午後からは、土蔵での撮影になった。着物を脱がせる事がメインの撮影で、午前中のショックで食欲が無い詩織は、無理矢理弁当を喉に押し込んだ。
撮影のモデルは体力を使う。食べないで低血糖の発作にでもなったら、どんでもない迷惑をかけることになる。食べなかったせいで起きたのか、やっていることのせいで起きたのか、分からない事態だけは引き起こしたくなかった
食事がすむと詩織は、障子をきっちりと閉めて、屏風の陰で乱れた着物をいったん脱いで、風を当て、その間に身体を丁寧にタオルで拭ってから、もう一度着物を着付けなおした。足袋だけは替えを持って来ていたので、新しいものには履き替えた。もう一度乱され、剥ぎ取られるためだけに着物をきちんと纏っていく。
始まったばかりで、死ぬほど恥ずかしい思いをした詩織は、胸をふさぐ悲しみに囚われないようにしようと必死だった。今は他の事は考えまい。与えられた仕事をちゃんとこなす事だけを考えよう……。帯締めを結びお太鼓をぽんと叩いて、詩織は部屋の外へ足を踏み出した。
土蔵の中はひんやりと冷たく、それでいて寒さは感じられない。二階の奥に座敷がしつらえられていて、太く黒光りするむき出しの梁や柱が、この土蔵の立てられた時代を表していた。詩織が喉を通らない弁当と格闘していた頃、晃の手でライトや道具が運び込まれ、聡史の手でセッティングがすまされている。
聡史の指示で詩織は、ライトの中央に斜めを向いて横座りになった。聡史がポーズをつけるがままに視線をぼんやりと彷徨わせる。フィルムを巻き上げる音が、するたびに、ギクッとするのを抑えられない様子を見せる。
脅えている。
詩織の姿を眺めながら晃は溜息をつく。緊張している詩織の表情は固い。そして、それが、今の撮影のコンセプトにぴったりの状況を作り出していた。聡史が指を上げて合図をしたので、晃は、詩織の側に行った。
「裾をまくるよ」
驚かないように、示唆しておいて、カメラの方向を考えながら裾を乱していく。足袋に隠れたつま先がくの字に曲がっている。力が入っているのだ。聡史が指で合図するたびに、晃は、進み出ると詩織の着物を脱がせ始めた。
まず帯締めを解いて引き抜く。名古屋の帯のたれがパタンと落ちて流れる。何枚か撮影が進むのを待って、帯揚げを解いて帯枕を外した。帯が形を成さなくなってほどけはじめる。晃は、くるくると帯を引き抜いくと簡単に畳んで土蔵の隅に拡げてあった、たとうの上に置いた。畳の中央には博多織の伊達締めだけを締めた詩織がしどけなく裾を乱して座っている。
「詩織ちゃん立って」
詩織は、まったく逆らわなかった。手を取った晃が導くままに素直に立ち上がる。そんな彼女の様子が晃を帰って不安にさせる。だが、その不安な気持ちをねじ伏せると、晃はてきぱきと作業を続けた。
握りこんだ彼女の腕を後ろに廻させて軽く縄でくくる。伊達締めをほどき、おはしょりの下の腰紐もほどくと着物の前が割れた。裾の位置を整えると、晃は、伊達締めと腰紐を持って、また下がった。
次の合図で襟を持って引き下ろす。半分ずり落ちた着物が縄のかかった腕にかかって、着物が脱げてしまうのを防いでいた。もう一度縄をほどくと着物を取り払った。薄紅色の綸子の襦袢姿の詩織が現れる。詩織の頬はますます硬直し、身体の動きがギクシャクしてきた。
次の合図で晃が詩織の側に近づくと、詩織は午後の撮影が始まって初めて晃の手を避けようとした。泣きそうな瞳が晃の視線を一瞬捉えたがさっと逸らされてしまう。晃は、フィルムを変えている聡史をチラッと見ずにはいられなかった。
あの男は、今何を考えているのだろう。もう一度手を後ろに廻させて軽く、くくった。誰も何も喋らない。だが、三人ともだんだんと緊張が高まってくるのは、感じていた。息をするのさえもはばかるような雰囲気だ。
晃の手が、襦袢を押さえているもう一本の伊達締めにかかると詩織は、観念したかのように目を瞑って息を吸い込んだ。シュシュシュシュ……絹が鳴る音がして伊達締めが引き抜かれると襦袢の前がはらりと割れた。
