２３、またしても鞭打ち

　　
　夏休みに入った最初の金曜日。俺は、胃が痛くなるほどその日を怖れていた
相変わらず各務に体の中を空っぽにしてもらいながら……恨めしげにあいつを見上げる。
｢……知っているんだろ？」
｢知っている」
　くっそー！そこまで、平気な顔して言うか？俺が青い顔をして何とか耐えられる場所を探そうと、ソファの上で転々と姿勢変えているのを眺めながら、笑いを含んだ声で訊き返してくる
｢怖いのか？」
　思いっきり睨みつけてやると、本当に嬉しそうににっこりと笑いやがった。ちょっと気を許すと、思いっきり便意が切迫してくる。俺は両手に顔を埋めた。あと７年半。ああああ……こんなんで、耐えられるんだろうか。
　部屋へ行くと高原が一本鞭をひゅんひゅん鳴らしていた。
｢ああ、来たな」
　いきなり引き寄せると、深く口付ける。息が出来ないほど深く。こいつは、いっつも、これだ。キスひとつで俺が尻尾を振って寄ってくると思っているんだろうか
　いや……寄って行ってるし。
　それから俺の喘ぎを吸い取って角度を変えてもっと深く重ねてくる。この男、本当にキスがうまい。たまんないよ。腰が砕けそうなほどに力が入らない。
　高原が、部屋の真ん中にある、滑車に下がっているパイプを引き降ろした。
｢おいで」
　手を差し出される。
　嫌だ。行きたくない。絶対に嫌だ。
　……怖い。震えが止まらなかった。明日から学校は休み。歯止めを無くしたこの男がどんな仕打ちをするのか、想像もつかなかった。
　それでも、逃げ出す事は出来ないんだ。俺は、頼りない足取りで高原の傍に近づく。差し出された手に、片方の手を差し出す。パイプの端に付けられた金具に手枷が繋がれる。カチャカチャと金属の触れ合う音。心臓の鼓動が聞こえそうだ。
反対の手も……高原は俺が手を出すのを待っている。俺は自分で手を差し出さなくちゃいけない。このサディストへ向かって。繋がれる為に。鞭で打たれるために。手を差し出すとぐいっと引かれ同じようにパイプに繋がれた。もう、逃げられない。こめかみに汗が滲んでくる。高原が覗き込んでくるのが分かって目を瞑る。視線を合わせられない。怖い。
　高原がリモコンを操作するとガラガラと音を立てて鎖が巻かれ始めた。俺の腕は持ち上がり吊り上げられる。体が伸びていく。機械の力に逆らっても、どうしようもない。足が爪先立つ。足場を求めて足元を探る。つま先がやっと付くぐらい。引き伸ばされた体が痛い。思わず呻いて目を開けると、高原の目と真っ向からぶつかってしまった。笑いを含んだ面白ろがってる目。慌てて顔をそらしたのに、顎を捕らえられ引き戻される。もう一度噛み付くように乱暴にキスされる。やめろよ。そんなにされたら……。
　体を突き放され、高原が鞭を取りに離れていく。俺はたたらを踏んで踏みとどまろうとした。自由にならない体が廻る。 咽喉がからからだった。見みあげるとパイプにつながれている自分の腕が目に入る。握りしめられたこぶしと筋肉が浮き上がっている腕が……まったく自由にならない体。高原の思い通りにされてしまう奴隷の体。
　これじゃ、最初のときと何も変わらない。どうして、ちっとも学習できないんだ。
　俺は、いつも、ぎりぎりの瀬戸際にいる。耐えられない薄氷の向こう側。
　いきなり、冷たい皮の鞭で背中を撫で上げられた。
｢行くぞ」
　歯がカチカチと鳴る。俺は、皮の鞭のうなる音を耳に、各務の名を心で呼びながら全身に力を込めていた。


完

↓ランキングに参加しています。応援してね。☆⌒（＊＾∇゜）v ヴイッ



　ヾ(＠^▽^＠)ノ ワーイついに淳一君の話が一応の形になりました。ブログの性質上、まったく何の後先も考えずに一日目を書いてしまうので、いったいどんなになっちゃうの？と、思いながら毎日を過ごしていました。次に何を書くのかは、しばらく瞑想して考えまーす。

　けっこうこのキャラ３人気に入ってるの。ポケットに入れて連れ歩きたいです。サド二人に挟まれたノーマルの淳一君あわれ。
　せっかくのブログなのに誰も感想書いてくれないのは淋しいです。書いても、誰だかわからないから大丈夫。ブログをお持ちの方も、アドレスのところ消しちゃえば大丈夫です。感想くださいね。ﾅｹﾞｷｯｽヽ(*￣・￣)ﾉ^☆ﾁｭｯ♪