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17、逢うという事

ここでは、「17、逢うという事」 に関する記事を紹介しています。
 見ているほうが、ぞくぞくしてくるような手の動きというものがある。高原の手はまさにそれだ。オーケストラの指揮者になればよかったのにと考える。指先で表現する事に秀でているのだ。鍛えられた筋が手首から肘へ向けて美しいラインを描き、ほんのわずかな指の動きにつれて腕全体が語りかけてくる。
 愛撫されている方には、そんな事を考える余裕なんて無い。その手の動きを見る余裕も無い。今の淳一なんか目隠しされて真っ暗の中でただ待っているのだから。だから、この手の動きは他人に見せるためのものではないのだろう。
 高原の指が、淳一の背中を這っていく。歯を喰いしばり、かすかに震えながらじっとその手の動きを味わっている淳一は、 首筋からほんのりと赤くなってくる。だんだんとその紅の色は広がり指先までじんわりと染めていく。しっとりと汗ばんでくる体はなまめかしく手の動きにつれてうねりうごめく。
 どこまで耐えられるか…。そんなに長くは無い。いずれは本能を押し殺せなくなって声が洩れる。喘ぎがあがる。縛められた縄を喰いこませ。必死に体がその手から逃れようともがく。音をあげて、淳一が懇願するまであっという間。だが、それからが長い。いつになったら終りが見えるのか分からないほど長い。高原は、啼いている相手を延々といたぶるのが好きなのだ。
 淳一は若いから体力はあるけれど、それだけに我慢はきかない。いく事に、頭が侵食され、思い通りにならない体に半狂乱になるはずだ。どうやら、高原はそんな様子を僕に余す所なく見せ付けたいらしい。
「あっ……つ……はあぅ……や……」
 湿っていて甘い。相手の脳を焼きつかせる。もっと、泣かしてやりたい。もっと、虐めてやりたい。もっと……。
 高原はたっぷりと彼の体を楽しんで、椅子の上で煽られて熱くなった体をもてあます僕の方を見やりながら、ズボンのジッパーを降ろした。取り出したものを 押さえつけられ逃げる事の出来ない体に押し付ける。じわじわと侵入してくる痛みに、慣らされても狭い淳一の体が波打った。かすれたような悲鳴…。 揺さぶられる体。空気を求めて開かれる口。知り尽くしたやり方で高みに追い上げられて、尚、許されず揺れる淳一が、ぐんっとのびあがった。背中を汗がつたい流れ落ちる。
「ふ……あっ……クッ・う……」
 僕が立ち上がると、椅子がぎしっと音を立てた。高原にすっかりと追い詰められ、酔わせられ、我を忘れ始めていた淳一が、ぎくっと、体をこわばらせた。
 分かっているんだろう、淳一。高原がプレイルームから外へお前を連れ出した目的を。目をそらして、知らないふりをしてもしかたない。どうしたって、いつかは見ないとならない。
 頭の後ろにある目隠しの結び目に手を伸ばすと、静かに引いた。やわらかくしなやかな絹は、逆らわずにするするとほどけ体の上を滑り落ちる。淳一の見開かれた黒い瞳が現れる。一瞬の苦痛。戸惑い。羞恥。そして絶望とあきらめ。透明な涙が盛り上がり、膨れ上がり、頬をころころとつたわって流れて行く。
 僕はかがんでその目の奥をじっと見つめた。そして彼の頬を両手でそっと包むと、目を閉じて顔を傾け、彼にくちづけた。


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