もう、着物を脱がされた時のような落ち着きは詩織の中に存在しない。身体が現れるのを防ごうとして前かがみになるところを、手首を握ってぐいっと引き起こす。ついに、白く、まろやかで弾むような乳房がこぼれ出た。
纏っている長襦袢の色のような淡い乳首は、すでに尖っている。捻られた首筋から鎖骨のくぼみにかけて、ライトの光をまぶしく弾き返した肌が白くそのなまめかしいラインを浮き上がらせていた。晃は、聡のほうを見ながら彼女の首の後ろを掴んでぐいっと頭を上向かせた。シャッターの音を聞きながら、襟に手をかけて、肩から襦袢を引き下ろす。真っ白で、ぬめぬめと光るようにすべらかな肩がむき出しになった。晃は、舌を巻いてその肌を見つめていた。
半裸になった詩織を座らせる。俯く様に身体を捻って伏せようとする詩織の姿を聡史は多くの枚数を費やして撮った。縄を解くと晃は手早く襦袢を剥ぎ取った。詩織は胸を抱えるようにして、しゃがみこんだ。
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撮影のモデルは体力を使う。食べないで低血糖の発作にでもなったら、どんでもない迷惑をかけることになる。食べなかったせいで起きたのか、やっていることのせいで起きたのか、分からない事態だけは引き起こしたくなかった
食事がすむと詩織は、障子をきっちりと閉めて、屏風の陰で乱れた着物をいったん脱いで、風を当て、その間に身体を丁寧にタオルで拭ってから、もう一度着物を着付けなおした。足袋だけは替えを持って来ていたので、新しいものには履き替えた。もう一度乱され、剥ぎ取られるためだけに着物をきちんと纏っていく。
始まったばかりで、死ぬほど恥ずかしい思いをした詩織は、胸をふさぐ悲しみに囚われないようにしようと必死だった。今は他の事は考えまい。与えられた仕事をちゃんとこなす事だけを考えよう……。帯締めを結びお太鼓をぽんと叩いて、詩織は部屋の外へ足を踏み出した。
土蔵の中はひんやりと冷たく、それでいて寒さは感じられない。二階の奥に座敷がしつらえられていて、太く黒光りするむき出しの梁や柱が、この土蔵の立てられた時代を表していた。詩織が喉を通らない弁当と格闘していた頃、晃の手でライトや道具が運び込まれ、聡史の手でセッティングがすまされている。
聡史の指示で詩織は、ライトの中央に斜めを向いて横座りになった。聡史がポーズをつけるがままに視線をぼんやりと彷徨わせる。フィルムを巻き上げる音が、するたびに、ギクッとするのを抑えられない様子を見せる。
脅えている。
詩織の姿を眺めながら晃は溜息をつく。緊張している詩織の表情は固い。そして、それが、今の撮影のコンセプトにぴったりの状況を作り出していた。聡史が指を上げて合図をしたので、晃は、詩織の側に行った。
「裾をまくるよ」
驚かないように、示唆しておいて、カメラの方向を考えながら裾を乱していく。足袋に隠れたつま先がくの字に曲がっている。力が入っているのだ。聡史が指で合図するたびに、晃は、進み出ると詩織の着物を脱がせ始めた。
まず帯締めを解いて引き抜く。名古屋の帯のたれがパタンと落ちて流れる。何枚か撮影が進むのを待って、帯揚げを解いて帯枕を外した。帯が形を成さなくなってほどけはじめる。晃は、くるくると帯を引き抜いくと簡単に畳んで土蔵の隅に拡げてあった、たとうの上に置いた。畳の中央には博多織の伊達締めだけを締めた詩織がしどけなく裾を乱して座っている。
「詩織ちゃん立って」
詩織は、まったく逆らわなかった。手を取った晃が導くままに素直に立ち上がる。そんな彼女の様子が晃を帰って不安にさせる。だが、その不安な気持ちをねじ伏せると、晃はてきぱきと作業を続けた。
