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1、わるあがき

ここでは、「1、わるあがき」 に関する記事を紹介しています。
 もしかしたら自分は男が好きなんじゃないかと思ったのは高校2年の時だった気がする。
中学時代。同級生がみな、思春期に突入して声変わりし、髭が生え、毎日毎日考えることといったらえっちなことばかり…。学校の裏では、どこかから拾ってきたような、ヌードグラビアの載った週刊誌が廻されて、みんなでおでこを引っ付けるようにして覗き込む。そんな時。なんでなのか分からないないけれど、いまいち乗り切れなくって、反応しない「息子」に疑問符のオンパレ。
 でも、自分はきっと「おくて」なんだろうと思っていた。同級生は、次々と女の子に愛を告白したり、派手にふられては落ち込んだり、バレンタインデーにチョコをいくつもらったといっては盛り上がっている。俺だってチョコぐらい義理も含めて結構もらったけど、友達が騒ぐほどには嬉しくなくって…。そんな時、なぜ、自分は好きな子が出来ないんだろうとちょっと淋しく思っていた。
 いつかは、いつかは、運命の女性にめぐり合って、大恋愛して結婚して…そんなありえないような夢こそは描いてなかったけど、学校帰りの公園の裏でちょっと手を握ったり、できればキスしたりしてみたい。そういうささやかな出来心はしっかりと持っていたはずだった。
 だけど、そういった浮ついた状況には一度も会うこともなく、そのまま高校へ進学した。バリバリ進学のための男子校で、右を見ても左を見てもむさい男ばかり。これは、このままのんきにしていたら「おくて」の俺なんか、童貞のまま卒業というはめになりかねないのがありありだった。だからと言ってすぐに状況を変えられるほどにまだ大人じゃなくって。まぁ、そのまま悶々と日を重ねるのが精一杯。
 そしてある日突然、気が付いた。放課後の図書館でぼんやりと外を見ている時に。毎日、図書館に残って勉強をしている時に、自分が何を見ているのかを。無意識のうちに追っているのは、校庭を走り回るクラブ活動で運動に熱中する同級生や上級生の体。汗にまみれ、エネルギーを発散してぶつかり合う体をみつめているうちに、ペニスがゆっくりと固くなってきて、俺を唖然とさせる。
 なんでだ?俺そんなに欲求不満だったっけ?最初は、見ているもののせいだと気が付かなかった。だが、回を重ねるうちに否が応でも気が付かずに入られなくなる。
 それだけじゃなかった、教室でふざけあいじゃれあう最中に、ふっと汗の臭いを意識した時、急に自分の体が熱くなり反応しているのに気が付く。知られたくなくて、体勢を変えたり、急いでトイレに行ったりしているうちに、自分に何が起こっているのが分かってきた。俺、同級生に欲情してる……。 
 誰が好きだとか、特定の相手がいるわけじゃなかった。ありていに言えば、反応するのは、誰でもよかった。顔を見ているわけでもない。ほんのちょっとの接触と自分の位置を意識した途端にわいてくる唐突な欲情に俺は困惑した。なんなんだ。これ、絶対におかしいって。ありえないだろう。いつまでも女を知らないまま、たらたらと過ごしているせいだ。俺はまっとうな道に、戻りたくっておおいに焦った。だが、男子校じゃ女と知り合うそんな機会も皆無だし、駅で出会う他校の女生徒を血眼になって眺めてみても、ぴんと来る相手がみつからなくて、うろうろするばかりだった。
 それに、夢を見る。ほら、もうやりたい盛りだからさ。自分で始終やっていたって、やっぱり夢精したりするわけ。その時に見る夢が、男のたくましい腕だとか、盛り上がった肩だとか、広い背中にしがみついているところだったり、誰だか顔はわからないんだけど、男に押し倒されてそこを握られる夢だったりして…。
 ヤバイ、俺ってホモ?そう思うとわれながらげんなりして、むきになって否定せずにいられなくなって。大丈夫。ホモだったら、その辺の野郎を好きになっているはずだ。そんな気配はまったく無いし、男も女も好きな奴いないんだから、やっぱ俺って「おくて」なんだよ、とか、そんなそしょうもない理由にしがみついてみたりしていた。
 大学に進学が決まって、上京した時。俺は、せっせとバイトした金を握ってヘルスに言った。とにかく童貞を投げ捨てて、女ってどんなものか知れば、そこから開ける道があるはずだと思って。何しろ場慣れしてないからめちゃくちゃ緊張して、並んでいる写真の中から、適当にかわいく見えるような女を選んで、個室に入った。
「初めてなの?」
「はい……」
 どう見てもはるか年上にしか見えないおばさんに指示されて服を脱ぎ、シャワーを浴びると、慣れた手つきで掴まれた。何しろ他人に握られるのも初めてだったし、自分でするより格段に気持ちがいい。ローションを塗りたくってしごかれるとあっというまに…あっというまに…勃たなかった。俺は焦った。相手の女性も顔をしかめる。
「緊張しているのね」
 にっこり笑って、軽くお絞りで拭うと相手が俺のそこにかがみこんだ。ぬめっ、とした柔らかい口の中にあっという間に俺のそこは吸い込まれた。軟体動物のようにぬめぬめとしたなにかが絡みつく。俺は、あまりの気持ち悪さにびびっていた。
 「やっぱり」というあきらめの感情と「どうして」「まさか」「なんとかなるはずだ」という未練たらしい気持ちが交錯する。
 だが、だんだんと胸の底に冷えた塊のようなものが出来てきて俺は認めるしかなかった。気持ち悪い。だめだ。どうにもならない。こんなんで、勃つわけがない。
 俺は、黙って相手の女性を押しのけた。
「あん。なにするのよ」
「ごめん。疲れているのか上手くいかないや。今日はもう…帰る」
「ええーっ」
 女性は、怒ったように、困ったように、そして軽蔑を隠し切れないように、横を向いて舌打ちをした。




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コメント
この記事へのコメント
 そうなんだよね。
一体どこで名前、出しゃいいの?
四日目にしてまだ出てないの・・・。
なにしろ三日目にして、名前が無い事に気がついて
でも、その展開では四日目になっても名前言う暇が・・・。
明日五日目を書くときに考えます。
2006/05/31(水) 17:08 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
さやかさまー
|`・ω・)ゝ”彼の名前を知りたいですー。
せつなは勝手にネーミングしてしまいましたぁ!
「ゴンベさん」ヽ(´∀`)9 ビシ!!
・・・嘘です><
なんてお名前か楽しみ♪
2006/05/31(水) 13:23 | URL | せつな #-[ 編集]
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