届いた道具を前に晃は、困惑の表情だった。ひとつ、ひとつ、手に取って、まるで重さを確かめるように軽く揺すってみる。それから、まじまじとその形を見つめ、ゆっくりとひっくり返す。まるで、カードをめくるように、裏返すと全く違う物になって、自分を驚かすのではないかというような疑いと、いくばくかの期待。だが、表だろうと裏だろうと、道具はただの道具で、何も変わりはしない。
晃だって、この道具をどう使うかについては、ある程度の知識はある。今までセックスした相手は、誰もこんな道具を使わなかったけれど、自分の身体に訊いてみれば、何となく、痛みや快感をもたらすシーンを想像することもできる。だが、それが、ほんとに自分の望んでいるものなのかと思うと、まったく、判断がつかなかった。
晃は、内心、自分がそういう道具を前にしたら、興奮してくるのではと思っていた。自分にそういう性癖があるのではと、考えていたのだから。そうじゃなければいいという願いとは裏腹に、ちょっとは期待もあった。
いままでの、志方とのセックスは、至極ノーマルであったけど、充分満足のいくものだった。彼の事は、今まで付き合った男たちや、ただ、身体の中を通り過ぎて行っただけの相手よりも、ずっと好きな気がしていた。
それに何だかめんどくさい。昨日の事のように自分を苛んでいた感覚が、日常へ戻る事で薄れ始めると、自分から言い出した事だったのに、もうやらなくてもいいのでは・・・という気持ちが頭をもたげてくる。
それから、オフィスで相手の腕を縛った時の事を思い出す。志方の前で服を一枚ずつ脱いだことを。彼の動けない身体に乗り上げた時の気持ちを。刺激的なセックスをして、受け入れてもらって満たされた。これは、それとは違うのだろうか?考え込み、思い出そうそ釣ると、よみがえってくる、ぬらぬらと纏わりつく嫌悪感が、その道具の上に重なって、晃は緩く首を振った。
志方が好き?それとも失う事を怖れるほどは、好きじゃない?
そばにいると、落ち着く。それに、楽しい。暖かく、静かで、のんびりした時間。そんなもの以上の何かを求める必要があるのか?志方を自分の闇に引きずり込もうとしているのでは?
どこか足もとが頼りない。何もかもだいなしにしようとしているのではないか。晃は、ぶるっと身を震わせた
顔を上げると、そんな晃の表情を見つめていたのか、不思議そう志方の瞳と視線が合った。
「で、どうするの?」
志方へ向って質問する。ずるいやり方だ。晃は、ふと後ろめたくなる。なにもかも、志方に押し付けようとしている。これから起きる事をみんな。自分の中に起きる事をみんな。どうみたってノーマルで、どう考えたって、普通。そんな相手に何を要求しようとしているのか。
「脱げよ。」
志方は、さらりと、晃の、ためらいを起き捨てて、目の前にある、ラインを飛び越えた。
多分。見えてない。なにも、見えてない。見えない彼を押しやって、知らぬ間に、そこを超えさせる。そんな事をしていいのか。好きな男にしてもいいのか。
晃は、なぜだか、自分が考え、とまどい、迷っている事を志方に悟られたく無かった。だから、殊更、なんでもないふうを装って、何も考えてない様子を繕って、立ち上がると服を脱ぎ始めた。
晃が服を脱いでいる間に、志方は、晃の前に広げた道具を一つずつ拾い、ローテーブルの上に並べ始める。
「脱いだよ。」
うん、と、志方がうなずいたような気がする。
あまりにもかすかで、晃にはよく分からなかったけれど。
6組ほどあった縄の、ひと束を取った志方が立ち上がった。晃と視線が同じ高さになる。肩に手を乗せて、晃の身体少し回すと、志方は何気ない様子で縄の結び目を解いた。そのくるりと丸くなった輪の中にあった、黒いしるしを付けて、結びこぶをつくってあるそこをつかんで縄を振った。
縄が解けた。のたくるようにして、空間に拡がった。たわんで、弧を描き、それから、波打った。ぱらんと、床を叩き跳ねた。一緒に、晃の胸の中で何かが跳ねる。晃は、心臓の鼓動が早まり、胸の中に何かが膨らんでくるのを感じていた。

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晃だって、この道具をどう使うかについては、ある程度の知識はある。今までセックスした相手は、誰もこんな道具を使わなかったけれど、自分の身体に訊いてみれば、何となく、痛みや快感をもたらすシーンを想像することもできる。だが、それが、ほんとに自分の望んでいるものなのかと思うと、まったく、判断がつかなかった。
