fc2ブログ

11、呪縛

ここでは、「11、呪縛」 に関する記事を紹介しています。

 物も言わず、必死にカメラのシャッターを切る聡史がようやく、カメラをおろしてよろよろと立ち上がり、次の部屋へ行くとどさっと座り込んだ。晃は枕紙で、彼女の秘所を手早く拭うと、さっきとは違った意味の集中を見せて縄を解き始める。逝った後の身体はぐったりとして、何もかも縄にまかせきった状態になる。体重がかかって、結び目も解きにくいのだった。
 まず右足を、それから左足を抱えるようにしてそっと下ろすと、巻き付いていた縄が彼女の肌をこすらないように、注意して取り除く。不用意に引っ張ると詩織のように白く柔らかな肌は擦過傷をつくってしまう。それから、しっかりと残った縄の後を軽く揉み解してやってから裾を、手早く足に巻きつけてやった。
 次は吊るしていた腕だ。こっちの方が長い時間縛ったままだった。晃は真剣な表情で、彼女の身体を支え、縄に体重がかからないように持ち上げてやりながら結び目を解いていった。投げ出されるように腕が滑り落ちてくるのを受け止める。ぼんやりと、うつろな目を開けている詩織を抱きとめて、ゆっくりと畳の上に横たえた。乱れた胸元をかき合わせ、見八つ口から手を入れて襟を引いてやる。見苦しくない程度に、着物の乱れを整えてやってから、改めて彼女の手首をとり、赤く残った縄の後をそっと揉みほぐし、腕を擦ってやった。
 初めての緊縛で、強いエクスタシーを無理矢理強要され、気を失ったようになった詩織だったが、優しく介抱されているうちにだんだんと意識がハッキリしてきたらしい。自分の手を握っている相手に焦点が合うと、驚いたように慌てて手を引き抜こうとした。晃は、逆らわず彼女の手を離した。軽くぽんぽんと腕の辺りを叩いてから、おもむろに立ち上がる。
「聡史」
 すっかり呆けてしまった様子の男に親指を立てて合図し、彼がようやく我に帰ってそれを見たのを確認してから、晃は障子を閉めて部屋を出た。二人だけにしてやった方がいいのか、しないほうがいいのか。ちょっと迷うところだったが、自分自身もいっぱい、いっぱいになっていて、平静な顔でそこにいるのは難しくなってきていた。何といっても、晃はまだ若い。





  庭石をたどりながら池の向こうに行くと、庭仕事をする人間のための足洗い場があったので、晃はかがみこんで顔を洗った。それで、ようやく一息つけた。池を眺める人のために点在している縁台に腰を降ろした。
 タバコが吸いたい。縄師になって、女性の近くによらなければならない仕事を始めてから、禁煙した。なのに、無性にタバコが吸いたかった。驚くべき女性だな……。晃はさっきまで彼女の身体の中に入っていた右手を拡げて、その感触を思い出そうとした。ねっとりと絡みつく暖かい彼女の内部。
 あ、やば。勃ってきたのに気が付いて、急いで、その感覚を振り払うように頭を振った。まいったな。この先、冷静に彼女を責められるのか自信が無くなっていた。
 詩織の感じている表情。羞恥の身もだえ。ぴんと張った太腿の内側の筋肉の引きつり。熱い吐息。なまめかしい喘ぎ。そんな物がどっと蘇ってきた。
「聡史の馬鹿野郎」
 晃にはよくわからなかった。自分の一番大事なものを他の男にゆだねる彼の神経が。
 物狂い。
 そう、聡史はそんな男だった。写真のためなら、どんな非常識な事でも平気でやる。突っ走りだすと止まれない。その集中力は、驚くべきものだった。そして、実際に晃が驚嘆するような写真を仕上げて見せた。
 芸術家ってやつは……。
 晃は溜息をつく。何を言っても無駄だろう。聡史はきっとやり遂げるに違いない。だが、その時、詩織はどうなっているのだろう……。
 気が付くと母屋の方から、届けられた弁当とお茶を持った家人がやってくるのが見えた。晃は立ち上がって、家人が離れに近づく前に捕まえる事にして近づいて行った。



↓ランキングに参加しています。応援してね。☆⌒(*^∇゜)v ヴイッ
 


スポンサーサイト
[PR]

コメント
この記事へのコメント
 なるほど・・・。
で、男性にとってどんな女性が忘れられないのかな?
しっかり女であるさやかには解らない。
そこを、教えてくれなくっちゃ!
だ、だれか男の人の気持ち教えて!
お・ね・が・い(-人-;)(;-人-)
2006/07/02(日) 16:34 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
一息つきましたね(*^^)v
あかねは、どんな女性が男性にとって忘れられない記憶を刻むのか?
そこに興味がありますね。。。
また逢いたいと思って欲しいもん♪
さてさて、プレッシャーをかけるわけではありませんが、
続きを楽しみにしてますね@^▽^@
2006/07/02(日) 04:01 | URL | あかね #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する