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22、やっぱり、ため息

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 雨の音がしていた。俺は高原に腕枕をされて、その胸に寄りかかっていた。肩に廻された腕の重みが心地よい。
「怒らないの」
 高原の胸におでこを付けたまま囁く。
「怒るさ。お前は俺のものだ」
 やっぱり。……なにが「大丈夫。大丈夫。」なんだよ。思わずためいきが洩れる。最近の俺ってためいきばかりだ。
「各務さんって、どうしてここにいるの?」
「あいつは、俺が外に作った最初の愛人だ」
「……嘘」
「本当だよ」
 頭の上に乗せられた顎がもごもごと動く。高原が各務を抱いているところを想像したが……まったく実感が湧かなかった。
「だって、各務さんは、財産があるって言っていたよ」
「お勤めが終わる時に俺が分けた」

 ううう……なんてこった。
「大学に行って医者になりたいって言うから、体を買った。同じ8年」
「…じゃあ。じゃあ。この間の人も?」
「そうだ、借金を払って、学費を出した。あいつは4年。面倒見た」
「……男が好きなの?」
 あきれたような沈黙があって、俺はつい言い過ぎたかと首をすくめた。
「妻に、男なら、我慢しようと言われたんでね」
「え?」
「愛人を作るなら男にしてくれ。女は我慢できないって言われたのさ」
 信じられなくって、首を振った。
「奥さん…愛してないの?」
 いや、反対。奥さんの事愛しているの?想像もしていなかった。こいつが誰かの事を愛していたり、その相手と何かの関係を持っていたりしているなんて。
「愛してるさ」
 嘘。嘘。嘘だ。そんなの耐えられない。他の女を愛している手で俺を抱くなんて…そんなの、俺だって耐えられないじゃないか。
「そんな……酷いよ。そんなのって……そんなのって……なんで……?」
 起き上がった俺は、初めて高原と顔を向き合わせていた。
「サディストなんでね」
俺は思わず目を瞑った。「サディスト」……そうだった。諦めに似た悲しみが俺の胸に拡がる。初めから分かっていたのに。俺は何を期待していたんだろう。
「俺も最初は男を見る目が無かった」
 元通りに腕の中に俺を抱きこむと、高原は静かに話し始めた。各務を奴の言いなりに愛人にした後、気が付いた。引き込んだのが同じ性癖の男だって事を。サディストの愛人になってしまったサディスト。目眩がしそうだ。
「それでも、あいつは8年間黙って耐えたよ」
「あんたは?あんたはどうだったの?」
「どうかな。歯ごたえのある方が食いではある」
 俺はなんとも答えようがなくってひきつってしまう。
「でも、あんたは僕の事は、見もしないで買ったんだね」
「何だ。知らなかったのか」
「え?」
「ちゃんと見て、選んでから買ったぞ」
 おふくろから持ちかけた話じゃ無かったって事……か。俺は、また、ためいきをついた。俺はノーマルのはずなんだ。女の子の方が好きだったし、痛い目に合わされても嬉しくない……。でも、今や……変態な事されて感じちゃっているし、冷たいあの医者にメロメロなんだ。しかも、高原が妻を愛している事に傷ついている。俺ってなんて奴!なんて、無節操な奴!
「夏休みに入ったら……お仕置きしないとな」
 俺の物思いはあっさりと破られた。正直な体がビクッと跳ねる。
「え?ちょっと待てよ」
「まだ、お前の体で一本鞭を試してないし…。逆さ吊りも試してないからな」
 咽喉奥で嬉しそうにクックッと笑う。俺は背骨が溶けてしまって体から力が抜けるのを感じた。
 俺って、馬鹿……。ちょっと優しくされたら、簡単に馴れ合っちゃって。
 高原は俺の性器を無造作に握った。




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