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18、涙

ここでは、「18、涙」 に関する記事を紹介しています。
「あ、晃さん。いや……。お願い。やめて」
 晃は、右手のふわふわとした筆を彼女の足裏に這わせ始めた。詩織は硬直した。思わず脚を蹴ろうとするが、一瞬縄がびんっと音を立てただけで、苦もなく晃に抱き取られていた。くねくねとくねりながら筆は内腿をあがってくる。そして脚の間を駆け上がると尻の合わせ目をさわさわと撫で回してから、今度は尻たぼの丸みにそって動かされる。
反転した筆は同じ道程を辿って足裏へ戻っていく。晃はその過程を何度も繰り返した。しかも左手に握られた筆が絶え間なくずいき棒の周囲をくすぐり続けている。あまりのくすぐったさと強い快感に詩織は気が狂いそうだった。だが、どうしようもない。ただただ、身体を固くして震えながら耐えるしかなかった。
「は……あぁ……あ。いや。もう、いや。耐えられない」
「我慢して」
 晃は彼女の身体の中心の下にしゃがむと左手の細い筆でクリトリスを狙って撫で始めた。詩織はビクッと顎を突き上げる。柔らかな筆の方は脇腹から腰骨の周りを廻って、足の付け根をいったりきたりしている。詩織は必死に拳を握りしめた。
鋭い快感が身体の中心を切り裂く。くすぐったさが身体をもみくちゃにするようだった。だが、さっきまでのずいき棒のような、大きなうねりにはならない。いつまでもいつまでもぎりぎりの際を炙り続けられるようで切れ目の無い快感が続く。彼女の身体はあっという間に汗みずくになっていた。
「もう……駄目。駄目。絶対駄目。……お願い。許して」
「いい子だ。我慢して」
 晃は、手を緩めてくれない。詩織は歯を食いしばった。もう少し。あと少し。あと少しだけ。駄目。我慢できない。出来ないの。晃さん。筆は絶え間なく身体を這いずり回る。逃げられないことが詩織を一層敏感にし、刺激は耐えがたく襲い掛かってくる。少しでも筆から遠ざかろうと、身体に力を込めてみても、筆の動きが一層強く感じられるだけで何の役にも立たなかった。
 いやいや、と詩織は首を打ち振った。小刻みに震える身体は、全身桃色に色づいている。晃は太い筆を床に置くと、細い筆の動きを速めながら、ずいき棒を抜き差しし始めた。強く押し、そして、ゆっくりと抜く。
「あ……ああ……あ……ん」
 詩織の体が捻れる。自由を制限された身体が許される限りの範囲で伸び上がり縮む。晃は、ちらっと聡史の方をみた。彼女の横顔を捉えようと位置を変えたのを確認すると、晃は、抜き差しのスピードを速め、一気に彼女を追い上げた。はっ、はっ、と詩織の呼吸が荒くなる。
「いいよ。詩織ちゃん。逝って!」
「ああああぁっ!」
 詩織は涙を振りこぼしながら、逝った。びくびくと身体が痙攣し、意識が薄れていく中、晃が身体を抱き上げるのを感じていた。
「聡史!」
 詩織が、急激なオーガズムに逝った後、モータードライブが音を止めるのを晃はじりじりと待っていた。聡史のうなずくのを確認して、詩織を抱き上げる。聡史がニッパーを持って急いで近づいてきた。梁に掛かっている縄を次々に切っていく。長い事使い込んだ大事な縄だろうに、晃はまったく気に留めなかった。
とにかく急いで切ってくれ。そう、言われていたとおりに、聡史は全部の縄を大急ぎで切り離す。晃はライトから外れた場所に布団を挽き延べていた。彼女の身体をそこへそっとおろす。残りの縄を、包帯を切るためのはさみを使って、二人がかりで切り解いた。
 身体が自由になると詩織は一気に息を吸い込んだ。手も足も折れ曲がってぐったりとしたままで、動こうともしない。晃は一つ一つの関節の動きに逆らわないように注意しながら、彼女の手足を伸ばして行った。聡史がタオルで彼女の縄の痕を擦り始める。とろんとした表情の詩織は二人のなすがままだった。意識はトランスしたままだったが、手足の先まで綺麗なピンク色なのを確認して、晃は彼女をもう一度抱き上げるとさっきの場所へそっとおろした。新しい縄を振りほどくと、彼女の身体に巻きつけるように散らす。
 フィルムを入れ替えた聡史が戻ってきた時、晃はすでに壁際に下がって座り込んでいた。縄をほどいた後の写真が欲しい。そう聡史が言い出した時、晃は吊りじゃない時に出来ないのかとごねた。だが、結局は晃の方が折れた。詩織は思っていたよりも縄に敏感で、あれほど嫌がっているのに、縛られる事によって快感を得るようになるのも速かったから、吊れば、必ずトランス状態になるだろう。しかも、吊りをすれば、縄の痕はくっきりと深く綺麗に残る。聡史の主張ももっともなのだ。
 撮影が終ると、晃はもう一度彼女を抱き上げて布団の上におろした。大きなシーツをかけて身体を覆ってやり、その下へ手を入れて手首や、足首をマッサージした。
「痺れてない?」
「うん。大丈夫」
 詩織は、素直に彼の手に身をまかせながら、そっと視線をめぐらせて聡史を探す。カメラを片付けている聡史は、横になっている詩織には見つけられなかった。
「呼んでこようか?」
「え……?」
 覗き込んでくる晃と目があって、詩織は赤くなった。
「いいの。大丈夫だから」
「無理しないの。強い縛りだったから、不安になるのは当然なんだから」
 詩織は、溜息を付くと、ゆっくりと首を振った。
「いいの。自分から……来て欲しかっただけ」
「あいつは、そういうところは不器用だから……」
「うん。分かっている」
 手の中で彼女の身体が柔らかく溶けていくのを感じながら、晃は、目を閉じた詩織の瞼からぽろりと滴が零れ落ちるのをやるせない想いで見つめた。



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コメント
この記事へのコメント
 三人の気持ちがよくわからない・・・・。
詩織は聡史が好き。聡史は詩織が好き。
だったら、晃は?
晃はただただ片思いしてるだけ?
それとも詩織の事は、恋愛対象としてみてないの?
おい晃、さやかにだけこっそり物語の結末を教えに来てよ。
もともとあんたが始めた物語でしょ!
2006/07/08(土) 16:25 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
うんうんヽ(´∀`)9 ビシ!!
せつなも拘束された後に腕をマッサージしてもらったり
脚を撫で撫でしてもらったりするのが大好きー。
蕩けそうな気持ちになって凄く満たされるよ。
でもそれは大好きな人の手だからだよね。
詩織ちゃんはきっと聡史さんにいたわってもらいたかったんだよね。
聡史さんめー!!!カメラを手入れしてる場合ではない。
2006/07/07(金) 17:08 | URL | せつな #-[ 編集]
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