遊ぶ方だ。僕の判断が当たっていなければ、瑞季は力づくで押してくるだろう。そうなった時に、舵を切りなおす事にして、とりあえずは、夜中まで持ちこたえなくてはならない。時計の数字は午後5時を指していた。夜中までは気が遠くなるほどに長い。
「夕食を作りますよ。何がお好みですか?」
「スパゲッティがいいわ。えびやいかやホタテがいっぱい入っているの」
「分かりました。お願いですから、なにか着てください。神経が焼き切れてしまう」
本当のところ、彼女が考えているよりも、ずっとぎりぎりだった。頭の中は、今すぐ彼女を目の前の大きなベッドへ押し倒す事でいっぱいになっている。そう、押し倒して彼女の柔らかい胸に頬を押し当てて、熱く濡れそぼったあそこへ指を差し入れる。それから……ああ!まただ。やめろ。考えるな。本当に気が狂ってしまうぞ。
僕は、首を振ってその考えを無理矢理振り払うと、彼女を少し押しやってから、彼女が飛びついてきた時に落としてしまったワンピースを拾い上げるとベッドの上に乗せて、台所へ回れ右をしようとした。彼女が、スーツの袖をひっぱる。
「東野、今、お湯をはっているの。お風呂に入って、服を着替えなさいな。さっきので、ちょっと、濡れちゃったでしょ。その間に荷解きをしとくから」
そう言われればその通りだった。下着はさっきの行為のせいで湿っていた。肌に張り付いていて気持ちが悪い。
「スーツはもう終わりよ。カジュアルな服にするわ」
彼女にバスルームの方へ追いやられる。バスタオルを拾おうとしている彼女の身体から視線を無理矢理引き剥がして、部屋を見回すと、ベッドの奥のクローゼットの前に、ふたりのスーツケースが並んでいた。
ゆっくりとぬるい風呂につかった。神経をほぐすこと。時間を置けば、ぎりぎりまで引っ張られていた熱を少しは冷ますことが出来ないだろうか。それから冷たいシャワーを浴びる。残念ながら冷たいシャワーは何の効果も無いということは、この一ヶ月で思い知っていた。衝動が落ち着くのはシャワーの下にいるときだけだ。
髭をあたり、髪を乾かして、瑞季がバスローブの上に乗せておいてくれた下着を身につけた。直に服を着るよりも刺激が少ない事は検証済みだった。ツータックのコットンパンツにゆったりとした綿のボタンダウンのシャツが、選ばれて並んでいる。確かにカジュアルだ。だが、彼女の前でスーツを脱いだ事のない僕は、そんな服を着て彼女の前に出ると思うと反対に居心地が悪い気分だった。
彼女は黒いシルクのシンプルなワンピース姿になっていた。てろんとしたラインが身体に張り付いて、下着を着けていないことが分かった。見ただけで、回れ右をして逃げ出したい衝動に駆られる。素足の上に履いたミュールが木の床の上でかわいらしくカタカタと音を立てる。手を伸ばして引き寄せたい。彼女の身体を思いっきり抱きしめたい。だが、歯を喰いしばって視線を逸らすしかない。自分の身体の反応が邪魔をして、愛しい相手の姿を見ることもできないなんて、お笑い種だった。
とにかく夕食を作ろう。彼女が手間のかからないメニューを選んだから、あっという間に出来てしまうとしても、少しだけ時間がつぶれる。彼女が手伝うと言い出さないことを祈って、キッチンの方へ行く。もちろん、そんなチャンスを見逃してくれるほど彼女は甘くは無い。真っ白なエプロンをつけながら近づいてくる。
「荷解きはすんだわ。手伝うわね。なにをすればいいの?」
「そうですね…」
冷蔵庫を開けて、食材を確認する。
「サラダを作ってください。レタスとキュウリとトマトと玉ネギ…カッテージチーズがありますから…」
「チーズドレッシングにする?」
「ええ、お願いします」
大きななべに水を張ってお湯に掛ける。めんどくさがり屋の彼女のためにえびの殻を剥く。普通はそのまま入れたほうがいい味が出るのだが、瑞季は熱いえびの殻を剥くのが大嫌いなのだ。洗ったレタスをちぎっている彼女の動作を目の端で伺う。
料理を始める前に髪を結んだので、白いうなじが覗いていた。僕の心はすでにここにあらずといった具合で彼女の身体の上をさまよった。今夜、あのうなじに唇を押し当てる時の事考えると頭がくらくらしそうだった。
だが、スムーズにそう進むとは決まっていないのだ。彼女が真夜中を廻った後も、休暇の間、ずっと僕に射精を禁じようと決めたとしても、僕には抵抗の仕様がない。彼女が、少しの間だけでも恋人同士の時間を持とうと考えてくれる事を願うばかりだった。
彼女に触れたい。じりじりと焦げ付くような衝動をかかえたままの、この一ヶ月。本当に拷問のような毎日だった。嫌、触れることは禁じられていないのだ。だが、触れてしまえばもう、とどまりようがない。あっという間に頭のヒューズが切れて彼女を押し倒してしまうだろう。
塩を計ってお湯に入れ、スパゲッティを廻しいれる。麺を掻き混ぜてから、大きなフライパンにオリーブオイルを入れて包丁の背でつぶしたにんにくを浮かせて火をつける。弱火でぴちぴちと炙られるにんにくは今の我が身のようだった。
