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20、だれでもいいの?

ここでは、「20、だれでもいいの?」 に関する記事を紹介しています。
 

 針が全部抜かれると。泣きじゃくる俺を高原は足の拘束だけを解いて抱いた。各務はいつの間にか、からころとキャスターを押していなくなっていた。俺を置いて。高原の腕の中へ俺を残して。俺は高原に抱かれながら「耐えられない。もう、我慢できない。」と、切々と訴え続けた。

「頭が痛い。」
「あんまり、わあわあ、泣くからだ。」
 次の週不機嫌な俺を前に、各務はまったく変わらない態度で俺と食事をした。俺は、悔しくて返事をしなかった。
「ちんちんが痛むのか?」
「ばっ・・・・!」
真っ赤になった俺をくつくつ笑う。
「あれって・・・・起たなくなったりしないの。」
「深く刺したりしなかっただろう?先っちょをちょっと縫っただけじゃないか。俺を信用してないな。」
 やっぱり、こいつは医者なんだ。俺はため息を付いた。俺が高原の手の上で泣いても喚いても、よがっても・・・。こいつにとって何にも変わらないんだ。俺はこいつの患者に過ぎないんだ。

 デモ、各務ハ男ヲ啼カセルノガ好キナンダ・・・・。

 各務は恋人とかいないんだろうか。めったに出掛けないし、家にすらたまにしか帰っていない。胸がチクンと痛んだ。各務が家に帰っていると俺が思っている時、本当に家に帰ってるかどうか俺には分からないのだ。病院に出勤してると思っている時間だって・・・。急患で呼び出されたと思っている時間だって、恋人からの電話かもしれないんだ。もしかしたら・・・そう、家で待っている誰かがいるのかもしれない。だって、各務はいい男だった。金もあるし。職業もいい。人当たりだって、とっても変態のサディストなんて思えない。もしかしたら、綺麗な女の人が恋人なのかもしれない。思わず、ため息がこぼれる。

 イヤ、男ノ恋人ガイタッテ不思議ジャナイ。

 針の刺された乳首がうずく。疑心暗鬼になって、俺は各務に八つ当たりをした。話しかけられてもむくれて返事をしてやらなかった。各務はけろっとして、俺をいつもの二倍は念入りに「拡張」した。

 こんなのって!こんなのって!「フェア」じゃない!!

***************************

 その週、高原は木曜日だというのに前触れもなくやってきた。その上、連れがいた。黒い背広の若いやさ男。茶色の髪が柔らかくカールして、くるりとした瞳をして笑う男。
「お前の前の愛人だ。名前は香川博之。」
なんて、紹介の仕方なんだ。俺は、地面にめり込みたくなってしまいたかった。

 だが、ぼやいていた俺は、次の瞬間、まったく不意打ちに、ショックで打ち倒されていた。めまいがした。各務がにっこり笑ってその男の手を握ったのだ。
「やあ。ひろ、よく来たね。」
 俺は、よりかかっていた椅子の背を握りしめた。腹のそこから冷たい塊が突き上げてくる。嫉妬。それとも憎悪?ちくしょう!各務。各務。やめろよ。そんなに優しい瞳でそいつに笑いかけないでよ。そいつの手を握らないで。なんで、肩に手を廻すの。嫌だ。どこへ連れて行くの?

 俺は一人取り残された。

 その日各務は、香川博之の後ろの準備をして、高原は俺のいる屋敷でそいつを抱いたのだった。




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