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3、ほんとに欲しい

ここでは、「3、ほんとに欲しい」 に関する記事を紹介しています。
 間に合った。彼女を部屋の奥へと押し込んでから、急いでズボンのチャックを上げて、ベルトを止める。髪を掻き揚げて息を整えた時、ベルチャイムが鳴る音がした。振り向くと、ワンピースだけを残して瑞希の姿はもう無かった。ほっとして、ワンピースを拾い上げて、椅子の上に乗せると、玄関を開けた。そこに立っていたのは、さっき、入り口で受付をしていた管理人だった。
「お花が届きましたよ」
 手に余るほどの大きなアレンジのかごを差し出された。ほっとして脱力する。管理人は僕の支えているドアから堂々と入ってくると、居間の突き当たりにあるサイドテーブルの上にその花かごを下ろした。ちょっと離れて眺めてから、位置を整えると、またそのまま回れ右をしてドアのところへやってくる。
「お荷物は、すでに中にいれてありますし、申し付けられた食材等は冷蔵庫に入っております。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
 型どおりの挨拶をしながらも、管理人の目はすばやく椅子の上に乗せられているさっきまで瑞季が着ていたワンピースを見ていた。さすがに、僕の身体をじろじろと見ることはなかったけれど、勃起したままのそこは隠しようがなかったから、チラッと見ただけで何が起きているかばれてしまっているだろう。内心舌打ちをしながらも財布を取り出すと彼の手に三万ほどを押し付けた。
「ありがとう。僕達は、この一週間は、ふたりだけでお楽しみをして過ごしたいんだ。よろしく頼みます」
 管理人は目を輝かせて金を受け取り、全部分かっていますよというように、嬉しそうにうなずきながら去っていく。急いでドアを閉じると鍵をしっかり掛けて、額の汗を拭った。瑞季がその気になったら、僕には止めようがない。いつも、いつも、振り回されっぱなしだった。それでも、あんな男に瑞季の身体をちょっとでも見られるなんて、耐えられそうになかっただけに、その危険を回避できて、ほっとせずにはいられなかった。
 まっすぐ、キッチンへ行って冷蔵庫を開けると、確かに一週間分とは思えないほどの贅沢な食材が詰めてあった。僕は、冷蔵庫の扉に並んでいるミネラルウォーターを取り上げると、蓋を開けて直接に、びんからごくごくとあおった。キッチンのシンクに寄りかかって、身体が冷えるのを待つ。これこそ、無駄な抵抗としか言い様がなかったが……何しろ彼女のそばに寄った途端に、いやおうもなく身体は反応してしまう。
 顔を洗ってそこに掛けてあったタオルで念入りに拭うと、瑞季を探しに行く事にした。椅子の上に置きっぱなしになっているワンピースを取り上げて、寝室のドアをノックする。ひとつ、息を吸い込んでから、ドアを開けると、シャワーを浴びていたらしい彼女がバスタオル一枚巻いただけでバスルームから出てくるところに鉢合わせしてしまった。
「あら」
 と、にっこりと笑った時には、腕の中に彼女の身体があった。僕は飛びついてきた彼女を受け止めた。目の先に、今、彼女が身体に巻いていたはずのバスタオルが落ちているのが分かった。おそるおそる抱きしめている彼女の身体に廻した手へ意識を移す。思わず、呻き声をあげてしまう。
「瑞季。あんまり、ひどいと思いませんか」
「どうして?東野が我慢しているのと同じ時間。私だって禁欲していたんだから」
「僕は、夜中まで射精できないんです」
「そう?私はすぐに抱いて欲しかったのに」
 ごくりと唾を、飲み込む。彼女は、僕を罰したがっているのだろうか?身体で誘惑して、僕に彼女を抱かずにはいられない状況を作り出しているんだろうか?それとも、こうやって、夜中まで、ネチネチと刺激して遊ぼうと思っているのだろうか。
 僕は、彼女の肩を掴んで身体を引き離し、その目を覗き込んだ。どっちに転ぶかで、この一週間の休暇がまったく違うものになってしまう。彼女の目はきらきらと輝いているばかりで、どちらが正解かというヒントは現れていなかった。
「だめです。僕にとっても大事な一週間なんですからね。お願いですから。夜中まで待ってください」
「ふうん」
瑞季の体が僕の手をすり抜けて、また絡みついてくる。
「随分、がんばるのね」



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