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7、痛みに囚われる

ここでは、「7、痛みに囚われる」 に関する記事を紹介しています。
  淳一と高原をプレイルームへ残して、部屋へ戻っても、なぜか眠る事ができずベッドの上を転々としているうちに、いつの間にか昔の思い出を反芻してしまっていた。
 契約が切れる時期が近づく頃、お互いの忙しさに自然に距離が開いた。そしてそのまま、本来の性癖に戻るべきだと高原に背中を押された。それ以来、すっかり記憶の底に封じ込めていた。忘れてはいないけど、思い出しもしない記憶。理屈抜きで体が覚えている快楽の、あるいは苦痛の記憶。ひとつが呼び覚まされると 繋がった鎖を手繰り寄せるように、次々と記憶の蓋が開いていく。
 遠くの方で雷鳴が響く。今夜は三日月に違いない。空は暗く。稲光は低く雲を照らす。寝返りをうつ。まどろみが忍び寄るのに任せながらも、僕は記憶をたぐりよせる事をやめられないでいた。

 そう、そのときの高原は、いつになくやさしかった。膝の上に抱き上げて、不安に覗き込む頬をなだめるように撫でられ、コックにリングがつけられる。勃起を維持するためのリング。だけど、今日のリングは革のバンドの上に幾重にも連なって連結されてずっと先の方まで覆う事が出来る形をしていた。それから何度もキスしてくれた。湿った音をたてて重ねるごとに熱くなる体。ゆっくりと頭をもたげその存在を主張し始める体。リングを押し上げていっぱいに張り詰めている。金具が肉に食い込んで鈍い痛みに呻くしかなかった。身じろぎする事もできない。
 そんな僕の締め上げられている場所を何度かなで上げ撫で下ろした高原は、そこへ低周波治療器につないであるピンチをつないだ。何が始まるか分かった僕は、体の血の気が引いていくのが分かった。だが、しっかりと締め付けるリングがこわばりをとく事は許してくれないのだった。治療器を僕の手に押し付けると、高原はやさしい手つきで背中を抱き寄せながら微笑みかけてく る。暖かな息が頬にかかる。
「スイッチを入れて」
 僕は黙ったまま治療器を握り締める。スイッチを入れたらどうなるか、一度、がんじがらめに縛られて責められた事がある体は知っている。腰の辺りがふわふわと頼りなく恐怖で力が入らない。僕は、じっと自分の締め上げられている場所をみつめながら、冷や汗を滲ませていた。
高原はせかさずにじっと待っている。どうやってもやるしかない事を、僕が分かっている事を知っている。恐怖と不安と期待を渦巻かせながら、治療器を握りしめている僕の体を軽く懐に抱きしめて、僕の汗の匂いをかいでいる。恐怖によって滲み出てくる汗の匂い。観念するしかない。大きく息を吸って、スイッチを捻った。体が跳ねる。電気が流れ、針を突き刺すような痛みが、規則正しくパルスに乗って送り込まれて来た。
「あっ。あっ。あっ。あっ」
 彼はやさしく嬉しそうに笑いながらひきつる僕の体を愛撫する。耐え切れず、僕は彼の胸に頬をぎゅっと押し付けた。そんな僕の顔を覗き込み、反対側の頬を そっと指先で撫でながら、眉を寄せている表情をじっとみつめていた彼。突き上げる衝動。緩慢に繰り返される痛み。随分と長い時間そうして穏やかに抱きしめられていた。だが、悪魔はそれで満足するはずが無い。
「六へダイヤルを廻して」
 ぎゅっと目を瞑って、治療器を握る手にもっと力を込めた。もう一度息を吸い込み、崖から飛び降りようとする。だが、その勇気は簡単にはでない。ああ…お願いだ。耐えられないよ。決して口に出来ない哀願を、何度もそう心に繰り返した。彼は、命令を繰り返したりしない。黙って静かに待っていた。
 考えるな。考えるな。自分自身に言い聞かせもう一度息を大きく吸うと、震える手でダイヤルを廻した。熱いともいえる激痛が、急激に凶暴な歯をむき出して襲い掛かってくる。
「あうっ」
 僕は、全身の力を込めて、丸くなり、自分を痛めつけている電流を発している機械を強く握りしめた。脂汗が流れ、体は勝手に捻れる。もう、愛撫を感じる余裕がない。痛い、痛いよ。高原……。
 彼はそうやって、痛みに引きつり悶える体をじっと抱きしめている。僕が喘ぎ、呻き声をあげるのをじっと聞いている。
 しばしそうやって、僕の苦しみを楽しんでからまたおもむろに次の段階へ進むのだ。
「七へ」
 激しく首を振った。痛みは休み無く続いている。こんなに苦しいのに締め上げられたコックはまだその存在をリングの中で主張していた。そのために流れる電流も容赦なく食い込んだ肉の全体へ激しい苦痛を送り込んでくる。もう、耐えられない。これ以上は。もう我慢できない。
「できない。できないよ」
 僕は彼の胸に体を強く押し付け哀願した。
「お、お願い。あなたがやって」
「だめだ。自分でやるんだ」
 悪魔の冷たい声に突き動かされて、歯を喰いしばりダイヤルを廻す。ほんのちょっとの指の動き、それが何をもたらすか分かっていて成すのは本当に辛かった。強くなった電流に体は打ちすえられた瞬間のように跳ねた。
「ひいあっ……!」
  痛い。のけぞる体が危うく膝の上から滑り落ちそうになるのを、彼は力強い腕で引き寄せ囲い込んでくれた。目を開けても溢れる涙に滲んで彼の顔をはっきりと見る事も出来なかった。だが見なくとも分かっている。僕の主である悪魔は嬉しそうに微笑んで、のたうつ僕を静かに見ているのだ。抱きしめた腕に痙攣する僕の体を存分に味わっているのだ。
「ゆ、弓人!……お願い……。」
 すがりつく手をしっかりと握り返してきた彼は、最後に慈悲のようにゆっくりと手を伸ばして、ダイヤルをいっぱいに廻してくれた。
 彼の膝の上で僕は失禁した。

  体は彼の愛撫に反応し
  心は痛めつけられる事に反抗する
  それなのに
  どうしてなのか
  彼が好きだ
  もう、離れられない

 その夜、僕はとうとう眠れず、白々と開け染めていく光がカーテンを照らすのをただ一人見つめていた。


 
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コメント
この記事へのコメント
 せつな!しっかり!
高原のような人非人にくらくらしてちゃダメよ!
この男は次の瞬間には各務を膝の上から突き落とすような
ひどい男なんだからぁ・・・。
あ・・・そうか。せつなはやっぱりひどい男が好き♪
2006/09/09(土) 15:17 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
快楽の次元は違いますが、(こんなにひどくはされたことないけど)
せつなも長い時間、いかせてもらえなくて
いきそうになると強く咬まれて、でも気持ちよくて
カラダが痛いのと気持ちいいのでピクピクしてくる。
そうなった後にいくときってせつなはすごく苦しくて・・・。
ranさんはせつなの手を握ってくる。
「がんばって」そんな風に…。
苦しくしてるのranさんじゃないかーって思うんですけど
でもそれを命綱のように感じて強く握り返してしまう。
だから各務さんの手を最後に握った高原さまに
(〃▽〃)どっきーーーーーーーーん!
いやーんステキ~~♪
2006/09/08(金) 21:30 | URL | せつな #3/VKSDZ2[ 編集]
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