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7、キックアウト

ここでは、「7、キックアウト」 に関する記事を紹介しています。
 晃がやりたいっていうなら、やれば分かるような気がするなら、試しに「SM」してみよう。別に、やってみて、ダメだったら、やめればいい。やってみてなにも分からなくても今と変わらない。志方にとっては、「SMしてみる」って、言う事は、その程度の感覚しかなかった。
 反対に「Mの方やってよ」と、言われても「ああ、いいよ。」と、答えたかもしれない。会社で晃に手首を縛られた時も、深く考えもせずに腕を差し出した。
 ただ、風呂場での乱暴なセックスの合間に、閃くように何か見えたような気がしたのも本当だった。楽しむことや感じる事、技巧を凝らす慣れた手順。そんなものを全部起き捨てて、ただ、気持ちをぶつけあった。

「うーん・・・、けど、なんか違うような気もするしなぁ・・・・。」
 正直に言うと、SMが何なのか全く見当がついていない。今、彼が見ているのは、会社帰りに寄ってきたレンタルビデオで適当に2、3本。借りてきたSMビデオだった。
 お手軽に近場で済ませたために、もちろん普通の男女のカップルだ。日頃、視界に入ってきても、大して気にも留めないし、むしろ意識的に避けて来たためによく見たこともない裸の女性が、パンパンに膨れた胸を縄で絞り上げられて、男の上で腰を弾ませている。
 ものすごく、嫌悪を感じるほどでもないが「あんあん」うるさいビデオだなと思う。さっきまでは、胡坐に縛られた身体を転がされたまま、ヴィンヴィンと唸るバイブを抜き差しされて、やっぱり「あんあん」言っていた。
 縛られているだけで、普通のセックスだろう。むしろ、女を感じさせることに躍起になっている男と、与えられる物に貪欲な女が、お互いにもつれ合っているだけで、その本質は、快楽を求めるごく当たり前の行為のように思える。
 リモコンでしばしば早送りしているうちにあっけなく終わってしまった。がっくりと脱力した志方は、二本目のビデオをデッキへ突っ込んだ。さっきとほとんど変わらない導入部分は、最初から早送りですっとばした。

 一本目よりもスレンダーに見える女性が、手首を後ろに押さえつけられている所に来て、ようやく志方は普通の再生スピードに戻した。肩を揺すって泣いている女性の身体に縄をかけ回す男。
 なんかおかしい。相手が本気で逆らっていたら、こんなふうに縄をかける事は出来ないような気がする。まず、横倒しに転がられたら、終わりなんじゃないか。まあ、AVなんだから、お互いに協力し合っての撮影なんだし、そんな所を突っ込んでも仕方ない。
 ゲイ物のビデオだって似たり寄ったり、ホントのところ、別にストーリーなんか見ちゃいないから、もっといい加減な展開だったりするのに、どうでもいいように思っていた。男女になった途端に、不自然に感じるのは、冷静に見ているせいなんだろうか。

 部屋を暗くしているせいで、テレビ画面の明滅につれ、部屋が照らされたり暗くなったりする。志方は椅子の背によりかかってぼんやりと、画面の中の男のする事を見つめていた。後手に縛りあげられた女性の身体が、天井から下がっている縄に繋がれる。男は房のついた鞭を取り出して、女の尻を叩き始めた。
 悲鳴を上げて、女性の身体がくるりと回る。立たせておきたいなら、なんで後ろ手に縛るのかよく分からないな。俺だったら、腕は一つにくくってつるした方がいいような気がする。いや、多分、あの縄が問題なんだな。ぐるぐる巻きにする事が、肝心なんだろう。
 そんな事を、とりとめもなく考えているうちに、女の尻がだんだん紅くなってきた。ぺらぺらとした、鞭で打たれても腫れてくるらしい。ひいひい泣いている女の「性別」が、いけないのか。それとも演出が悪いのか。志方は溜息をひとつついて、目を瞑った。

 今、見たばかりのビデオの記憶を追い出して、晃の身体を思い浮かべる。どこから見ても、柔らかいところのない、細くしなやかな身体。手首を縛って吊り上げると、浮いてくるはずの筋張った筋肉。あいつは、こんなに声を上げたりしないだろう。いや、痛ければやっぱり叫ぶのだろうか。多分・・・。
 縛られるのは嫌なはず。してみたいって言いだしたくせに、縛られた自分を容認できず、嫌悪に眉をしかめながらも、黙って素直に打たれるのだろうか。俺は嫌じゃない。だが、あいつはきっと心底それが嫌なんだ。だからこそ、興奮する。だからこそ、怖しい。
 志方は、床に転がされ、落ちてくる蝋に仰け反って悲鳴を上げる女を背にしながら、パソコンのスイッチを入れた。まず、縄だ。それから鞭。そして、蝋燭。多分、他の道具も。どうすればいいのか書いてある本も必要だろう。ノウハウのビデオとか出ているといいけどな。



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