好き?好きって好き?私の事を好きだって事?それって…なに?私は博人さんを好きで、博人さんは私を好きって事?そんなことってある?
博人さんは立ち上がると、妙にゆっくりと動いてきて、私の座っているソファの肘掛に腰を降ろして、背もたれに腕を掛けた
「夕姫は、気が付いてなかったの?」
そんな、そんなことって…。
「気が付いているはずないじゃない!」
思わず立ち上がっていた。
「だって、博人さんって、ポーカーフェイスなんだもん。そんなことって。そんなことって。ちっとも分からなかった。これっぽっちも想像もしてなかった」
私が、真っ赤な顔をして抗議したものだから、博人さんは困ったような顔をして、そっと私の腕を引っ張った。
「分かった。分かったから座って」
ぱふん。ふかふかの上等のソファは私が思いっきり飛び乗っても、まったく動じないでその重みを受け止めた。えーと、でも、何か考えないといけないことがあったのよね。私は額に手を当てて考える。えーと、えーと……。
…SM。
私は、改めてまじまじと博人さんの顔を見つめた。
「SMが好き……」
博人さんはちょっとまぶしそうな、困ったような、照れたような顔をして微笑んだ。
SMが好きって言った……。
「SMが好きってことは…女の人を縛ったりぶったり、蝋燭なんて垂らしちゃったり…するってことなの」
「そうだよ」
まったく動じない平静な返事に聞こえた。でも、その時、ソファの背もたれにかけられた彼の手のがかすかに震えているのに気が付いた。ポーカーフェイスの博人さん。好きって告げるだけで、四年もかかった私。清水の舞台から飛び降りるような気持ちだった。じゃあ、自分はSMが好きって言うのにはどれほどの勇気が必要なんだろう。
同情。同情って言った?
「どうして私が博人さんを同情するの?」
「どんなに好きでも、夕姫を自分のものに出来ない。夕姫はノーマルだから」
その瞬間、私は初めて博人さんを見つけた。四年間見つめていたセピア色の王子様じゃなくって、素のままの私だけの博人さん。
「でも、私、博人さんが好き」
ちょっと、躊躇って博人さんは私の横に滑り降りてきた。
「夕姫」
私は、ビクッと後ろに下がった。どうしてなのか分からない。反射的な動きだった。
「大丈夫。いくら、SMが好きだって、いきなり押し倒したりしないから」
「じゃ、じゃ、どうして、あんなに強引にここまで連れて来たの?」
「だって、こんな話、廊下じゃ話せない」
そのとおりだった。
「それに、同じ事を考えていた」
同じ事?
「このまま会えなくなるなんて、耐えられない」
ビンゴ!その通り。私は博人さんの胸の中に飛び込んだ。
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