事件の後、博人さんは、以前にも増して用心深くなった。責めはバリエーションを変えながら、だんだんと深まっては来ていたけど、拘束はあくまでゆるくどこかもどかしい日々。私はずっと悩んでいた。聡という青年が私に問いかけた。ひとつの言葉を。
「あなた……マゾなんでしょ」
君はあまりにもノーマルすぎる…。博人さんは、今でもそう思っているのかしら。日毎夜毎に、深まってきている被虐への欲望に気がついていないのかしら。もっと、強く。もっと、深く。あなたの世界へ入って行きたい。そう、思っている私のことを……。
…それとも知っていて待っているの?熟しすぎた木の実が自らその手の中に落ちてくるのを……。
プレイルームの飾り戸棚の扉を開けると、そこにはいろんな種類の鞭が並べてかけてあった。背筋がぞっとするような、暴力の道具…。
「夕姫」
振り返るとドアのかまちに手を掛けて、博人さんが立っていた。私は、自分を奮い立たせるようにして、そこに掛かっている鞭の中から、ピンクがかった優しい色合いに染めてある何本もの皮ひもを綴じてある鞭を取り上げると、それを持って博人さんの側に行った。
博人さんは私の差し出した鞭を黙って見つめた。それから、手をのばして鞭を取り上げた。その手がかすかに震えている。
「本気なんだね」
私は、ことさらキッパリとうなずいて見せた。
「分かっている?一度、始まれば嫌は通らないよ」
「分かっている…わ」
その夜、お風呂から上がってプレイルームへ行くと博人さんはベッドに座って私を待っていた。ベッドの上には五個のモーターで動くおもちゃとバラ鞭が並べられていた。おもちゃには、それぞれにコードでコントローラーがついている。五個のおもちゃは全部違う色と形で、一つ一つに番号が付けられていた。博人さんが「一」と書かれているおもちゃを取り上げて私に見せながらスイッチを入れる。ブーンという音がして先についている楕円形の丸いものが振動する。
「ローターって言うんだ」
止める。そして、二番を持ち上げてスイッチを。さっきのとは違い、取っ手のように持つところが付いていて、少し低い音がした。
「音を覚えて」
順番に動かしては止める。ちょっとずつ違う振動音。五番まで行くと、一番に戻って私の手に握らせる。同じようにスイッチを入れてみた。ブーンと私の手の中で震えるローターは、初めてそれを足の間に当てられた日のあの快感を鮮やかに思い出させた。顔が思わず赤くなる。順番にもう一度五番まで動かしてみた。もう一度。もう一度。私が納得するまで彼はただ黙って私の様子を見ていた。
それから、彼は私の着ていた絹のガウンの紐をほどいた。合わせ目が開いて彼が肩から引きはぐと、するすると滑り落ちていく。恥ずかしさに身震いした。いつまでたっても彼に見られるのは恥ずかしい。ソファに座る時に足を乗せるための椅子、オッドマンが引き出されその上にうつぶせになるように言われた。ためらう気持ちを必死に叱咤して言われた通りの姿勢になった。
オッドマンの足には手首や足首を留めつけるための絹の紐が付けられている。くるりと巻きつけられふんわりと結ばれる。膝をオッドマンの足に止められるときは、顔が上げられなかった。博人さんは意地悪く、椅子の外側に膝の内側が来るように縛り付けた。まず右足を。そして、左足を。足が引きはだけられた時、思わず声を上げていた。明かりを細めてあるとはいえ、何もかも見られているのだ。私は焼かれるほど熱くなり火照る頬を必死に椅子のふちに押し付ける。紐を結ぶ動作が四回繰り返されると、私は起き上がったり逃げたりできなくなっていた。
お尻のほうに座った博人さんがじっと私の足の間をみているのが分かった。ちりちりと視線が感じられるくらい。
膝を閉じられないのは分かっているのに力をこめずに入られない。内腿の筋肉が震える。見ないで。見ないで。どうしてそんなにじっと見るの。どうしてだか分かっている。私を恥ずかしさでたまらない思いをさせるため。そのために博人さんは、私を縛った後は、しばらく何にもしないでじっと私の体を見る。
そうして、さんざん焦らして、焦らして、私が自分から何かして欲しい何でもいいからとにかく触って欲しい。と、願わずにはいられなくなるまでじっと待っている。ふと、彼の伸ばした手が足の間に咲く花びらに触れてくる。私は必死にずり上がる。もちろん、何の意味もないんだけど。そうせずにはいられないのだ。ゆるゆると花びらのふちを撫でられる。
それから足の付け根から中心に向かって指はゆっくりとさまよい歩く。ほとんど何もしていないのに、気が狂うほど心地よい指の動き。たまらない。思わず喘ぎのけぞってしまう。ああ、もう、許して。
ローターのスイッチが入れられた。私はぎゅっと目を瞑った。お尻の割れ目の始まる辺りに吊り下げられたローターが降ろされる。そしてゆっくりと合わせ目をなぞりながら落下していく。博人さんはつながったコードでローターをあやつっているらしく、ふちまで来ると急に落下する。そして花びらの合わせ目にぶつかって離れる。とんとんとリズムを刻みながら刺激は移動してクリトリスの尖りを掠める。
「うん。う……。あ、あ」
十分に高ぶった体はそれだけで、考えられないほどに感じる。つと、ローターが離れて行き、スイッチが止められる。
「何番?」
え?目を開けて後ろを振り返ろうとしてしまった。すばやく手が頭の位置を戻す。
「振り返っちゃだめだよ」
私はどきまぎして、目をぱちぱちさせた。
「今のローターは何番だった?」
そんなこと。わからない。だってあまりにも、その動きに夢中になっていたから
「夕姫。答えて」
優しい促しに、記憶を必死にめぐらせる。
「よ…四番?」
「はずれ」
その瞬間、まったく予期していない痛みがお尻全体に弾けた。
「あうっ!」
私のお尻は私の意志に関係なく跳ねてオッドマンにお腹を打ちつけた。バラ鞭!私が昼間博人さんに差し出したバラ鞭でお尻を打たれたんだ。鞭の穂先がお尻をゆっくりと這いずり回る。私は、震え上がった。考えていたよりもずっと痛かった。
鞭が離れて行く、息を詰めてその鞭の動きを探ろうとする間もなくもう一度。そして、またもう一度。痛い!
博人さんは、初めての鞭の痛みを私が十分味わえるようにしばらく待っていた。そして、弾んだ息がようやく納まったころ、ふたたびローターのスイッチが入れられる。
お尻の合わせ目に、ぽとんとローターが落ちてくるそして、またゆっくりとコードの動きに引かれて降りていく。私は身動きもならずそのローターの振動を味あうしかなかった。
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せつなは恥かしいと濡れてしまう。そのことを指摘すると彼女はさらに漏らすのだ。だから調教時の待ち合わせにはショーツもブラも付けさせない。指示に従えてるのかどうか報告
2006/04/09(日) | Lait pour le corps