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16、男ふたり

ここでは、「16、男ふたり」 に関する記事を紹介しています。
 次の撮影の前に、晃は聡史の隙をついて詩織を物陰に引きずり込んだ。
「訊きたい事があるんだ」
「なあに」
 回数を重ねるうちに、詩織も晃の人となりが分かってきたのだろう。不必要に脅えたり、恥ずかしがったりする事は無くなって来た。休憩時間に、雑談をしているときに笑い顔を見せることすらあった。
「この写真集で、詩織ちゃんが一番望んでいる事はなに?」
 詩織は一瞬びっくりしたように、目を見開いた。ちょっと迷ったように視線が泳いだが、俯いてじっと考えている。晃は、黙って待った。一言で答えられる問題じゃない。ゆっくりと顔を上げた詩織の瞳は澄んでいた。
「負けたくないの」
「……何に?」
「分からない。……自分?……それとも、こうなった運命?最初の写真集のモデルさんにも……。聡史にも……」
 最後の言葉は消え入るように小さかった。
「いい物を作りたい。……できるよね。わたし……」
「分かった」
 晃は彼女の横をすり抜けて離れる際に、詩織の腕をぎゅっと握った。
「きっと、いい物になったって、君に言わせて見せる」
 詩織のかすかな微笑みが残像となって晃の脳裏に残る。晃はぎゅっと歯を食い縛った。
 撮影は、間を一週間から十日開けて行われていた。晃の仕事の関係もあったし、詩織の体力が回復するのを待つ意味もあった。
 その日の撮影の手順は、撮影前日までに聡史と晃の間では事細かく相談されて決めてあった。詩織に知らされるのは、大まかな流れだけだった。例えば、「今日は蔵の中で縛る。着るのは腰巻だけで。予定は2時間。休憩を置いてもう2時間。午前は柱に立った形で縛り付けるから。午後は、疲れ具合を見てから決める」と、いうふうな具合だった。詳しいことを知らないということは、不安でもあるが、始まってしまえば何も考えずただ流れに任せればいいという利点があった。
 晃は、ポジも、デジタル画像も毎回チェックに付き合っている。前回の撮影の晃の立ち位置や手足の映りこみ具合を細かく検討して、次の責めの時は、角度を少しずつ修正していく。舞台の経験があるので、一回直すと、同じ失敗は繰り返さないのが晃のすごいところだった。
 次回は吊りをするというので、晃は神経質なくらいに細かく打ち合わせをした。一人で吊り上げて、アクシデントが起きたら対処するのに時間がかかる。スタッフが控えていれば、即座にみなで女性の身体を持ち上げれば掛かった荷重は和らぐ。縄を切っていく余裕も産まれる。だが、一人ではそうはいかない。
 晃は、床で形を作って一気に吊り上げるという方法と上半身を作り上げてからその後に脚を吊っていき展開していく方法の二つを選んだ。
「吊りは、体力がいるから一日に一度だけにしたい。痕も結構残りやすいし……」
「最初の日はどちらを使う?」
「上半身を作り上げておいてからの方がいいかな?恐怖感が薄いし……」
「後手にして脚を後ろへ吊るんだな。責めに何を使うんだ」
「筆かな?後は、ずいき棒……」
「いつ、鞭を使うんだ?」
 晃は、黙った。
「鞭を使う時は、からだが縦に伸びている時がいい。同じ吊りでも縄をほとんどかけないで両手で吊るか、それとも反対に大の字や、台の上に上半身だけ乗せてやりたいんだが……」
「俺は大の字がやりたい。それに逆さ吊り。蔵の中で」
「逆さ吊りをするなら、知り合いに助手を頼みたい。万が一のために」
「詩織に、相談した方がいいな」
「分かった。鞭は何を使う?」
「乗馬鞭やバラ鞭は避けたいんだが……ささら竹は?」
「馬鹿言うなよ。傷だらけになっちまう。一生痕が残ったらどうするんだ」
「うーん。何か……探してくれないか?」
「竹鞭……かな。だが、それでも相当の痛みだぞ」
「みみず腫れになるくらいがいいんだ」
 晃は、わざとらしく思いっきり溜息を付いて見せた。
「竹鞭なら節のあとが付く。絵的にはお前の好みだろうがな」
 詩織は、だんだんと体つきが変わってきていた。最初にそれに気がついたのは、さすがに聡史だった。胸がぽったりと柔らかく膨らみ、反してウェストのくびれが強くなってきている。両手で握りこめるのではないかと思わせるほどだった。尻はぬめっと白く肌理が細かく、大理石を磨きこんだように艶を増してきている。もちろん毎回撫で回している晃にとっても、彼女の肌の変化は驚きのひとつだった。見られているということが女性をこれほど変えるものなのか……。