握りこんだ彼女の腕を後ろに廻させて軽く縄でくくる。伊達締めをほどき、おはしょりの下の腰紐もほどくと着物の前が割れた。裾の位置を整えると、晃は、伊達締めと腰紐を持って、また下がった。
次の合図で襟を持って引き下ろす。半分ずり落ちた着物が縄のかかった腕にかかって、着物が脱げてしまうのを防いでいた。もう一度縄をほどくと着物を取り払った。薄紅色の綸子の襦袢姿の詩織が現れる。詩織の頬はますます硬直し、身体の動きがギクシャクしてきた。
次の合図で晃が詩織の側に近づくと、詩織は午後の撮影が始まって初めて晃の手を避けようとした。泣きそうな瞳が晃の視線を一瞬捉えたがさっと逸らされてしまう。晃は、フィルムを変えている聡史をチラッと見ずにはいられなかった。
あの男は、今何を考えているのだろう。もう一度手を後ろに廻させて軽く、くくった。誰も何も喋らない。だが、三人ともだんだんと緊張が高まってくるのは、感じていた。息をするのさえもはばかるような雰囲気だ。
晃の手が、襦袢を押さえているもう一本の伊達締めにかかると詩織は、観念したかのように目を瞑って息を吸い込んだ。シュシュシュシュ……絹が鳴る音がして伊達締めが引き抜かれると襦袢の前がはらりと割れた。
もう、着物を脱がされた時のような落ち着きは詩織の中に存在しない。身体が現れるのを防ごうとして前かがみになるところを、手首を握ってぐいっと引き起こす。ついに、白く、まろやかで弾むような乳房がこぼれ出た。
纏っている長襦袢の色のような淡い乳首は、すでに尖っている。捻られた首筋から鎖骨のくぼみにかけて、ライトの光をまぶしく弾き返した肌が白くそのなまめかしいラインを浮き上がらせていた。晃は、聡のほうを見ながら彼女の首の後ろを掴んでぐいっと頭を上向かせた。シャッターの音を聞きながら、襟に手をかけて、肩から襦袢を引き下ろす。真っ白で、ぬめぬめと光るようにすべらかな肩がむき出しになった。晃は、舌を巻いてその肌を見つめていた。
半裸になった詩織を座らせる。俯く様に身体を捻って伏せようとする詩織の姿を聡史は多くの枚数を費やして撮った。縄を解くと晃は手早く襦袢を剥ぎ取った。詩織は胸を抱えるようにして、しゃがみこんだ。
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この記事へのコメント
さやかにはまだ、詩織の考えてる事が見えてこない・・・。
話も半分進んで折り返しなのにどうするんだ詩織・・・。
このまま、聡史の言いなりになっていてどうするんだ!
立て!立つんだ!詩織!
お話の「展」へ入れるかはあんたにかかってるのだ。
(いや、登場人物にすがってどうする?)
話も半分進んで折り返しなのにどうするんだ詩織・・・。
このまま、聡史の言いなりになっていてどうするんだ!
立て!立つんだ!詩織!
お話の「展」へ入れるかはあんたにかかってるのだ。
(いや、登場人物にすがってどうする?)
胸をふさぐ悲しみに囚われないように>
詩織ちゃん…(T-T)
被写体に誰かがなるくらいなら自分がなる方がいいって思っても
フツウに暮らしてる詩織ちゃんには
世間体も仕事も家族もある…。
せつなにはその決断をするような価値観はないけど、
価値観は一人ひとり違う。
だから人間ってステキなんだと思うんだ。
詩織ちゃんは一見か弱そうに見えるけどしなやかで強い女性なんだろうなぁ…詩織ちゃんのこと凄く好きになっちゃった!
詩織ちゃん…(T-T)
被写体に誰かがなるくらいなら自分がなる方がいいって思っても
フツウに暮らしてる詩織ちゃんには
世間体も仕事も家族もある…。
せつなにはその決断をするような価値観はないけど、
価値観は一人ひとり違う。
だから人間ってステキなんだと思うんだ。
詩織ちゃんは一見か弱そうに見えるけどしなやかで強い女性なんだろうなぁ…詩織ちゃんのこと凄く好きになっちゃった!
2006/07/03(月) 11:51 | URL | せつな #-[ 編集]