神崎は、おもいっきり手足を伸ばしてソファの背もたれに寄りかかり、天井を見上げている。
「まいったな。お前がそこにいても、平気だと思ってたのにな。まるで、見捨てられたような子猫のような目で見られると、つい、抱き上げたくなる。」
そして、かすかににため息を付く。
「お前には、わかってないんだ。俺が濡れて震える猫を抱き上げて、次にすることはあの壁に叩きつけることなんだぞ。」
そのささやきを聞いて、俺は、壁際に置かれた手枷へ視線をめぐらせた。まるで、象徴のように人目につく場所に置かれた手枷。身体の自由を奪い囚えるための道具。神崎が俺をあそこへつないだら何をするんだろう?こいつは、俺を欲しいわけじゃないんだろう。あそこにつなぐ獲物にだけ食指が動くんだ。だが、俺がその獲物になってみせたって、俺が考えている十分の一もこいつの愛情が俺に向くわけじゃない。
走馬灯のように俺の身体の上を通り過ぎた男達の幻が浮かんでは消えた。その一瞬一瞬、あれほど深く熱くぶつかりあい、喜びをむさぼりあった身体は、あっという間に行き過ぎて、後には何も残らなかった。みんな、虚ろって行った。あれほどなじんだ誠一の身体だってもうあまり記憶に無い。そういえば、誰かが、奥さんとの間に子供ができたって言ってた。だからって、特に悲しかったわけでもない。「ああ、そうか。」って思っただけ。ああ、そうか。ゲイでも子供が作れる奴いるんだ・・・って。
それなのに、神埼が俺に関心が無いと思うだけで、胸が切り裂かれるようだった。もう、会えないんじゃないかと思っただけで焦燥を抑えきれずに闇雲に走り出したくなる。
あいつを探して、探して、見つけたい。
姿を見たい。
見て・・・いたい。
あいつに・・・見て欲しい。
・・・ちょっとでいいから。
ちょっとでいいから、俺の方、見てよ。
俺がいるのに気がついて。
俺が、お前に焦がれてることに、気がついて。
ああ・・・奴の関心がつなぎとめられるなら、痛かろうが恥ずかしかろうが、惨めだろうが・・・どうでもいいんじゃないか?俺が苦しみに耐えている間は、俺はあいつの獲物であいつの関心は俺の上にあるはずだ。そうだろう?
「お前が・・・あの手枷に一晩つながれて、俺が気が済むまで好きにさせるっていうならお前を抱いてもいい。」
その言葉は俺を物思いから引きずり出した。弾かれたように、俺は顔を上げてあいつの顔を見つめた。食い殺されるような強い力を放つ瞳にぶつかる・・・。
「お前、SMしたことあるのか?」
「ない・・・。」
ゆるく首を振って見せると。神崎は、そうだろうな・・・と、つぶやく。だが、俺は、何も考えずに、ただただ、魅せせられたようにうなずきかえしていた。
立ち上がった神崎に促されて、手枷を寝室へ運ぶことになった。寝室のドアを開けると、いったいどういう趣味をしてるんだと疑いたくなるような大きな天蓋付のベッドとそのベッドの天蓋とおそろいの布で張られた寝椅子や大きな肘掛け椅子とテーブルが並べられていた。床は、磨きこまれたフローリングで、カーテンは締め切ると部屋が真っ暗になるほど厚い。神崎は、寝椅子とテーブルなどを移動させて空間を作り、その中央手枷をすえつけるように指示をする。それは結構な重さで、ふたりがかりでも持ち上げてるのがやっとという状態で、ずいぶん苦労してようやく移動できた。
ベンチの枠は丁寧に磨きこまれてすべらかにつやつやと光っている。肩の高さよりも少し下の場所に真ん中に大きな穴がひとつ。そして、それを挟むように小さなふたつの穴が開いていた。小さな穴は、そこに腕を入れてどこへも逃げられないように留めつけるとは思えないほど、しゃれたピンタックの飾りをつけたセーム皮のクッションをふっくらとをまといつけていた。みっつの穴を横切るように、上下に分かれていて左側は蝶番で右側は大きな留め金の金具で留めるように南京錠が付けられているのは以前に説明したとおりだった。用途を教えられれば、ほとんどその知識がない俺にだってその穴がどいう役割を果たすか痛いほど分かった。ベンチが異様に重かったのは、むく板で作られた、非常にがっしりしたつくりのせいだったが、目的は枷につながれた人間が暴れても、ベンチが倒れないようにするためだったろう。
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「まいったな。お前がそこにいても、平気だと思ってたのにな。まるで、見捨てられたような子猫のような目で見られると、つい、抱き上げたくなる。」
そして、かすかににため息を付く。
「お前には、わかってないんだ。俺が濡れて震える猫を抱き上げて、次にすることはあの壁に叩きつけることなんだぞ。」
そのささやきを聞いて、俺は、壁際に置かれた手枷へ視線をめぐらせた。まるで、象徴のように人目につく場所に置かれた手枷。身体の自由を奪い囚えるための道具。神崎が俺をあそこへつないだら何をするんだろう?こいつは、俺を欲しいわけじゃないんだろう。あそこにつなぐ獲物にだけ食指が動くんだ。だが、俺がその獲物になってみせたって、俺が考えている十分の一もこいつの愛情が俺に向くわけじゃない。
走馬灯のように俺の身体の上を通り過ぎた男達の幻が浮かんでは消えた。その一瞬一瞬、あれほど深く熱くぶつかりあい、喜びをむさぼりあった身体は、あっという間に行き過ぎて、後には何も残らなかった。みんな、虚ろって行った。あれほどなじんだ誠一の身体だってもうあまり記憶に無い。そういえば、誰かが、奥さんとの間に子供ができたって言ってた。だからって、特に悲しかったわけでもない。「ああ、そうか。」って思っただけ。ああ、そうか。ゲイでも子供が作れる奴いるんだ・・・って。
それなのに、神埼が俺に関心が無いと思うだけで、胸が切り裂かれるようだった。もう、会えないんじゃないかと思っただけで焦燥を抑えきれずに闇雲に走り出したくなる。
あいつを探して、探して、見つけたい。
姿を見たい。
見て・・・いたい。
あいつに・・・見て欲しい。
・・・ちょっとでいいから。
ちょっとでいいから、俺の方、見てよ。
俺がいるのに気がついて。
俺が、お前に焦がれてることに、気がついて。
ああ・・・奴の関心がつなぎとめられるなら、痛かろうが恥ずかしかろうが、惨めだろうが・・・どうでもいいんじゃないか?俺が苦しみに耐えている間は、俺はあいつの獲物であいつの関心は俺の上にあるはずだ。そうだろう?