 どこか幼い様子を残していた詩織の身体は、熟れて膨らみ、たわわに実って重さをましてくる甘い果物のようだった。着物を剥いていく時の恥ずかしがる様子も、どこかしら甘く蕩けるようになってきた。男二人は明らかにその様に魅せられてしまっている。
 特に、直に手を触れる晃は、吐く息さえも熱い。そして、その代わりに頭の方はどんどん冴え渡ってくる。場が進むと音がしなくなって、聞こえるのは縄鳴りの音と、彼女の吐息だけ……。だんだんと視界が狭まって周囲が暗くなっていく。しかも、目の前の彼女の姿だけでなく、カメラの中の彼女が二重写しになる感覚がかぶさってくる。
 ぐいっと脚にかけた縄を天井の梁に引っ掛けて思いっきり引くと、詩織の片足は後ろ向きに吊りあがる。普段しない格好に足の付け根が痛むのか、詩織は顔をゆがめて呻いた。縄をしっかりと止めてから、荷重を減らすために膝の上と太腿に何本か縄を足した。床に付いている、残された一本の右足が爪先立って震えていた。足先に体重がかかって白くなっている。大きく脚が開かれているために、何も隠しようが無い。
 左足の縄先をくるくると仕舞いこみながら、晃は、我を忘れて、しっとりと濡れ光っている彼女のピンク色の合わせ目を中指と人差し指で擦り上げた。声にならない悲鳴を発して、彼女が跳ねる。脚を閉じようとしたのだろう一瞬右足が宙に浮き、身体がゆらりと揺れる。慌てて足を床につけるが、爪先だけで踏ん張りようが無かった、爪先の位置が決まらず不安定に身体がかしぐ。詩織は、再び悲鳴を上げて、身体を固くした。
 元の位置へ身体の位置を戻してやろうとして、晃はためらった。そして、もう一度彼女の身体の合わせ目に手を滑らせる。今度は、彼女も自分がどうやっても抵抗できない状態になっていることに気が付いている。不安定な形に固まったまま、どうにかして重心を取り戻そうとつま先の位置を探っていた。いやいやと頭を左右にふる。
「逆らえないの。辛い?」
 晃は、彼女の耳元で囁いた。
「聡史の前で、脚を閉じる事もできなくて、僕に触られて濡れる所をあからさまに見られるの……辛い?」
「……言わないで」
 睦言を言うように晃は詩織の耳たぶにそっと唇を寄せて、熱い息を吹きかけた。そっと耳たぶを甘噛みする。詩織の背中が汗でじっとりと光り始めていた。
「僕が何をしても、詩織ちゃんは逃げられない。どこを触られても、何も隠せない」
 晃の右手が伸ばされ太腿の内側から膝までをさまよった。左手は乳房を掴んでいる。詩織の突っ張った右足は細かく震え続ける。縄が身体に喰い込み、揺れる。いや。やめて。お願い。そんな触り方……。髪の毛をすくように、優しい動きで脚の間をすきあげる手にぶるっと詩織は身震いした。
 身動きがならない身体を、触られる時、自由な時とまったく違う鋭い快感が稲妻のように駆けめぐる。詩織は胸に廻された縄に体重を掛けて身体を揺すった。



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コメント
この記事へのコメント
to琴乃さん
 ぴんぽーん!当たりです。
ありがとうございますm( __ __ )m
不審な点、誤字脱字ありましたら、教えてくださると助かります。
時々とんでもない間違いをしている事が・・・多々。
ペシペシ(;¬_¬)☆ヾ(@゚▽゚@)ノ" アハハ 
toあかねさん
 それはさやかもすごく不思議です。
「やさしく」愛撫するなら、
縛らなくても同じじゃないかって思うんですけど・・・。
全然違うの!なぜー?
2006/07/06(木) 10:45 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2006/07/05(水) 17:12 | | #[ 編集]
縛られている時に、優しく身体をまさぐられるのっていいですよね。。。
夢見心地(。・・。)
2006/07/06(木) 05:16 | URL | あかね #-[ 編集]
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