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19、反転

ここでは、「19、反転」 に関する記事を紹介しています。
 
 最後まで強情を張り通し、言質を与えなかったのに、フランツ様はだまされてはくださらなかった。快感の余韻で、ふらふらになっている私の縄を順番に解きながら、食い込んだ縄の痕を愛しげになぞる。
「次は、お前が私を抱く番だ。私がしたのと同じように寝台にくくりつけて抱くように。お前が、いつまでも強情を張るなら、私は、私を抱いてくれる相手を外で探す」
「まったく、あくどいとしか言いようが無いですよ。わたくしはおっしゃるとおりに耐え抜きました。それなのに、今度は脅迫なさるんですか?」
「では、もうひと責めするか?」
 ぐうの音も出ないとは、このことだった。何か言い返す言葉が見つからないかと周囲を見回したが、頭が空回りするばかりだった。
「わたくしが、なにを怖れているのか……ご存知でしょうに」
「知っている。だが、手綱を渡しはしないさ」
「あなたはそうかもしれません。でも……わたくしは……」
「自信が無い……か」
 ずばりと切り込まれて、溜息を付くしかなかった。
「たいしたことじゃない。難しく考えるなといったのはお前だろう」
「他人には何とでも言えます」
「ようやく正直になってきたな」
彼が欲しい。咽喉から手が出るほどに。気が狂いそうなほどに。私自身、そのことを考えただけでじりじりと焦げ付きそうな思いをずっと押し殺してきたのだ。もう、意地をはるのも限界だった。
「焦らしますよ」
「怖いな」
「後悔しても遅いですからね」
 ぐいっと手を引かれて、のしかかられ、あっという間にキスされる。手馴れたものだ。いつの間に、こんなことを覚えられたのだろう。分け入ってくる舌の動きも抵抗できないほどに甘い。手を離すと彼は仰向けに横になったまま腕で顔を隠した。
「縄を取ってくれ」
 もう、逆らえなかった。私は、たった今まで自分の自由を奪っていた体のぬくもりが残る縄をたぐりよせた。フランツ様は黙って手を突きつけてくる。私は彼の手に縄を巻いた。
 本当のところ、自分がコントロールできなくなる怖れは、相手に嫌われるのを怖がる思いと裏表だった。体を許して二年間といえば、なじむのに十分な時間のはずだ。それなのに、この人はいまだに王の行為を蛇蝎のように嫌悪されている。今は、求められているとはいえ、感情は、どこで、どう転ぶか分からない。もし、嫌われたら、私は、生きていけないだろう。
 私はフランツ様に要求されたとおりに彼を縛り、うつぶせにして、目隠しをした。布を結ぶ手がたかぶりに震える。思いついて、私は、行為に言葉が入り込む恐れを避けようと彼の口に布を押し入れた。彼の言葉は私を支配する力がある。手足を縛ったとしても、わたし自身の心は彼に跪いたままなのだから。
 口を封じられるとは思われてなかったのだろう。平静な様子で、おとなしく縛られるのを待っていたフランツ様の様子が一変した。動揺され、抵抗しようとする。私は彼に話しかけなかった。心を見透かされるのが恐かったのだ。
 彼にさわる。彼の体が反応する。声が漏れ、ふれる手から逃れようと、のけぞられる。オイルを使って、念入りに苛む。自分の中でひるむ気持ちをねじ伏せ、ことさらに言葉で心の中で自分を煽り立てる。だが、いつしか、それも必要無いくらいに私は彼の体に熱中していた。感じやすい体。そして、責め手を引き込まずにはいられない姿態……。王が手放さないわけがよく分かった。
 なぜだろう?二年も王の枕辺にはべっていたのに、あなたはどうしてそう感じやすく、穢れないままなんですか。まるで、今初めて汚されようとしている処女地のように、何も知らないと思わずにはいられないような反応ですよ。引くつき吸い付いてくる彼のアナルに指を捉われながら、うごめく体にどうしようもなく昂ぶってきていた。
 自分から、無理矢理脅して抱かれようとなさったくせに、どんな愛撫にも抵抗するかのように体を捻りのけぞらせる。そのくせあそこは、貪欲に喜びをむさぼっていた。天使と悪魔。聖女と娼婦。守りたい相手。そして、壊したい欲望。
 私は自分自身の欲望を必死に押さえつけ続けた。彼が私を本当に求めるまで、決して中には入るまい。そう自分に言い聞かせ続ける。私が彼を求めたように。彼にも私を求めて欲しかったのだ。
 長い夜。受け入れられることは無いのではないかと言う不安がどうしようもなくつのってきた頃、ようやく、フランツ様の体が溶けた。何かが変わり、何かが現れる。私は彼の体の中に吸い込まれるように、入り込んでいった。彼の心の中までも……。
 手を伸ばし、押し込んであった口の中の布を引き出し、その唇へ唇を重ねる。すっかりと渇いた口の中へ、私の舌を差し入れる。はっきりと確かな意思を持って応えてくる彼の唇に、舌に……涙が溢れてくるような安堵と共にコントロールのきかない急激な欲望が突き上げてきた。



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