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11、セックスの意味

ここでは、「11、セックスの意味」 に関する記事を紹介しています。
 淳一の事だから、帰ってからもあれこれと、質問してくるのじゃないだろうか……と、思っていたのに、むっつりと押し黙っていて一言も話そうとしなかった。高原の家へ僕が泊まる時に使う部屋へ入ると、まっすぐベッドの所へ歩いて行き、そして、服を脱ぎ始めた。
「シャワーを使わないのか?」
 応えは無く、彼は床をみつめたままボタンを外し、シャツを振りほどくように脱ぎ捨てた。
「淳一?」
 半裸になった淳一は、ベッドの上に掛けてあった毛布と一緒に縁を折り返してあったシーツを掴んで引き剥いだ。ボンとベッドに跳び乗るとスニーカーを脱いで部屋の隅に向かって投げる。そして、もう片方も同じ様に。顔を見ると歯を喰いしばっていた。言いたい事は山ほどあるが、一言も言うまいとしているのが分かった。
 僕は、彼がそうしてひどく急いで服を脱ごうとしている様を横目に見ながら、大きな窓に掛けられた分厚いカーテンをひとつひとつ引いて、部屋をだんだんに薄暗く塗りこめて行った。
 最後のカーテンを閉めてしまうと、部屋はすっかり暗くなり、白々とした彼の体がグリーンのシーツの上にぽつんと座っている 姿がぼんやりと浮き上がって見える。
 上目遣いにこっちを見ている淳一の困ったような表情を眺めながら、同じ様にシャツのボタンをひとつずつ外していった。脱いだ服を椅子の上にふわりと投げる。見られながら脱ぐ事は慣れているけど、こんな展開は初めてだったから、拭いきれない戸惑いを感じていた。
 最後の一枚をソファの上に投げ出し、両手で髪を掻き揚げて見せてから、彼にまっすぐ向き合った。丸くなって座っていた淳一はずるずると後に下がって壁に寄りかかった。どうしたらいいのか分からない、といった様子でこっちを見ている。黙ったままベッドへ近づいていくと、あれほど急いていたくせに、淳一は何とかして逃げられないかというように、ますますぴったりと背中を壁に押し付けた。
 膝をベッドに乗り上げる時かすかにスプリングがきしむ音がした。彼の顔がこわばるのが見て取れる。自分からねだった事などすっかり忘れて、まるで、捉えられた鹿のように丸く見開いた不安げな瞳をこっちに向けていた。
「おいで」
 淳一は一度だけ目を閉じて、大きく息を吸うと、バネのように弾けて、僕の首に両手を廻してかじり付いてきた。ぎゅっとしがみつかれ、腕を廻して抱き締め返すと。すべすべの彼の体がぴったりと僕の胸に押し付けられた。細くて固い骨の感触がすべらかな肉を通して感じられた。まだ若く成熟していない少年の体つき。
 首筋に押し付けられる頬は、火照っていて熱かった。遠くから走ってきたかのように強く速い彼の脈が、押し付けられた体に力強く伝わってくる。何かを話しかけても無意味なような気がして、僕は首を廻すと彼の顎の下に唇を押し当てた。ごくりと、唾を飲むように喉仏が動くぶるっと震えた淳一はそのまま僕の肩を押し倒して体の上に覆いかぶさってきた。


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 本当だったら、あれこれ技巧を凝らしてセックスを堪能させてやる場面だったのかもしれない。いや、だとしても淳一と同じように、僕自身、どう振舞えばよかったのか皆目分からなかった。彼が僕の上になった途端、何も考えず、彼の好きにさせてしまっていた。
 ぎこちなく乱暴な愛撫と口付けと、もどかしさに震える体。彼の唇がだんだんと下へ降りていくのを感じながら、どうするつもりなのだろうと不思議に思ったのは覚えている。「抱いて」と、せがまれて同じベッドに入ったの に、いつの間にか立場が逆転していた。
 彼の手が、確かめるかのように体中を這い回り、押し付けられる体はいよいよ熱くなってくる。ぐいっと体を乗り上げると、噛み付くようにキスしてきた。
「早く。入れてよ。やってくれるんだろ?」
 唇を離すのももどかしげに囁きかけ、喘ぐように開いたままの口を押し付けて僕の口腔の中へごこちなく舌を差し入れる淳一。習い覚えたばかりのテクニックを使って僕を煽ろうとしているが、むしろそのつたなさが新鮮で愛おしかった。
「どちらでも」
 息継ぎのちょっとした隙間に答えると、その意外さに彼は驚いたように顔を引いた。不安そうな目が一瞬泳ぐ。
「そんなのって……あり?」
「別に、どっちでもかまわない」
「あ……」
淳一の目があちこちへ泳ぐ。
「変だよ。やっぱ、それって」
「分かった。じゃあ、後に取っておいていいさ」
 ぎゅっと彼の体を抱きしめてやってから、くるりと体を回転させて組み敷いた。体重をかけないように腕をつっぱっておいて、膝の間に彼の体を挟みこんだ。
「いいんだな」
 こっくりとうなずいた彼の様子は、迷子になった子供の様だった。僕は、約束したとおりに何も考えず、ただ愛しさにまかせて彼を抱いた。


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