「お前が・・・あの手枷に一晩つながれて、俺が気が済むまで好きにさせるっていうならお前を抱いてもいい。」
その言葉は俺を物思いから引きずり出した。弾かれたように、俺は顔を上げてあいつの顔を見つめた。食い殺されるような強い力を放つ瞳にぶつかる・・・。
「お前、SMしたことあるのか?」
「ない・・・。」
ゆるく首を振って見せると。神崎は、そうだろうな・・・と、つぶやく。だが、俺は、何も考えずに、ただただ、魅せせられたようにうなずきかえしていた。
立ち上がった神崎に促されて、手枷を寝室へ運ぶことになった。寝室のドアを開けると、いったいどういう趣味をしてるんだと疑いたくなるような大きな天蓋付のベッドとそのベッドの天蓋とおそろいの布で張られた寝椅子や大きな肘掛け椅子とテーブルが並べられていた。床は、磨きこまれたフローリングで、カーテンは締め切ると部屋が真っ暗になるほど厚い。神崎は、寝椅子とテーブルなどを移動させて空間を作り、その中央手枷をすえつけるように指示をする。それは結構な重さで、ふたりがかりでも持ち上げてるのがやっとという状態で、ずいぶん苦労してようやく移動できた。
ベンチの枠は丁寧に磨きこまれてすべらかにつやつやと光っている。肩の高さよりも少し下の場所に真ん中に大きな穴がひとつ。そして、それを挟むように小さなふたつの穴が開いていた。小さな穴は、そこに腕を入れてどこへも逃げられないように留めつけるとは思えないほど、しゃれたピンタックの飾りをつけたセーム皮のクッションをふっくらとをまといつけていた。みっつの穴を横切るように、上下に分かれていて左側は蝶番で右側は大きな留め金の金具で留めるように南京錠が付けられているのは以前に説明したとおりだった。用途を教えられれば、ほとんどその知識がない俺にだってその穴がどいう役割を果たすか痛いほど分かった。ベンチが異様に重かったのは、むく板で作られた、非常にがっしりしたつくりのせいだったが、目的は枷につながれた人間が暴れても、ベンチが倒れないようにするためだったろう。
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この記事へのコメント
首をつなぐと美しくないので省いてあった穴。
やっぱり、開けさせていただきました。
ちょっと、前に戻って訂正してあります。
(???と、思った方すみません。)
首をいれる場所の無い手枷をでっち上げた後で
せつなのコメントを読んでたら
やっぱ、あまりに不自然だよねぇ・・・と。
それこそ、ほんとに特注になっちゃうし。
穴、最初書いてたときはみっつあったんだよね。
でも、首をつながれた樹ってどうよ。
と、思って削ったの。
実は、後からつじつまが合わなくてチョコチョコと
修正する事がしばしばあります。
全部直したつもりだけど、
おとしてつじつまが合わなくなってる部分もあるかもー(^_^;)
やっぱり、開けさせていただきました。
ちょっと、前に戻って訂正してあります。
(???と、思った方すみません。)
首をいれる場所の無い手枷をでっち上げた後で
せつなのコメントを読んでたら
やっぱ、あまりに不自然だよねぇ・・・と。
それこそ、ほんとに特注になっちゃうし。
穴、最初書いてたときはみっつあったんだよね。
でも、首をつながれた樹ってどうよ。
と、思って削ったの。
実は、後からつじつまが合わなくてチョコチョコと
修正する事がしばしばあります。
全部直したつもりだけど、
おとしてつじつまが合わなくなってる部分もあるかもー(^_^;)
すごい家具(?)ですね。
特注かなー(w
どうやって責められるんだろう。
緊張してきました><
特注かなー(w
どうやって責められるんだろう。
緊張してきました><
2006/06/14(水) 13:48 | URL | せつな #-[ 編集]