毎朝、鏡を見ながら考える。博人さんのものになって私は変わっただろうか?分からない。あまりにも幸せすぎて・・・。会社へ行く時に見慣れた風景でさえも、まるで磨きたてのガラス窓のようにクリアに見える。街路樹の緑の葉っぱ。花壇に咲くピンクの花。ひとつひとつが、くっきりとして、空があまりにも青い。好きな人と一緒にいられる。それだけですべてが美しく見える。
会えない日は会える日を思い。会えた日はその出来事を噛み締める。彼がふれた頬。彼がしてくれたキス。彼が抱きしめてくれたときの喜び。彼がくれた痛みさえもが、不思議に満たされたような気持ちをもたらしてくれる。私は指先までも彼に支配されている。この身体はすべて彼のもの。そして、彼のくれる優しい気持ちはすべて私のものなのだ。
私はまだ、何も知らない。彼がサディストだとして、私に何を仕掛けてくるのか・・・・。SMって何だろう。私の前にはどんな扉が待ってるんだろう。私はその扉をくぐっていけるのだろうか。彼と一緒に。彼の求めるままに・・・。
「明日は、何時に帰れるかわからないんだ。」
電話の向こうの彼の声を聞きながら困ったような彼の顔を想像する。
「大丈夫。待ってるから。」
「ほんとに何時までかかるかわからないんだよ。じゃあ、マンションへ入っていてくれる?」
「え?いいの?」
「この間、指紋認証の設定を入れただろう?だから一人でも入れる。先に行ってお風呂にでも入ってくつろいでて。」
「分かった。」
「遅くなるようだったら寝ちゃってて。」
「大丈夫よ。起きて待ってるから。」
「さーや。・・・お願いだから、待ってないで好きにしてて。気になって仕事にならない。」
「分かったわ。好きなことしています。待たないで寝ちゃう。それならいい?」
「頼むよ。」
思わずくすくす笑いながら電話を切った。最近の彼は、仕事が忙しいようだ。一人で事業を切り盛りしていれば、会社勤めのようには行かないのだろう。それでもほとんど週に二三度は会っていた。そして、私たちの関係も少しづつ深まっていた。拘束される事にはまだ慣れないし、恥ずかしさもちっとも減らないけれど。
駅から彼のマンションまでゆっくり歩いても10分足らず。景色を楽しみながらぶらぶら歩いた。マンションの前まで来て、オートロックの番号を入力しようとしていると若い男の人が近づいてきた。
「姫野あやかさん?」
「え、はい?」
「よかった。高柳博人さんの所へいらしたんですよね。」
「ええ、どうですけど。」
見たことのない人。細身ですっきりとした額と細い唇の整った顔立ち。誰だろう?あまりにも当然の様子で自然に近づいてきたので何も疑わなかった。
「これ。」
差し出されたものを確認しようと、うつむいたとき。何か身体に押し付けられたと思ったらバリバリという音がして身体に激痛が走った。膝がかくんと折れふらふらする。立ってられなくてしゃがみこんでしまった。
「どうしました?大丈夫ですか。」
覆いかぶさるようにされてはっとなった時は、もう遅かった。何か濡れたような布が顔に押し付けられた。抵抗しようとしたが最初のショックが大きくて思うように体が反応しない。そうするうちに意識がだんだん薄れていった。
「いや。助けて・・。博人さん。」
最後に思い浮かんだのは、何時に帰れるかわからないんだ。と、繰り返す博人さんの困ったような笑顔だった。
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会えない日は会える日を思い。会えた日はその出来事を噛み締める。彼がふれた頬。彼がしてくれたキス。彼が抱きしめてくれたときの喜び。彼がくれた痛みさえもが、不思議に満たされたような気持ちをもたらしてくれる。私は指先までも彼に支配されている。この身体はすべて彼のもの。そして、彼のくれる優しい気持ちはすべて私のものなのだ。
私はまだ、何も知らない。彼がサディストだとして、私に何を仕掛けてくるのか・・・・。SMって何だろう。私の前にはどんな扉が待ってるんだろう。私はその扉をくぐっていけるのだろうか。彼と一緒に。彼の求めるままに・・・。
「明日は、何時に帰れるかわからないんだ。」
電話の向こうの彼の声を聞きながら困ったような彼の顔を想像する。
「大丈夫。待ってるから。」
「ほんとに何時までかかるかわからないんだよ。じゃあ、マンションへ入っていてくれる?」
「え?いいの?」
「この間、指紋認証の設定を入れただろう?だから一人でも入れる。先に行ってお風呂にでも入ってくつろいでて。」
「分かった。」
「遅くなるようだったら寝ちゃってて。」
「大丈夫よ。起きて待ってるから。」
「さーや。・・・お願いだから、待ってないで好きにしてて。気になって仕事にならない。」
「分かったわ。好きなことしています。待たないで寝ちゃう。それならいい?」
「頼むよ。」
思わずくすくす笑いながら電話を切った。最近の彼は、仕事が忙しいようだ。一人で事業を切り盛りしていれば、会社勤めのようには行かないのだろう。それでもほとんど週に二三度は会っていた。そして、私たちの関係も少しづつ深まっていた。拘束される事にはまだ慣れないし、恥ずかしさもちっとも減らないけれど。
駅から彼のマンションまでゆっくり歩いても10分足らず。景色を楽しみながらぶらぶら歩いた。マンションの前まで来て、オートロックの番号を入力しようとしていると若い男の人が近づいてきた。
「姫野あやかさん?」
「え、はい?」
「よかった。高柳博人さんの所へいらしたんですよね。」
「ええ、どうですけど。」
見たことのない人。細身ですっきりとした額と細い唇の整った顔立ち。誰だろう?あまりにも当然の様子で自然に近づいてきたので何も疑わなかった。
「これ。」
差し出されたものを確認しようと、うつむいたとき。何か身体に押し付けられたと思ったらバリバリという音がして身体に激痛が走った。膝がかくんと折れふらふらする。立ってられなくてしゃがみこんでしまった。
「どうしました?大丈夫ですか。」
覆いかぶさるようにされてはっとなった時は、もう遅かった。何か濡れたような布が顔に押し付けられた。抵抗しようとしたが最初のショックが大きくて思うように体が反応しない。そうするうちに意識がだんだん薄れていった。
「いや。助けて・・。博人さん。」
最後に思い浮かんだのは、何時に帰れるかわからないんだ。と、繰り返す博人さんの困ったような笑顔だった。
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