繰り返し、繰り返し。軽く唇をついばまれた。何度も何度も溜息を付かずにはいられない。東野。泣いてしまいそう。本当に長い時間をかけて、膣の中が痙攣を始めるほど高まるまで待ってから、東野は静かに身体を差し入れてきた。私が身体を固くしたので、東野は息を吸い込むと動きを止めた。身体から力が抜けるまで、待って、ゆるゆると進む。少しずつ少しずつ、おそろしくゆっくりと時間を掛けて彼は入ってきた。
 完全に入り込むとようやく彼は溜息を付き、ぶるっと身震いをする。
「ああ。いい。熱くて。やわらかくて。絡み付いてきています」
 私は恥ずかしくなって、彼の胸に顔をぴったりと伏せてしまう。それを、顎に手をかけて上向かせながら
「大丈夫ですか?痛くありません?」
 私は、返事が出来なかった。痛みがあるかといえばまだ痛い。何だか腰の骨を無理矢理開かれているような感覚。だが、それと一緒に、内臓を掻き回されているような剥き出しの快感も存在していた。彼は、動かない。私の身体が反応するのを、耳を澄ますようにして待っている。じれったさにどうにかなってしまいそうだった。何度も何度も乳房や肩の上にキスされた。髪をすきあげ撫で下ろす。
 まったく動いていないのに、だんだんと身体の中にうねりが産まれて、それに引き込まれていく。感覚に引きさらわれそうになって彼の首にしがみついた。彼は、ゆっくりと深く突いて、また抜いていく。考えていたような激しい動きではなかったのに、急激にオーガズムの波が迫ってきて驚きのうちにその波に打ち上げられた。
 初めて知る不思議な感覚。一緒に。私のつぶやきを捉えた彼は、一度目は私がいくにまかせ、二度目に合わせて来た。
 確かに射精があったはずなのに、彼のそれは萎える事なく確かに私の中にあった。私がオーガズムの無反応から目覚めるのをじっと待っている。そして、もう一度。同じやり方で私をいかせた。激しい愛撫も、華麗な技巧もなかったのに、満たされてすっかり満足した私は、溜息を付きながら、彼の咽喉にくちづけた。
 彼の腕枕に寄り添って、うつらうつらするのは、なかなかに楽しい経験だった。彼が手を伸ばして前髪を掻き揚げてくれる。それからシーツを引っ張りあげてむき出しの肩をくるんでくれる。私はなすがままになり、彼の腕の中ですっかりたゆたっていた。
 こんなに気持ちよくていいんだろうか?起き上がり、眼をつぶって瞼の上にキスを落としてくる彼は。もうすでに高ぶっていた。私はもう一度彼の中で溶けた。



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