「どうした?」
おもしろがっているような、揶揄しているような、口調のまま、志方が、身動きならない身体に体重をかけてのしかかってきた。相手の着ている服が身体をこすって行く感覚。ずっと分けあって来たものとは違う、まるでその部分だけ切り取られたような快感が身体を駆け巡る。
相手が冷静であればある程、いたたまれなさが、身の置き所の無さが、そして、それでいて何も変えようがないという事が、じりじりと身の内を焼き始め、じっと、ただ堪えている事が辛くてならない。晃は、締め付けが酷くなるのを承知の上で、縄の中で身悶えた。
煽るように、ぎしぎしと、縄の音を立てて、逃れようとする。逃れられないのが分かっていて、抵抗する。臨んだ枷に向かって、自分の身体を押し付けて行くように。
欲しい。欲しくない。耐えられない。それだけだ。欲しがってる訳じゃない。耐えられないのに、逃げられない。逃げられないから耐えるしかない。逆流し、溢れだす。一つの刺激が倍々に加算されて行く。ただ、縄の中に閉じ込められているだけで。
そうして、逆らう事が、喘ぐ事も、声をあげる事も、なにもかもが、屈辱のような気がする。ただ、じっと黙って、望んだものを受け取れると思っていたのに。
望んだ?望んでない。知りたかっただけだ。あれが何だったのか。自分が何なのか。留まり、考えようとすればするほど、膨れ上がってくる快感にすべて押し流されて行く。
身体の割れ目に添って冷たいものが流れた。ローション。ぬめりを拭い、なすりつけ、塗りこんで、志方が慣れた手順で愛撫する。いつものように、いつもと同じように。
だが、晃の身体はすでにいつもの状態じゃなくなっていた。自分で制御できないものが膨れ上がり、ぎりぎりの所で縄に堰きとめられている。身体がはちきれるようにいっぱいになって、これ以上は耐えられない。耐えられない、と、心の中で繰り返すものの、耐えるしかないのだった。
膨れ上がってくるものは、止まらず、じりじりと、その体積を増し、彼の身体を内側から押し上げ続けている。これをどうにかしてくれ。このままではいられない。晃は縄の中で身悶える。だが、縄はぎしぎしと音を奏で続けるだけ、志方は何も言わずに彼の身体の中を蹂躙し続けるだけだった。
「もう、だめ・・・。」
ついに、耐えきれず晃は、声に出した。他に、この事態を変える方法がない。ギブアップする事は、相手が志方でも、どこか屈辱的で、自分の声が、快感に塗れて上ずっている事が恥ずかしく、言った傍から、歯を食いしばった。セックスの時にあんあん、声をあげるのなんて大嫌いだ。どうしての、ああしての、もっとだの、いいとか悪いとか、晃はそれを相手に言うタイプじゃなかった。
「なにが?」
「なにって・・・・。」
説明しようがない。晃はじれったさに、縄をふりほどこうとするように、身体を動かした。もちろん、少しも緩まず、姿勢も変えようがない。ただ、口に出せない分を身体で表した。それだけだった。
「やめて欲しい?」
もうこれ以上懇願させるな。晃は、唇を噛んだまま必死に頷いた。ねっとりと、奥へ、入りこんできては、引いて行く、志方の手と、それを煽るように、宥めるように、あやすように、周辺を撫でまわす反対の手が、尚一層、晃の弱いところを責め立てる。
「う・・・・あ、ひぃ・・・・・・。」
もう一度訴えようとして、晃が口を開けた時に、その唇から洩れたのは言葉ではなかった。自分の、鳴き声を聞いて、晃は恥ずかしさに全身が熱くなる。こんなこと、相手を煽るために声をあげるならともかく、制御できないで鳴いてしまうなんて、歯を食いしばって、必死に声を押し殺そうとするが、何度も何度も、繰り返される、手淫に限界線に宙づりになっている晃には何をどうしようもなくなっていた。
「やめて・・・もう・・・。」
必死に言葉を絞りだす。息を吸い込むのもままならず、周囲が虹色に、ぼやけてくる。
「やめてやらない。」
晃は、志方の、優しい声をその耳に聞いた。
「ばかだな、晃。そのために縛ったのに、やめたりする訳ないだろう。」

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2012/10/29(月) |