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「夕食を作りますよ。何がお好みですか?」
「スパゲッティがいいわ。えびやいかやホタテがいっぱい入っているの」
「分かりました。お願いですから、なにか着てください。神経が焼き切れてしまう」
本当のところ、彼女が考えているよりも、ずっとぎりぎりだった。頭の中は、今すぐ彼女を目の前の大きなベッドへ押し倒す事でいっぱいになっている。そう、押し倒して彼女の柔らかい胸に頬を押し当てて、熱く濡れそぼったあそこへ指を差し入れる。それから……ああ!まただ。やめろ。考えるな。本当に気が狂ってしまうぞ。
僕は、首を振ってその考えを無理矢理振り払うと、彼女を少し押しやってから、彼女が飛びついてきた時に落としてしまったワンピースを拾い上げるとベッドの上に乗せて、台所へ回れ右をしようとした。彼女が、スーツの袖をひっぱる。
「東野、今、お湯をはっているの。お風呂に入って、服を着替えなさいな。さっきので、ちょっと、濡れちゃったでしょ。その間に荷解きをしとくから」
そう言われればその通りだった。下着はさっきの行為のせいで湿っていた。肌に張り付いていて気持ちが悪い。
「スーツはもう終わりよ。カジュアルな服にするわ」
彼女にバスルームの方へ追いやられる。バスタオルを拾おうとしている彼女の身体から視線を無理矢理引き剥がして、部屋を見回すと、ベッドの奥のクローゼットの前に、ふたりのスーツケースが並んでいた。
ゆっくりとぬるい風呂につかった。神経をほぐすこと。時間を置けば、ぎりぎりまで引っ張られていた熱を少しは冷ますことが出来ないだろうか。それから冷たいシャワーを浴びる。残念ながら冷たいシャワーは何の効果も無いということは、この一ヶ月で思い知っていた。衝動が落ち着くのはシャワーの下にいるときだけだ。
髭をあたり、髪を乾かして、瑞季がバスローブの上に乗せておいてくれた下着を身につけた。直に服を着るよりも刺激が少ない事は検証済みだった。ツータックのコットンパンツにゆったりとした綿のボタンダウンのシャツが、選ばれて並んでいる。確かにカジュアルだ。だが、彼女の前でスーツを脱いだ事のない僕は、そんな服を着て彼女の前に出ると思うと反対に居心地が悪い気分だった。
彼女は黒いシルクのシンプルなワンピース姿になっていた。てろんとしたラインが身体に張り付いて、下着を着けていないことが分かった。見ただけで、回れ右をして逃げ出したい衝動に駆られる。素足の上に履いたミュールが木の床の上でかわいらしくカタカタと音を立てる。手を伸ばして引き寄せたい。彼女の身体を思いっきり抱きしめたい。だが、歯を喰いしばって視線を逸らすしかない。自分の身体の反応が邪魔をして、愛しい相手の姿を見ることもできないなんて、お笑い種だった。
とにかく夕食を作ろう。彼女が手間のかからないメニューを選んだから、あっという間に出来てしまうとしても、少しだけ時間がつぶれる。彼女が手伝うと言い出さないことを祈って、キッチンの方へ行く。もちろん、そんなチャンスを見逃してくれるほど彼女は甘くは無い。真っ白なエプロンをつけながら近づいてくる。
「荷解きはすんだわ。手伝うわね。なにをすればいいの?」
「そうですね…」
冷蔵庫を開けて、食材を確認する。
「サラダを作ってください。レタスとキュウリとトマトと玉ネギ…カッテージチーズがありますから…」
「チーズドレッシングにする?」
「ええ、お願いします」
大きななべに水を張ってお湯に掛ける。めんどくさがり屋の彼女のためにえびの殻を剥く。普通はそのまま入れたほうがいい味が出るのだが、瑞季は熱いえびの殻を剥くのが大嫌いなのだ。洗ったレタスをちぎっている彼女の動作を目の端で伺う。
料理を始める前に髪を結んだので、白いうなじが覗いていた。僕の心はすでにここにあらずといった具合で彼女の身体の上をさまよった。今夜、あのうなじに唇を押し当てる時の事考えると頭がくらくらしそうだった。
だが、スムーズにそう進むとは決まっていないのだ。彼女が真夜中を廻った後も、休暇の間、ずっと僕に射精を禁じようと決めたとしても、僕には抵抗の仕様がない。彼女が、少しの間だけでも恋人同士の時間を持とうと考えてくれる事を願うばかりだった。
彼女に触れたい。じりじりと焦げ付くような衝動をかかえたままの、この一ヶ月。本当に拷問のような毎日だった。嫌、触れることは禁じられていないのだ。だが、触れてしまえばもう、とどまりようがない。あっという間に頭のヒューズが切れて彼女を押し倒してしまうだろう。
塩を計ってお湯に入れ、スパゲッティを廻しいれる。麺を掻き混ぜてから、大きなフライパンにオリーブオイルを入れて包丁の背でつぶしたにんにくを浮かせて火をつける。弱火でぴちぴちと炙られるにんにくは今の我が身のようだった。
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