薄暗い部屋の中で博人さんは私を手枷につないで吊り上げた。レストランへ寄るために履いていたハイヒールのかかとが浮くんじゃないかと思うくらい。手枷が下がる縄がぎしぎし擦れる音がする。ノースリーブのワンピースだから、脇の下が無防備にさらされる。それだけで、すごく恥ずかしい。
鏡の中に釣られた私の姿が映っている。スポットが向けられていて、鏡の中の私を照らしていた。しっかりと足が付いていないため、バランスが取りにくく足を踏み間違えるようにして体が揺れる。ゆらゆら、ゆらゆら。博人さんは椅子に座って、私が足を踏みかえ踏みかえしながら、鏡に映る面積を少しでも減らそうとして体を斜めにしたり、バランスを崩して戻したりするのを見ていた。息が上がってくる。
腕を吊られているとどうしても息苦しくて大きく息を吸わないと、ただはっはっと短い息を吸うだけになってしまう。その喘ぎを聞かれるのも恥ずかしくて、出来るだけゆっくりと静かに深く、深く息を吸おうとする。それが、また、自分をトランスに引き込んでいく作用をしているなんて、ちっとも気が付かなかった。
立ち上がった博人さんが影のように近づいてきて、スポットの中に現れたと思うと後ろからしっかりと抱きしめられていた。
「夕姫」
うなじにかかる博人さんの息が熱い。……私は博人さんのもの。博人さんだけのもの。腰に廻されていた手が広げられゆっくりと胸をつかみあげる。愛撫される。柔らかに、しっとりと…じわじわと拡がる快感。体を這い回る手が、無遠慮にあちこちとさまよう様がすべて鏡の中に映し出されていた。
恥ずかしい。顔を背ける。するとがら空きになったうなじに彼のくちびるが吸い付いてくる。あ、ううん。思わず伸び上がるほどの鋭い快感が突き抜ける。ちょっと首筋を弄られただけで、なんでこんなに感じるんだろう
太腿に吸い付いた手がスカートを捲り上げる。あ、いや。体を捻ったけど、博人さんを喜ばせただけだった。腰の辺りまで手がもぐりこんできたと思うとストッキングのふちをつかんで引き降ろし始める。あ、そんな。私は大きく喘いでしまう。恥ずかしさのあまり。じっと、していられない。爪先からストッキングが抜けるまで、博人さんはゆっくりと時間をかけて、私の身もだえを楽しんだ。
「こうやって、脱がされていくのが恥ずかしい?」
もう、やだ。博人さんはどうしてそんな事聞くの?私がすごく恥ずかしがっていることなんか見れば分かるでしょう?くすくす、笑いながら、素足になった太腿をひとしきりまた愛撫される私は、足がすごく弱い。もう、それだけで息を付くことも難しいくらいに追い上げられてしまう。
腕を吊っていた縄にもう一本縄が足される。その縄は私の背中の中心を通って、前へ引き出される。彼は私の表情を覗き込みながらその縄を引き上げた。足の間にしっかりと喰い込ませて。
「ああっ」
声を出すまいとしてこらえていたのに、不意打ちに締め上げられて、つい声を上げてしまう。覗き込まれた真っ赤な顔を必死にそらしながら体をのけぞらす。じわじわと縄があそこに食い込んでくる。…痛い。そして、熱い。
何だろう?痛いだけじゃない甘い疼き。博人さんは縄をぐいっと引き上げると金具にしっかりと留めてしまった。私は股縄で吊り上げられている。足が、かろうじて床に付いているから全体重がかかっているわけじゃないけれど。
「うう…」
じわっ……と体に喰い込んでくる鈍い痛み。呻かずにはいられないような、鈍痛がズキンズキンと心臓の鼓動と同じ速さで襲い掛かってくる。博人さんが足元にしゃがむ。そして、私のハイヒールを脱がせる。
……もう、片方も。
体がゆっくりと沈んだ。
「あ…」
縄に向かって体が下がっていく。ハイヒールの助けがなくなったからつま先だって体を支えようとするけれど、さっきから十分不安定だったんだもの。爪先がたたらを踏み、思いっきり縄に体重を掛けてしまった。痛い…。どーんと響くような鈍痛があって私は息を飲んだ。
もう一度足場を探って、体を持ち上げる。体中にじんわりと汗が浮き出始めていた。痛い。痛い。何とかして楽になろうとして必死に爪先立つ。息を吸い込む。足を踏みかえる。体が廻る。あ、ダメ。痛い。
痛みのために顔がゆがむ。目を開けて鏡を見ると、博人さんが鏡の中で苦しむ私をじっと見つめていた。
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