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第五部・2

ここでは、「第五部・2」 に関する記事を紹介しています。
 注文された貞操帯が出来上がってきたのは、夏の終わりだった。私はその翌日、彼女を伴って王都へ帰る事になっていた。そして、彼女を伯爵の館に預け、学校へ戻るのだ。毎日毎日抱きしめ、確かめ、思うままにお仕置きを繰り返した相手を手放して、灰色の学問の塔へと戻っていく事を考えると味気ない想いがするのも致し方なかった。
 だが、その反面、私がいなくなった後の彼女がどれほど辛い想いをするかという事も、たやすく想像できる事だった。マリエーヌは、私が学問所へ戻っていく事を不満に思っていただろう。
 ハルトヴィックが差し出した銀色の細かい飾り彫りで美しく飾られた貞操帯をマリエーヌは不機嫌な顔でじっと見つめている。
「鍵は二つ、一つは、伯爵家にお預けしてまいりました。もうひとつは、ボールドウィン様に」
 私は黙って、鍵を受け取る。
「マリエーヌ、着けてみてごらん。身体に合わないと困るから…」
 眉を寄せていた彼女はつんと顎を上げて、顔を背けた。
「彼のいる所ではいや」
 結局は身体を見せなくてはいけない事は分かっていても、この間のいきさつからすっかりとハルトヴィックに対してくったくが出来てしまったマリエーヌは、わざとらしくドレスの裾をさばいて、つんけんと背中を向けてみせる。
 私も、正直、彼に彼女をゆだねる事には抵抗があった。だが、だからと言って、このままにするわけにもいかない。
「ハルトヴィック。ちょっと外してくれないか。着け終わったら呼ぶ事にするから」
 私は、ベルを鳴らして小間使いを呼ぶと彼女に、ガウンを持ってくるように言いつけた。ハルトヴィックは、おとなしく下がっていく。
「マリエーヌ、さあ、ドレスを脱いで」
 ちょっと唇をとがらしたまま、彼女は私のそばにやってきた。背中に並ぶ、たくさんのボタンをひとつずつ外してやりながらそっと身体を寄せ合う。ただ寄り添う彼女のぬくもりが、それだけで私の欲望を呼び覚ますのを私は切ない思いと共に受け止めた。離れている間、どれほどに淋しい気持ちがするだろう。
 腰の辺りまでボタンを外すとウェストを飾る絹のサッシュを解いてやった。彼女は愛らしい動きで腰を振って、ドレスを脱ぎ落とす。小間使いがガウンを持って現れた。そして、彼女が脱ぎ捨てたドレスを拾うと、丁寧にしわを伸ばしながら椅子の背に掛けてくれた。
「ありがとう。後は私がやるから」
 ちらり、と、小間使いは詮索するような視線を私に向け、頬を赤く染めて退出していった。お仕置きの音や泣き声は館中に響いていたし、身の回りの世話をする小間使い達は彼女のお尻の傷跡を眼にする事もあるだろう。昼間から応接間で服を脱ぐなど、貴婦人にあるまじき事を女主人に要求する私に対して、使用人たちが明日からあれこれと好色な噂をするであろう事も推測できた。苦笑しながら、下着を脱ぎ捨てて行く彼女の裸の背中にガウンを着せ掛けた。
 彼女の前に膝をついて屈み、冷たい金属の檻を足の間にあてた。私の肩に手を乗せて脚を開き腰をかがめた彼女は、ひやっとした金属の肌触りにさっと鳥肌を立てて、身体をすくめた。
「冷たい」
「そうだね」
 こんなものを腰につけて生活して、身体に悪くは無いのだろうか。金具を廻し、鍵をかける。カチリという音と共に彼女はその檻の中に閉じ込められた。心細そうにうつむき、その金属に手を這わせてみる彼女。
「重い?」
 声も無くただ黙ってうなずく彼女の瞳が涙で潤んでいるように見えて、私は慌てて立ち上がった。彼女を抱きしめて頬に頬を合わせる。
「どうしたの?マリエーヌ。貞操帯をつけるのは、いやかい?」
「わ、わからない。だって、なんだか……」
 彼女の頬をほろほろと透明な滴が零れ落ちた。彼女は、知っていたのだろうか。この金属の檻がどれほど彼女を縛りつけ苦しめる事になるのか。
 私は分からなかった。私に分かっていたのはただ、腕の中の子供が頼りなく、心細そうに泣いているのが痛ましいという事だけだった。椅子に座り、膝の上に抱え上げた彼女の身体をゆっくりとゆすってやった。彼女の身体がぬくもりを取り戻し、頬がほんのりと色づくまで、それから、そっとその唇をついばんだ。
「これをつけていると、誰も私にお仕置きできないね」
 マリエーヌは私の身体に手を廻したままでささやいた。
「これからは、貴方の身体は私の物なのだよ。誰もふれる事はできないし、お仕置きをする権利も私だけの物なんだ」
「ああ」
 ようやく、マリエーヌの頬に微笑が戻ってきた。
「貴方は、私の物。そして、私は、貴方の物なんだから」



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コメント
この記事へのコメント
祝再開ヽ(´∀`)9 ビシ!!
祝貞操帯…((;゚Д゚)ガクガクブルブル
堪らなくなって上から掻き毟っても…
なんの快楽も得られなくて。
痛みが欲しくってもその感覚が
肌に届くことはないんだ…。
元祖放置プレイ?!(違。
ほっそーい棒とかでイジイジできるかしら?
ああ、あのハルトヴィックがそんなものを作る分けないかぁ!
ハッ! Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
ハルトヴィックこっそり鍵を自分の分作ってないですよね?!
もしくは
「ここの薔薇とこちらの百合の紋章を重ねると…フフフ…」
「きもちいいですか?僕だけがこの隙間を作って上げられる…」
なーんていう仕掛け付きとか・・・。
2006/11/02(木) 14:35 | URL | せつな #3/VKSDZ2[ 編集]
 いいかも。
続き、せつなが書いて。
さやかは頭がからっぽじゃー。
金・土・日とお休みして英気をやしないまーす。
2006/11/02(木) 15:22 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
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