御伽話・９

どうしても忘れら無い女がいます
私がお城にご奉公にあがっていた折に
遠国からお越しになっていた
美しい伯爵夫人のことです

そのお方は神々しいほどに美しく
そして凍るほどに冷たい方でした
私達の粗相を決してお許しにならず
ひどい罰をお与えになる方でした

侍女達は震え上がり
決して御心を煩わす事の無いように
細心の注意をしてお仕えしておりました
けれど、私は・・・

私はその方の罰が欲しゅうございました
冷たい目でさげずまれ
鞭で打ち据えられたかったのです
辱めをうけ、ひざまずき
あの方のお姿を見上げたかったのでございます

私の浅はかなたくらみは
あの方を欺く事などかなうわけはありません
あっという間に見透かされ
それはそれはひどくお叱りを受けてしまいました

その時の私の喜びを
皆さんはお分かりくださいますでしょう？
天にも昇る心地とはあのような事を申すのでありましょう
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いつも、私は思い返しております
あの方が再びこの国に帰り来て
私の名を思い出してくださらないかと