「今度は足の付け根に」
付け根のくぼみの一番柔らかいところを各務がアルコールで消毒する。俺は、無駄だと分かっているのにもがいてしまった。
「い、嫌だ。やめて」
腰を捻り逃れようとするところを押さえつけられて刺される。
「あっッ」
痛い。探るように少し刺してゆっくりと抜きかけてもう一度深く刺してくる。俺は硬直して、震えるばかりだった。針が深く入ってくると、怖くて身動きする事も出来なかった。先ほどとは比べ物にならない痛みに、あっという間に全身から冷や汗が噴出す。肩で息をしても、息苦しい。二本目がもぐりこんで来る。俺は首を捻り、高原の手に頬を押し付けた。
「い、痛い」
高原の手が優しく頬を撫で上げる。溢れる涙を拭う。
「いい子だ。我慢して」
いい子になんかならくったっていい!……痛みに体がくの字に捻れる。俺は無意識のうちに高原の手にくちづけていた。なぜだろう。俺に痛みを与える手。俺を自由に打つ手。俺の上に君臨する手に。俺は自らひざまずいて許しを請うている。しかも!しかも!各務の目の前で!俺の恋した人非人の前で!
針を突き立てる作業は続く。右の足の付け根に三本。左の足の付け根に三本。
「乳首に」
嫌だ。首を振る。額を汗が流れ落ちる。痛い。耐えられない。やめて。やめて。各務。やめてよ。なんで?俺に興味なんか無かったはずだろう?嫌だ。触らないで。高原が見ているじゃないか、各務。各務。先に穴の開いたハサミのようなもので乳首が挟まれる。挟まれてきつく固定されるだけでおそろしく痛い。それなのに、その上に両側の穴を突き通すように針が突きたてられる。俺は口をあけて叫んだ。その口に高原が手近なシーツを突っ込んだ。乳首を貫通するまで、激痛は続く。涙が溢れる。もう、逆らおうとする気力も無い。ただ、力なくもがくだけ…。拘束具に捉われた体が逃れようとする無意識のあがきに左右に引き裂かれる。
挟んでいた止めの金具が外され、二つに分かれて針をくぐると、乳首の上に針は残された。もう…動けない。恐怖に震えながら、ただじっと終わるのを待つだけ。
反対側が同じように摘まれる。涙が滂沱として流れ続けていた。痛い。嫌だ。各務。やめて。首を激しく振った。布を通してくぐもった声しか出ない。各務は、淡々と作業をこなし。俺を泣き喚かせた。
「亀頭に刺せるか?」
「はい。大丈夫です」
え?嘘だろう。俺は、驚きに一瞬凍りついた後、本気で狂ったようにもがいた。さっきまで、刺さったままの針が怖くて身じろぎも出来なかったのに。
「…各務。乳首を残していったん全部抜いてくれ」
「分かりました」
ほとんど抑揚の無い声が、遠くから聞こえる。各務は傷口を一箇所ずつ消毒しながら針を抜き始めた。肉の中を針がもう一度移動して戻っていく。俺は、もう息も絶え絶えだった。痛みだけが問題なんじゃない。心理的な恐怖が俺を責めさいなんでいるんだ。それに、あまりにもやさしい高原の手。髪を撫で、頬をなぞる…。冷えた各務の手とは対照的に、暖かく優しい俺を買った男の手。
高原は俺の口からシーツを引き出すと深くくちづけた。俺はうまく息が出来ない。苦しさから逃れようと身もだえする。唇が離れ浅くついばむ。頬へ。瞼へ。唇が慰めるように移動していく。各務は俺のリングで絞り出されたままの硬直したペニスの頭をカット綿で念入りに拭く。俺は胴ぶるいが止まらなかった。
「痛いのは一瞬だ。ちょっと我慢するんだぞ」
いやいやと子供のようにむずかる俺の髪を高原は梳った。ぽんぽんと頬をてのひらではたく。嫌だ。お願い。お願いだから。何でも。何でも言う事きくから。しないで。しないで。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
俺は体を突っ張って絶叫した。
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