晃は、内心、自分がそういう道具を前にしたら、興奮してくるのではと思っていた。自分にそういう性癖があるのではと、考えていたのだから。そうじゃなければいいという願いとは裏腹に、ちょっとは期待もあった。
いままでの、志方とのセックスは、至極ノーマルであったけど、充分満足のいくものだった。彼の事は、今まで付き合った男たちや、ただ、身体の中を通り過ぎて行っただけの相手よりも、ずっと好きな気がしていた。
それに何だかめんどくさい。昨日の事のように自分を苛んでいた感覚が、日常へ戻る事で薄れ始めると、自分から言い出した事だったのに、もうやらなくてもいいのでは・・・という気持ちが頭をもたげてくる。
それから、オフィスで相手の腕を縛った時の事を思い出す。志方の前で服を一枚ずつ脱いだことを。彼の動けない身体に乗り上げた時の気持ちを。刺激的なセックスをして、受け入れてもらって満たされた。これは、それとは違うのだろうか?考え込み、思い出そうそ釣ると、よみがえってくる、ぬらぬらと纏わりつく嫌悪感が、その道具の上に重なって、晃は緩く首を振った。
志方が好き?それとも失う事を怖れるほどは、好きじゃない?
そばにいると、落ち着く。それに、楽しい。暖かく、静かで、のんびりした時間。そんなもの以上の何かを求める必要があるのか?志方を自分の闇に引きずり込もうとしているのでは?
どこか足もとが頼りない。何もかもだいなしにしようとしているのではないか。晃は、ぶるっと身を震わせた
顔を上げると、そんな晃の表情を見つめていたのか、不思議そう志方の瞳と視線が合った。
「で、どうするの?」
志方へ向って質問する。ずるいやり方だ。晃は、ふと後ろめたくなる。なにもかも、志方に押し付けようとしている。これから起きる事をみんな。自分の中に起きる事をみんな。どうみたってノーマルで、どう考えたって、普通。そんな相手に何を要求しようとしているのか。
「脱げよ。」
志方は、さらりと、晃の、ためらいを起き捨てて、目の前にある、ラインを飛び越えた。
多分。見えてない。なにも、見えてない。見えない彼を押しやって、知らぬ間に、そこを超えさせる。そんな事をしていいのか。好きな男にしてもいいのか。
晃は、なぜだか、自分が考え、とまどい、迷っている事を志方に悟られたく無かった。だから、殊更、なんでもないふうを装って、何も考えてない様子を繕って、立ち上がると服を脱ぎ始めた。
晃が服を脱いでいる間に、志方は、晃の前に広げた道具を一つずつ拾い、ローテーブルの上に並べ始める。
「脱いだよ。」
うん、と、志方がうなずいたような気がする。
あまりにもかすかで、晃にはよく分からなかったけれど。
6組ほどあった縄の、ひと束を取った志方が立ち上がった。晃と視線が同じ高さになる。肩に手を乗せて、晃の身体少し回すと、志方は何気ない様子で縄の結び目を解いた。そのくるりと丸くなった輪の中にあった、黒いしるしを付けて、結びこぶをつくってあるそこをつかんで縄を振った。
縄が解けた。のたくるようにして、空間に拡がった。たわんで、弧を描き、それから、波打った。ぱらんと、床を叩き跳ねた。一緒に、晃の胸の中で何かが跳ねる。晃は、心臓の鼓動が早まり、胸の中に何かが膨らんでくるのを感じていた。

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この記事へのコメント
発見が遅くて申し訳ありません。
ありがとうございます。
すっかり更新が止まってしまっています。
スパンキングとSMの方で
暇をつぶしてくださいませ。
ありがとうございます。
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たまに拝見しています。継続して日記凄いです。私も頑張ります。最近寒いので体に気をつけて下さい。応援しています。
ありがとうございますヾ(@⌒▽⌒@)ノ
なかなか更新できてませんが
見捨てないでよろしくお願いします。
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こんにちは、よく見に来てます。また遊びにきます☆
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